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審決分類 |
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H04B 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H04B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B |
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管理番号 | 1173804 |
審判番号 | 不服2005-24633 |
総通号数 | 100 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-12-22 |
確定日 | 2008-02-27 |
事件の表示 | 特願2002- 78234「無線機の自動送信電力制御方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月 3日出願公開、特開2003-283345〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.出願の経緯 本願は、平成14年3月20日の出願であって、原審において、平成17年4月6日付けで拒絶の理由が通知され、それに対して、平成17年5月26日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成17年6月29日付けで最後の拒絶の理由が通知され、それに対して、平成17年9月1日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものの、平成17年11月9日付けで、平成17年9月1日付けの手続補正書が補正却下されると共に、同日付けで拒絶査定されたので、平成17年12月22日付けで拒絶査定不服の審判が請求され、平成18年1月23日付けで明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の変更を目的とする手続補正書及び請求の理由の補充を目的とする手続補正書(方式)が提出されたものである。 第2.平成18年1月23日付け提出の手続補正の却下の決定 1.結論 平成18年1月23日付け提出の手続補正を却下する。 2.理由 (1)平成18年1月23日付け提出の手続補正は、明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の段落【0011】,【0012】,【0019】の変更を目的とするものであって、その内、特許請求の範囲の補正(以下、「本件手続補正」という)は、請求項1及び2を、補正前の 〈補正前の特許請求の範囲〉 「【請求項1】 対向する相手無線機との間で無線信号の送受を行う無線機の自動送信電力制御方法において、 あらかじめ標準受信電力レベルを設定しておき、 相手無線機からの無線信号の受信電力レベルと前記標準受信電力レベルとの差分を検出し、 前記無線信号の受信電力レベルが前記標準受信電力レベルよりLだけ減少していた場合には、自局の送信電力をLだけ増加して送信し、 前記無線信号の受信電力レベルが前記標準受信電力レベルよりLだけ増加していた場合には、自局の送信電力をLだけ減少して送信することで、 無線機が自局の送信電力を制御することを特徴とする無線機の自動送信電力制御方法。 【請求項2】 相手無線機からの無線信号を受信する受信系回路と相手無線機に無線信号を送信する送信系回路とを有する無線機において、 前記受信系回路で受信した受信電力レベルを検出する受信電力レベル検出回路と、 あらかじめ標準受信電力レベルを記憶し、該標準受信電力レベルと前記検出回路で検出した受信電力レベルとの差分を出力するレベル判定回路と、 前記無線信号の受信電力レベルが前記標準受信電力レベルよりLだけ減少していた場合には、自局の送信電力をLだけ増加させ、 前記無線信号の受信電力レベルが前記標準受信電力レベルよりLだけ増加していた場合には、自局の送信電力をLだけ減少させるように、 前記送信系回路の可変増幅器の利得を制御して送信出力電力を制御する自動送信電力制御回路とを有することを特徴とする無線機。」 から、補正後の 〈補正後の特許請求の範囲〉 「【請求項1】 1対多方向型固定無線通信システムにおける基地局内の対向する相手無線機との間で無線信号の送受を行う複数の子局の無線機の自動送信電力制御方法において、 あらかじめ標準受信電力レベルを設定しておき、 相手無線機からの無線信号の受信電力レベルの、前記標準受信電力レベルからの差分L(dB)を検出し、 前記無線信号の受信電力レベルが前記標準受信電力レベルよりL(dB)だけ減少していた場合には、自局の送信レベルがL(dB)増加するように送信電力を増加して送信し、 前記無線信号の受信電力レベルが前記標準受信電力レベルより-L(dB)だけ増加していた場合には、自局の送信レベルが-L(dB)減少するように送信電力を減少して送信することで、 無線機が自局の送信電力を制御することを特徴とする無線機の自動送信電力制御方法。 【請求項2】 1対多方向型固定無線通信システムにおける基地局内の対向する相手無線機からの無線信号を受信する受信系回路と相手無線機に無線信号を送信する送信系回路とを有する複数の子局の無線機において、 前記受信系回路で受信した受信電力レベルを検出する受信電力レベル検出回路と、 あらかじめ標準受信電力レベルを記憶し、該標準受信電力レベルからの前記検出回路で検出した受信電力レベルの差分L(dB)を出力するレベル判定回路と、 前記無線信号の受信電力レベルが前記標準受信電力レベルよりL(dB)だけ減少していた場合には、自局の送信レベルがL(dB)増加するように送信電力を増加させ、 前記無線信号の受信電力レベルが前記標準受信電力レベルより-L(dB)だけ増加していた場合には、自局の送信レベルが-L(dB)減少するように送信電力を減少させるように、 前記送信系回路の可変増幅器の利得を制御して送信出力電力を制御する自動送信電力制御回路とを有することを特徴とする無線機。」 に補正するものである。 (2)そこで本件手続補正が特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしているか否かを以下検討する。 本件手続補正による請求項1の補正のうち、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記無線信号の受信電力レベルが前記標準受信電力レベルよりLだけ減少していた場合には、自局の送信電力をLだけ増加して送信し、前記無線信号の受信電力レベルが前記標準受信電力レベルよりLだけ増加していた場合には、自局の送信電力をLだけ減少して送信することで、」を「前記無線信号の受信電力レベルが前記標準受信電力レベルよりL(dB)だけ減少していた場合には、自局の送信レベルがL(dB)増加するように送信電力を増加して送信し、前記無線信号の受信電力レベルが前記標準受信電力レベルより-L(dB)だけ増加していた場合には、自局の送信レベルが-L(dB)減少するように送信電力を減少して送信することで、」の補正は、補正前には、受信電力レベルが標準受信電力レベルよりLだけ減少又は増加していた場合に、送信電力をLだけ増加又は減少させるものであることが示されていたものを、補正のうち、受信電力レベルが標準受信電力レベルより「-L(dB)」だけ増加していた場合には送信電力を「-L(dB)」減少するということは、受信電力レベルが標準受信電力レベルより「L(dB)」だけ減少していた場合には送信電力を「L(dB)」増加させるということと同じ意味であるので、補正によって、受信電力レベルが標準受信電力レベルより増加した場合の制御についての記載が欠落することとなったものと認められる。 したがって、当該補正は、明りょうでない記載の釈明には該当せず、誤記の訂正にも該当しない。又、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮にも該当しないことも明らかである。よって、当該補正は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない不適法な補正である。 また、請求項2は、請求項1に係る方法の発明を装置の発明としたものであって、請求項1について述べたのと同じである。 したがって、本件手続補正は、その余の点について検討するまでもなく、特許法第17条の2第4項の規定に違反しているものと認められるので、同法第159条で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明1及び2 1.上記のとおり、平成18年1月23日付け提出の手続補正は却下されたので、本願発明1及び2は、上記、第2.2.(1)〈補正前の特許請求の範囲〉の請求項1及び2に記載のとおりのものである。 2.引用文献に記載の発明 (1)原査定の拒絶の理由において引用された刊行物である特開平5-63622号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下のように記載されている。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は送信電力制御器に関し、特に互いに異なる周波数の送信および受信信号に対する降雨減衰を補償する衛星通信地球局の送受信装置における送信電力制御器に関する。」 「【0002】 【従来の技術】一般に衛星通信においては、降雨による電波減衰を補償して、常に一定レベルの電波を通信衛星側に供給するために、地球局の送受信装置に送信電力制御器を設けている。図3は従来の衛星通信地球局の送受信装置の一例を示すブロック図であり、受信系は、アンテナ1および給電器2を介して受信した信号を低雑音で増幅する低雑音増幅器3と、所定周波数の信号Srに変換する周波数変換器4とを備えている。また、送信系は、所定周波数の信号Stを送信周波数に変換する周波数変換器5と、送信電力増幅器6と、信号Stのレベルを調整して送信電力を制御する送信電力制御器8とを備えている。 【0003】ここで、送信電力制御器8は、受信信号の降雨による減衰量を検出する受信減衰量検出部81と、受信減衰量に応じて制御電圧Vcを生成する減衰制御部82と、制御電圧Vcに応じて信号Stのレベルを調整する可変減衰器83とを有しており、受信減衰量検出部81は、受信信号に含まれるパイロット信号あるいはデータ信号により受信レベルを検出し、晴天時における受信レベルと比較して降雨による減衰量を検出する。また減衰制御部82は、受信レベルの減衰量に一定係数を乗算して制御電圧Vcを生成する。」 すなわち、引用文献1には、衛星通信の地球局において、送受信信号に対する降雨による減衰を補償して、常に一定レベルの電波を通信衛星側へ供給するために、送受信装置の受信系は受信した信号のレベルを晴天時における受信レベルと比較して受信信号の降雨による減衰量を検出する受信減衰量検出部と、該受信減衰量に応じた制御電圧を生成する減衰制御部とを備え、送信系は、送信電力増幅器と可変減衰器とを備えており、該可変減衰器は減衰制御部が生成した制御電圧に応じて送信電力制御器のレベルを調整して送信電力を制御するようにして、常に一定レベルの電波を通信衛星側へ供給するように構成した衛星通信地球局の送受信装置における送信電力制御器に関する発明が記載されている(以下、これを「引用発明1」という)。 (2)原査定において周知例として引用された刊行物である特開2001-267939号公報(以下、「引用文献2」という。)の段落【0005】には、以下のように記載されている。 「【0005】<オ-プンル-プ送信電力制御>次に、オ-プンル-プ送信電力制御について説明する。基地局は、移動局より送信された信号を受信し、1スロットごとにその受信信号の受信SIRを測定する。そして、測定した受信SIRと目標とする受信SIRとを比較し、測定した受信SIRが目標とする受信SIRよりも低い場合には、送信増幅器に対して送信電力を上げる旨を指示する送信電力制御信号を出力する。逆に、測定した受信SIRが目標とする受信SIRよりも高い場合には、送信増幅器に対して送信電力を下げる旨を指示する送信電力制御信号を出力する。」 (3)原査定において周知例として引用された刊行物である特開平8-8771号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下のように記載されている。 「【0003】次にその動作を説明する。まず、受信入力端子5から入力される受信信号は受信側利得可変増幅器6により増幅され、受信出力信号として受信出力端子7に出力される。また、この出力された受信出力信号は、電力検出回路8によりその電力が検出され、検出信号として比較器10に導かれる。この比較器10には、比較信号入力端子9より基準電力値が入力されており、前記検出信号は、この基準電力値と比較された上、その比較結果は受信AGC信号として前記受信側利得可変増幅器6に加えられ、前記検出信号と基準電力値が等しくなるようにその利得が制御される。 【0004】また、この受信AGC信号は、制御信号入力端子11に入力される外部送信電力制御信号と加算器12により加算され、送信電力制御信号として前記送信側利得可変増幅器2に加えられる。この送信側利得可変増幅器2では、送信入力端子1から入力される送信信号をこの送信電力制御信号に基づいた利得で増幅し、さらに電力増幅器3で増幅して送信出力端子4からこれを送信出力信号として取り出す。」 3.対比・判断 (1)本願発明1について 本願発明1と、引用発明1とを対比すると、 A.両者は共に、常に一定レベルの電波を受信局側に供給するようにした無線通信システムに関するものである。 B.引用発明1における「通信衛星側(の送受信装置)」,「晴天時における受信レベル」はそれぞれ、本願発明1における「対向する相手無線機」,「標準受信電力レベル」に相当する。 C.引用発明1は「送信電力制御器」に関する発明であるのに対して、本願発明1は、「送信電力制御方法」に関する発明であるが、引用発明1における送信電力制御器の制御の行い方は、受信信号の降雨による減衰量を検出し、受信減衰量に応じた制御電圧を生成し、該制御電圧に応じて送信信号のレベルを調整しているものであるので、引用発明1には、送信電力制御方法の発明が示唆されているものと認められる。 D.引用発明1の「減衰量」は、本願発明1における「差分」に相当し、又、引用発明1においても、受信信号の減衰量に基づいて制御しているのは、本願発明1と同様に、自局の送信機の送信電力である。 E.引用発明1における「晴天時における受信レベル」はいつ設定されるのか明示されていないが、このような標準となるレベルは「あらかじめ」設定しておくものであることは当業者にとって自明である。 したがって、両者は共に、 対向する相手無線機との間で無線信号の送受を行う無線機の自動送信電力制御方法において、 あらかじめ標準受信電力レベルを設定しておき、 相手無線機からの無線信号の受信電力レベルと前記標準受信電力レベルとの差分を検出し、 前記無線信号の受信電力レベルが前記標準受信電力レベルより減少していた場合には、自局の送信電力を増加して送信し、 前記無線信号の受信電力レベルが前記標準受信電力レベルより増加していた場合には、自局の送信電力を減少して送信することで、 無線機が自局の送信電力を制御することを特徴とする無線機の自動送信電力制御方法 である点では同じであり、以下の〈相違点〉の点で相違している。 〈相違点〉 本願発明1には、受信電力レベルが前記標準受信電力レベルよりLだけ減少していた場合には、送信電力をLだけ増加して送信し、受信電力レベルが前記標準受信電力レベルよりLだけ増加していた場合には、送信電力をLだけ減少して送信するように送信電力を制御するものであるのに対して、引用発明1には受信電力レベルが標準受信電力レベルよりLだけ減少していた場合には、送信電力をLだけ増加して送信し、受信電力レベルが標準受信電力レベルよりLだけ増加していた場合には、送信電力をLだけ減少して送信するように送信電力を制御するという具体的な構成の開示はない点。 以下、〈相違点〉について検討する。 対向する相手無線機との間で無線信号の送受信を行う無線通信システムにおいて、受信側の受信電力が一定値となるように、受信電力レベルと標準電力レベルとを比較して差分を検出し、差分の減少又は増加に伴って、その差分だけ送信レベルを増加又は減少させるように制御することは、前記引用文献2に、オ-プンル-プ送信電力制御系において、「測定した受信SIRと目標とする受信SIRとを比較し、測定した受信SIRが目標とする受信SIRよりも低い場合には、送信増幅器に対して送信電力を上げる旨を指示する送信電力制御信号を出力する。逆に、測定した受信SIRが目標とする受信SIRよりも高い場合には、送信増幅器に対して送信電力を下げる旨を指示する」(前記2-(2)参照)旨記載されていること、及び、前記引用文献3に、「受信入力端子5から入力される受信信号は受信側利得可変増幅器6により増幅され、受信出力信号として受信出力端子7に出力される。また、この出力された受信出力信号は、電力検出回路8によりその電力が検出され、検出信号として比較器10に導かれる。この比較器10には、比較信号入力端子9より基準電力値が入力されており、前記検出信号は、この基準電力値と比較された上、その比較結果は受信AGC信号として…(中略)…制御信号入力端子11に入力される外部送信電力制御信号と加算器12により加算され、送信電力制御信号として前記送信側利得可変増幅器2に加えられる。この送信側利得可変増幅器2では、送信入力端子1から入力される送信信号をこの送信電力制御信号に基づいた利得で増幅し、さらに電力増幅器3で増幅して送信出力端子4からこれを送信出力信号として取り出す」(前記2-(3)参照)旨記載されていることから明らかなように、当業者の周知技術である。 したがって、引用発明1に上記周知の技術を適用して本願発明1のようにすることは当業者が容易に為し得たものであり、〈相違点〉は格別なものとは認められない。 したがって、〈相違点〉は、格別のものではなく、又、本願発明1の構成によってもたらされる効果も、当業者であれば容易に予測できるものであって、格別のものとは認められない。 以上のとおりであるので、本願発明1は引用発明1及び上記周知の事項から当業者が容易に発明できたものである。 (2)本願発明2について 本願発明2は、本願発明1が「無線機の自動送信電力制御方法」と方法の発明であるのを、「無線機」と装置の発明としたものであって、その余の点では本願発明1と同じであり、両者は単なる発明のカテゴリーの相違に過ぎないので、本願発明2は、本願発明1と同じ理由により当業者が容易に発明できたものである。 第4.むすび 以上のとおりであるので、本願発明1及び2は、当業者が引用発明1及び上記周知の技術に基づいて容易に発明できたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-12-12 |
結審通知日 | 2007-12-18 |
審決日 | 2008-01-07 |
出願番号 | 特願2002-78234(P2002-78234) |
審決分類 |
P
1
8・
573-
Z
(H04B)
P 1 8・ 121- Z (H04B) P 1 8・ 574- Z (H04B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高木 進、佐藤 聡史、海江田 章裕 |
特許庁審判長 |
井関 守三 |
特許庁審判官 |
橋本 正弘 桑江 晃 |
発明の名称 | 無線機の自動送信電力制御方法及び装置 |
代理人 | 本山 泰 |
代理人 | 根岸 裕一 |
代理人 | 根岸 裕一 |
代理人 | 本山 泰 |