• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1173897
審判番号 不服2005-2629  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-16 
確定日 2008-03-05 
事件の表示 特願2001-152295「パチンコ遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月 3日出願公開、特開2002-346091〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年5月22日の出願であって、平成16年9月13日付の拒絶理由通知に対して同年11月15日付で手続補正がなされ、これに対し、平成17年1月13日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月16日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、同年3月9日付で手続補正がなされたものである。

2.平成17年3月9日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年3月9日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
【1】本件補正の概略
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、平成16年11月15日付手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「【請求項1】
三つの図柄を有する図柄列を変動表示する図柄表示装置と、図柄始動条件の成立に起因して変動開始から図柄確定に至る一連の図柄生成行程を実行する図柄制御手段とを備え、図柄表示装置に図柄生成行程により確定表示された図柄の組合せが所定の当り図柄態様である場合に、遊技者に所定の利得を供与することとなる特別遊技作動を実行するようにしたパチンコ遊技機において、
前記図柄表示装置で変動表示される図柄列が、二つの図柄を並列表示したものと同じ価値を持つ等価並列図柄を有するものであり、
図柄生成行程により確定表示された図柄の組合せが、等価並列図柄を構成する図柄を含む同じ図柄が三つ連続して並んだ場合に、当り図柄態様となる場合があることを特徴とするパチンコ遊技機。」から、

「【請求項1】
夫々複数の図柄を有する三つの図柄列を変動表示して、横一列の図柄組み合わせ列を確定表示する図柄表示装置と、図柄始動条件の成立に起因して変動開始から図柄確定に至る一連の図柄生成行程を実行する図柄制御手段とを備え、図柄表示装置に図柄生成行程により確定表示された図柄組み合わせ列が所定の当り図柄態様である場合に、遊技者に所定の利得を供与することとなる特別遊技作動を実行するようにしたパチンコ遊技機において、
前記図柄表示装置で変動表示される図柄列が、二つの図柄を並列表示したものと同じ価値を持つ等価並列図柄を有するものであり、
図柄変動開始後、各図柄列を順次停止していく図柄生成行程にあって、最後に図柄停止する図柄列が、等価並列図柄を有する図柄列であるように制御するとともに、
図柄生成行程により確定表示された図柄組み合わせ列の態様が、等価並列図柄を構成する図柄を含む同じ図柄が三つ連続して並んでいる場合に、これを当り図柄態様とするようにしたことを特徴とするパチンコ遊技機。」へと補正された。

【2】補正の適否
本件補正により特許請求の範囲の請求項1にした補正は、
(1)発明を特定するために必要な事項である「図柄列」について、「三つの図柄を有する図柄列」を「夫々複数の図柄を有する三つの図柄列」とし、
(2)発明を特定するために必要な事項である「図柄表示装置」について、「横一列の図柄組み合わせ列を確定表示する」とし、
(3)発明を特定するために必要な事項である「所定の当り図柄態様」について、「図柄の組合せ」を「図柄組み合わせ列」とし、
(4)「図柄変動開始後、各図柄列を順次停止していく図柄生成行程にあって、最後に図柄停止する図柄列が、等価並列図柄を有する図柄列であるように制御するとともに」を付加し、
(5)発明を特定するために必要な事項である「当り図柄態様」について、「図柄の組合せ」を「図柄組み合わせ列の態様」とし、
(6)発明を特定するために必要な事項である「等価並列図柄を構成する図柄を含む同じ図柄が三つ連続して並んだ場合」について、「当り図柄態様となる場合がある」を「これを当り図柄態様とするようにした」と限定するものである。(下線部は補正事項。)
上記(1)乃至(3)並びに(5)及び(6)の補正について、審判請求人は、審判請求書において、平成17年1月13日付拒絶査定のなお書きにおける記載不備の指摘に対応した補正であり、「これにより、記載は明瞭となった」、すなわち、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する旨、主張している。
ここで、上記拒絶査定のなお書きにおいて、審査官は、「なお、請求項1の「三つの図柄を有する図柄列・・・二つの図柄を並列表示したものと同じ価値を持つ等価並列図柄を有する・・・等価並列図柄を構成する図柄を含む同じ図柄が三つ連続して並んだ場合」と記載されているが、等価並列図柄を含むと図柄は四つまたは五つになるため発明の内容が不明確である。」と指摘し、「三つの図柄」という事項及び「等価並列図柄」の定義である「二つの図柄を並列表示したものと同じ価値を持つ」という記載の「二つの図柄」という事項に下線を附し、「等価並列図柄を含むと図柄は四つまたは五つになる」ことを記載不備の理由とするところである。
しかし、本件補正前の請求項1に記載される「三つの図柄を有する図柄列・・・」という事項は、「図柄」が「三つ」あることを意図するものではなく、「図柄を有する図柄列」が「三つ」あることを意図した記載であると解するのが妥当であり、本件補正前の上記発明特定事項として記載された事項はもともと明りょうであると認められ、後に示す3.本願発明についての判断においても、上記記載は、明りょうであるものとして扱うものとする。
したがって、上記(1)乃至(3)並びに(5)及び(6)の補正について、本件補正前の図柄に係る発明特定事項として記載された上記事項はもともと明りょうであるから、同条第3項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明に該当しない。
しかしながら、上記(1)の補正は、「図柄列」が有する「図柄」について、「夫々複数の図柄」であると限定し、上記(2)の補正は、「図柄表示装置」について、「横一列の図柄組み合わせ列を確定表示する」と限定し、上記(3)及び(5)の補正は、「図柄の組合せ」を「図柄組み合わせ列」又は「図柄組み合わせ列の態様」として、記載を改めると共に「列」であることを限定し、さらに、上記(6)の補正は、「等価並列図柄を構成する図柄を含む同じ図柄が三つ連続して並んだ場合」について、「当り図柄態様となる場合がある」を「これを当り図柄態様とするようにした」とそれぞれ発明特定事項を限定するものであるから、上記(1)乃至(3)並びに(5)及び(6)の補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
上記(4)の補正について、補正前の特許請求の範囲の請求項1を削除し、請求項3の番号を繰り上げて、新しい請求項1とするものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とする補正に該当する。

本件補正は、上記のように、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含んでいるから、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項第2号において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

【3】特許法第29条第2項の適用
[1]引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内で頒布された刊行物である引用文献1(特開平10-179864号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
ア.「【要約】
・・・
【解決手段】可変表示手段20は縦3列横3列のマトリクス状に図柄表示領域を配列して備え、通常は、各図柄表示領域に1つの図柄を表示する。特殊なリーチ状態を形成する場合には、マトリクスの中央の図柄表示領域を縦横それぞれ2つに分割して4つの小表示領域を形成し、縦横斜めのいずれかの向きに同一の数字が並ぶリーチ状態を少なくとも1つ表示する。そして、分割された中央の図柄表示領域に表示された図柄とその周囲の図柄表示領域に表示された図柄とによって前記当たりを示す3つの図柄が一方向に並ぶ当たり状態が形成されたとき、遊技者に有利な特別価値を付与する。」
イ.「【請求項2】
遊技盤面上に打ち出された球が特定入賞口へ入賞したとき、所定の図柄合わせゲームを実行し、その実行結果として当たりを示す3つの図柄が一定方向に並ぶ当たり状態が形成されたとき、遊技者に有利な特別価値を付与する遊技機において、
任意の図柄を表示することのできる図柄表示領域を縦3列横3列のマトリクス状に配列した可変表示手段と、
前記図柄合わせゲームの実行結果をあと1つ図柄が揃うと前記当たり状態になるリーチ状態を経由させて表示するとき、前記マトリクスの中央に配置された図柄表示領域を縦横それぞれ2つに分割して4つの小表示領域を形成し、これら小表示領域に前記当たりを示す3つの図柄の中の2つの図柄が縦、横、斜めのうち少なくとも1つの方向に並ぶ特殊リーチ状態を表示する特殊リーチ表示手段と、
前記4つの小表示領域に表示された図柄とその周囲に配置された図柄表示領域に表示された図柄とによって前記当たりを示す3つの図柄が一定方向に並ぶ当たり状態が少なくとも1つ形成されたとき、遊技者に有利な特別価値を付与する特別価値発生手段と、
を具備することを特徴とする遊技機。
【請求項3】
前記特殊リーチ状態を表示するとき、該状態を形成した後に前記中央の図柄表示領域の周囲に配置された図柄表示領域上の図柄を確定することを特徴とする請求項1または2記載の遊技機。」
ウ.「【0015】
たとえば、図柄表示領域(21?29)を縦3列横3列のマトリクス状に配列した可変表示手段(20)を用い、「777」など予め定めた3つの図柄が縦、横、斜めのいずれかのライン上に表示されたときを当たり状態に設定する。
・・・
【0017】
たとえば、3×3のマトリクス状に図柄表示領域(21?29)が配置されているとき、その中央の図柄表示領域(21)を縦横それぞれ2つに分割して4つの小表示領域(21a?21d)を形成する。そして、これら4つの小表示領域(21a?21d)上に、当たりを示す3つの図柄の中の2つの図柄が縦、横、斜めのうち少なくも1つの方向に並ぶ状態を表示する。
【0018】
特別価値発生手段(30)は、分割された中央の図柄表示領域(21)に表示されたリーチ状態を成す図柄の組とその周囲の図柄表示領域(22?29)に表示された図柄とにより当たり状態が少なくとも1つ形成されたとき、遊技者に有利な特別価値を付与する。」
エ.「【0024】
・・・本発明に係る遊技機10は、ハンドル14の回転操作によって球を打ち出し、各種の入賞口への球の入賞を競うパチンコ機である。・・・」
オ.「【0026】
可変表示手段20の表示領域は、通常状態では縦3列、横3列のマトリクス状に区切られ、9個の図柄表示領域21?29が存在する状態になっているが、特殊リーチ状態を形成するとき、図1に示すように中央の図柄表示領域21が4つの小表示領域21a?21dに分割されるようになっている。
【0027】
中央の図柄表示領域21、その周囲の図柄表示領域22?29および4つの小表示領域21a?21dには、「0」?「9」のいずれかの数字が表示され、同一の数字を縦、横、斜めのライン上に揃える数字合わせゲームが図柄合わせゲームとして実行されるようになっている。
【0028】
・・・遊技盤面11に打ち出された球が特定入賞口12に入賞することを契機として、可変表示手段20上で数字合わせゲームが実行される。
【0029】
特定入賞口12のさらに下方には、特別価値発生手段30としての可変入賞口が設けられている。特別価値発生手段30の可変入賞口は、普段は閉じられているが、遊技者に特別価値を付与する際にその入賞口の開閉動作を繰り返す大口の入賞口である。該入賞口を開くことで球の入賞確率の高い状態が形成される。」
カ.「【0032】
・・・画面遊技制御手段50は、入賞信号41が入力された際に無作為抽選を実行する無作為抽選部51を有している。無作為抽選部51の抽選結果には、当たりと、外れと、あと1つ特定の図柄が揃うと当たりになるリーチ状態を経由して最終的に外れになるリーチ崩れの3種類が用意されている。
【0033】
リーチ表示モード選択部52は、リーチ状態を経由させて図柄合わせゲームの実行結果を表示する際に、そのリーチ状態を中央の図柄表示領域21を4つの小表示領域21a?21dに分割して表示する4分割モードとするか、中央の図柄表示領域21を分割しない通常の態様で表示する通常モードとするかのリーチ表示モードを選択する回路部分である。
・・・
【0036】
4分割図柄パターン記憶部55は、中央の図柄表示領域21を4つの小表示領域21a?21dに分割した場合に実行結果として表示する各種の図柄パターンを記憶したメモリ回路である。4分割図柄パターン記憶部55には、周囲の図柄表示領域22?29に表示する図柄と4つの小表示領域21a?21dに表示する図柄とを組にした4分割図柄パターンが、当たりとリーチ崩れの各場合についてそれぞれ複数種類記憶されている。
【0037】
停止図柄パターン選択部53は、無作為抽選部51の抽選結果とリーチ表示モード選択部52の選択結果に応じて、今回実行される図柄合わせゲームの実行結果として表示する図柄パターンを通常図柄パターン記憶部54および4分割図柄パターン記憶部55のいずれか一方から選択する回路部分である。
【0038】
すなわち、4分割モードが選択されているときは、抽選結果に応じた停止図柄を4分割図柄パターン記憶部55から選択し、通常モードが選択されているときは、抽選結果に応じた停止図柄を通常図柄パターン記憶部54から選択するようになっている。
【0039】
表示タイミング制御部56は、可変表示手段20に表示する図柄の確定順序を制御する回路部分である。たとえば、4分割モードでリーチ状態を表示する場合には、4つの小表示領域21a?21dへ図柄を表示した後、その周囲の図柄を確定する。ここでは、4つの小表示領域21a?21dに4つの図柄を1度に確定し、その後、当たり状態ができるだけ遅く出現するような順に周囲の図柄表示領域22?29の図柄を順次確定するように制御される。・・・」
キ.「【0042】
画面遊技制御手段50、無作為抽選部51、リーチ表示モード選択部52、停止図柄パターン選択部53、通常図柄パターン記憶部54、4分割図柄パターン記憶部55、表示タイミング制御部56、リーチ発生報知部57等は、遊技機10における各種制御の中枢的機能を果たすCPU(中央処理装置)と、ROM(リード・オンリ・メモリ)と、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)を主要部とする回路によって構成されている。」
ク.「【0044】
図3は、4分割モードで表示される特殊リーチの各種態様を表したものである。・・・
【0047】
図3(d)は、小表示領域21a、21bに同一の数字(ここでは「7」)が横に2つ並んで出現する図柄パターンであり、☆印で示した図柄表示領域22、26のいずれか一方に同一の数字「7」が出現すれば当たりになる場合である。」

ケ.「【0052】
リーチ表示モード選択部52は、今回行われる図柄合わせゲームの実行結果を4分割モードで表示するか否かの選択を行う(ステップS103)。・・・
【0053】
リーチ表示モード選択部52によりリーチ表示モードを選択した後、停止図柄パターン選択部53は、無作為抽選部51の行った無作為抽選の抽選結果と、リーチ表示モード選択部52の選択した表示モードとを基にして今回行われる図柄合わせゲームの実行結果となる図柄パターンを通常図柄パターン記憶部54、4分割図柄パターン記憶部55のいずれか一方から選択する。
・・・
【0056】
表示タイミング制御部56は、特定入賞口12へ球が入賞した時点から、可変表示手段20上のすべての図柄を図5(a)に示すような未確定状態になるように一定期間スクロール等させる。その後、抽選結果が当たり、あるいは準当たりの場合には、さきほど選択した図柄パターンのうち、4つの小表示領域21a?21dの部分の図柄を先に確定させて表示し(ステップS107)、図5(b)に示すような特殊リーチ状態を形成する。
【0057】
・・・さらに、周囲の図柄表示領域22?29の図柄を順次確定させて表示する(ステップS109)。表示タイミング制御部56は、図柄の確定順序を、当たり状態が発生するかどうかが早い段階で判明しないよう(通常は最後の図柄を表示したとき当たりか否かが確定するよう)な順に設定する。」

上記の記載(ア.?ケ.)及び図面によれば、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「所定の図柄合わせゲームとして、任意の図柄を表示することのできる縦3列横3列のマトリクス状に配列された図柄表示領域21?29を特定入賞口12へ球が入賞した時点からすべての図柄を未確定状態になるように一定期間スクロールして、中央の図柄表示領域21を分割しない場合は、各図柄表示領域21?29に1つの図柄を表示し、特殊リーチ状態を形成する場合は、マトリクスの中央の図柄表示領域21を縦横それぞれ2つに分割して4つの小表示領域21a?21dを形成してそれぞれ図柄を表示するものであって、中央の図柄表示領域21又は4つの小表示領域21a?21dとその周囲の図柄表示領域22?29に、「0」?「9」のいずれかの数字が表示されて上記各表示領域21?29,21a?21dの図柄を確定することにより、図柄合わせゲームが実行される可変表示手段20と、遊技盤面上に打ち出された球が特定入賞口12へ入賞したとき、所定の図柄合わせゲームを実行する画面遊技制御手段50とを備え、可変表示手段20に前記所定の図柄合わせゲームの実行結果として当たりを示す3つの図柄が縦、横、斜めの一定方向に並ぶ当たり状態が形成されたとき、遊技者に有利な特別価値の付与として、普段は閉じられている可変入賞口の開閉動作を繰り返すようにしたパチンコ機において、
所定の図柄合わせゲームの実行を制御する画面遊技制御手段50は、無作為抽選部51、リーチ表示モード選択部52、停止図柄パターン選択部53、通常図柄パターン記憶部54、4分割図柄パターン記憶部55を有し、無作為抽選部51は、当たり、外れ又はリーチ状態を経由して外れになるリーチ崩れの3種類の抽選を行う無作為抽選を実行し、リーチ状態を経由して図柄合わせゲームの実行結果を表示する際に、リーチ表示モード選択部52は、特殊リーチ状態を形成する4分割モードとするか中央の図柄表示領域21を分割しない通常の態様で表示する通常モードとするかのリーチ表示モードを選択した後、停止図柄パターン選択部53は、無作為抽選部51の行った無作為抽選の抽選結果と、リーチ表示モード選択部52の選択した表示モードとを基にして今回行われる図柄合わせゲームの実行結果となる図柄パターンを通常図柄パターン記憶部54、4分割図柄パターン記憶部55のいずれか一方から選択するものであって、前記可変表示手段20は、4分割モードで表示される特殊リーチ状態を形成する場合、図柄を未確定状態になるように一定期間スクロールしてから中央の図柄表示領域21を4つの小表示領域21a?21dに分割し、前記4つの小表示領域21a?21dに4つの図柄を1度に確定し、それらに当たりを示す3つの図柄の中の2つの図柄が縦、横、斜めのうち少なくも1つの方向に並ぶ状態を表示して、あと1つ図柄が揃うと当たり状態となるリーチ状態を成す図柄の組を少なくとも1つ表示する特殊リーチ状態を形成し、特殊リーチ状態の図柄パターンには、小表示領域21a、21bに同一の数字「7」が横に2つ並んで出現して、図柄表示領域22、26のいずれか一方に同一の数字「7」が出現すれば当たりになる図柄パターンが含まれるものであって、
図柄を未確定状態になるように一定期間スクロールさせてから図柄表示領域21?29に「0」?「9」のいずれかの数字を表示していく所定の図柄合わせゲームにあって、前記特殊リーチ状態を形成するときの図柄の確定順序は、4つの小表示領域21a?21dの部分の図柄を先に確定させて特殊リーチ状態を形成した後に前記中央の図柄表示領域21の周囲に配置された図柄表示領域22?29上の図柄を確定するように制御するとともに、
所定の図柄合わせゲームの実行結果が、特殊リーチ状態を経由して当たりとなるとき、4つの小表示領域21a?21dに分割された中央の図柄表示領域21に表示されたリーチ状態を成す図柄の組とその周囲の図柄表示領域22?29に表示された図柄とにより、3つの図柄として同一の数字が一定方向に並んで表示される場合、これを当たり状態とするようにしたパチンコ機。」(以下、「引用発明」という。)

[2]引用文献2に記載の技術
本願の出願日前に日本国内で頒布された刊行物である引用文献2(特開2000-350833号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
ア.「【0022】
・・・球が始動入賞口(60)へ入賞する等の始動条件の成立に基づいて、単独表示領域(31?36)に表示される図柄および複合表示領域(40)に表示される複合図柄をそれぞれ所定期間にわたって変動させた後、単独表示領域(31?36)にそれぞれ1つの図柄を複合表示領域(40)に1つの複合図柄をそれぞれ順次停止表示することを図柄合わせゲームとして実行する。」
イ.「【0034】
・・・パチンコ機である。
【0035】
・・・可変表示手段30は、任意の図柄を1つ表示し得る単独表示領域31?33を縦に3つ並べて配置した第1の縦列表示部30aと、単独表示領域34?36を縦に3つ並べて配置した第2の縦列表示部30bと、所定の複数個の図柄が予め組みになった複合図柄の表示される複合表示領域40とを備えている。これらは、第1、第2の縦列表示部30a、30bの中段に位置する単独表示領域32、35が複合表示領域40と横一列に並びかつ第1、第2の縦列表示部30a、30bの間に複合表示領域40が挟まれるように配置されている。」
ウ.「【0066】
・・・1つの数字図柄だけからなる複合図柄901と、2つの数字図柄が含まれる複合図柄902と、4つの図柄が含まれる複合図柄903の3種類が混在するように、多数の複数図柄が予め所定の順序で登録されている。そしてこれを巡回的に表示することで複合表示領域40上に複合図柄がスクロール表示されるようになっている。
【0067】
また第2の実施の形態では、複合表示領域40に停止表示された複合図柄に含まれる図柄の中の1つと単独表示領域31?36に停止表示された図柄とを組み合わせることで中段横ラインまたは斜めライン上に同一図柄が3つ揃う当選停止態様が形成されたとき、当該複合図柄に含まれている図柄の数に応じて遊技者に付与する特別価値の大きさを変更するようになっている。」
エ.「【0081】
・・・また第1、第2の実施の形態では、単独表示領域31?36に図柄を停止表示し終えてから、複合表示領域40に複合図柄を停止表示させたが、停止表示させる順序はこれに限定されるものではないが、複合図柄を最後に停止表示すれば、スリルと興奮を喚起するのにより効果的である。」

上記の記載(ア.?エ.)及び図面によれば、引用文献2には、以下の技術が記載されていると認められる。
「任意の図柄を1つ表示し得る単独表示領域31?33を縦に3つ並べて配置した第1の縦列表示部30aと、単独表示領域34?36を縦に3つ並べて配置した第2の縦列表示部30bと、1つの数字図柄だけからなる複合図柄901と、2つの数字図柄が含まれる複合図柄902と、4つの図柄が含まれる複合図柄903の3種類が混在する複合図柄901?903の表示される複合表示領域40とを備えた可変表示手段30において、複合表示領域40に停止表示された複合図柄に含まれる図柄の中の1つと単独表示領域31?36に停止表示された図柄とを組み合わせることで中段横ラインまたは斜めライン上に同一図柄が3つ揃う当選停止態様が形成されたとき、当該複合図柄に含まれている図柄の数に応じて遊技者に付与する特別価値の大きさを変更するものであって、図柄合わせゲームとして、単独表示領域(31?36)に表示される図柄および複合表示領域(40)に表示される複合図柄をそれぞれ所定期間にわたって変動させた後、単独表示領域(31?36)にそれぞれ1つの図柄を、複合表示領域(40)に1つの複合図柄901?903をそれぞれ順次停止表示するものであって、複合表示領域40にスクロール表示された複合図柄901?903を、最後を含む任意の順序で停止表示させるようにした、パチンコ機。」(以下、「引用文献2に記載の技術」という。)

[3]対比
引用発明は、上記[1]に示した如くのものである。
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「「0」?「9」のいずれかの数字が表示されて」は本願補正発明の「夫々複数の図柄を有する」に相当し、同様に、「図柄を未確定状態になるように一定期間スクロール」は「変動表示」に、「所定の図柄合わせゲーム」の一環として「中央の図柄表示領域21又は4つの小表示領域21a?21dとその周囲の図柄表示領域22?29に、「0」?「9」のいずれかの数字が表示されて上記各表示領域21?29,21a?21dの図柄を確定すること」は「図柄組み合わせ列を確定表示する」に、「可変表示手段20」は「図柄表示装置」に、「遊技盤面上に打ち出された球が特定入賞口12へ入賞したとき」は「図柄始動条件の成立に起因して」に、「画面遊技制御手段50」は「図柄制御手段」に、「所定の図柄合わせゲームの実行結果として当たりを示す3つの図柄が一定方向に並ぶ当たり状態が形成されたとき」は「図柄生成行程により確定表示された図柄組み合わせ列が所定の当り図柄態様である場合」に、「遊技者に有利な特別価値の付与として、普段は閉じられている可変入賞口の開閉動作を繰り返す」は「遊技者に所定の利得を供与することとなる特別遊技作動を実行する」に、「パチンコ機」は「パチンコ遊技機」に、それぞれ相当しており、さらに引用発明について以下のことがいえる。
(i)引用発明の、「縦3列横3列」の「図柄表示領域21?29」は、「任意の図柄を表示すること」ができ、「変動表示(図柄を未確定状態になるように一定期間スクロール)」してから、「中央の図柄表示領域21を分割しない場合は、各図柄表示領域21?29に1つの図柄を表示し、特殊リーチ状態を形成する場合は、マトリクスの中央の図柄表示領域21を縦横それぞれ2つに分割して4つの小表示領域21a?21dを形成してそれぞれ図柄を表示するものであって、中央の図柄表示領域21又は4つの小表示領域21a?21dとその周囲の図柄表示領域22?29に、「0」?「9」のいずれかの数字が表示されて上記各表示領域21?29,21a?21dの図柄を確定する」ものであるから、最終的には、「各図柄表示領域21?29」に1つの図柄又は分割された4つの図柄のいずれかが確定するものである。したがって、引用発明の「図柄表示領域21?29」は、図柄が確定するまでの過程に「変動表示(図柄を未確定状態になるように一定期間スクロール)」を行うものであるから、引用発明は、本願補正発明を特定する「図柄列」に相当する構成を備えているといえる。
(ii)引用発明は、「可変表示手段20」上にて、「所定の図柄合わせゲーム」として、「当たりを示す3つの図柄が縦、横、斜めの一定方向に並ぶ」と「当たり状態が形成され」るゲームを行うものであるから、図柄組み合わせ列を確定表示するという限度で、本願補正発明の「横一列の図柄組み合わせ列を確定表示する」に共通する。
(iii)引用発明は、「所定の図柄合わせゲーム」として、「図柄を未確定状態になるように一定期間スクロール」して、「各表示領域21?29,21a?21dの図柄を確定」し、「当たりを示す3つの図柄が縦、横、斜めの一定方向に並ぶ」と「当たり状態が形成され」る「図柄合わせゲーム」が実行される過程を含むことから、引用発明の「所定の図柄合わせゲーム」は「変動開始から図柄確定に至る一連の図柄生成行程」に相当し、同様に、「所定の図柄合わせゲームの実行結果」は「図柄生成行程により確定表示された図柄組み合わせ列の態様」に相当する。
また、引用発明の「所定の図柄合わせゲーム」は、「変動表示(図柄を未確定状態になるように一定期間スクロール)」した後、「中央の図柄表示領域21又は4つの小表示領域21a?21dとその周囲の図柄表示領域22?29」の「図柄を確定する」ものであるから、引用発明は、本願補正発明を特定する「図柄変動開始後、各図柄列を順次停止していく図柄生成行程」に相当する構成を備えているといえる。
(iv)引用発明は、「特殊リーチ状態を形成する場合」、「中央の図柄表示領域21」を分割した「4つの小表示領域21a?21dに4つの図柄を1度に確定し、それらに当たりを示す3つの図柄の中の2つの図柄が縦、横、斜めのうち少なくも1つの方向に並ぶ状態を表示して、あと1つ図柄が揃うと当たり状態となるリーチ状態を成す図柄の組を少なくとも1つ表示する特殊リーチ状態を形成するもの」であるから、「あと1つ図柄が揃うと当たり状態となるリーチ状態を成す図柄の組を少なくとも1つ表示する特殊リーチ状態」は、本願補正発明の「二つの図柄を並列表示したものと同じ価値を持つ」に相当し、前記「中央の図柄表示領域21」を分割した「4つの小表示領域21a?21d」に表示された「当たりを示す3つの図柄の中の2つの図柄が縦、横、斜めのうち少なくも1つの方向に並ぶ状態」の「図柄の組」は本願補正発明を特定する「等価並列図柄」に相当するといえる。
また、引用発明は、上記(i)に示したとおり、最終的には、「各図柄表示領域21?29」に1つの図柄又は分割された4つの図柄のいずれかが確定するものである。そして、引用発明は、特殊リーチ状態を形成する場合は、「中央の図柄表示領域21」に「等価並列図柄(当たりを示す3つの図柄の中の2つの図柄が縦、横、斜めのうち少なくも1つの方向に並ぶ状態の図柄の組)を有する」こととなるから、「図柄表示装置(可変表示手段20)で変動表示される図柄列」が、二つの図柄を並列表示したものと同じ価値を持つ等価並列図柄で確定表示する可能性があるという限度で、本願補正発明の「前記図柄表示装置で変動表示される図柄列が、二つの図柄を並列表示したものと同じ価値を持つ等価並列図柄を有する」に共通する。
(v)引用発明は、「図柄生成行程により確定表示された図柄組み合わせ列の態様(所定の図柄合わせゲームの実行結果)」が、特殊リーチ状態を経由して当たりとなるとき、「等価並列図柄(4つの小表示領域21a?21dに表示された当たりを示す3つの図柄の中の2つの図柄が縦、横、斜めのうち少なくも1つの方向に並ぶ状態の図柄の組)」と「周囲の図柄表示領域22?29に表示された図柄とにより、3つの図柄として同一の数字が一定方向に並んで表示される場合、これを当たり状態とする」ものであるから、引用発明は、本願補正発明を特定する「等価並列図柄を構成する図柄を含む同じ図柄が三つ連続して並んでいる場合に、これを当り図柄態様とする」の事項に相当する構成を備えているといえる。

[4]一致点・相違点
上記[3]に記載した事項より、本願補正発明と引用発明とは以下の点で一致し、また、相違していると認められる。

一致点;
夫々複数の図柄を有する、図柄列を変動表示して、図柄組み合わせ列を確定表示する図柄表示装置と、図柄始動条件の成立に起因して変動開始から図柄確定に至る一連の図柄生成行程を実行する図柄制御手段とを備え、図柄表示装置に図柄生成行程により確定表示された図柄組み合わせ列が所定の当り図柄態様である場合に、遊技者に所定の利得を供与することとなる特別遊技作動を実行するようにしたパチンコ遊技機において、
前記図柄表示装置で変動表示される図柄列が、二つの図柄を並列表示したものと同じ価値を持つ等価並列図柄で確定表示する可能性があり、
図柄生成行程により確定表示された図柄組み合わせ列の態様が、等価並列図柄を構成する図柄を含む同じ図柄が三つ連続して並んでいる場合に、これを当り図柄態様とするようにした、パチンコ遊技機、である点。

相違点;
(A)図柄組み合わせ列を確定表示する図柄表示装置として、本願補正発明は「三つ」の「図柄列」により「横一列」の図柄組み合わせ列を用いるのに対し、引用発明は、縦3列横3列の「図柄列」を「変動表示(図柄を未確定状態になるように一定期間スクロール)」するものであり、横一列のみならず、横一列を含んだ縦、横、斜めの方向の図柄組み合わせ列を用いている点。
(B)等価並列図柄の表示に関し、本願補正発明は、「図柄表示装置で変動表示される図柄列」が「等価並列図柄」を有するのに対し、引用発明は、特殊リーチ状態を形成する場合に、「中央の図柄表示領域21」を「縦横それぞれ2つに分割して4つの小表示領域21a?21d」とすることにより、「等価並列図柄(当たりを示す3つの図柄の中の2つの図柄が縦、横、斜めのうち少なくも1つの方向に並ぶ状態の図柄の組)」を確定表示する可能性があるものの、「変動表示される図柄列」の図柄として最初から「等価並列図柄」を含むものではない点。
(C)等価並列図柄の停止順序の制御について、本願補正発明は、「最後に図柄停止する図柄列が、等価並列図柄を有する図柄列であるように制御する」のに対し、引用発明は、特殊リーチ状態を形成する場合、「等価並列図柄(当たりを示す3つの図柄の中の2つの図柄が縦、横、斜めのうち少なくも1つの方向に並ぶ状態の図柄の組)を有する」中央の図柄表示領域21の部分の図柄を先に確定させて特殊リーチ状態を形成した後に前記中央の図柄表示領域の周囲に配置された図柄表示領域22?29上の図柄を確定するように制御するものであり、停止順序の制御が異なる点。

[5]判断
(1)相違点(A)について。
パチンコ機の図柄表示装置に関しては、複数の図柄が所定の順序に並べられた三つの図柄列を変動表示させ、横一列の図柄組合せ列を確定表示することは、従来周知の技術であり(以下、「周知技術A」という。)、例えば、特開平11-262561号公報〔【請求項1】、段落【0025】、【0026】、【0075】の記載、図3、図15、図16等参照。〕、特開2001-70549号公報〔段落【0046】、【0051】の記載、図2、図3等参照。〕、特許第2528206号公報〔第4欄第22-27行、第5欄第23-27行目の記載、第3図等参照。〕に記載されるとおりである。
これらの技術を参酌すると、引用発明の「図柄表示装置(可変表示手段20)」が、「縦3列横3列」の「図柄表示領域21?29」の「変動表示(図柄を未確定状態になるように一定期間スクロール)」を行うことにより、横一列を含んだ縦、横、斜めの方向の図柄組み合わせ列を用いていることに替え、上記周知技術Aの如く、「三つ」の「図柄列」を変動表示させ、「横一列」の図柄組合せ列を確定表示する構成に置換して、「夫々複数の図柄を有する三つの図柄列を変動表示して、横一列の図柄組み合わせ列を確定表示する図柄表示装置」の構成となすことは単なる周知技術の採用であって、当業者が容易に想到し得ることである。
以上より、上記相違点(A)に係る本願補正発明の構成とすることは、引用発明及び周知技術に基づいて当業者であれば想到容易である。

(2)相違点(B)について。
上記(1)で検討したとおり、引用発明の「図柄表示装置(可変表示手段20)」を、「夫々複数の図柄を有する三つの図柄列を変動表示して、横一列の図柄組み合わせ列を確定表示する」構成とすることは、当業者が想到容易であって、これを前提とすると、引用発明の「中央の図柄表示領域21」が「等価並列図柄(当たりを示す3つの図柄の中の2つの図柄が縦、横、斜めのうち少なくも1つの方向に並ぶ状態の図柄の組)」を確定表示するに際し、「横一列」のみ成立させるためには、「図柄組み合わせ列」が、縦及び斜めの方向に成立させる必要が無くなるので、「縦横それぞれ2つに分割して4つの小表示領域21a?21d」とすることに替え、「横」に「2つに分割して」2つの「小表示領域」が存在すれば良いこととなり、「等価並列図柄」として、「当たりを示す3つの図柄の中の2つの図柄が横方向に並ぶ状態の図柄の組」となる場合のみを考えればよいこととなる。
ここで、引用発明は、「4分割モードで表示される特殊リーチ状態を形成する場合」に、「中央の図柄表示領域21」に、「停止図柄パターン選択部53は、無作為抽選部51の行った無作為抽選の抽選結果と、リーチ表示モード選択部52の選択した表示モードとを基にして今回行われる図柄合わせゲームの実行結果となる図柄パターン」を「4分割図柄パターン記憶部55」から選択して、「等価並列図柄」を確定表示させるものである。
しかし、パチンコ遊技機の図柄表示装置の分野では、複数の図柄を変動表示させる図柄列において、各図柄列で変動表示する図柄の中から確定表示される図柄を選択することは従来周知の技術であって、しかも、例えば、引用発明の「同一の数字「7」が横に2つ並んで出現」している図柄パターンのような「等価並列図柄(当たりを示す3つの図柄の中の2つの図柄が横方向に並ぶ状態の図柄の組)」を、「図柄列」で変動表示される図柄の1つとして採用することは、図柄内容の取り決めであるから、引用発明のように、「等価並列図柄(当たりを示す3つの図柄の中の2つの図柄が横方向に並ぶ状態の図柄の組)」を確定表示するに際し、「無作為抽選部51の行った無作為抽選の抽選結果と、リーチ表示モード選択部52の選択した表示モードとを基」に「停止図柄パターン選択部53」から図柄を選択することにより行うとしても、あるいは、上記の如く、各図柄列で変動表示する図柄の中から確定表示される図柄を選択することにより行うとしても、そのいずれを採用するとしても設計上、当業者が適宜選択すれば良い事項にすぎないことである。
したがって、上記(1)で説示したとおり、引用発明の「図柄表示装置(可変表示手段20)」を「夫々複数の図柄を有する三つの図柄列を変動表示して、横一列の図柄組み合わせ列を確定表示する」構成とすることは、当業者が想到容易であって、加えて、その「変動表示」する「図柄列」の「夫々複数の図柄」の中に、「等価並列図柄(当たりを示す3つの図柄の中の2つの図柄が横方向に並ぶ状態の図柄の組)」を有するものとする設計変更を加え、上記相違点(B)に係る本願補正発明の構成とすることは、引用発明、周知技術並びに設計変更に基づいて当業者であれば想到容易である。

(3)相違点(C)について。
引用文献2に記載の技術は、上記[2]に示した如くのものである。
引用文献2記載の技術は、「単独表示領域(31?36)に表示される図柄および複合表示領域(40)に表示される複合図柄をそれぞれ所定期間にわたって変動させ」るものであるから、本願補正発明を特定する「図柄列」に相当する構成を備えるといえる。また、引用文献2記載の技術の「パチンコ機」は本願補正発明の「パチンコ遊技機」に相当し、同様に、「図柄合わせゲームとして、単独表示領域(31?36)に表示される図柄および複合表示領域(40)に表示される複合図柄をそれぞれ所定期間にわたって変動させた後、単独表示領域(31?36)にそれぞれ1つの図柄を複合表示領域(40)に1つの複合図柄901?903をそれぞれ順次停止表示する」は「図柄変動開始後、各図柄列を順次停止していく図柄生成行程」に相当する。
引用文献2に記載の技術の「複合図柄901?903」は、「1つの数字図柄だけからなる複合図柄901と、2つの数字図柄が含まれる複合図柄902と、4つの図柄が含まれる複合図柄903の3種類が混在する」ものであるから、前記「複合図柄901?903」は、所定の複数個の図柄を並列表示した図柄を含むという限度で本願補正発明の「等価並列図柄」に共通する。
そして、そのような複合図柄901?903が表示される複合表示領域40を停止表示させる順序に関し、引用文献2に記載の技術は、「最後を含む任意の順序」に制御することを許容するものであって、引用文献2には、「停止表示させる順序はこれに限定されるものではないが、複合図柄を最後に停止表示すれば、スリルと興奮を喚起するのにより効果的である。」(上記摘示エ.)と記載されることから、複合表示領域40をどの順序で停止表示させても、それなりの演出効果は期待できるが、最後に停止表示させると特に高い演出効果が得られることが示唆されているといえる。
ここで、前記[5](1)に記載した周知技術Aの如く、パチンコ機の図柄表示装置に関しては、複数の図柄が所定の順序に並べられた三つの図柄列を変動表示させ、横一列の図柄組合せ列を確定表示することは、従来周知の技術であるから、引用文献2に記載の技術の「可変表示手段30」に前記周知技術Aを採用すると、「第1の縦列表示部30a」及び「第2の縦列表示部30b」を、それぞれ1つの「単独表示領域」を配置する構成となり、それぞれ1つの「単独表示領域」を配置した「第1の縦列表示部30a」及び「第2の縦列表示部30b」と、「複合表示領域40に停止表示された複合図柄に含まれる図柄の中の1つ」とにより、「当選停止態様」は、「横ライン」の「上に同一図柄が3つ揃う」状態となる。そして、このように、横一列の図柄組合せ列を確定表示する場合であっても、引用文献2に記載の技術は、「当選停止態様が形成されたとき、当該複合図柄に含まれている図柄の数に応じて遊技者に付与する特別価値の大きさを変更する」ものであるから、複合図柄901?903が表示される複合表示領域40を停止表示させる順序を、「最後を含む任意の順序」のいずれの順番としても、横ライン上に同一図柄が3つ揃うと「当選停止態様が形成され」、その時の「当該複合図柄に含まれている図柄の数に応じて遊技者に付与する特別価値の大きさを変更する」という2つの要素の組合せにより、図柄合わせゲームが矛盾無く成立するものといえる。
したがって、これらの技術を参酌すると、引用文献2には、「図柄変動開始後、各図柄列を順次停止していく図柄生成行程にあって、最後を含む任意の順序での図柄停止を許容するが、特に高い演出効果を得るためには、最後に図柄停止する図柄列が、所定の複数個の図柄を並列表示した図柄を含む図柄列であるように制御する、パチンコ遊技機。」が開示されているといえる。
そして、引用発明及び引用文献2に記載の技術はいずれも、所定の複数個の図柄を並列表示した図柄を含む図柄列を有するパチンコ遊技機である点で共通すると共に、いずれも、図柄表示装置を、前記周知技術Aの如く、複数の図柄が所定の順序に並べられた三つの図柄列を変動表示させ、横一列の図柄組合せ列を確定表示するものに置換することを特に阻害するものではないから、上記(2)で検討した「等価並列図柄(当たりを示す3つの図柄の中の2つの図柄が横方向に並ぶ状態の図柄の組)」を有する「図柄列」を、引用文献2に開示の如く、特に高い演出効果を得るために、最後に図柄停止する図柄列であるように制御することは、当業者が想到容易であるといえる。
したがって、上記相違点(C)に係る本願補正発明の構成とすることは、引用発明、引用文献2に記載の技術、周知技術並びに設計変更に基づいて当業者であれば想到容易である。

[6]むすび
相違点(A)?(C)に係る本願補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願補正発明は引用発明、引用文献2に記載の技術、周知技術並びに設計変更に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

【4】補正の却下の決定のむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
【1】本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成17年3月9日付の手続補正が上記のとおり却下されているので、平成16年11月15日付の手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
三つの図柄を有する図柄列を変動表示する図柄表示装置と、図柄始動条件の成立に起因して変動開始から図柄確定に至る一連の図柄生成行程を実行する図柄制御手段とを備え、図柄表示装置に図柄生成行程により確定表示された図柄の組合せが所定の当り図柄態様である場合に、遊技者に所定の利得を供与することとなる特別遊技作動を実行するようにしたパチンコ遊技機において、
前記図柄表示装置で変動表示される図柄列が、二つの図柄を並列表示したものと同じ価値を持つ等価並列図柄を有するものであり、
図柄生成行程により確定表示された図柄の組合せが、等価並列図柄を構成する図柄を含む同じ図柄が三つ連続して並んだ場合に、当り図柄態様となる場合があることを特徴とするパチンコ遊技機。」(以下、「本願発明」という。)

【2】特許法第29条第2項の適用
[1]引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内で頒布された刊行物である引用文献1(特開平10-179864号公報)の記載事項及び引用発明は、前記2.【3】[1]に記載したとおりである。

[2]対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、請求項1の削除及び請求項3の繰り上げに伴う「図柄変動開始後、各図柄列を順次停止していく図柄生成行程にあって、最後に図柄停止する図柄列が、等価並列図柄を有する図柄列であるように制御するとともに」という限定を省くと共に、本願補正発明の「図柄列」が有する「図柄」について、「夫々複数の図柄」であると特定した限定を省き、同様に「図柄組み合わせ列」又は「図柄組み合わせ列の態様」から「列」又は「列の態様」であるという特定を省くと共に「図柄の組合せ」と記載を改め、本願補正発明の「図柄表示装置」について、「横一列の図柄組み合わせ列を確定表示する」と特定した限定を省き、さらに、「等価並列図柄を構成する図柄を含む同じ図柄が三つ連続して並んだ場合に、これを当り図柄態様とするようにした」を「等価並列図柄を構成する図柄を含む同じ図柄が三つ連続して並んだ場合に、当り図柄態様となる場合がある」と、より広義な概念で特定するものである。

ここで、本願補正発明から、本件補正による請求項1の削除及び請求項3の繰り上げに伴う「図柄変動開始後、各図柄列を順次停止していく図柄生成行程にあって、最後に図柄停止する図柄列が、等価並列図柄を有する図柄列であるように制御するとともに」という限定を省いたものと引用発明とを対比すると、前記2.【3】[4]に記載した相違点(C)が無くなり、相違点(A)及び(B)の点で相違することとなるが、その相違点(A)及び(B)についての判断は、前記2.【3】[5](1)及び(2)で検討したとおり、引用発明、周知技術並びに設計変更に基づいて当業者であれば想到容易である。
そして、本願補正発明から、本件補正による請求項1の削除及び請求項3の繰り上げに伴う上記限定を省いたものは、依然として、本願発明の構成要素を全て含み、さらに、他の構成要件を付加したものに相当することから、本願発明も同様に、引用発明、周知技術並びに設計変更に基づいて当業者であれば想到容易である。

[3]むすび
したがって、本願発明は引用発明、周知技術並びに設計変更に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、本願の他の請求項について論じるまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-12-26 
結審通知日 2008-01-07 
審決日 2008-01-22 
出願番号 特願2001-152295(P2001-152295)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗大浜 康夫  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 ▲吉▼川 康史
川島 陵司
発明の名称 パチンコ遊技機  
代理人 松浦 喜多男  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ