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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09B
管理番号 1173905
審判番号 不服2005-17558  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-14 
確定日 2008-03-05 
事件の表示 特願2004-240748「文字検索プログラム及び電子暗記カードのデータを保存した記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月 2日出願公開、特開2006- 58632〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年8月20日の出願であって、平成17年8月16日付けで拒絶の査定がなされたため、これを不服として同年9月14日付けで本件審判請求がなされるとともに、同年10月5日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成19年8月28日付けで平成17年10月5日付け手続補正についての補正の却下の決定をするとともに、同日付で拒絶の理由を通知したところ、請求人は同年10月22日付けで意見書及び明細書についての手続補正書を提出した。

第2 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明は、平成19年10月22日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
コンピュータ上に電子暗記カードのデータが存在しているか否か確認し、既に存在していたら前記電子暗記カードのデータを開く新規確認、
前記新規確認で電子暗記カードのデータが存在していなかった場合に電子暗記カードのデータを作成し、前記電子暗記カードのデータを開く文書作成、
前記電子暗記カードに追加するデータがグループの先頭であるか否か確認するグループ確認、
前記グループ確認でグループの先頭であった場合にグループを示す文字を入力するグループ作成、
前記グループ作成後にグループの先頭にストップマーカーを設定するストップマーカー設定、
前記電子暗記カードに問題を追加する問題作成、
前記問題作成後に問題の文末に問題マーカーを設定する問題マーカー設定、
前記問題に重要度の段階を設ける重要問題マーカー設定、
前記問題の次に問題に対する解答を追加する解答作成、
前記解答作成後に解答の文末に解答マーカーを設定する解答マーカー設定、
前記問題と解答の間にヒントを追加するヒント作成、
前記ヒント作成後にヒントの文末にヒントマーカーを設定するヒントマーカー設定、
及び前記問題及び解答の追加が完了したか否か確認し、残っていれば前記グループ確認から繰り返し、完了したら前記電子暗記カードのデータを記憶装置に保存する未入力有無確認からなる作成手段と、
前記電子暗記カードのデータを記憶装置から読み込み、問題マーカー又は重要問題マーカーを連続的に検索して問題を画面に次々に表示する問題マーカー検索、
前記問題マーカー検索に引き続いて同じく解答マーカーを検索して問題に対する解答を画面に表示する解答マーカー検索、
前記解答マーカー検索後に間違えた問題に対して誤答マーカーを設定する誤答マーカー設定、
前記解答マーカー検索後にグループ内で未出題の問題が存在するか否か確認し、残っていれば前記問題マーカー検索から繰り返す残問題有無確認、
前記残問題有無確認で学習が完了したら、完了した既習部分に対し日付マーカーを設定し、後に日付マーカーを検索して既習部分を復習できるようにする日付マーカー設定、
次回に復習を効率的に行うために前記誤答マーカー設定で設定した誤答マーカーを検索し、間違えた問題を画面に表示する誤答マーカー検索、
前記誤答マーカー検索後に正答した問題に対し誤答マーカーを解除する誤答マーカー解除、
及び前記問題マーカー検索から残問題有無確認までの繰り返しの途中でしおりマーカーを設定して中断し、次回中断した所から再開できるように電子暗記カードのデータを記憶装置に保存するしおりマーカー設定からなる運用手段と
からなることを特徴とする文字検索プログラム及び電子暗記カードのデータを保存した記録媒体。

平成19年8月29日付けで通知した当審拒絶理由通知において、
「本願請求項1は「・・・とからなることを特徴とする文字検索装置及び電子暗記カードを保存した記録媒体。」であると記載されているが、この記載では、本願請求項1に係る発明がどのようなものであるのかが特定できない。」
と指摘して、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない(記載不備)との拒絶理由を指摘したところ、請求人は、特許請求の範囲を上記のように補正するとともに、平成19年10月22日付け意見書において、
「合議体で認定したように、本願発明は、コンピュータを用いて作成手段と運用手段を実現させるための文字検索プログラムと、そのプログラムが処理する電子暗記カードのデータを、記録媒体に保存したものでありますので、発明の名称を「文字検索プログラム及び電子暗記カードのデータを保存した記録媒体」と補正致しました。
これにより、本願請求項1に記載された作成手段及び運用手段がどのような事項を示しているか特定でき、明確になったものと確認致します。」(第11頁第17?22行)
との主張をしている。
上記補正により、請求項1の末尾の記載を「文字検索プログラム及び電子暗記カードのデータを保存した記録媒体」としたことにより、「記録媒体」に保存される対象が「文字検索プログラム」と「電子暗記カードのデータ」であることは明確になったと解される。
しかしながら、「プログラム」とは「コンピューターに対して、どのような手順で仕事をすべきかを、機械が解読できるような特別の言語などで指示するもの。[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]」であって、それ自体が特定の「手段」となるものではないから、本願請求項1の「・・・作成手段と、・・・運用手段とからなることを特徴とする文字検索プログラム」という、「文字検索プログラム」自体が「作成手段」と「運用手段」とを備えているかのような記載では、各「手段」と「プログラム」との関係が技術的に不明確であって、請求項1に記載された発明を明確に把握できるとはいえない。
ただし、本願請求項1には「コンピュータ上に電子暗記カードのデータが存在しているか否か確認し・・・」との記載があり、「コンピュータ」を用いることが把握されることから、本願請求項1の「文字検索プログラム」は、記載された「コンピュータ」を「作成手段」、「運用手段」として機能させるためのプログラムであると解釈することができ、そのように解釈すれば、本願請求項1に記載された発明をひとまずは理解することができる。
そこで、本願請求項1に係る発明を下記のものと認定し、当審で通知した拒絶理由のうち、記載不備(特許法第36条第6項第2号規定の要件)については問わないこととして、残る拒絶理由について、以下で判断する。

「コンピュータを、
コンピュータ上に電子暗記カードのデータが存在しているか否か確認し、既に存在していたら前記電子暗記カードのデータを開く新規確認、
前記新規確認で電子暗記カードのデータが存在していなかった場合に電子暗記カードのデータを作成し、前記電子暗記カードのデータを開く文書作成、
前記電子暗記カードに追加するデータがグループの先頭であるか否か確認するグループ確認、
前記グループ確認でグループの先頭であった場合にグループを示す文字を入力するグループ作成、
前記グループ作成後にグループの先頭にストップマーカーを設定するストップマーカー設定、
前記電子暗記カードに問題を追加する問題作成、
前記問題作成後に問題の文末に問題マーカーを設定する問題マーカー設定、
前記問題に重要度の段階を設ける重要問題マーカー設定、
前記問題の次に問題に対する解答を追加する解答作成、
前記解答作成後に解答の文末に解答マーカーを設定する解答マーカー設定、
前記問題と解答の間にヒントを追加するヒント作成、
前記ヒント作成後にヒントの文末にヒントマーカーを設定するヒントマーカー設定、
及び前記問題及び解答の追加が完了したか否か確認し、残っていれば前記グループ確認から繰り返し、完了したら前記電子暗記カードのデータを記憶装置に保存する未入力有無確認からなる作成手段、
前記電子暗記カードのデータを記憶装置から読み込み、問題マーカー又は重要問題マーカーを連続的に検索して問題を画面に次々に表示する問題マーカー検索、
前記問題マーカー検索に引き続いて同じく解答マーカーを検索して問題に対する解答を画面に表示する解答マーカー検索、
前記解答マーカー検索後に間違えた問題に対して誤答マーカーを設定する誤答マーカー設定、
前記解答マーカー検索後にグループ内で未出題の問題が存在するか否か確認し、残っていれば前記問題マーカー検索から繰り返す残問題有無確認、
前記残問題有無確認で学習が完了したら、完了した既習部分に対し日付マーカーを設定し、後に日付マーカーを検索して既習部分を復習できるようにする日付マーカー設定、
次回に復習を効率的に行うために前記誤答マーカー設定で設定した誤答マーカーを検索し、間違えた問題を画面に表示する誤答マーカー検索、
前記誤答マーカー検索後に正答した問題に対し誤答マーカーを解除する誤答マーカー解除、
及び前記問題マーカー検索から残問題有無確認までの繰り返しの途中でしおりマーカーを設定して中断し、次回中断した所から再開できるように電子暗記カードのデータを記憶装置に保存するしおりマーカー設定からなる運用手段
として機能させるための文字検索プログラム及び電子暗記カードのデータを保存した記録媒体。」(以下、「本願発明」という。)

第3 本件審判請求についての当審の判断
A.引用例
A-1.引用例1
当審の拒絶の理由に引用された特開平9-62175号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

(1)【特許請求の範囲】
「【請求項1】 複数の文字からなる文字列を入力するための第1の文字入力手段と、
この第1の文字入力手段によって入力された文字列のうち予め定められた範囲の文字を隠蔽して表示する隠蔽表示手段と、
この隠蔽表示手段によって隠蔽されている文字に対応する文字を入力するための第2の文字入力手段と、
この第2の文字入力手段によって入力された文字と前記隠蔽されている文字とを比較して、その比較結果を報知する報知手段と、
を具備したことを特徴とする文書処理装置。
・・・
【請求項3】 前記第1の文字入力手段により入力される文字は、予め定められた第1及び第2の識別データを含み、前記隠蔽表示手段は、前記第1及び第2の識別データ間の文字を隠蔽して表示することを特徴とする請求項1記載の文書処理装置。」

(2)【0001】
「【発明の属する技術分野】
本発明はワードプロセッサ等の文書処理装置に関するものである。」

(3)【0005】
「本発明の文書処理装置はこのような課題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、使用者が容易に暗記学習を行うことができる文書処理装置を提供することにある。」

(4)【0014】?【0016】
「【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は本発明が適用されたワードプロセッサ装置の外観図であり、図2はこのワードプロセッサ装置の回路ブロック図である。
・・・
図2に示すようにワードプロセッサ装置は、CPU15に対して、ROM16、RAM17、プリンター部12、キーボード部13、さらに表示駆動回路14を介してLCD表示部11が接続された構成となっている。
・・・
CPU15はROM16に記憶されているプログラムの内容に基づいて上記した各部の制御を行うものであり、例えばキーボード部13から入力された文字情報を一旦、RAM17に格納するとともに、必要に応じて表示駆動回路14に表示データを転送してLCD表示部11にて文字を表示する。」

(5)【0017】?【0018】
「以下に本実施形態の動作を図3及び図4のフローチャートに基づいて説明する。この実施形態は入力した文字または文章(歌詞や英文、通常の文章等)を部分的に隠蔽処理して表示し、この表示画面を参照して使用者が暗記学習するものである。
・・・
まず、隠蔽処理が設定された後、通常のワードプロセッサの操作と同じ要領で暗記したい文字を含む文字列を、ステップS1において、キーボード部13を介して順に入力していくと、入力された文字は順次RAM17に記憶される(ステップS2)。ここでこのときの入力フォーマットに関して述べると、文章を暗記したい場合は特別なフォーマットの指定なしで暗記したい文章を通常の文章作成時と同様に入力するが、単語を暗記する場合は図5に示すようなフォーマットで文字を入力するものとする。すなわち、出題文字列“踏襲”を初めに入力した後、第1の識別データであるカンマデータC(、)を入力しそれで区切り、次に隠蔽すべき文字列“とうしゅう”を入力した後で、第2の識別データである改行データPを入力する。以下、“感慨”、“鯔背”、“罵倒”、“矛盾”についても同様にして入力する。」

(6)【0019】?【0020】
「次にステップS3で暗記モードの設定を行う。このモードは使用者がキーボード部13中の暗記キー13fを押し下げすることによって設定される。暗記モードが設定された後、LCD表示部11には図6のような表示がなされるので、使用者はこの表示を見ながらキーボード部13中のカーソルキー13aを用いて“文章の暗記”と、“単語の暗記”のうちいずれかを選択する(ステップS4)。ここで、“文章の暗記”が選択された場合は予め定められた文字数の文字を隠蔽することによって文章用文字に対する隠蔽処理を行なう(ステップS5)。すなわち、ステップS1で図7(A)に示すような文章が入力されたとすると、各行の文章の頭の文字(スペースも含む)から4文字分カウントし、それ以後の5つの文字を予め定められた文字数の文字として隠蔽する。この隠蔽はROM16内に予め記憶されている隠蔽用の米記号rを読み出し、その米記号を文章用の5つの文字の代わりに表示することにより行なう。このようにして各行毎の文字列に隠蔽処理を施す。この場合、隠蔽された各行毎の米記号rの中央部には、その先頭行から順次番号の「01」乃至「n」を振るものとする。これによって、図7(B)に示すような表示となる。ここでは各行の初めのスペースも1文字としてカウントし、かつ各行の初めについては4文字に満たなくともカンマデータc(、)がある場合はそこで出題文字列の終わりとみなし、カンマデータc(、)の直後の文字列に対する隠蔽処理を行う。また、4文字数えて5文字目の先頭がカンマデータc(、)等の句読点の場合は1文字カウントを後ろにずらすものとする。
・・・
また、各行の最後が5文字に満たない場合は、終わりの文字数だけ隠蔽し、次行にはまたがらないようにする。一方、ステップS4において単語の暗記が選択された場合は第1及び第2の2つの識別データ間の文字を隠蔽することによって単語用文字に対する隠蔽処理を行なう(ステップS6)。すなわち、ステップS1で図8(A)に示すような単語が入力されたとすると、入力された出題文字列“踏襲”の直後の、第1及び第2の識別データであるカンマデータc(、)と改行データpとの間の文字列“とうしゅう”を隠蔽処理する。同様にして、“感慨”、“鯔背”、“罵倒”、“矛盾”に対応する読み、“かんがい”、“いなせ”、“ばとう”、“むじゅん”についても同様に隠蔽処理する。これによって図8(B)に示すような表示となる。隠蔽処理後のカーソルの移動は隠蔽された部分のみに制限されるものとする。」

(7)【0021】?【0023】
「以上のステップによって隠蔽処理の動作が完了し、次に暗記学習処理に移行する。この場合の暗記学習とは、文章の暗記の場合は入力された文章のうち隠蔽された部分を記憶する作業であり、単語の暗記の場合は出題文字列の読みを覚える作業を意味する。
・・・
図7(B)または図8(B)に示す表示画面において、使用者はまず隠蔽された文字列のうちの先頭の文字位置にカーソルkを移動する(ステップS7)。次に正解と思われる文字列をその位置から入力すると、入力された文字はRAM17に記憶される(ステップS8、S9)。そして改行キー13bが押されるまで待機し、改行キー13bが押されたときは入力動作が終了したと見なして入力された文字列の内容が正解であるか否かをチェックする(ステップS10、S11)。ここでは、ステップS2でRAM17に記憶された文字列のうち隠蔽された文字列と、ステップS9でRAM17に記憶された文字列とが比較され、その比較結果は使用者に報知される。すなわち比較された文字列が一致したときは正解であると判断されて正解した部分の文字隠蔽を解いて通常表示を行なう(ステップS12)。一方、文字列が一致しなかったときは入力された文字列が正しくないと判断して、例えばブザーを鳴らして不正解であることを使用者に知らせるとともに、一瞬だけ隠蔽処理を解いて正解としての隠蔽前の文字列を表示する(ステップS13)。ここで、使用者は不正解により一度隠蔽部分の正解を見た後は、他の隠蔽部分にアクセスして何らかの処理が行なわれた後でなければ、不正解となった文字列に対する回答を再び入力できないものとする。
・・・
以降はステップS7に戻って次の隠蔽文字列のうちの先頭の文字位置にカーソルkを移動して上記した暗記学習処理を再び行なう。このようにして全ての隠蔽文字列に対する回答が得られたときに暗記学習が完了する。ここで、上記した暗記学習は一度に行なう必要はなく数回に分けて行なってもよいことは勿論である。」

引用例1は「文書処理装置」についての発明が記載されているものではあるが、上記(4)に「CPU15はROM16に記憶されているプログラムの内容に基づいて上記した各部の制御を行うものであり・・・」と記載されているように、当該「文書処理装置」は、ROM16に保存されたプログラムに基づいて制御されるものであって、引用例1の記載から、「文書処理装置」を特定の手段として機能させるための「プログラム」を保存した記録媒体(ROM16)に係る発明を把握することができる。
上記(4)には「キーボード部13から入力された文字情報を一旦、RAM17に格納するとともに、必要に応じて表示駆動回路14に表示データを転送してLCD表示部11にて文字を表示する。」と記載されている。
入力され記憶された文字や識別データ(上記(5))は、暗記学習をするためのものであるから、これらのRAM17に格納されている文字等の情報は暗記学習用のデータであると解される。
また、ワードプロセッサ等の文書処理装置において文書処理を行う際には、上記のようにLCD表示部11で文字等の文書情報を表示させてキーボード部13からの入力作業を行うのが普通であり、その際、CPU15は、RAM17に、暗記学習用のデータなど、既存の文書データがあるかを確認し、既存のデータがある場合にはそれをLCD表示部11に表示させ、既存の文書データが存在しない場合には、LCD表示部11上には、文字等は表示しないものの、新たに文字等のデータを入力し、編集するための作業領域、記憶領域をRAM17上に設定することが通常であることから、引用例1のROM16に保存されたプログラムには、文書処理装置のRAM17上に暗記学習用のデータが存在しているか否か確認し、既に存在していたら前記暗記学習用のデータをRAM17から呼び出してLCD表示部11にて文字を表示する機能、及び、前記確認で暗記学習用のデータが存在していなかった場合に、RAM17上に新たな暗記学習用のデータの入力、編集を行うための作業領域を確保する文書作成機能を実現するためのプログラムが含まれていると解される。
上記(5)に例示として記載された「出題文字列“踏襲”」と「隠蔽すべき文字列“とうしゅう”」とは、「問題」と「問題に対する解答」との関係にあるといえることから、「出題文字列」及び「隠蔽すべき文字列」をそれぞれ、「問題」及び「問題に対する解答」と称することができる。
上記(7)に「ここで、使用者は不正解により一度隠蔽部分の正解を見た後は、他の隠蔽部分にアクセスして何らかの処理が行なわれた後でなければ、不正解となった文字列に対する回答を再び入力できないものとする。」と記載されていることから、文書処理装置では、解答が正解であるか不正解であるかを判断し、間違えた問題(出題文字列)を特定しているものと解される。

したがって、上記(1)?(7)の記載から、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ワードプロセッサ等の文書処理装置を、
文書処理装置のRAM17上に暗記学習用のデータが存在しているか否か確認し、既に存在していたら前記暗記学習用のデータをRAM17から呼び出してLCD表示部11にて文字を表示する機能、
前記確認で暗記学習用のデータが存在していなかった場合に、RAM17上に新たな暗記学習用のデータの入力、編集を行うための作業領域を確保する文書作成機能、
問題を入力する問題入力、
前記問題入力後に問題の後に第1の識別データを入力する第1の識別データ入力、
前記問題の次に問題に対する解答を追加する解答入力、
前記解答入力後に解答の後に第2の識別データを入力する第2の識別データ入力、
からなる隠蔽処理手段と、
表示画面において、使用者の指示により問題に対応した解答の位置にカーソルを移動すし、入力動作により入力された文字列が正解であるか判断し、正解である場合は、解答を通常表示し、不正解である場合には、一瞬だけ解答を表示し、間違えた問題を特定する暗記学習処理手段
として機能させるためのプログラムを保存した記録媒体。」(以下、「引用発明」という。)

A-2.引用例2
当審の拒絶の理由に引用された特開平11-202750号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

(1)【0017】?【0018】
「【発明の実施の形態】
本発明は、学習者が暗記すべき事項をクイズ形式として表に問題、裏に解答とした学習カードを自ら作成し、その内容をエンターキー、矢印キー、OK、FUZZY、NOキーを配した図1に示す電子手帳型学習装置のカラーモニターに順次表示させるものである。電源は乾電池、AC/DC電源、充電池により供給される。
・・・
学習装置にスイッチをいれると画面にメインメニュー画面が現れ、入力、再生、編集、学習歴項目が表示され、矢印キー及びエンターキーで選択決定する。」

(2)【0019】
「入力について:作成するカードグループが新規であるのか追加のいずれかを選択の上カード内容を入力する。入力方法として1.画面に手書き入力、2.手書き文字認識、漢字変換入力、3.画面上キーボードタッチ入力4.専用キーボードを接続し入力、5.マルチメディアパーソナルコンピューター、ワードプロセッサで入力した文章画像を転送、6.デジタルカメラ入力、7カードリーダー(スキャナ)による入力、8.出版社により供給されるカード(ROM)を読み込む9.他の同機種を接続して読み込む。以上の方法によりカードの裏表を入力する。表だけを連続的に入力する方法と表裏を順次入力できる方法を提供する。カードはグループ化、階層化してしてテーマ別に分類しておく。」

(3)【0021】
「再生について:カード表示方法に通常再生モード、フラッシュ表示モード、確認モード、ランダム表示モード、裏表表示逆転モードを設定する。通常再生モードは任意のキーを押すことにより、カード表示が入力された順番で表-裏-次カード表と進む。」

(4)【0024】?【0025】
「確認モードは、表示学習しようとするカードグループを選択し、スタートさせると問題を書いた表カードが表示される。ここで学習者は、自分の理解度、暗記度に応じ、OK、FUZZY、NOキーのいずれかを選択し、入力する。OKキーは表カードを見て裏の答えを完全に予測できた時のみ押す(あくまで自己申告制であるが)。自分の記憶が曖昧であった時や大体はわかるが、文章としてアウトプットされないときはFUZZYキー、全く裏の答えが予測できなかったときはNOキーを押す。いずれかのキーが入力されるとカードの裏が表示される。さらに裏カード内容確認後、OK、FUZZY、NOキーを選択し、入力する。表カードをみてOKキーを押し、なおかつ裏の答えをみて予測通りであった時、再度OKキーを押す。自分の記憶が曖昧であった時はFUZZYキー、全く裏の答えが解らなかったときはNOキーを押す。つまり1枚のカードで2回OK、FUZZY、NOキーを押すことになる。
・・・
2回OKキーを入力されたカードをクリアーカードとする。全てのカードが表示されたあと、全体のカード分のクリアーカードの比率が表示される。続けて学習するときは、全カード表示かクリアーカードを表示より削除するか選択できる。学習記録は履歴として記憶され、カード情報に添付される。」

(5)【0027】
「編集:カードグループでのカードの順序を入れ替えたり、他のテーマのカードをコピーしたりする。カードの訂正、情報の追加、文字色を変更する機能等を所有する。保存されたカードにカードイメージを付加し、記憶内容のアウトプットを容易にするための手がかりとして、カードの背景、小さいイラスト、付箋(メモ)を、カードに貼付する機能を持つ。また、関連カードへのリンク機能も用意し、あるカード表示中に、内容が関連しているカードがすぐに表示されるような設定も用意する。これらの機能により、記憶しようとする事項の関連づけを行うことができる。」

(6)【0028】
「学習歴:本装置を使用して学習した日時、表示モード、メモ(学習した場所などが入力できる)を記録しておく機能を提供する。カードを作成した日時や場所なども入力が可能とする。確認モードによる学習においては、入力されたOK、FUZZY、NOの個数等を表示する機能を提供する。各カード毎の学習歴を当該カードに添付しておく機能も提供される。」

上記(1)には、学習者が暗記すべき事項をクイズ形式として表に問題、裏に解答とした学習カードを自ら作成し、カラーモニターに表示させる電子手帳型学習装置について記載されている。
上記(2)には、問題及び解答からなる暗記用のカードはグループ化されたものであって、カードのデータを入力するに際しては、カードグループを新規に作成するのか、既存のカードグループにデータを追加するのかを選択してから、データを専用キーボード等を用いて入力することが記載されている。
上記(3)及び(4)には、暗記学習をする際の再生方法として、「確認モード」では、表示学習しようとするカードグループを選択し、暗記学習をスタートさせると、まずカードの問題のみを表示し、学習者はこの問題の答えを予測し、次に答えを表示して、完全に予測どおりでない場合にはFUZZY又はNOキーを選択して入力し、その情報を学習履歴として記憶して、カード情報に添付することが記載されている。
上記(5)には、カードを編集することについて、学習者の記憶内容のアウトプットを容易にするための手がかり、つまり、ヒントとして、カードの背景、小さいイラスト、付箋(メモ)をカードに貼付する機能を持つ点が記載されている。
上記(6)には、学習歴に関して、本装置を使用して学習した日時等をカード毎に添付して記録する機能について記載されている。

A-3.引用例3
当審の拒絶の理由に引用された特開平1-189679号公報(以下、「引用例3」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

(1)第1頁右下欄第2?7行
「(産業上の利用分野)
本発明は電子学習機に関し、さらに詳言すれば学習を進めていくときに、その学習者の学習上の弱点となっている学習項目等を表示して、弱点となっている学習項目等を表示して、弱点となっている学習項目の優先的な選択を可能にした電子学習機に関する。」

(2)第2頁右下欄第4?第3頁左上欄第4行
「本発明の一実施例における電子学習機は、中央処理装置(CPU)1、ブートストラッププログラムを記憶させたROM2、RAM3、外部記憶装置4、キー入力装置5、ディスプレイ装置6およびプリンタ7を備えており、ROM2に記憶されたブートストラッププログラムにともなって、外部記憶装置4に記憶させてある操作手順をRAM3にロードし、実行することにより、CPU1の制御のもとにキー入力装置5からの出力を読み込み、CPU1による処理の結果ディスプレイ装置6による表示およびプリンタ7による印字を制御する。
外部記憶装置4は学習機の制御手段が記憶されている教授部領域4A、学習項目目次、各学習項目に対する複数の問題、それぞれの問題に対する正解答および問題を解くための詳しい解説等が記憶されている問題・解答部領域4B、学習種別等のメニューおよびどの学習項目が弱点項目として指定されているか等の学習管理情報が記憶されている管理情報領域4Cを備えており、たとえばフレキシブルディスク記憶装置で構成されている。」

(3)第3頁右上欄第6行?左下欄第7行
「キー入力装置5はファンクションキー5_(1)、・・・等を備えている。ファンクションキー5_(1)は・・・弱点指定の指示をするための弱点指定キー5_(22)、弱点指定されている項目の一覧の表示を指定する弱点一覧キー5_(23)、弱点として登録することを指示するチェックキー5_(24)、これを取り消すチェック取消キー5_(25)、問題の表示を指示する問題キー5_(26)等を備えており」

(4)第4頁左下欄第1行?右下欄第6行
「学習問題の選択をしたときは・・・ディスプレイ装置6の画面上に問題が表示されて、出題される。・・・出題問題に対する解答ができたとき、解答キー5_(20)が押圧される。この押圧により出題問題に対する正解答データ等が・・・ディスプレイ装置6の画面上に出題に対する正解答および解き方のポイントが表示される。」

(5)第5頁右上欄第14行?左下欄第8行
「学習者が誤答した解答に対応させてある学習項目にまでカーソルを移動させチェックキー5_(24)を押圧することにより弱点項目の登録がなされる。・・・チェックキー5_(24)が押圧、すなわち弱点項目の登録がされたことにより、管理情報領域3C内の学習状況テーブルに学習情報として書き込まれる。」

(6)第6頁左上欄第4行?右下欄第18行
「弱点一覧キー5_(23)を押圧することにより、管理情報領域3Cの学習状況テーブルが参照されて、弱点登録された文法項目のみを選択して編集した目次がディスプレイ装置6の画面上に表示される。・・・この目次画面においては、弱点項目のみが表示されているため、学習者は容易に弱点項目の学習を優先的に選択することができる。・・・弱点項目の選択により弱点項目とされた学習項目に対する解説データ、たとえば文法項目G227を選択することによって、・・・ディスプレイ装置6の画面上に解説が表示される・・・この解説を読むことによって学習者は自分の学習上の弱点が解消していき、弱点項目に対する理解が深まる。・・・問題キー5_(24)を押圧することによって、ステップS_(11)において選択された弱点項目とされた学習項目に対する問題、たとえば文法項目G227に対する問題データが・・・ディスプレイ装置6の画面上に問題が表示される。・・・表示された問題を解いたときは、解答キー5_(20)を押下すると・・・ディスプレイ装置6の画面上に正解答が表示される。・・・ステップS_(11)にて選択された弱点項目のチェックが取消され、ステップS_(11)にて選択された弱点項目が登録されることになった元の問題番号が消される・・・続いて弱点項目として登録された学習項目が無くなったかが判別され、弱点項目として登録された学習項目が無くなるか、またはステップS_(17)で弱点項目の学習を中断するまでステップS_(11)?S_(15)が繰り返される」

上記(1)には、学習者の学習上の弱点となっている学習項目の優先的な選択が可能な電子学習機であることが記載されている。
上記(2)には、電子学習機が中央処理装置(CPU)1、プログラムを記憶させたROM2、RAM3、外部記憶装置4、キー入力装置5、ディスプレイ装置6を備えていることが記載されている。
上記(3)には、学習項目に対して弱点指定をしたり、弱点として登録したり、その登録を取り消したり、弱点指定されている項目を一覧表示したりできること、および、そのためのキーがキー入力装置5に備えられていることが記載されている。
上記(4)には、ディスプレイ装置6の画面上で、学習問題を選択して問題を表示し、画面上に入力することなく出題を解答して、解答キーの押圧で正解答を表示する、学習時の問題に対して解答するための一連の流れが記載されている。
上記(5)には、学習者が誤答した学習項目を弱点項目として登録し、登録された弱点項目を学習情報として学習状況テーブルに書き込むことが記載されている。
上記(6)には、弱点一覧キーの押圧により弱点項目のみをディスプレイ装置6の画面上に表示し、弱点項目の学習を優先的に選択できるようにし、選択された弱点項目については、弱点項目とされた学習項目に対する解説、いわばヒントを表示し、問題キーの押圧により、弱点項目とされた学習項目に対する問題を表示し、問題を解いて解答キーを押圧すると正解答を表示し、弱点を克服した弱点項目についてのチェック(登録)を取り消すことが記載されている。また、弱点項目として登録された学習項目が無くなったかを判別して、弱点項目として登録された学習項目が無くなるか、または、弱点項目の学習を中断するまで、学習を繰り返すことが記載されている。

A-4.引用例4
当審の拒絶の理由に引用された特開平8-30620号公報(以下、「引用例4」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

(1)【0001】
「【産業上の利用分野】
本発明は、データの中にタグを挿入し、該タグにより当該データを部分的に区別して構造を表現し、該タグが一部で省略可能であるデータから、その構造を高速に検索する構造検索装置に関するものである。例えば、テキスト中にタグを挿入てしテキストを文書要素に区分して、文書の構造化している構造化文書から、その構造を検索する文書構造検索装置に利用できる。」

(2)【0002】?【0003】
「【従来の技術】
従来から、ワークステーション上の文書編集装置(ワードプロセッサ)など、文書処理を行う文書編集装置においては、文書の作成を効率よく行うため、予じめ、見出し,段落などの複数の文書部品を作成し、その各々の文書部品の間の関係を定めることにより、文書を構造化して編集することが試みられている。
・・・
このように、文書に対して構造の概念を取り入れた構造化文書の例としては、例えば、国際規格のODA(ISO8613: Open Document Architecture)や、SGML(ISO8879: Standard Generalized Markup Language)の規格による構造化文書が知られている。」

(3)【0004】
「SGMLによる構造化文書は、従来のテキスト処理システムとの親和性が高く、アメリカを中心として普及してきており、既に実用の段階に入っている。これは、SGMLによる構造化文書の手法が、タグとよばれるマークを文書テキスト中に挿入することで、文書テキストを部分的に区分し(例えば文書部品として区分し)、その区分の関係を規定して構造化し、木構造の文書構造を表現する手法であるため、従来のテキスト処理システムで十分に実現可能であるからである。」

(4)【0024】
「SGML文書は、テキスト中にマーク付けを行うだけのタグを埋め込んだ形式の文書アーキテクチャとなっているため、従来のテキスト処理システムとの親和性が高い。つまり、構造がマーク付けのタグで表現されるため、構造を検索する際にも特別な装置あるいは処理プログラムを用いなくても良く、タグの記号を表す文字列を検索するという文字列検索を用いて、文書構造の検索を行うことができる。すなわち、従来のテキスト処理装置(文書エディタなど)により、SGML文書を作成することができ、基本的にはスタートタグとそれに対応するエンドタグを、タグの文字列を検索するという従来の文字列検索のテキスト検索手法を用いて検索することにより、構造検索を行うことができる。」

(5)【0051】?【0052】
「なお、ここでの構造検索部14に渡されるユーザからの指示あるいは他の装置からの構造の検索指示16の形態は、例えば、ワードプロセッサや文書エディタなどの文書を直接にユーザが編集する装置など、その装置の形態に合せて、構造検索プロパティシート(図2)やコマンドによる形態で、その検索指示が与えられる。
・・・
また、ここでの検索結果を出力する提示方法も同様である。ワードプロセッサや文書エディタなどの文書を直接にユーザが編集する装置など、その装置の形態に合せて、検索結果が出力される。例えば、文書エディタなどでは、検索して見つかった箇所を自動的に表示するという提示方法を用いる。ネットワークに接続された検索サーバでは、例えば、見つかった部分構造をすべて、検索を指示した側に送り返すように構成される。」

上記(1)?(5)には、文書テキスト中にタグとよばれるマークを入力し文書テキストを見出しや段落などの文書部品ごとに部分的に区分したSGML文書のような構造化文書が従来から知られていること、及び、その構造化文書(SGML文書)は、従来のワードプロセッサなどの文書処理装置で作成することができ、従来のテキスト検索手法を用いて検索して見つかった箇所を自動的に表示することができることが記載されている。

B.対比
a.引用発明の「文書処理装置」は、本願発明の「コンピュータ」に相当するものである。
b.本願発明には「電子暗記カード」と記載され、問題及び解答等のデータが「カード」としての表示形態等を備えたものであるかのような記載がされている。
しかしながら、本願明細書中には、「カード」として特定されるようなデータ構造等の記載はなく、本願の実施形態を示した【図5】には、記録媒体に保存された文書の内容として複数の問題及び解答が、一続きのものとして順番に保存されていることが示されているのみである。
本願明細書の段落【0002】?【0007】には、従来技術として、紙等を束ね、一枚ごとに表裏それぞれに問題と解答を記入して作成された「暗記カード」が記載されている。
本願明細書のこれらの記載を勘案すれば、本願発明の「電子暗記カード」とは、従来の「暗記カード」を電子化したものである程度の意味であって、電子化した「暗記カード」は問題及び解答等からなるデータそのものであって、「カード」としての特別なデータ構造を有するものではないと考えられる。
したがって、引用発明の「暗記学習用のデータ」と本願発明の「電子暗記カードのデータ」とは、暗記学習を行うための問題と解答及びその他の情報を備えたものである点で共通しており、引用発明の「暗記学習用データ」が本願発明の「電子暗記カードのデータ」に相当し、「電子暗記カード」にも相当するものと解される。(なお、仮に、本願発明の「電子暗記カード」あるいは「電子暗記カードのデータ」が、「カード」形態を備えたデータであるとしても、その点は、引用例2に記載されており、そのような形態でデータを構成することは当業者にとって容易想到な事項にすぎないことを付記する。)
c.本願発明には「前記新規確認で電子暗記カードのデータが存在していなかった場合に電子暗記カードのデータを作成し、前記電子暗記カードのデータを開く文書作成」と記載されており、この記載はその意味が必ずしも明確とはいえないので、本願明細書の発明の詳細な説明を参酌すると、段落【0036】に「文書作成3は、利用する文書用ソフトウェア24eの保存形式又は文書用ソフトウェア24eで読み込むことができる形式、例えばテキスト形式のファイルを作成する。」と記載されており、この記載から、本願発明の「文書作成」は、電子暗記カードのデータを入力して作成するために、作業領域(ファイル)を確保することであると解される。
したがって、引用発明の「文書処理装置のRAM17上に暗記学習用のデータが存在しているか否か確認し、既に存在していたら前記暗記学習用のデータをRAM17から呼び出してLCD表示部11にて文字を表示する機能」、及び「前記確認で暗記学習用のデータが存在していなかった場合に、RAM17上に新たな暗記学習用のデータの入力、編集を行うための作業領域を確保する文書作成機能」は、それぞれ、本願発明の、「コンピュータ上に電子暗記カードのデータが存在しているか否か確認し、既に存在していたら前記電子暗記カードのデータを開く新規確認」、及び「前記新規確認で電子暗記カードのデータが存在していなかった場合に電子暗記カードのデータを作成し、前記電子暗記カードのデータを開く文書作成」に相当するものと解される。
d.引用発明の「問題を入力する問題入力」は、暗記学習用のデータが既に存在している場合には、問題を追加する機能となることは当然のことであるから、本願発明の「前記電子暗記カードに問題を追加する問題作成」に相当しているといえる。
e.引用発明の「前記問題の次に問題に対する解答を追加する解答入力」は、本願発明の「前記問題の次に問題に対する解答を追加する解答作成」に相当している。
f.引用発明の第1の識別データ及び第2の識別データは、それによって、問題と解答を区切るとともに、隠蔽処理後のカーソルの移動を2つの識別データの間の部分に制限するものである(上記A-1.(6)参照。)から、データ処理上の目印としての役割をもつものと解される。
一方、本願発明の「問題マーカー」及び「解答マーカー」も、「問題マーカー又は重要問題マーカーを連続的に検索して問題を画面に次々に表示する」との記載や「解答マーカーを検索して問題に対する解答を画面に表示する」との記載からして、「検索」というデータ処理上の目印としての役割をもつものと解すことができる(なお、本願発明の各種「マーカー」については、後記相違点の判断において詳述する。)。
したがって、引用発明の「前記問題入力後に問題の後に第1の識別データを入力する第1の識別データ入力」と本願発明の「前記問題作成後に問題の文末に問題マーカーを設定する問題マーカー設定」とは、「前記問題作成後に問題の後にデータ処理上の目印を設定する目印設定」の点で共通しており、引用発明の「前記解答入力後に解答の後に第2の識別データを入力する第2の識別データ入力」と本願発明の「前記解答作成後に解答の文末に解答マーカーを設定する解答マーカー設定」とは、「前記解答作成後に解答の後にデータ処理上の目印を設定する目印設定」の点で共通している。
g.引用発明の「隠蔽処理手段」は上記した「新規確認」、「文書作成」、「問題作成」、「解答作成」、「目印設定」からなる点において、本願発明の「作成手段」と共通している。
h.引用発明の「暗記学習処理手段」と、本願発明の「運用手段」とは、「電子暗記カードのデータである問題及び解答を画面に表示する暗記学習実施手段」である点において、共通しているといえる。

したがって、本願発明と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。

<一致点>「コンピュータを、
コンピュータ上に電子暗記カードのデータが存在しているか否か確認し、既に存在していたら前記電子暗記カードのデータを開く新規確認、
前記新規確認で電子暗記カードのデータが存在していなかった場合に電子暗記カードのデータを作成し、前記電子暗記カードのデータを開く文書作成、
前記電子暗記カードに問題を追加する問題作成、
前記問題作成後に問題の後にデータ処理上の目印を設定する目印設定、
前記問題の次に問題に対する解答を追加する解答作成、
前記解答作成後に解答の後にデータ処理上の目印を設定する目印設定、
からなる作成手段、
電子暗記カードのデータである問題及び解答を画面に表示する暗記学習実施手段
として機能させるための文字検索プログラムを保存した記録媒体。」

<相違点1>本願発明では、「完了したら前記電子暗記カードのデータを記憶装置に保存する」、「前記電子暗記カードのデータを記憶装置から読み込み」、「次回中断した所から再開できるように電子暗記カードのデータを記憶装置に保存する」と記載され、電子暗記カードのデータを記憶装置に保存しておき、読み出して利用することが特定されているのに対して、引用発明では、RAM17に暗記学習用のデータを一時的に格納することの記載はあるものの、そのデータを保存し、読み出して利用することは明記されておらず、前記特定がされていない点。
<相違点2>本願発明は、作成手段として「前記電子暗記カードに追加するデータがグループの先頭であるか否か確認するグループ確認、前記グループ確認でグループの先頭であった場合にグループを示す文字を入力するグループ作成」が含まれることが特定されているのに対し、引用発明では前記特定がされていない点。

<相違点3>本願発明は、作成手段として「前記問題と解答の間にヒントを追加するヒント作成」が含まれることが特定されているのに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。

<相違点4>本願発明は、作成手段として「前記グループ作成後にグループの先頭にストップマーカーを設定するストップマーカー設定」、「前記問題作成後に問題の文末に問題マーカーを設定する問題マーカー設定」、「前記問題に重要度の段階を設ける重要問題マーカー設定」、「前記解答作成後に解答の文末に解答マーカーを設定する解答マーカー設定」、「前記ヒント作成後にヒントの文末にヒントマーカーを設定するヒントマーカー設定」が含まれることが特定されており、運用手段として「問題マーカー又は重要問題マーカーを連続的に検索して問題を画面に次々に表示する問題マーカー検索」、「前記問題マーカー検索に引き続いて同じく解答マーカーを検索して問題に対する解答を画面に表示する解答マーカー検索」、「前記解答マーカー検索後に間違えた問題に対して誤答マーカーを設定する誤答マーカー設定」、「前記残問題有無確認で学習が完了したら、完了した既習部分に対し日付マーカーを設定し、後に日付マーカーを検索して既習部分を復習できるようにする日付マーカー設定」、「次回に復習を効率的に行うために前記誤答マーカー設定で設定した誤答マーカーを検索し、間違えた問題を画面に表示する誤答マーカー検索」、「前記問題マーカー検索から残問題有無確認までの繰り返しの途中でしおりマーカーを設定して中断し、次回中断した所から再開できるように電子暗記カードのデータを記憶装置に保存するしおりマーカー設定」が含まれることが特定されており、作成された問題や解答、あるいは、問題や解答のまとまりを表すグループに対して「マーカー」を決められた位置に設定し、そのマーカーを用いて問題や解答を検索して画面に表示するようにすることが特定されているのに対して、引用発明では、問題と解答を区切る「第1の識別データ」及び「第2の識別データ」を入力設定することは記載されているものの、その識別データを使って問題や解答の検索をし、所定の画面表示を行っているとの特定はなく、前記特定がされていない点。

<相違点5>本願発明は、作成手段として「前記問題及び解答の追加が完了したか否か確認し、残っていれば前記グループ確認から繰り返し、完了したら前記電子暗記カードのデータを記憶装置に保存する未入力有無確認」が含まれることが特定されているのに対して、引用発明では、前記特定がされていない点。

<相違点6>本願発明は、運用手段として「前記解答マーカー検索後にグループ内で未出題の問題が存在するか否か確認し、残っていれば前記問題マーカー検索から繰り返す残問題有無確認」が含まれることが特定されているのに対して、引用発明では、前記特定がされていない点。

<相違点7>本願発明は、運用手段として「前記誤答マーカー検索後に正答した問題に対し誤答マーカーを解除する誤答マーカー解除」が含まれることが特定されているのに対して、引用発明では、前記特定がされていない点。

<相違点8>本願発明は、「文字検索プログラム及び電子暗記カードのデータを保存した記録媒体」であると特定されているのに対して、引用発明は、プログラムが記憶された記録媒体であるROM16内に、暗記学習用のデータが記憶されているとは特定されておらず、前記特定がない点。

C.判断
1.<相違点1>について
引用発明の「RAM」は、通常、作業領域として一時的な記憶に使用するものであって、装置の電源を切るとそのデータが消去されてしまうものと解されるので、暗記学習用のデータを保存するためには、電源を切っても記憶されたデータが消去されない書き換え可能な記憶装置が別途必要となるが、引用例1には、そのような記憶装置についての記載はされていない。
しかしながら、本願出願時において、データの保存ができ、書き換えが可能な記憶装置(例えばEEPROMなどの不揮発性メモリやハードディスク装置)を備えたコンピュータは周知・慣用されており、引用発明の文書処理装置もコンピュータを用いたものであるから、上記のように書き換えが可能でデータの保存ができる記憶装置を備えるものとすることは当業者にとって容易想到なことである。
しかも、引用発明の文書処理装置は、暗記学習を行うために利用されるものであって、暗記学習は、同じ問題を繰り返し解答することにより学習効果を高められるものであることから、入力された問題及び解答のデータは、保存して、必要な時に呼び出して再利用できるようにすることが求められるものであるといえる。
そして、引用例1の上記A-1.(7)には、「ここで、上記した暗記学習は一度に行なう必要はなく数回に分けて行ってもよいことは勿論である。」と記載され、作成した暗記学習用のデータや学習履歴を保存して再利用するような利用方法を窺知できる。
以上のことを勘案すれば、相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用例1及び周知・慣用技術に基づいて当業者が容易に想到し得ることであるといえる。

2.<相違点2>について
相違点2に係る本願発明の発明特定事項である、「前記電子暗記カードに追加するデータがグループの先頭であるか否か確認するグループ確認」は、その意味するところが必ずしも明確でないため、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌すると、段落【0037】には「グループ確認4は、問題7a及び解答9aを章や節などのグループ5aで分けた場合に、グループ5aの先頭であるか否かで作業を分岐する。グループ5aの先頭である場合は、グループ作成5及びストップマーカー設定6を行ってから問題作成7を行う。グループ5aの先頭でない場合は、問題作成7を行う。」と記載され、段落【0038】には「グループ作成5は、章や節などのグループ5aの先頭に、グループ5aを示す文字を入力し、ストップマーカー設定6を行う。」と記載されている。
また、「本発明である文字検索装置及び電子暗記カードを保存した記録媒体の作成を示すフローチャートである。」本願【図3】には「グループ確認4」を「途中」か「先頭」かで分岐させることが図示されている。
「グループ確認4」は、「途中」か「先頭」かによって作業が分岐するものの、いずれの場合も「問題作成7」に移行するので、「途中」とは、グループが既に存在し、問題や解答が既に作成されている状態であって、その後の「問題作成7」は、既存の問題及び解答の後から(つまりグループの途中から)実施されることを示し、「先頭」とは、逆にグループやグループ内の問題及び解答が存在しておらず、その後の「問題作成7」は、「グループ作成5」で作成されたグループの先頭から実施されることを示していると解される。
そうすると、上記「グループ確認」とは、グループの先頭であるかを確認することにより、新規なグループ作成であるか否かを判断しているものと解される。
他方、暗記学習用のデータをグループ化する点は、引用例2(A-2.(2)、(4)、(5))及び引用例3(A-3.(2)、(6))に記載されている。
また、引用例2には、カード形式で作成された暗記用のデータをカードグループとしてグループ化し階層化してテーマ別に分類しておくことが記載されている(A-2.(2))。
上記のようにテーマ別に分類した場合に、そのテーマ別のグループに対し、グループの選択を容易にするための見出しを作成することは通常であり、引用例3においても学習項目に目次を設けることが記載されていることからしても、見出しのようなグループを示す文字を入力することはグループ化する場合においてはごく当たり前のことであると解される。
してみると、引用例2には、データ入力の際には作成するカードグループが新規で作成するものであるのかデータの追加をするのかを選択してカード内容を入力することが記載されており(A-2.(2))、また、上記のようにグループ化する場合に見出し等を設けることは通常のことであるといえることから、グループの新規作成が選択されたか、既存のグループへのデータの追加が選択されたかを確認して、新規作成である場合に、グループの先頭に見出しを設けるようにすることは、上記した引用例2、3の記載事項や技術常識から当業者が想到容易なことであるといえる。
したがって、相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、引用例1乃至3及び技術常識に基づいて、当業者が容易になし得ることである。

3.<相違点3>について
引用例3には、問題を解くための詳しい解説をデータとして記憶することが記載されており、問題と解答以外にヒントを作成することは、引用例3に記載されている。
そして、ヒントのデータを、データ構成の中のどの位置に作成するかは、全体のデータ構成、データの作成順番、データの読み出しや表示の方法等、用途要請に応じて適宜に設定し得る設計事項である。
したがって、相違点3に係る本願発明の発明特定事項は、引用例1及び3に基づいて、当業者が容易になし得ることである。

4.<相違点4>について
まず、「問題マーカー」や「解答マーカー」など、本願発明の各種「マーカー」がどのようなものであるのかを検討する。
本願発明には「問題マーカー又は重要問題マーカーを連続的に検索して問題を画面に次々に表示する問題マーカー検索」や「前記問題マーカー検索に引き続いて同じく解答マーカーを検索して問題に対する解答を画面に表示する解答マーカー検索」、「次回に復習を効率的に行うために前記誤答マーカー設定で設定した誤答マーカーを検索し、間違えた問題を画面に表示する誤答マーカー検索」などと記載されており、これらの記載からして、各種「マーカー」は、使用者がコンピュータに対して問題や解答の表示を指示した際に、コンピュータが電子暗記カードのデータの中から問題や解答を検索して画面に表示することができるように上記データ中の各問題、解答に対応して設定されたいわば「検索情報」であると解される。
次に、「問題マーカー設定」、「解答マーカー設定」など「マーカー設定」とはどのようなことかについて検討する。
本願発明には、「前記解答作成後に解答の文末に解答マーカーを設定する解答マーカー設定」、「前記問題作成後に問題の文末に問題マーカーを設定する問題マーカー設定」などと記載されており、解答や問題の「文末」にそれぞれのマーカーを設定することが記載されており、これらの記載からして、各種「マーカー設定」とは、電子暗記カードのデータである問題や解答等に「検索情報」を直接付属するように設定することであると解される。
以上のことをふまえ、相違点4について検討する。
引用発明において、暗記学習用の単語や文章のデータは、暗記学習を行う際には、解答を見えないよう「隠蔽処理」されるものの、これは、解答の表示を隠蔽しているだけであって、解答データを問題データとは別に検索して表示しなければならないようなものではなく、よって、引用発明の「第1の識別データ」及び「第2の識別データ」は、問題と解答とを区切り、解答の文字列の範囲を示すものであって、検索情報であるとはいえないものである。
しかしながら、暗記など問題を解く学習を行う際に、問題を解くまで解答を見えないようにする方法としては、引用発明のような解答を隠す隠蔽処理を行う方法だけでなく、問題と解答とを別々に表示する方法もごく一般的に用いられており、その例として、引用例2及び3をあげることができる。
引用例2は、暗記用の学習カードをグループ化し、カードグループを選択して問題を表示し暗記学習を行うことができるものであり、引用例3は、キー入力装置5の解答キー5_(20)などの各キーを押圧することにより問題や解答、解説、弱点項目といった各種データを画面上に表示できるものであるが、このようにキー操作等により特定の情報を選択して表示できるのは、問題や解答などの各種データを検索するための検索情報が各データに関連して存在するからであると解され、暗記学習用の各種データを個別に検索して表示できる点において、引用例2及び3は、本願発明と共通しているといえる。
また、検索情報を検索対象のデータ(文書データなど)に直接付属させて設定する点について、引用例2及び3では、検索情報をどのように設定しているのか不明であるが、引用例4には、文書テキスト中にタグとよばれるマークを入力し文書テキストを見出しや段落などの文書部品ごとに部分的に区分したSGML文書のような構造化文書が従来から知られていること、及び、その構造化文書(SGML文書)は、従来のワードプロセッサなどの文書処理装置で作成することができ、従来のテキスト検索手法を用いて検索して見つかった箇所を自動的に表示することができることが記載されており、当該「タグ」は、文書中の特定の部分(文書部品)を検索して表示させるための情報であって検索情報と解され、文書テキスト中に入力されるものであることから、検索情報を検索対象のデータに直接付属させて設定することは、引用例4に記載されているといえる。
したがって、引用発明を出発点として、問題や解答の表示形態として、ごく一般的な、それらを別々に表示する表示形態を採用し、任意にあるいは特定の順番で検索して表示できるように、検索情報(マーカーに相当)を問題や解答に直接付属されて入力設定し、その検索情報(マーカー)を用いて各種データを個別に検索し、表示できるようにすることは、引用例1?4に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることであると認められる。
また、本願発明では、「問題マーカー」や「解答マーカー」だけではなく、問題に重要度の段階を設けるために設定する「重要問題マーカー」、間違えた問題に設定する「誤答マーカー」、完了した既習部分に学習履歴として設定する「日付マーカー」、中断箇所に設定する「しおりマーカー」など種類の異なる検索情報(マーカー)を設定することが記載されているが、これは、目的に応じた異なる検索をするためにそれぞれ設定されたものであって、いわば用途規定を明示したにすぎないものである。このような検索の便宜に対応すべく各種の異なる検索情報(マーカー)を用意するようなことは、当業者にとって適宜なし得る設計事項にすぎない。
また、本願発明では「前記問題作成後に問題の文末に問題マーカーを設定する」、「前記解答作成後に解答の文末に解答マーカーを設定する」など、検索情報(マーカー)を設定する位置についての特定がなされているが、この検索情報(マーカー)の設定位置も、検索手法や、検索結果の表示の仕方について、コンピュータ内のプログラムでどのように設定されているか等により、適宜に設定し得る設計事項であるといえる。
なお、本願明細書には「最初に問題マーカー8aを検索すると、問題マーカー8aが画面内に入るように文書3aの表示範囲が移動することで、問題表示1cされる。問題マーカー8aは、問題7aの文末にあるため、問題マーカー8aが画面内に入ることで、問題7aも画面内に表示される。」(段落【0084】)、「問題7aと解答9aの間を1行以上空けておくことにより、問題7aを考えている間は、解答9aを画面外に隠しておくことができる。」(段落【0086】)などと記載され、「問題マーカー8a」が文末であることにより、検索によって、問題のみが画面内に表示されるような記載がされているが、これは、検索時にマーカーを表示画面の最下部に位置するように表示することを予めプログラムに設定したことによるものか、または、検索時にマーカーを表示画面の最下部に位置するようにする検索手法を用いたことによるものであり、問題の次に作成される解答が、行を空けて作成されているなど、問題及び解答のレイアウト(データ構造)が特定のものであることにより実現されることであると解される。
しかしながら、本願発明における「検索」は、「問題マーカー又は重要問題マーカーを連続的に検索して問題を画面に次々に表示する問題マーカー検索」等と特定されているだけであって、「問題マーカー8a」等のマーカーを表示画面の最下部に位置するように表示して問題や解答をそれぞれ個別に表示するような検索結果の表示の仕方や、検索手法の用い方は特定されていない。
また、問題及び解答のレイアウト(データ構造)についても、問題の次に問題に対する解答を追加することが特定されている程度であって、上記した行を空けて作成するなどの点は特定されていない。
よって、本願発明の、文末にマーカーを設定するとの特定は、本願明細書の上記段落等に記載されたような技術的意味があるものとして把握することはできない。
仮に、本願発明を上記明細書に記載されたような意味のものであると解したとしても、その点は設計事項であるといえる。
したがって、相違点4に係る本願発明の発明特定事項は、引用例1?4及び技術常識に基づいて、当業者が容易になし得ることである。

5.<相違点5>について
本願発明において、問題及び解答の追加が完了したことをどのような方法でコンピュータが確認するのかについて、具体的には何も記載されていない。
この点に関し、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌しても、段落【0044】に「未入力有無確認11は、問題7a及び解答9aの入力が完了したか否かで分岐する。問題7a及び解答9aの入力が残っていれば、グループ確認4に戻り、グループ確認4から解答マーカー設定10までの作業を繰り返す。問題7a及び解答9aの入力が完了したら、電子暗記カード1の文書3aを閉じて作成1aを終了する。」と記載されている程度であって、問題及び解答の追加の完了の確認をどのようにするのかについて明確に記載されていないため、当業者の技術常識を考慮して認定するほかはない。
コンピュータが、入力されたデータの終わりを認識する方法として、データの最後に、終わりを示す識別情報(「フラグ」など)を付加するようにし、それをコンピュータが認識して完了を確認することが考えられる。
また、予め入力すべきデータの量をコンピュータに入力し、データ量を計数することにより完了を認識する方法も考えられる。
いずれの方法を採用したとしても、常套手段であって、当業者が容易になし得ることにすぎないものである(本願の請求項にも明細書にも具体的な記載がない以上、当業者が容易に想起し得るもの以外の方法は想定できない。)。
そして、問題及び解答の追加が完了したことを確認してからデータを記憶装置に保存することも適宜になし得ることである(入力したデータを記憶装置に保存することについては、上記「1.<相違点1>について」で記載したとおりである。)。
したがって、相違点5に係る本願発明の発明特定事項は、引用例1及び常套手段に基づいて、当業者が容易になし得ることである。

6.<相違点6>について
引用例3には、弱点項目に登録された学習項目に関し、問題の表示及び解答の表示等を弱点項目として登録された学習項目が無くなるまで繰り返すことが記載されており(A-3.(6))、未出題の問題が存在するか否かを確認し、残っていれば問題の出題の作業を繰り返すようにすることは、引用例3に記載された事項であると認められる。
したがって、相違点6に係る本願発明の発明特定事項は、引用例1及び引用例3に基づいて当業者が容易になし得ることである。

7.<相違点7>について
引用例3には、弱点項目として登録した学習項目だけを優先して選択し、その問題を表示し、解答を表示した後で、選択した弱点項目のチェックを取り消して選択された学習問題を弱点項目から消すことが記載されている(A-3.(6))。
上記記載において、事前に正答したかどうかを検討する点は記載されていないが、弱点項目として登録した学習項目の問題を解く前に弱点を解消するための解説を表示するように設定されており、正答することを前提としているものと解されることから、これが、本願発明の「前記誤答マーカー検索後に正答した問題に対し誤答マーカーを解除する誤答マーカー解除」に相当するものと認められる。
したがって、相違点7に係る本願発明の発明特定事項は、引用例1及び引用例3に基づいて、当業者が容易になし得ることである。
なお、相違点7に係る本願発明の発明特定事項の前提となる、間違えた問題に誤答マーカーを設定する点や、誤答マーカーを検索して一度間違えた問題を選んで画面上に表示する点に関しては、上記「4.<相違点4>について」の記載を参照されたい。

8.<相違点8>について
本願明細書には「文字検索プログラム及び電子暗記カードのデータを保存した記録媒体」に関して、「記憶装置24bは、作業領域となる主記憶装置と、保存領域となる補助記憶装置とからなる。補助記憶装置には、ハードディスク等が該当し、文書用ソフトウェア24eが導入されており、作成された文書3aも保存されている。」(段落【0029】)と記載されており、電子暗記カードのデータ(文書3a)等がハードディスク等の記憶装置に保存されていることが記載されている。
本願出願時において、「コンピュータ」を機能させるプログラムを保存する記録媒体として、ROMのような読み出し専用の記録媒体も、ハードディスクのような書き換え可能な記録媒体も普通に知られており、作成されたデータをプログラムと同じ記録媒体に領域を分けて記憶させるようなことも通常のことである(例えば、パーソナルコンピュータのように、汎用性のあるコンピュータの場合、ユーティリティー・プログラムのような追加的なプログラム(ソフトウェア)をデータとともにハードディスク等に記憶することは通常のことである。)。
つまり、プログラム及びデータをどのように記録媒体に保存するかは設計事項であり、コンピュータの種類、用途などに応じて適宜に選択し得ることである。
引用発明では、読み出し専用のROM16にプログラムが記憶されており、プログラムは作成された暗記学習用のデータとともに記録媒体に保存されていない。
しかしながら、暗記学習用のデータを書き換え可能な記憶装置に保存することは、上記「第3 C.判断 1.<相違点1>について」で記載したように想到容易なことであり、この暗記学習用のデータが保存された書き換え可能な記憶装置にプログラムを領域を分けて保存するようにすることは当業者にとって適宜に実施し得る程度のことである。
したがって、相違点8に係る本願発明の発明特定事項は、引用例1及び周知・慣用技術に基づいて当業者が容易になし得ることである。

そして、相違点1?8に係る本願発明の発明特定事項を採用することによる効果は、引用例1?4、周知・慣用技術及び技術常識に基づいて、当業者が予測し得る程度のことである。

よって、本願発明は、引用例1?4、周知・慣用技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は平成19年10月22日付け意見書において、引用例2?4と比較して、
「本願発明においては、電子暗記カードの問題データ、解答データ、及び各種マーカー等は1つのテキストファイルとして作成され、マーカーを検索して該当の問題又は解答のみを画面に表示します。尚、電子暗記カードをテキスト形式のファイルとして作成することは、問題と解答が順番に並んで記載されるため、順次表示するのが容易であること(即ち、文字検索機能がない場合でも、画面をスクロールしながら問題と解答を確認することができます。)、文字検索プログラムと切り離して、直接に電子暗記カードのデータを参照しても利用可能であること(即ち、プリントアウトして解答を隠しながら問題を解いたり、切り離すことで実際の暗記カードと同様の使い方ができます。)等、単に文書やカード型データベースを作る以上の利点もあるので、単なる設計事項ではなく、当業者が想到容易な事項ではないと考えます。」(第12頁第12?22行)、
「本願発明においては、弱点項目として記憶する手段として誤答マーカーを用いており、誤答マーカーは利用者の解答の正誤を利用者自身が判断し、後で復習が必要な場合に、検索の目印としてテキストファイル内に設定します。即ち、データを抽出して弱点項目の一覧を作成するまでもなく、テキストファイル内で誤答マーカーを順次検索していくことにより、復習したい問題を次々と表示していくことができます。」(第12頁第31?35行)、
「実際、タグはマーカーに相当するものではありません。引用文献4の発明は、使用している専門用語である「タグ」や、比較している類似技術である「ODA」又は「SMGL」が示す通り、プログラミング言語(処理系)の一種である「メタ言語」に関する改良であります。プログラミング言語(ソースプログラム)もテキスト・ファイルも、共に文書データとして保存される点は同じですが、処理の流れを記述するソースプログラムと、データを記述するテキスト・ファイル(電子問題集・学習カード)とは、用い方が全く異なります。」(第9頁末行?第10頁第8行)
と主張し、本願発明の電子暗記カードのデータがテキストデータであるとの前提に立って相違点を主張しているが、本願発明の「電子暗記カードのデータ」は、テキストデータに限定されたものではなく、また、上記「電子暗記カードの問題データ、解答データ、及び各種マーカー等は1つのテキストファイルとして作成され」たものであるとの限定もないことから、上記主張は本願発明の構成に基づいているものと解することができない。
また、仮に主張の前提となっている上記事項が、本願発明の構成であると想定したとしても、前記で検討してきた本願発明が容易想到であるとの判断を覆すものではなく、いずれにしても、請求人の主張を採用することはできない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1?4、周知・慣用技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-09 
結審通知日 2008-01-10 
審決日 2008-01-23 
出願番号 特願2004-240748(P2004-240748)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清藤 弘晃宮本 昭彦  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 坂田 誠
尾崎 俊彦
発明の名称 文字検索プログラム及び電子暗記カードのデータを保存した記録媒体  
代理人 中川 邦雄  

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