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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1173913
審判番号 不服2003-1925  
総通号数 100 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-02-06 
確定日 2008-03-06 
事件の表示 特願2000- 46658「ビデオゲーム装置及びビデオゲームにおけるゲーム選択方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月28日出願公開、特開2001-232065〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯

本願は、平成12年2月23日の出願であって、平成14年12月13日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成15年2月6日に拒絶査定に対する審判の請求がなされるとともに、平成15年3月5日付で手続補正がなされたものである。
その後、平成19年8月16日付で上記平成15年3月5日付の手続補正を却下する補正の却下の決定がなされるとともに、同日付で当審から拒絶理由通知がなされ、それに対して、請求人は、平成19年10月22日付の意見書の提出とともに、同日付で手続補正がなされたものである。


2.本願発明

本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成19年10月22日付の手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、特に、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された次のとおりのものである。
「規定料金のコインを投入することによって所定のゲーム回数だけゲームを実行することができ、各回毎に基本料金の異なるタイプのゲームを選択手段により選択し得るようにしたもので、前記ゲーム回数が前記投入されたコインの金額と選択されたゲームの基本料金とに応じて定まるゲーム実行部を備えたビデオゲーム装置であって、ゲームが実行される毎にゲームの残回数を報知する報知手段と、各回のゲームの開始時に前記残回数に応じていずれのタイプのゲームが許可可能かを判別する判別手段と、許可可能なタイプのゲームの前記選択手段による選択を許可する許可手段とを有し、
前記報知手段は、モニタと、規定料金のコインが投入されたことに応じて前記モニタの所定のチップ表示領域に当該投入されたコインの金額に応じた複数のチップ画像を表示すると共に、ゲームが実行される毎に前記チップ画像の個数を前記選択したタイプのゲームに応じた個数だけ差し引いて表示する一方、その差し引いたチップ画像を前記モニタの消費済みチップ表示領域に移動表示する表示制御手段とを備えたものであることを特徴とするビデオゲーム装置。」


3.引用例

これに対して、当審拒絶理由通知で引用され、本願特許出願前に頒布された刊行物である特開平10-305173号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面の図示とともに次の事項が記載されている。

(a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、バレーボールのビデオゲームを実行するビデオゲーム機,ビデオゲーム機の画像処理方法,及びコンピュータプログラムを記録した媒体に関する。」

(b)「【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明による実施形態を図面に基づいて説明する。
〈ゲームシステムの構成〉最初に、本実施形態によるバレーボールのビデオゲームを実行するゲームシステム(バレーゲーム機)を説明する。図1は、バレーゲーム機の構成例を示す図である。図1に示されるように、バレーゲーム機は、ビデオゲーム機Aと、このビデオゲーム機A内に収容される基板1とからなる。
【0015】ここに、ビデオゲーム機Aは、テレビジョンモニタ(以下、「モニタ」という。)TV,スピーカLSP及びRSP,コントロールパネルCPとからなる。このコントロールパネルCPは、同時に2人がゲームに参加できるように第1操作系C1と第2操作系C2とを有する。第1操作系C1は、第1レバーL1,及び第1ボタンC1a?C1cからなる。一方、第2操作系C2は、第2レバーL2,及び第2ボタンC2a?C2cからなる。さらに、コントロールパネルCPは、第1操作系C1でゲームを行う場合のスタートボタンSL,第2操作系C2でゲームを行う場合のスタートボタンST,及びコイン投入口CHを有している。
【0016】基板1は、CPU1(当審注:「CPU2」の明らかの誤記と認める。)と、このCPU1(当審注:「CPU2」の明らかの誤記と認める。)にバス(アドレスバス,データバス,コントロールバス)Bを介して接続されたROM3,RAM4,インターフェイス回路7,音声系回路8,及び表示系回路9からなる。
【0017】ここに、ROM3は、オペレーションシステムをなす基本プログラム,バレーボールのビデオゲームのゲームプログラム,及び各種のデータが記憶されている。RAM4は、CPU1(当審注:「CPU2」の明らかの誤記と認める。)による作業領域として用いられる。インターフェイス回路7は、コントロールパネルCPからの操作データを取り込む。音声系回路8は、スピーカLSP及びRSPに対して音声信号を供給する。表示系回路9は、モニタTVに表示させる映像(画像)データを記憶する表示用バッファ(VRAM)10を有し、表示用バッファ10の記憶内容に基づく映像信号(画像信号)をモニタTVに供給する。
【0018】上述したバレーゲーム機の動作は以下の通りである。即ち、バレーゲーム機は、電源が投入されると、CPU2が、ROM3に記憶されているオペレーティングシステムに基づいて、音声系回路8,表示系回路9,及びビデオゲーム機Aに対して初期設定を行う。
【0019】続いて、CPU2は、ROM3に記録されているゲームプログラム,及びこのプログラムの実行に際して使用されるデータを読み出してRAM4にロードする。また、CPU2は、ROM3からバレーゲームの画像データを読み出して、RAM4に記憶させる。その後、CPU1(当審注:「CPU2」の明らかの誤記と認める。)は、RAM4にロードされたゲームプログラム,又はゲームプレーヤがコントロールパネルCPを介して入力する入力信号(命令)に基づいて、ゲームを進行させる。即ち、CPU1(当審注:「CPU2」の明らかの誤記と認める。)は、ゲームプログラム,又はゲームプレーヤからの指示内容に基づいて、画像処理の制御,又は内部処理の制御等を適宜行う。ここに、画像処理の制御とは、例えば、表示系回路9に対する各種の描画処理命令の発行等である。また、内部処理の制御とは、例えば、コントロールパネルCPの操作に応じた演算等である。
・・・(略)・・・
【0021】・・・(略)・・・〈バレーゲームの概要〉上述したバレーゲーム機は、ROM3に記録されたゲームプログラムがRAM4にロードされ、続いて、CPU2がゲームプログラムを実行することによって、バレーボールのビデオゲーム(以下、「バレーゲーム」という。)をゲームプレーヤに対して供給する。」

(c)「【0040】さらに、図11に示されるように、視点位置EPは、ボールBがモニタTVの画面の上縁から画面外に消えることとなる場合には、画面の上方に向かって移動するようになっている。なお、図8?図11において、実際にモニタTVの画面に表示されるのは、モニタTVの画面を示す矩形の枠で囲まれた範囲のみである。
〈バレーゲーム機による処理〉次に、上述したバレーゲームを実行する際におけるバレーゲーム機の処理を説明する。バレーゲーム機のCPU2は、上述した初期設定が終了すると、ゲームプログラムの実行によって、モニタTVに図示せぬスタート画面を表示させる。続いて、CPU2は、モニタTVに「INJECT COIN」の文字を表示させ、コイン投入口CHからコインの投入を受け付ける状態となる。
【0041】続いて、CPU2は、コイン投入口CHからコインが投入された場合には、その投入数(クレジット数)を検出してモニタTVに表示する。このとき、コインが一枚投入された場合には、CPU1(当審注:「CPU2」の明らかの誤記と認める。)は、「PUSH 1P BUTTON」の文字をモニタTVに表示させる。一方、コインが2枚以上投入された場合には、CPU1(当審注:「CPU2」の明らかの誤記と認める。)は、「PUSH 1P OR 2P BUTTON」の文字をモニタTVに表示させる。
【0042】そして、ゲームプレーヤによってスタートボタンSL又はスタートボタンSTが押されると、1プレイ(対CPU)モードのバレーゲームがスタートする。これに対し、ゲームプレーヤによってスタートボタンSL及びスタートボタンSTが押されると、2プレイ(対戦)モードのバレーゲームがスタートする。」

(d)「【0108】・・・(略)・・・この後、CPU2は、モニタTVの画面に再びプレイ開始画面を表示させる。但し、セットが終了した場合には、CPU2は、図示せぬセット終了画面を表示させ、バレーボール競技が終了した場合には、図示せぬゲーム終了画面を表示させる。」

(e)「【0112】なお、本実施形態では業務用のバレーゲーム機について説明したが、バレーゲーム機は家庭用のビデオゲーム機であっても良い。」

したがって、引用例1の上記記載事項及び図面の記載によれば、引用例1には、「テレビジョンモニタTV、スピーカLSP及びRSP、コントロールパネルCPとからなるビデオゲーム機A、及び、前記ビデオゲーム機A内に収容され、CPU2、前記CPU2にバス(アドレスバス,データバス,コントロールバス)Bを介して接続されたROM3、RAM4、インターフェイス回路7、音声系回路8、及び表示系回路9からなる基板1とからなるバレーボールのビデオゲームを実行する業務用のバレーゲーム機であって、
前記コントロールパネルCPは、同時に2人がゲームに参加できるように、第1操作系C1、第2操作系C2、前記第1操作系C1でゲームを行う場合のスタートボタンSL、前記第2操作系C2でゲームを行う場合のスタートボタンST、及びコイン投入口CHを有し、
前記CPU2は、テレビジョンモニタTVにスタート画面を表示させ、テレビジョンモニタTVに「INJECT COIN」の文字を表示させ、コイン投入口CHからコインが投入された場合には、その投入数(クレジット数)を検出してテレビジョンモニタTVに表示し、コインが1枚投入された場合には、「PUSH 1P BUTTON」の文字をモニタTVに表示させる一方、コインが2枚以上投入された場合には、「PUSH 1P OR 2P BUTTON」の文字をテレビジョンモニタTVに表示させ、ゲームプレーヤによってスタートボタンSL又はスタートボタンSTが押されると、1プレイ(対CPU)モードのバレーゲームがスタートし、ゲームプレーヤによってスタートボタンSL及びスタートボタンSTが押されると、2プレイ(対戦)モードのバレーゲームがスタートする、という処理を行うバレーボールのビデオゲームを実行する業務用のバレーゲーム機。」

また、当審拒絶理由通知で引用され、本願特許出願前に頒布された刊行物である特開平11-178993号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面の図示とともに次の事項が記載されている。

(f)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パチンコ遊技機やコイン遊技機等の遊技機に関し、特に、表示状態が変化可能な可変表示手段を含み、可変表示手段における表示結果があらかじめ定められた特定の表示態様となった場合に所定の遊技価値が付与可能となる遊技機に関する。」

(g)「【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明による遊技機の一例である画像表示式の遊技機の実施の一形態を示す正面図である。画像表示式遊技機1には前面枠2が設けられている。前面枠2に、ガラス扉枠(金枠)4と前面カバー板5とが開閉自在に設けられている。ガラス扉枠4は、遊技領域7を含む遊技盤面表示領域6の前面を覆うガラス板を保持する。」

(h)「【0012】前面カバー板5には、遊技者がコインを投入するためのコイン投入口18と紙幣を投入するための紙幣受取口17とが設けられている。また、前面カバー板5には、係員を呼出すための呼出ボタン20、精算を行なうための精算ボタン21、コイン1枚を賭けるための1枚賭けボタン(1BETボタン)22、あらかじめ定められた上限のコイン枚数(例えば3枚)を賭けるための最大賭けボタン(最大BETボタン)23、および遊技を開始させるための始動ボタン24が設けられている。」

(i)「【0015】トラッキングシステム3には、カード投入口8とクレジット使用数表示器9とが設けられている。遊技者が、遊技場で発行される遊技者固有のメンバーカードをカード投入口8に投入すると、カードが発行されてから現在に至るまでの間に遊技者が遊技に使用したクレジット数がクレジット使用数表示器9に表示される。そして、遊技でクレジットを使用するごとに、そのクレジット使用数がクレジット使用数表示器9に累積加算表示される。」

(j)「【0023】次に、図1および図2を参照して、本実施の形態の遊技機の遊技概要について説明する。ここでは、遊技機のゲーム方式として、例えばクレジットゲーム方式が採用されている。クレジットゲーム方式とは、遊技者が1ゲームごとに必要なコインを投入するのではなく、一時に多くのコインまたは紙幣を前もって投入する方式である。投入されたコインまたは紙幣は有価価値として記憶される。または遊技によって遊技者が獲得した獲得有価価値は、払出されることなく記憶される。そして、1ゲームごとに、必要なクレジットが、記憶されている有価価値の中から引落とされる。クレジットゲーム方式は、有価価値が記憶されている限り一々コインを投入することなく繰返し遊技を行なうことが可能であるという利点を有する。
【0024】コインまたは紙幣がコイン投入口18または紙幣受取口17に投入されると、1回の遊技に最低必要となる有価価値単位に換算された有価価値がクレジット表示部12に表示される。例えば、1回の遊技に最低必要となる有価価値単位が25セントであれば、1ドル紙幣を投入した場合にはクレジット表示部12に「4」が表示される。クレジット表示部12にクレジットが残存していることを条件に、1BETボタン22が押圧操作されると、1枚賭けの遊技ができる状態になる。1枚賭けの遊技とは、ゲームに費やすコインの枚数を1枚に限定した遊技であり、1ゲームを行なうのに1枚のコインを必要とするとともに、その1ゲームによって遊技者に付与される有価価値もコイン1枚に対応する少ない有価価値となる。
【0025】1BETボタン22が押圧操作されると、クレジット数表示部12から「1」が減算されるとともに、1遊技に使用される打球数が打球残数表示部11に表示される。打球残数表示部11には、その打玉数がデジタル表示されるとともに、打玉の画像(例えばパチンコ球)数が点灯表示される。これにより、遊技者にクレジットが打玉に変換された感覚を付与することができ、仮想空間における遊技を一層効果的に提供することができる。
【0026】また、遊技者が1BETボタン22を2度押圧すれば2枚賭け遊技ができる状態になる。2枚賭け遊技とは、1ゲームを行なうのに費やすコインが2枚に限定された遊技であり、1ゲームを行なうのに2枚のコインを必要とするとともに、1ゲームによって遊技者に付与される有価価値も投入コイン2枚に対応する比較的大きな有価価値となる。なお、2枚賭け遊技の場合には、打球残数表示部11には1枚賭け遊技に付与される打玉数の2倍の10個の打玉が表示される。
【0027】遊技者が1BETボタン22を3度押圧するか、または最大BETボタン23を押圧操作すると最大賭け遊技ができる状態になる。最大賭け遊技とは、1ゲームを行なうのに費やされるコインの枚数が例えば3枚に限定された遊技であり、1ゲームを行なうのに3枚のコインを必要とするとともに、1ゲームによって遊技者に付与される有価価値もコイン3枚に対応する最大の有価価値となる。なお、打球残数表示部には、打玉数「15」が表示されることになる。
【0028】1BETボタン22や最大BETボタン23の操作によって入力設定された賭数が、ゲーム賭数表示部13に、25セントコインの点灯表示数によって表示される。」

(k)「【0041】次に、画像表示式遊技機1の遊技動作について説明する。図5は、遊技が終了して次の遊技の操作待ちにある画像表示式遊技機1の遊技盤面表示領域6の表示を示す説明図である。遊技領域7には、前回の停止図柄が表示されている。メッセージ表示領域40cには新たなコインの投入を促す「コインを投入して下さい」という表示が点滅表示されている。各種表示部、ポケット入賞表示領域41および各種ポケット30?34の入賞回数表示領域にはすべて淡色表示で前回のゲーム結果が表示されている。例えば、ゲーム賭数表示部13には、「2」の表示がなされているので、前回のゲームにコイン2枚分に相当するクレジット(クレジット「2」)が使用されてゲームが行なわれたことがわかる。そして、獲得数表示部10にはクレジット数「503」が表示されているので、遊技の結果「503」のクレジットが遊技者に付与されたことがわかる。また、ポケット32に1回入賞しポケット30に2回入賞したことがわかる。」

(l)「【0046】図9は、コイン投入口18にコインが投入された場合の遊技盤面表示領域6における表示制御を示す説明図である。図9に示すように、1枚目のコインがコイン投入口18に投入されるとともに、スピーカ19からコイン投入音が発生し、メッセージ表示領域40bに「コイン受付完了」という表示がなされ、コインが受付けられた旨が遊技者に示される。コインの投入が受付けられるとともに、ポケット入賞表示領域41、獲得数表示部10、およびポケット30?34の入賞回数表示領域の表示がクリアされる。・・・(略)・・・
【0047】コイン(25セント)1枚が投入されると、25セントコイン画像81aが表示され、図9に矢印で示すようにゲーム賭数表示部13に移動表示される。そして、ゲーム賭数表示部13内の25セント画像と一体化し、その25セント画像が点灯し、ゲーム賭数表示部13に“1”が表示される。
【0048】・・・(略)・・・遊技者が始動ボタン24を押圧することなく、引続いて2枚目のコインを投入した場合にはゲーム賭数表示部13にコイン2枚の表示、すなわちコイン2枚賭けの表示がなされるとともに、・・・(略)・・・
【0049】図10は、コイン投入口18にコインを投入するのではなく、クレジット数表示部12に表示されている遊技者所有のクレジットからゲームに使用するコイン(クレジット)を引落とす場合の遊技盤面表示領域6を示す。
【0050】遊技者が1BETボタン22を押圧すると、クレジット数表示部12から1が減算されるとともに25セント画像81bが矢印に示すように移動表示され、ゲーム賭数表示部13内の25セントコイン画像と一体化して点灯表示される。そして、メッセージ表示領域40bにコインが受付けられた旨の表示がなされ、スピーカ19からコインの投入音が発生する。また、打球残数表示部11には打球数が表示される。引続いて遊技者が1BETボタン22を押圧すると、さらにクレジット表示部から1が減算されゲーム賭数表示部13に2枚目のコイン画像が点灯表示される。・・・(略)・・・
【0051】図11は、遊技者の1BETボタン22の押圧操作またはコイン投入口18へのコインの投入操作によって、3枚賭けの遊技状態となった場合の遊技盤面表示領域6の表示状態を示す。ゲーム賭数表示部13には3つの25セント画像がすべて点灯表示されるとともに、「3」が表示されている。」


4.対比

本願発明と引用例1発明とを対比する。

引用例1発明の「CPU2」及び「バレーボールのビデオゲームを実行する業務用のバレーゲーム機」は、本願発明の「ゲーム実行部」及び「ビデオゲーム装置」にそれぞれ相当し、引用例1発明の「CPU2、・・・からなる基板1とからなるバレーボールのビデオゲームを実行する業務用のバレーゲーム機」は、本願発明の「ゲーム実行部を備えたビデオゲーム装置」に相当する。

また、引用例1発明は、「業務用のバレーゲーム機」なので、引用例1発明の「コイン」は、少なくとも、前記「業務用のバレーゲーム機」のゲームを実行することができる最低限の金額以上の所定の金額の硬貨そのものか、前記所定の金額に対応する価値を持ったコインといえるものである。
そして、本願発明の「規定料金」は、規定料金の定義が、本件特許出願の願書に最初に添付した明細書または図面(以下、「当初明細書等」という。)に具体的に記載されてなく、また、当初明細書等の段落【0041】の「この図において、コイン投入口30に規定料金に対応したコインが投入されると、表示面241の所定のチップ表示領域CR1に投入したコインの金額に応じてチップ画像(バーチャルコイン)CGが表示されるようになっている。例えば、100円が投入されると3個のチップ画像が表示され、200円が投入されると6個のチップ画像が表示されるようになっている。」の記載や、段落【0088】の「チップ画像表示制御部119は、コイン投入口30に規定料金(例えば、100円あるいは200円)のコインが投入されると、その投入された金額に応じた数のチップ画像(例えば、100円の場合には3個のチップ画像あるいは200円の場合には6個のチップ画像)をモニタ24の表示面241におけるチップ表示領域CR1(図9)に表示する。」の記載からみて、規定料金は、その金額が任意、不定であって、本願発明のビデオゲーム装置にコインとして投入でき、ゲームを実行することができる金額以上のコインの金額という意味以上に解すことはできない。
そうすると、引用例1発明のコインも前記規定料金のコインといえるので、引用例1発明の「コイン」は、本願発明の「規定料金のコイン」に相当する。

また、引用例1発明の「業務用のバレーゲーム機」は、コイン投入口CHにコインを投入する際の投入された投入数(クレジット数)に見合った所定のゲーム回数だけゲームを実行することができるものであることは自明であるので、引用例1発明の「業務用のバレーゲーム機」の「CPU2」は、本願発明の「ビデオゲーム装置」が備える「ゲーム実行部」の「規定料金のコインを投入することによって所定のゲーム回数だけゲームを実行すること」に対応する構成を備えているといえる。

引用例1発明の「スタートボタンSL」及び「スタートボタンST」は、その押し方により、1プレイモードや2プレイモードのバレーボールのゲームを選択できるので、引用例1発明の「スタートボタンSL」及び「スタートボタンST」は、本願発明の「選択手段」に相当する。
また、引用例1発明の「1プレイ(対CPU)モードのバレーゲーム」と「2プレイ(対戦)モードのバレーゲーム」は、消費するコイン数が異なるので、基本料金の異なるゲームといえるので、引用例1発明の「1プレイ(対CPU)モードのバレーゲーム」と「2プレイ(対戦)モードのバレーゲーム」の両者は、本願発明の「基本料金の異なるタイプのゲーム」に相当し、引用例1発明の「ゲームプレーヤによってスタートボタンSL又はスタートボタンSTが押されると、1プレイ(対CPU)モードのバレーゲームがスタートし、ゲームプレーヤによってスタートボタンSL及びスタートボタンSTが押されると、2プレイ(対戦)モードのバレーゲームがスタートする」は、本願発明の「基本料金の異なるタイプのゲームを選択手段により選択し得るようにした」に相当する。
そして、引用例1に記載の「業務用のバレーゲーム機」は、最初にコインが投入された後にゲームが終了した後、どのような処理をしているのか明確には記載されていないが、ゲームセンター等に設置している多くの業務用のビデオゲーム装置は、ゲームを実行するのに必要な枚数以上のコインを投入した場合、最初にゲームのスタート画面を表示してゲームを開始し、前記ゲームが終了した後、再度、ゲームを開始できるようにゲームのスタート画面に戻るように制御されているのが普通であるので、引用例1に記載された「業務用のバレーゲーム機」の「CPU2」が、ゲーム終了後に、投入後使用されていない残余のコインに応じたゲームのスタート画面に戻るような処理を実行する点は、引用例1に記載されているに等しい事項であるといえる。
そして、引用例1発明の「業務用のバレーゲーム機」の「CPU2」は、テレビジョンモニタTVにスタート画面を表示させ、テレビジョンモニタTVに、コインの投入数(クレジット数)に応じて、「PUSH 1P BUTTON」の文字か、「PUSH 1P OR 2P BUTTON」の文字を表示させるものである。
そうすると、引用例1発明は、ゲーム終了後に、テレビジョンモニタTVにスタート画面を表示させ、残余のコインの投入数(クレジット数)に応じて、「PUSH 1P BUTTON」の文字か、「PUSH 1P OR 2P BUTTON」の文字を表示させ、前記表示は、ゲーム終了後の各回毎に行われるといえるので、引用例1発明の「業務用のバレーゲーム機」の「CPU2」は、本願発明の「ビデオゲーム装置」が備える「ゲーム実行部」の「各回毎に基本料金の異なるタイプのゲームを選択手段により選択し得るようにした」に対応する構成を備えているといえる。

引用例1発明の「業務用のバレーゲーム機」の「CPU2」が実行するバレーボールゲームのゲーム回数は、コインの投入数(クレジット数)と、異なるコイン数を消費する1プレイ(対CPU)モードのバレーボールと2プレイ(対戦)モードのバレーゲームとに応じて定まるといえるので、引用例1発明の「業務用のバレーゲーム機」の「CPU2」は、本願発明の「ビデオゲーム装置」が備える「ゲーム実行部」の「前記ゲーム回数が前記投入されたコインの金額と選択されたゲームの基本料金とに応じて定まる」に対応する構成を備えているといえる。

引用例1発明の「業務用のバレーゲーム機」は「投入数(クレジット数)」の回数分だけバレーゲームを実行できるので、引用例1発明の「投入数(クレジット数)」は、本願発明の「ゲームの残回数」に相当する。
また、引用例1発明は、コインの「投入数(クレジット数)を検出してモニタTVに表示」するものであり、前記表示は、ゲーム終了後、残余のコインの投入数(クレジット数)がある場合、ゲーム終了毎に行われるといえるので、引用例1発明の「投入数(クレジット数)を検出してモニタTVに表示」は、本願発明の「ゲームが実行される毎にゲームの残回数を報知する報知手段」に相当する。

引用例1発明の「業務用のバレーゲーム機」は、「投入数(クレジット数)」に応じて、テレビジョンモニタTVに、「PUSH 1P BUTTON」の文字や「PUSH 1P OR 2P BUTTON」の文字を表示しているので、「業務用のバレーゲーム機」の「CPU2」が、「投入数(クレジット数)」に応じて、1プレイモードのバレーゲームや2プレイモードのバレーゲームを実行可能かの判別を行っていることは自明であり、前記判別は、ゲームスタート時の各回毎に行われることも自明であるので、引用例1発明の「業務用のバレーゲーム機」は、本願発明の「各回のゲームの開始時に前記残回数に応じていずれのタイプのゲームが許可可能かを判別する判別手段」に対応する構成を備えているといえる。

引用例1発明の「業務用のバレーゲーム機」は、テレビジョンモニタTVに表示された「PUSH 1P BUTTON」の文字か「PUSH 1P OR 2P BUTTON」の文字かのいずれかが表示されたことに応じて、ゲームプレーヤが、「スタートボタンSL又はスタートボタンST」を押すか、あるいは、「スタートボタンSL及びスタートボタンST」を押すかにより、1プレイモードのバレーゲーム、あるいは、2プレイモードのバレーゲームを実行するものなので、引用例1発明の「業務用のバレーゲーム機」は、本願発明の「許可可能なタイプのゲームの前記選択手段による選択を許可する許可手段」に対応する構成を備えているといえる。

引用例1発明の「テレビジョンモニタTV」は、本願発明の「モニタ」に相当し、引用例1発明の「業務用のバレーゲーム機」は、本願発明の「報知手段は、モニタと、・・・を備えたもの」に対応する構成を備えているといえる。

引用例1発明の「業務用のバレーゲーム機」は、コイン投入口CHに投入されたコイン投入数(クレジット数)をテレビジョンモニタTVに表示させるものであり、前記表示は、前記テレビジョンモニタTVの所定の表示領域に表示するものであることは自明である。
そして、引用例1発明の前記コイン投入数(クレジット数)は、投入されたコインの金額に応じた数字を表示するものといえ、引用例1発明の「コイン投入数(クレジット数)」と、本願発明の「投入されたコインの金額に応じた複数のチップ画像」とはともに、「投入されたコインの金額に応じた情報」の点で一致するといえ、引用例1発明の「コイン投入口CHからコインが投入された場合には、その投入数(クレジット数)を検出してテレビジョンモニタTVに表示し」と、本願発明の「前記報知手段は、モニタと、規定料金のコインが投入されたことに応じて前記モニタの所定のチップ表示領域に当該投入されたコインの金額に応じた複数のチップ画像を表示する・・・表示制御手段とを備えた」とはともに、「前記報知手段は、モニタと、規定料金のコインが投入されたことに応じて前記モニタの所定の表示領域に当該投入されたコインの金額に応じた情報を表示する表示制御手段とを備えた」の点で一致するといえる。

したがって、本願発明と引用例1発明の両者は、
「規定料金のコインを投入することによって所定のゲーム回数だけゲームを実行することができ、各回毎に基本料金の異なるタイプのゲームを選択手段により選択し得るようにしたもので、前記ゲーム回数が前記投入されたコインの金額と選択されたゲームの基本料金とに応じて定まるゲーム実行部を備えたビデオゲーム装置であって、ゲームが実行される毎にゲームの残回数を報知する報知手段と、各回のゲームの開始時に前記残回数に応じていずれのタイプのゲームが許可可能かを判別する判別手段と、許可可能なタイプのゲームの前記選択手段による選択を許可する許可手段とを有し、
前記報知手段は、モニタと、規定料金のコインが投入されたことに応じて前記モニタの所定の表示領域に当該投入されたコインの金額に応じた情報を表示する表示制御手段とを備えたビデオゲーム装置。」
の点で一致し、次の各点で相違する。

相違点1:本願発明では、報知手段に備えられる表示制御手段により表示される所定の表示領域が「所定のチップ表示領域」であって、前記所定の表示領域に、「複数のチップ画像」を表示するものであるのに対して、引用例1発明では、前記所定の表示領域に表示される情報は、コイン投入数(クレジット数)であり、前記所定の表示領域も所定のチップ表示領域でない点。

相違点2:本願発明では、報知手段に備えられる表示制御手段が、「所定のチップ表示領域」に、「ゲームが実行される毎に前記チップ画像の個数を前記選択したタイプのゲームに応じた個数だけ差し引いて表示する」ものであるのに対して、引用例1発明では、前記構成に関する限定がない点。

相違点3:本願発明では、報知手段に備えられる表示制御手段が、「その差し引いたチップ画像を前記モニタの消費済みチップ表示領域に移動表示する」ものであるのに対して、引用例1発明では、前記構成に関する限定がない点。


5.判断

相違点1について
引用例2には、画像表示式遊技機1の遊技盤面表示領域6のゲーム賭数表示部13内に複数の25セントコイン画像を表示することができる発明(特に、引用例2の記載事項(j)、(l))が記載され、表示する前記25セントコイン画像の個数が、前記画像表示式遊技機1における1ゲームを行うのに費やすコインの数に対応するものであり、コイン数を、数字で表示せずにコイン画像で表示する技術は従来から知られた技術であるといえる。
そして、引用例2に記載された発明の「画像表示式遊技機1」、「複数の25セントコイン画像」及び「ゲーム賭数表示部13」は、本願発明の「ビデオゲーム装置」、「複数のチップ画像」及び「チップ表示領域」に相当するので、引用例2には、ビデオゲーム装置において、複数のチップ画像をチップ表示領域に表示する発明が記載されているといえる。
そして、引用例1発明と引用例2に記載された発明とはともに、ビデオゲーム装置の発明である点で共通するものである。
したがって、引用例1発明に上記引用例2に記載された発明を適用し、引用例1発明の「コイン投入口CHからコインが投入された場合には、その投入数(クレジット数)を検出してテレビジョンモニタTVに表示」する際の前記「投入数(クレジット数)」に換えて「複数のチップ画像」とし、引用例1発明において、相違点1に係る本願発明の発明特定事項を得ることは何ら格別ではない。

相違点2について
引用例1発明に引用例2に記載された発明を適用し、引用例1発明の「投入数(クレジット数)」に換えて「複数のチップ画像」とする点は、上記「相違点1について」で検討済みの事項である。
そして、引用例1発明は、バレーゲームが実行される毎に、「投入数(クレジット数)」から、1プレイモードのバレーゲームか2プレイモードのバレーゲームかどちらのモードのバレーゲームを選択したかに応じて、前記選択した各モードに必要とされるコイン数を減算して、新たな「投入数(クレジット数)」として表示するものである。
そうすると、引用例1発明に上記引用例2に記載された発明を適用して、引用例1発明の「投入数(クレジット数)」に換えて「複数のチップ画像」とすれば、「投入数(クレジット数)」を減算することは、「複数のチップ画像」のチップ画像の個数を差し引くことに対応することとなる。
したがって、引用例1発明に上記引用例2に記載された発明を適用し、引用例1発明において、相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることは何ら格別ではない。

相違点3について
引用例2には、画像表示式遊技機1に設けられたトラッキングシステム3のクレジット使用数表示器9に、カードが発行されてから現在に至るまでの間に遊技者が遊技に使用したクレジット数を表示し、遊技でクレジットを使用するごとに、そのクレジット使用数を累積加算表示する発明が記載されており、遊技において使用したクレジット使用数を累積加算して表示する技術は従来から知られた技術である。
また、コインの投入数(クレジット数)を複数のコイン画像で表示する技術は、上記「相違点1について」で述べたように同じく引用例2に記載された発明である。
そして、引用例1発明と引用例2に記載された発明とはともに、ビデオゲーム装置の発明である点で共通するものである。
したがって、引用例1発明に上記引用例2に記載された画像表示式遊技機1において、遊技において使用したクレジット使用数を累積加算して表示する発明を適用し、前記適用に際して、前記クレジット使用数を、上記引用例2に記載されたコイン投入数(クレジット数)を複数のコイン画像で表示する発明を採用し、引用例1発明のテレビジョンモニタTVの所定の表示領域とは別の表示領域に、ゲームに使用したコイン画像を表示するようにすることは何ら格別ではない。
そして、前記「コイン画像」は、本願発明の「チップ画像」に相当し、「ゲーム使用したコイン画像」は、本願発明の「差し引いたチップ画像」に相当し、前記「使用したコイン画像」を表示する「別の表示領域」は、本願発明の「モニタの消費済みチップ表示領域」に相当するといえ、前記「ゲーム使用したコイン画像」は、所定の表示領域に表示されたコイン画像から減算されたコイン画像なので、前記「ゲーム使用したコイン画像」を「別の表示領域」に表示する際の「表示」は、「移動表示」といえるものである。
以上総合すると、引用例1発明に引用例2に記載された発明を適用し、引用例1発明において、相違点3に係る本願発明の発明特定事項を得ることは何ら格別ではない。

そして、本願発明の効果は、引用例1発明及び引用例2に記載された発明から当業者が予測できる範囲内のものである。

したがって、本願発明は、引用例1発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用例1発明及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2008-01-07 
結審通知日 2008-01-08 
審決日 2008-01-21 
出願番号 特願2000-46658(P2000-46658)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 榎本 吉孝松川 直樹  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 植野 孝郎
森内 正明
発明の名称 ビデオゲーム装置及びビデオゲームにおけるゲーム選択方法  
代理人 小谷 悦司  
代理人 樋口 次郎  
代理人 伊藤 孝夫  

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