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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B42D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B42D
管理番号 1174635
審判番号 不服2005-7126  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-21 
確定日 2008-03-14 
事件の表示 特願2001-223319「販売促進用シート」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月 4日出願公開、特開2003- 34092〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年7月24日の出願であって、平成17年3月11日付で拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月23日付で手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本件補正の補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、補正前の
「スキンケア化粧品の推奨やスキンケア方法の説明に用いられる販売促進用シートであって、シート上に、皮膚表面から真皮にいたる皮膚内部を示す皮膚断面図と、コラーゲンの新陳代謝の過程を模式的に示す説明図とが表示されており、上記皮膚断面図の真皮部分に、コラーゲンが模式的に表示されているとともに、この模式的なコラーゲン表示部に重なる位置か、この模式図と関係づけられた所定の位置に、コラーゲンの触感を模した、厚み3?5mmの軟質多孔質体が貼着されていることを特徴とする販売促進用シート。」から、補正後の
「スキンケア化粧品の推奨やスキンケア方法の説明に用いられる販売促進用シートであって、シート上に、皮膚表面から真皮にいたる皮膚内部を示す皮膚断面図と、コラーゲンの新陳代謝の過程を模式的に示す説明図とが表示されており、上記皮膚断面図の真皮部分に、コラーゲンが模式的に表示されているとともに、この模式的なコラーゲン表示部に重なる位置か、この模式図と関係づけられた所定の位置に、コラーゲンの触感を模した軟質多孔質体からなる、厚み3?5mmで外形が木の葉状のコラーゲン模擬体が貼着されていることを特徴とする販売促進用シート。」
と補正された(補正個所に下線を引いた。)。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「軟質多孔質体」の限定事項「厚み3?5mm」を「厚み3?5mmで外形が木の葉状のコラーゲン模擬体」と更に限定するものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された特開平10-143077号公報(以下「引用例」という。)には、本願補正発明に関連する事項として、図面とともに、以下の事項が記載されている。
ア.「この発明は、化粧品等の販売促進に用いられる販売促進用シートに関するものである。
【従来の技術】従来から、化粧品販売では、専門の販売員が、店頭あるいは訪問販売先で、化粧品メーカーから配布された化粧品販売促進用のシートにもとづいて、顧客に化粧品の売り込みを行っている。上記販売促進用シートは、通常、長方形の厚紙もしくは薄いプラスチック板からなるシートの表面に、化粧品の種類やその使用方法、肌の状態の模式図等を印刷したもので、販売員は、このシートを顧客に提示しながら、顧客に対するカウンセリングやアドバイス,具体的な化粧品の推奨等を行っている。
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記販売促進用シートは、あくまでも印刷物であるため、そこに印刷された写真や模式図等をいかに駆使して説明しても、「しっとりとした肌触り」といった、触感に属するニュアンスは伝わりにくく、従来から販売員が説明に苦労するところであった。特に、保湿効果を謳った化粧水等を推奨する場合、その効果を、使用前と使用後の写真や皮膚断面の模式図で示しても、顧客に実感させることは容易でなかった。」(段落【0001】?【0003】参照)
イ.「この発明の販売促進用シートは、シートと、軟質多孔質体からなる第1のパフと、乾燥状態で硬質化しており吸水によって軟質化する多孔質体からなる第2のパフとを備え、上記第1のパフが、上記シートの表面の一箇所に貼着されており、上記第2のパフが、上記シートの表面の他の一箇所に設けられたパフ保持部に着脱自在に保持されているという構成をとる。」(段落【0005】参照)
ウ.「シート1表面の左側には、人の顔を模したイラスト4,5が、上下に2つ表示されており、各イラスト4,5の顔の部分に...パフ2,3が異なる態様で取り付けられている。」(段落【0009】)
エ.「このイラスト4の右側には、肌に潤いと張りのある人の皮膚断面をイメージ的に示す断面図11が表示され、さらにその右側には、その状態の説明文12が表示されている。なお、丸枠13で囲われた部分は、上記断面図11の一部を拡大して示したもので、皮膚の張り,弾力を左右するコラーゲンの状態をイメージ的に示すものである。」(段落【0014】参照)
オ.「肌に潤いと張りのない人の皮膚断面をイメージ的に示す断面図16が表示され...下段と同様の配置で、潤いと張りのない人のコラーゲンの状態を示す丸枠18と...が表示されている。」(段落【0015】参照)
カ.「販売促進用シートを用い、化粧品販売員は、店頭もしくは訪問販売先において、例えばつぎのようにして顧客に対し化粧水の推奨を行うことができる。...化粧水の使用に興味を示した顧客、あるいは化粧水購入を決めた顧客に対しては、引き続きシート1の裏面を提示して、それを用いたお手入れ方法を教示することができる。」(段落【0018】参照)
キ.「パフ2は、潤いと張りのある頬の感触を実感させるためのものであるから、その感触が、実際のそれに近似していることが好ましい。このような軟質多孔質体としては、従来から、化粧用パフとして広く用いられているもので差し支えはなく、例えばウレタンスポンジ,ナイロンスポンジ,セルローススポンジ,ポリビニルアルコール(PVA)スポンジ等があげられる。」(段落【0019】参照)
ク.「パフ2,3が頬を模したものであるから、頬の感触を基準としてパフ2,3の硬度等を設定するが、パフ2,3は必ずしも頬を模したものである必要はない。例えば、膝や足のかかとに潤いを与えるような化粧品の推奨を目的とする販売促進用シートにおいては、上記パフ2,3の感触は、膝や足のかかとを基準として設定するため、多少硬めに設定される。そして、その形状も、円板状に限らず、角板状や多角形状等、適宜の形状に設定される。また、当然ながら、対象とする部位や目的に応じて、販売促進用シートのシート1表面,裏面に表示されるイラストや説明文等の内容も変わる。」(段落【0021】参照)
ケ.図4から、皮膚断面をイメージ的に示す断面図11,16は、皮膚表面から真皮、さらには真皮以下の層にいたる皮膚内部を示す断面図であること、各真皮には楕円形や紡錘形が表示されていること及びイラスト4の模式的な頬表示部に重なる位置に外形が円形であるパフ2が配置されることが看取できる。
第4図の断面図11,16における楕円形や紡錘形が表示された真ん中の厚い層が真皮部分を示していること、真皮部分の大部分がコラーゲンであることは、技術常識であるから、真皮部分に表示された楕円形や紡錘形が繊維芽細胞を表示していること、繊維芽細胞をとりまく部分が、コラーゲンであることは明らかであるから、上記断面図11,16のそれぞれの真皮部分には、コラーゲンが模式的に表示されているといえる。

したがって、記載ア?ケを含む引用例には、以下の発明が記載されていると認めることができる。
「化粧水の推奨やそれを用いたお手入れ方法の教示に用いられる販売促進用シートであって、シート1上に、肌に潤いと張りのある人の皮膚断面と肌に潤いと張りのない人の皮膚断面のそれぞれを皮膚表面から真皮にいたる皮膚内部をイメージ的に示す断面図11,16が表示されており、上記断面図11,16のそれぞれの真皮部分に、コラーゲンが模式的に表示されているとともに、人の顔を模したイラスト4の模式的な頬表示部に重なる位置に、頬の感触を実感させるための頬を模した軟質多孔質体からなる外形が円形であるパフ2が貼着されている販売促進用シート。」(以下、「引用発明」という。)

(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを比較する。
ア.引用発明の「化粧水」、「それを用いたお手入れ方法の教示」、「断面図11,16」は、それぞれ、本願補正発明の「スキンケア化粧品」、「スキンケア方法の説明」、「皮膚断面図」に相当している。
イ.引用発明は、「肌に潤いと張りのある人の皮膚断面と肌に潤いと張りのない人の皮膚断面のそれぞれを皮膚表面から真皮にいたる皮膚内部をイメージ的に示す断面図11,16が表示されており、上記断面図11,16のそれぞれの真皮部分に、コラーゲンが模式的に表示されている」から、引用発明と本願補正発明とは、皮膚表面から真皮にいたる皮膚内部を示す皮膚断面図が表示されており、上記皮膚断面図の真皮部分に、コラーゲンが模式的に表示されている点で共通しているといえる。
ウ.引用発明の「頬の感触を実感させるための頬を模した」と、本願補正発明の「コラーゲンの触感を模した」とは、皮膚部分の触感を模したものとして共通しているから、引用発明の「頬の感触を実感させるための頬を模した軟質多孔質体からなる外形が円形であるパフ2」と本願補正発明の「コラーゲンの触感を模した軟質多孔質体からなる、厚み3?5mmで外形が木の葉状のコラーゲン模擬体」とは、皮膚部分の触感を模した軟質多孔質体からなる模擬体として共通している。

以上のことから、両者の一致点と相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「スキンケア化粧品の推奨やスキンケア方法の説明に用いられる販売促進用シートであって、シート上に、皮膚表面から真皮にいたる皮膚内部を示す皮膚断面図が表示されており、上記皮膚断面図の真皮部分に、コラーゲンが模式的に表示されているとともに、皮膚部分の触感を模した軟質多孔質体からなる模擬体が貼着されている販売促進用シート。」
[相違点]
A.本願補正発明では、皮膚表面から真皮にいたる皮膚内部を示す皮膚断面図と、コラーゲンの新陳代謝の過程を模式的に示す説明図とが表示されているのに対して、引用発明では、肌に潤いと張りのある人の皮膚断面と肌に潤いと張りのない人の皮膚断面のそれぞれについて皮膚表面から真皮にいたる皮膚内部をイメージ的に示す断面図11,16が表示されている点。
B.皮膚部分の触感を模した模擬体について、本願補正発明では、コラーゲンの触感を模したコラーゲン模擬体と(称)しており、その厚みが3?5mmで外形が木の葉状であるのに対して、引用発明では、頬の感触を実感させるための頬を模したパフと(称)しており、その厚みが定かでなく外形が円形である点。
C.模擬体の貼着位置が、本願補正発明では、模式的なコラーゲン表示部に重なる位置か、この模式図と関係づけられた所定の位置としているのに対して、引用発明では、模式的な頬表示部に重なる位置である点

[相違点の判断]
上記相違点について判断する。
相違点Aについて
引用発明において、肌に潤いと張りのある状態と肌に潤いと張りのない状態とは、後者から前者あるいはその逆にというように相互に移行可能な状態をいうことは明らかであるから、引用発明の「真皮部分にコラーゲンが模式的に表示されている、肌に潤いと張りのある人の皮膚断面と肌に潤いと張りのない人の皮膚断面のそれぞれを皮膚表面から真皮にいたる皮膚内部をイメージ的に示す断面図11,16」は、新陳代謝の過程的な違いによる(同一人の)皮膚状態の違いを模式的に示す説明図であるということができ、さらに、特定の新陳代謝の過程的な違いによる(同一人の)皮膚状態の違いは、新陳代謝の過程的な違いによる(同一人の)当該皮膚部分におけるコラーゲンの状態の違いに左右されることが明らかであるから、結局、皮膚断面のそれぞれを皮膚表面から真皮にいたる皮膚内部をイメージ的に示す断面図を表示すると共にコラーゲンの新陳代謝の過程を模式的に示す説明図を表示するものであるということができる。
そうすると、一般に、一つの図で同時に行っている二つの相対的に区別できる表示を、別々の図で行うことは、図表示として慣用されていることであるから、引用発明において、真皮部分にコラーゲンが模式的に表示されている、肌に潤いと張りのある人の皮膚断面と肌に潤いと張りのない人の皮膚断面のそれぞれを皮膚表面から真皮にいたる皮膚内部をイメージ的に示す断面図11,16が表示される構成に代えて、皮膚表面から真皮にいたる皮膚内部を示す皮膚断面図と、コラーゲンの新陳代謝の過程を模式的に示す説明図とが表示されている、本願補正発明の相違点Bに係る構成を、採用することは、当業者が適宜なす設計変更ということができる。
相違点B、Cについて
皮膚部分の触感を模した模擬体について、本願の発明の詳細な説明において、「コラーゲン模擬体11は、コラーゲンの触感に近似した触感を有する軟質多孔質体で形成されている。上記軟質多孔質体は、コラーゲンの触感に近似するものであれば、どのようなものであってもよいが、材質としては、例えば、ウレタンスポンジ、ナイロンスポンジ、セルローススポンジ、ポリビニルアルコール(PVA)スポンジ等の樹脂発泡体があげられる。」(段落【0013】参照)と記載している。一方、引用例では頬等の皮膚部分の触感を模した模擬体について、「パフ2は、潤いと張りのある頬の感触を実感させるためのものであるから、その感触が、実際のそれに近似していることが好ましい。このような軟質多孔質体としては、従来から、化粧用パフとして広く用いられているもので差し支えはなく、例えばウレタンスポンジ,ナイロンスポンジ,セルローススポンジ,ポリビニルアルコール(PVA)スポンジ等があげられる。」(前記記載キ参照)と記載されている。
上記のように、両者は、同一の材料であるウレタンスポンジ,ナイロンスポンジ,セルローススポンジ,ポリビニルアルコール(PVA)スポンジ等を用いており、皮膚部分の触感を模した模擬体について、本願補正発明ではコラーゲンの触感を模したコラーゲン模擬体と称し、引用発明では、頬の感触を実感させるための頬を模したパフと称しているが、両者の材質、柔軟性、弾力等に違いがあるとは認められないから、同じ触感を有するものと解される。してみれば、この相違点は、同じ触感を有する模擬体を頬の感触を実感させるための頬を模したパフと表現するか、頬等の皮膚の触感を左右する真皮部分を構成するものとして従来から周知のコラーゲンを、皮膚部分の触感を呈するものとし、コラーゲンの触感を模したコラーゲン模擬体と表現するかの違いにすぎない。
また、模擬体の厚みはシートの取り扱い性等を考慮して当業者が適宜決定すべき事項であって、3?5mmは当業者がシート状に貼着する模擬体の厚みとして普通に採用する程度のものであり、さらに、その外形を木の葉状とすることも、コラーゲンの纖維芽細胞の外形が木の葉状であることがよく知られていることであり、引用例には、模擬体を頬等の皮膚(の触感)を模すだけでなく、頬等の皮膚部分の外形を模すことが示唆されている(記載ク参照)から、当業者が想起できることであり、結局、相違点Bは、当業者が適宜なす設計変更によるものにすぎない。
また、相違点Cのように、模擬体の貼着位置も模式的な頬表示部に重なる位置から模式的なコラーゲン表示部に重なる位置に変更することも、皮膚部分の触感を模した模擬体をコラーゲンの触感を模した模擬体と呼称したことに伴なって当業者が普通に考える設計変更の範囲を越えるものでない。
したがって、上記相違点A乃至Cは、いずれも実質的な相違点とすることができず、本願補正発明は、引用発明と実質的に同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記補正前の特許請求の範囲の請求項1
に記載された事項により特定されるとおりのものと認める(上記2.(1)参照)。
(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、本願補正発明の模擬体の特定事項「厚み3?5mmで外形が木の葉状のコラーゲン模擬体」から「外形が木の葉状」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項の全部をその特定事項とし、さらに、他の特定事項をその特定事項としたものに相当する本願補正発明が、上記「2.(3)」に記載したとおり、引用発明と実質的に同一であるから、本願発明も、同様な理由により、引用発明と実質的に同一である。

(3)むすび
したがって、本願発明は、引用発明と実質的に同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

4.結び
以上のとおりであるから、本件補正は却下されなければならず、本願発明は特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-12-28 
結審通知日 2008-01-15 
審決日 2008-01-29 
出願番号 特願2001-223319(P2001-223319)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (B42D)
P 1 8・ 575- Z (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 蔵野 いづみ  
特許庁審判長 番場 得造
特許庁審判官 菅藤 政明
藤井 靖子
発明の名称 販売促進用シート  
代理人 西藤 征彦  
代理人 伊藤 健  

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