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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1174649
審判番号 不服2005-4451  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-14 
確定日 2008-03-12 
事件の表示 平成 8年特許願第123217号「流体又は半流体の物質を収容し小出しするための装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年12月 3日出願公開、特開平 8-318979〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願発明
本願は、平成8年5月17日(パリ条約による優先権主張 平成7年5月17日、フランス)の出願であって、その請求項1ないし17に係る発明は、願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は次のとおり記載されている。
「【請求項1】 流体又は半流体の物質(P)を収容し小出しするための装置(1;40;50;60)において、
ポンプ(18)が設けられる物質注出用オリフィスを有し上記物質(P)を収容するのに適した容器であって、該容器の内側に上記物質(P)を収容するスペース(23)を形成するバッグからなる底壁部(28)を有する容器(2)を備え、
上記ポンプ(18)は、空気を流入させることなく物質(P)を注出させることができるようにするのに適した弁を備え、
上記バッグ(28)は、上記スペース(23)の容積を減じるようにかつ容器(2)内の物質(P)が空気に接することのないように、上記物質(P)の注出に対応して上記容器(2)の内側を移動することができ、
上記バッグ(28)の一端側周縁部は、上記容器(2)に固定され、
上記バッグ(28)は、バッグ(28)が容器(2)の内部形状と実質的に一致するまで変形して上記スペース(23)の容積を減じるように構成され、
上記バッグ(28)は、弾性的に変形可能な材料からなることを特徴とする装置。」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」という。)

2 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である実願昭49-155547号(実開昭51-80714号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある。
a「シリンダ10及びピストン11と、それ等両者が伸張する方向にスプリング12を介在して吸引室13を設け、該吸引室内を容器体1内及び外気と交互に連通し、又は遮断する相反する動作をなす逆止弁16、9を吸引孔15及び注出孔8に夫々備えた注出ポンプ2を容器体の口頸部5へ連設させ、又容器体の下部配置として該部に設けた逆止弁29を有する吸気孔28の内端と連通し、容器体の収容室bと可動部材31により遮断され、前記注出ポンプ動作による収納物品注出に応じて外気を吸入し、容積を拡大する膨張室3を設けたことを特徴とする化粧品等練状物注出容器。」(実用新案登録請求の範囲)
b「膨張室3は次のように構成される。前記容器体1の下部口頸部20へ螺着可能に内周へ螺条21を周設したネジ筒22を、平坦に形成された底板23及び該底板周縁から起立した周壁24とからカップ型に形成した底蓋25のその底板から起立して容器体の下部口頸部20に螺着され、容器体1は起立可能に設けられると共に上記底蓋25の底壁中心には、略中間配置に仕切壁26を有する筒部27が起立して設けられ、上記仕切壁の中心へ吸気孔28を開口して該吸気孔へ外気を吸気できるように逆止弁29を配置し、吸気孔の内端、つまり筒部27へゴム等から成る風船30を気密に嵌着して成る可動部材31で容器体1の収納物aを収納する収容室bと遮断された膨張室3を構成して成る。」(明細書4頁6ないし19行)
c「注出容器は、使用前の状態において収容室bの収納物aにより可動部材31は容器体1内の下降限にあつて膨張室3の容積は最も小さくなつている。上記状態において、注出ポンプ2のシリンダ10をスプリング12の弾撥力に抗して押下げると、吸引室13内の圧縮空気により吸引孔15は逆止弁16により閉じると共に圧縮空気により他方の逆止弁9は開いて注出孔8から外部へ排出される。次にシリンダの押圧を解くとシリンダはスプリングの作用により押上げられ、吸引室内13は負圧化する為注出孔8は閉じるかわりに吸引孔15が開いて容器体内の収納物aを吸引室内に吸引するから、次にシリンダを押下げれば吸引した分の収納物は注出口8から注出する……収納物が注出されると収容室b内の収納物aは、注出ポンプ動作により上部へ吸い上げられるように作用する為、この時可動部材31は引き上げられ、(風船であればふくらむ)その時逆止弁29が上昇して吸気孔28を開くから外気は膨張室3内に吸気され、その後瞬時に逆止弁は閉じ膨張室3の容積は拡大し、容器体1の容積は注出された収納物の量だけ膨張室の容積拡大が行なわれて使用前と同一に保たれる。」(同5頁17行ないし6頁20行)
d「注出ポンプ動作によつて収納物を当初から最後まで残存させることなく注出させる事ができ……又膨張室内に吸気された空気は可動部材31により内容物と遮断され、又注出ポンプのその吸引孔と注出孔へ設けた逆止弁16、9により使用時、非使用時何れも収容室内を外気と遮断して収納物aは外気にふれない」(同7頁14ないし8頁5行)
以上の記載及び第1図ないし第3図によれば、引用例には次の発明が記載されていると認められる。
「注出ポンプ2が容器体1の口頸部5に設けられ、内側に化粧品等練状物である収納物を収容する収容室bを有する容器体1を備え、
注出ポンプは、収納物を注出させる逆止弁9を備え、
容器体1の下部口頸部20へ螺着される底板23に設けられた筒部27へゴム等からなる風船30を嵌着して成る可動部材31を備え、
可動部材31により容器体1の収容室bと遮断され、注出ポンプ動作による収納物注出に応じて外気を吸入し、容積を拡大する膨張室3を備え、
可動部材31は収納物が注出されると、収納物を空気と遮断しながら容器体内を引き上げられ、容器体1の容積は注出された収納物の量だけ膨張室の容積拡大が行なわれて使用前と同一に保たれ、
収納物を最後まで残存させることなく注出させる事ができる、化粧品等練状物注出容器。」

3 対比
本願発明1と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「化粧品等練状物である収納物」、「化粧品等練状物注出容器」、「容器体1」、「収容室b」、「可動部材31」及び「収納物を注出させる逆止弁9」は、それぞれ本願発明1の「流体又は半流体の物質」、「流体又は半流体の物質を収容し小出しするための装置」、「容器」、「物質を収容するスペース」、「バッグ」及び「空気を流入させることなく物質(P)を注出させることができるようにするのに適した弁」に相当する。
引用例記載の発明において、可動部材は、容器体1の下部口頸部20へ螺着される底板23に設けられた筒部27へゴム等からなる風船30を嵌着して成り、収容室bと外気を吸入する膨張室3とを遮断するものであり、容器体の内側に収容室bを形成する底壁部を構成しているものと認められる。
また、引用例記載の発明において、収納物が注出されると、可動部材31は容器体内を引き上げられ、注出された収納物の量だけ膨張室の容積拡大が行なわれて、容器体1の容積は使用前と同一に保たれる。すなわち、収納物が注出されると、注出された収納物の量だけ膨張室の容積が拡大すると共に収容室bの容積が減じるように、可動部材31は容器体内を引き上げられて移動する。したがって、引用例記載の発明において、収納物を最後まで残存させることなく注出させると、可動部材31は、容器体1の内部形状と実質的に一致するまで変形して収容室bの容積を減じるように構成されているといえる。
さらに、引用例記載の発明の可動部材は、ゴム等からなる風船30であるから、弾性的に変形可能な材料からなるものである。
そうすると、両者は、
「流体又は半流体の物質を収容し小出しするための装置において、
ポンプが設けられる物質注出用オリフィスを有し上記物質を収容するのに適した容器であって、該容器の内側に上記物質を収容するスペースを形成するバッグからなる底壁部を有する容器を備え、
上記ポンプは、空気を流入させることなく物質を注出させることができるようにするのに適した弁を備え、
上記バッグは、上記スペースの容積を減じるようにかつ容器内の物質が空気に接することのないように、上記物質の注出に対応して上記容器の内側を移動することができ、
上記バッグは、バッグが容器の内部形状と実質的に一致するまで変形して上記スペースの容積を減じるように構成され、
上記バッグは、弾性的に変形可能な材料からなる装置」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点
本願発明1では、バッグ(28)の一端側周縁部は、容器(2)に固定されているのに対して、引用例記載の発明では、バッグの一端側周縁部は、容器体1の下部口頸部20へ螺着される底板23に設けられた筒部27へ嵌着されている点。

そこで、上記相違点について検討すると、バッグの一端側周縁部をどの部材に固定するかは、当業者が必要に応じ適宜決め得る設計的事項にすぎず、本願発明1のようにバッグの一端側周縁部を容器に固定したことに、格別の困難性は認められない。
そして、本願発明1が奏する効果も、引用例記載の発明から当業者が予測できたものであり、格別顕著なものとはいえない。

4 むすび
したがって、本願発明1は、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-09 
結審通知日 2007-10-16 
審決日 2007-10-29 
出願番号 特願平8-123217
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川本 真裕  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 田中 玲子
関口 勇
発明の名称 流体又は半流体の物質を収容し小出しするための装置  
代理人 青山 葆  
代理人 大森 忠孝  
代理人 大畠 康  
代理人 山崎 宏  

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