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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1174827
審判番号 不服2005-13592  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-14 
確定日 2008-03-13 
事件の表示 平成 9年特許願第 40319号「視線誘導標システム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月 9日出願公開、特開平10-153975〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年2月25日(優先権主張 平成8年9月25日)の出願であって、平成17年6月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるともに、同年8月12日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成17年8月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成17年8月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の補正を含むものであり、特許請求の範囲の請求項1は、
「点灯・消灯される誘導標が設けられた視線誘導標識を複数配置し、配置した順番に誘導標が点灯・消灯されるようにした視線誘導標システムにおいて、GPS信号を受信すると共にGPS信号から検出した1秒パルス信号を出力するGPS受信機と、GPS受信機から出力される1秒パルス信号を基準にして誘導標の点灯・消灯を制御する制御装置とを各視線誘導標識にそれぞれ設け、視線誘導標識の配置の順に誘導標が点灯・消灯されるように制御装置による制御のタイミングを設定するタイミング設定部を各制御装置に設けて成ることを特徴とする視線誘導標システム。」から

「点灯・消灯される誘導標が設けられた視線誘導標識を複数配置し、配置した順番に誘導標が点灯・消灯されるようにした視線誘導標システムにおいて、各視線誘導標識に、GPS信号を受信するGPSアンテナと、ハウジングと、太陽電池と、太陽電池で発電された電力を充電しGPS受信機と誘導標に給電する電源用蓄電池を取り付け、ハウジング内に、受信されたGPS信号から検出した1秒パルス信号を出力するGPS受信機と、制御装置とを内蔵し、制御装置に、GPS受信機から入力される1秒パルス信号に同期して駆動パルスを発生させる駆動パルス発生回路と、駆動パルス発生回路で発生された駆動パルスに従って誘導標の点灯・消灯を制御する点灯駆動回路を設けると共に、視線誘導標識の配置の順に誘導標が点灯・消灯されるように制御のタイミングを設定するタイミング設定部を各制御装置に設け、受信したGPS信号に基づいて検出される時刻情報を出力するように上記GPS受信機を設定し、上記制御装置は、GPS受信機から制御装置に入力される時刻情報の時間が所定の時間内であれば、誘導標の点灯・消灯の作動をさせ、この時刻情報の時間が所定の時間外であれば、誘導標の点灯・消灯の作動を停止させるように、誘導標の作動のオン・オフを制御し、且つ、太陽電池からの出力電圧を検出する電圧検出器で検出された出力電圧が所定値以下のときに電源用蓄電池からGPS受信機に給電すると共に電圧検出器で検出された出力電圧が所定値以上のときに電源用蓄電池からGPS受信機への給電を停止するように制御することを特徴とする視線誘導標システム。」と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1に記載された視線誘導標識の構成を限定するとともに、誘導標の点灯・消灯を制御する制御装置の制御内容を限定するものであって、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)独立特許要件について
(2-1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された実願昭60-187432号(実開昭62-96800号)のマイクロフィルム(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が図示とともにある。

ア.「一定周期で点滅する発光体を灯器表面に配設した自発光交通制御装置を複数個連設するとともに、各々の自発光交通制御装置に、隣接する自発光交通制御装置の点滅周期と、位相を所定時間異ならせる遅延装置を設けてなる自発光交通制御装置。」(実用新案登録請求の範囲)
イ.「本考案は自発光デリネータ、自発光カーブサインなど道路の状況等を車両に乗車した通行者に伝搬し、または注意を喚起し、交通事故を未然に防止する自発光交通制御装置に関するものである。」(明細書第1ページ第12?15行)
ウ.「・・・その目的は常に通行者に正しい道路状況を与えるとともに、さらには複数個連設した自発光交通制御装置の連係を持たせ、特に通行者の遠方の自発光交通制御装置から手元の自発光交通制御装置へ点滅光が流れるように点滅させることである。」(明細書第2ページ第17行?第3ページ第2行)
エ.「自発光デリネータ11は太陽電池12、セルケース13、発光部である発光ダイオード5・・・及び灯器(以下本体ケースと記す)15から構成されている。」(明細書第3ページ第15?18行)
オ.「本体ケース15は、セルケース13や後述のフロントカバー16、リフレクター17等を固定し、内部の電子回路、二次電池14を保護するために、耐候性や耐衝撃性に優れたポリカーボネート樹脂等によって形成される。
本体ケース15の上面には、太陽電池12が載置され、・・・太陽電池12からの起電力はリード線(不図示)を介して、制御用電子回路及び二次電池14に接続される。」(明細書第4ページ第9?18行)
カ.「そして本体ケース15の内表面には、外部基準信号を受信するための受信手段であるアンテナ1が設けられている。・・・
アンテナ1及び受信部2は放送電波又は標準電波等の標準周波数、標準時間間隔および標準時刻を表す信号(以下外部基準信号と記す。)を受信するものである。・・・
発光タイミング発生部3は受信した外部基準信号に基づいて適正の発光タイミングパルスを発生し、発光制御部4に出力する。」(明細書第5ページ第12行?第6ページ第13行)
キ.「発光制御部4は発光タイミング発生部3からの発光タイミングパルスに応じて発光部5の発光周期を決定する。また発光制御部4には自発光デリネータの周囲の光強度を検知する光センサーを設け、周囲の光強度が一定レベル以下になったときのみ発光部5を発光させる様にしてもよい。
本考案は上述の発光タイミング発生部3又は発光制御部4の前段階に遅延装置6を設けたことに特徴がある。遅延装置6は各々の自発光デリネータによって遅延時間が手操作によって決定できるもので、例えばマイクロプロセッサとメモリとを組合せ、メモリ内にt、2t、3t・・・nt(n:自然数、tは単位遅延時間)の点滅周期の位相差を各種設定している。連設する自発光デリネータの配置数、連設間距離に応じて、各自発光デリネータの遅延時間を決定する。」(明細書第7ページ第2?17行)

この記載事項を含む引用文献1全体の記載によると、引用文献1には、
「一定周期で点滅する発光ダイオード5を本体ケース15表面に配設した自発光デリネータ11を複数個連設するとともに、通行者の遠方の自発光デリネータ11から手元の自発光デリネータ11へ点滅光が流れるように点滅させる自発光交通制御装置であって、自発光デリネータ11は標準周波数、標準時間間隔および標準時刻を表す外部基準信号を受信するアンテナ1及び受信部2、本体ケース15、太陽電池12、二次電池14を有し、本体ケース15内部にアンテナ1、電子回路、二次電池14を設け、発光タイミング発生部3は受信した外部基準信号に基づいて適正の発光タイミングパルスを発生し、発光制御部4に出力し、発光制御部4は発光タイミング発生部3からの発光タイミングパルスに応じて発光部5の発光周期を決定し、通行者の遠方の自発光デリネータ11から手元の自発光デリネータ11へ点滅光が流れるように点滅させるように、各々の自発光デリネータ11に、隣接する自発光デリネータ11の点滅周期の位相を異ならせる遅延装置6を設けてなり、発光デリネータの周囲の光強度を検知する光センサーを設け、周囲の光強度が一定レベル以下になったときのみ発光部5を発光させる自発光交通制御装置。」(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。

(2-2)対比
本願補正発明と引用発明Aを対比する。
引用発明Aの「発光ダイオード5」、「自発光デリネータ11」、「本体ケース15」、「太陽電池12」は、本願発明の「誘導標」、「視線誘導標識」、「ハウジング」、「太陽電池」に相当する。
引用発明Aの発光ダイオード5は一定周期で点滅するから本願の誘導標同様「点灯・消灯される」ものであるとともに、自発光デリネータ11は複数個連設されており、「通行者の遠方の自発光デリネータ11から手元の自発光デリネータ11へ点滅光が流れるように点滅させる」から、「視線誘導標識を複数配置し、配置した順番に誘導標が点灯・消灯されるようにした」といえ、「視線誘導標システム」が開示されていると認められる。
引用発明Aの「外部基準信号」は、「標準時間間隔および標準時刻を表す信号」であるから、引用発明Aの「外部基準信号」と、本願補正発明の「GPS信号」は「時間間隔情報と時刻情報を有する信号」である点で共通する。また、引用発明Aの「アンテナ1」と本願補正発明の「GPSアンテナ」は、「時間間隔情報と時刻情報を有する信号を受信するアンテナ」である点で共通するとともに、引用発明Aの「受信部2」と本願補正発明の「GPS受信機」は、「時間間隔情報と時刻情報を有する信号を受信する受信機」である点で共通する。
引用発明Aにおいては「二次電池14」が何に対して給電するものであるか明らかでないが、通常太陽電池で発電された電力を充電する二次電池を有し、夜間に点灯する誘導標においては、二次電池以外の電力供給手段を有しておらず、誘導標が電気的に独立しているから、引用発明Aの「二次電池14」は、自発光デリネータ11において給電が必要な対象すべてに給電しているものと認められ、給電が必要な対象には、当然「発光ダイオード5」、「受信部2」も含まれるから、「受信部と誘導標に給電する電源用蓄電池」であるといえる。
引用発明Aにおいて、発光タイミング発生部3は受信した外部基準信号に基づいて適正の発光タイミングパルスを発生し、発光制御部4に出力し、発光制御部4は発光タイミング発生部3からの発光タイミングパルスに応じて発光部5の発光周期を決定しているから、これらの制御を実行する部分を「制御装置」と称することができる。また、これらの制御は電子回路で実行されていると認められ、引用発明Aにおいては、本体ケース15内部に電子回路が設けられるとともに、アンテナ1が設けられ、また、受信部2についてはその位置が記載されていないものの、受信部2についても当然本体ケース15内に設けられているものと認められるから、「ハウジング内に、受信部と、制御装置とを内蔵」しているといえる。
引用発明Aの「発光タイミング発生部3」、「発光タイミングパルス」、「発光制御部4」は、それぞれ本願補正発明の「駆動パルス発生回路」、「駆動パルス」、「点灯駆動回路」に相当し、「発光タイミング発生部3」、「発光制御部4」は、制御装置に設けられているといえる。また、引用発明Aと本願補正発明は「時間間隔情報と時刻情報を有する信号に基づいて駆動パルスを発生させる」点で共通する。
引用発明Aにおいて、通行者の遠方の自発光デリネータ11から手元の自発光デリネータ11へ点滅光が流れるように点滅させるように、各々の自発光デリネータ11に、隣接する自発光デリネータ11の点滅周期の位相を異ならせる遅延装置6を設けてなるから、引用発明Aにおいても、「視線誘導標識の配置の順に誘導標が点灯・消灯されるように制御のタイミングを設定するタイミング設定部を各制御装置に設け」ているといえる。
さらに、引用発明Aにおいて、発光デリネータ11の周囲の光強度を検知する光センサーを設け、周囲の光強度が一定レベル以下になったときのみ発光部5を発光させている(周囲の光強度が一定レベル以上になったときは発光部5の発光を停止させている)から、引用発明Aと本願補正発明は、「制御装置は、ある条件下で、誘導標の点灯・消灯の作動をさせ、また誘導標の点灯・消灯の作動を停止させるように、誘導標の作動のオン・オフを制御している」点で共通する。

したがって、本願補正発明と引用発明Aは、
「点灯・消灯される誘導標が設けられた視線誘導標識を複数配置し、配置した順番に誘導標が点灯・消灯されるようにした視線誘導標システムにおいて、各視線誘導標識に、時間間隔情報と時刻情報を有する信号を受信するアンテナと、ハウジングと、太陽電池と、太陽電池で発電された電力を充電し、時間間隔情報と時刻情報を有する信号を受信する受信機と誘導標に給電する電源用蓄電池を取り付け、ハウジング内に、時間間隔情報と時刻情報を有する信号を受信する受信機と、制御装置とを内蔵し、制御装置に、時間間隔情報と時刻情報を有する信号に基づいて駆動パルスを発生させる駆動パルス発生回路と、駆動パルス発生回路で発生された駆動パルスに従って誘導標の点灯・消灯を制御する点灯駆動回路を設けると共に、視線誘導標識の配置の順に誘導標が点灯・消灯されるように制御のタイミングを設定するタイミング設定部を各制御装置に設け、制御装置は、ある条件下で、誘導標の点灯・消灯の作動をさせ、また誘導標の点灯・消灯の作動を停止させるように、誘導標の作動のオン・オフを制御している視線誘導標システム。」の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明は、時間間隔情報と時刻情報を有する信号がGPS信号であって、各視線誘導標識には、GPS信号を受信するGPSアンテナが取り付けられ、GPS信号から検出した1秒パルス信号を出力するGPS受信機を内蔵し、制御装置にGPS受信機から入力される1秒パルス信号に同期して駆動パルスを発生させる駆動パルス発生回路を設けるとともに、受信したGPS信号に基づいて検出される時刻情報を出力するようにGPS受信機を設定し、制御装置は、GPS受信機から制御装置に入力される時刻情報の時間が所定の時間内であれば、誘導標の点灯・消灯の作動をさせ、この時刻情報の時間が所定の時間外であれば、誘導標の点灯・消灯の作動を停止させるように、誘導標の作動のオン・オフを制御しているのに対し、引用発明Aではそのような特定がなされていない点。

[相違点2]
「ある条件下で」とする制御を、本願補正発明においては「太陽電池からの出力電圧を検出する電圧検出器で検出された出力電圧が所定値以下のときに電源用蓄電池からGPS受信機に給電すると共に電圧検出器で検出された出力電圧が所定値以上のときに電源用蓄電池からGPS受信機への給電を停止するように制御する」のに対し、引用発明Aではそのような特定がなされていない点。

(2-3)判断
[相違点1]について検討する。
時間間隔情報と時刻情報を有する信号としてGPS信号は周知であり、GPSアンテナでGPS信号を受信すると共に、GPS受信機によってGPS信号から検出し出力される1秒パルス信号を動作の基準として用いて制御を行うことも周知である。例えば特開平8-146166号公報(【0017】、【0018】)、特開平8-105984号公報(【0002】)に、GPS信号から検出した1秒パルス信号を出力するGPS受信機と、GPS受信機から出力される1秒パルス信号を動作の基準として用いて制御を行うことが記載されている。
また、検出される時刻情報を出力するように上記GPS受信機を設定し、GPS受信機から制御装置に入力される時刻情報に基づいて、制御を行う点も周知である。例えば特開平5-18767号公報(【請求項1】)、特開平5-231871号公報(【0011】)に、GPS受信機から制御装置に入力される時刻情報に基づいて、照明の制御を行うことが記載されている。
引用文献1には、外部基準信号として、放送電波や標準電波など、時間間隔情報と時刻情報を有する信号であれば使用することができることが記載されているから(前記記載カ.参照)、引用発明において、時間間隔情報と時刻情報を有する信号として、GPS信号を使用し、GPS受信機によってGPS信号から検出し出力される1秒パルス信号を動作の基準として用いる周知の制御を適用し、誘導標にGPS受信機を設けるとともに、GPS信号から検出し出力された1秒パルス信号や時刻情報に基づいて、誘導標の点灯・消灯の制御や、誘導標の作動のオン・オフの制御を行うことは、当業者が容易に想到しうる程度のことである。

[相違点2]について検討する。
太陽電池からの出力電圧を検出する電圧検出器で検出された出力電圧が所定値以下のときに電源用蓄電池から給電すると共に電圧検出器で検出された出力電圧が所定値以上のときに電源用蓄電池からの給電を停止するように制御する点は、例えば実願平4-29157号(実開平5-89513号)のCD-ROM(【0016】)、特開平6-33427号公報(【0016】)に記載されているように周知である。
蓄電池は容量が限られており、蓄電池からの無駄な給電を行わないようにすることは、蓄電池を用いる場合の周知の課題であり、また、引用発明Aの発光交通制御装置は、暗い状況下だけで動作すればよいのであるから、引用発明Aに上記周知技術を適用し、引用発明Aの二次電池からの給電は、暗い状況であるとき(つまり、電圧検出器の出力電圧が所定値以下のとき)のみ行うことで無駄な給電を行わないようにすることは、当業者が容易に想到しうる程度のことである。
引用発明Aに、周知技術であるGPS受信機(GPS受信機については、相違点1で既に検討した。)と二次電池からの給電を太陽電池からの出力電圧に基づいておこなう構成を付加すれば、二次電池からGPS受信機にも給電されることになるから、太陽電池からの出力電圧を検出する電圧検出器で検出された出力電圧が所定値以下のときに電源用蓄電池からGPS受信機に給電すると共に、電圧検出器で検出された出力電圧が所定値以上のときに電源用蓄電池からGPS受信機への給電を停止するように制御することとなる。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用文献に記載の発明から当業者が予測出来る範囲のものである。

以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができないものであるから、特許出願の際独立して特許をうけることができないものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明の認定
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成17年5月23日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「点灯・消灯される誘導標が設けられた視線誘導標識を複数配置し、配置した順番に誘導標が点灯・消灯されるようにした視線誘導標システムにおいて、GPS信号を受信すると共にGPS信号から検出した1秒パルス信号を出力するGPS受信機と、GPS受信機から出力される1秒パルス信号を基準にして誘導標の点灯・消灯を制御する制御装置とを各視線誘導標識にそれぞれ設け、視線誘導標識の配置の順に誘導標が点灯・消灯されるように制御装置による制御のタイミングを設定するタイミング設定部を各制御装置に設けて成ることを特徴とする視線誘導標システム。」

(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された特開昭62-174406号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が図示とともにある。

ク.「視線を誘導する発光部と、この発光部の発光のタイミングを決めるタイミング電波を受信しタイミング信号を取り出す受信装置と、取り出されたタイミング信号に対応して前記発光部の発光を制御する発光制御部とを備えたことを特徴とする電源内蔵型自発光視線誘導標。」(請求項1)
ケ.「本発明は道路側部等に設けられる視線誘導標に係り、特に、太陽電池等で動作し、複数台設けられた場合にも、タイミング電波により発光部が同期して発光を行う電源内蔵型自発光視線誘導標に関する。」(第1ページ左下欄第13?17行目)
コ.「図において、発光部27は円筒状の周壁に複数個の高輝度LED等が配置された構成となっていて、中央の空洞には図示されていない受信装置や発光制御部等が組み込まれている。」(第2ページ右上欄第9?12行目)
サ.「タイミング電波18は受信アンテナ21によって受信され受信装置22に送られる。受信装置22は、そこからタイミング信号31を取り出し、雑音等による誤動作を防止するための狭帯域のバンドパス回路23へと送る。ついで波形整形回路24により点滅のためのオン、オフを指示する信号となりディレー回路25に達する。一定時間遅延された信号は発光制御部26に導かれ、発光部27の発光をコントロールする。」(第2ページ左下欄第15行目?右下欄第3行目)
シ.「夕暮時になりまわりが薄暗くなると、明るさ検出部11によって検出され、主タイミング発生回路12は点滅の繰り返しを指示する主タイミング信号を発生する。変調信号発生回路13からの変調信号により送信装置14は、点灯の時にはFM変調の、消燈の時には無変調波の、2つの状態のくり返しからなるタイミング電波18を送信アンテナ15を介して、外部に発射する。受信装置22からはコントロール部の変調信号発生回路13の出力と同じ波形を持つタイミング信号31が現れる。バンドパス回路23により、混入していた雑音成分が取り除かれ、波形整形回路24によってオン、オフ信号となってディレー回路25へ達する。ディレー回路25によって一定時間遅延された後発光制御部26に届き、発光部27の発光の制御を行う。
ディレー回路25はディレー時間を可変することができるので、様々な形態の発光を行うことができ、同時にそろって点滅を繰り返すことの他に、例えば、並んだ順に順次ディレ一時間を増加させることにより、複数台の発光部27を流れるように発光させること等が可能である。」(第2ページ右下欄第15行目?第3ページ左上欄第15行目)
ス.第2図から、1つの独立型誘導標には、受信アンテナ21、円筒状の周壁に設けられた発光部27が備えられていることが看取できる。

この記載事項及び第2図を含む引用文献2全体の記載によると、引用文献2には、

「点滅を繰り返す発光部27が設けられた独立型誘導標を複数台設け、並んだ順に複数台の発光部27を流れるように発光させるようにした誘導標において、1つの独立型誘導標には、受信アンテナ21、受信装置22、発光制御部26が備えられ、タイミング電波18が受信アンテナ21によって受信されて受信装置22に送られ、受信装置22は点滅の繰り返しを指示する主タイミング信号を取り出し、バンドパス回路23により、混入していた雑音成分が取り除かれ、波形整形回路24によってオン、オフ信号となり、ディレー時間を可変することができるディレー回路25によって一定時間遅延された後発光制御部26に届き、発光部27の発光の制御を行うとともに、並んだ順に順次ディレー時間を増加させることにより、複数台の発光部27を流れるように発光させることができる誘導標。」「(以下、「引用発明B」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比
本願発明と引用発明Bを対比する。
引用発明Bの「発光部27」、「独立型誘導標」は、本願発明の「誘導標」、「視線誘導標識」に相当する。
引用発明Bにおいても、発光部27は点滅するから本願発明の誘導標同様「点灯・消灯される」ものであるとともに、誘導標は複数台設けられており、「並んだ順に複数台の発光部27を流れるように発光させるようにした」ことが記載されているから、「視線誘導標識を複数配置し、配置した順番に誘導標が点灯・消灯されるようにした視線誘導標システム」が開示されていると認められる。
引用発明Bにおいて、タイミング電波18が受信アンテナ21によって受信されて受信装置22に送られ、受信装置22は点滅の繰り返しを指示する主タイミング信号を取り出し、バンドパス回路23により、混入していた雑音成分が取り除かれ、波形整形回路24によってオン、オフ信号となるから、引用発明Bの「受信装置22」及び「バンドパス回路23」及び「波形整形回路24」と、本願発明の「GPS受信機」は、「受信機」である点で共通する。
引用発明Bの「オン・オフ信号」と本願発明の「1秒パルス信号」は、「受信機から出力される信号」である点で共通し、引用発明Bにおいて、オン・オフ信号によって発光部27の発光の制御が行われているから、引用発明Bにおいても、「受信機から出力される信号を基準にして誘導標の点灯・消灯を制御する制御装置」が設けられているといえる。
また、引用発明Bにおいて、1つの独立型誘導標には、受信アンテナ21、受信装置22、発光制御部26が備えられ、タイミング電波18が受信アンテナ21によって受信されて受信装置22に送られ、受信装置22は点滅の繰り返しを指示する主タイミング信号を取り出し、バンドパス回路23により、混入していた雑音成分が取り除かれ、波形整形回路24によってオン、オフ信号となり、ディレー時間を可変することができるディレー回路25によって一定時間遅延された後発光制御部26に届き、発光部27の発光の制御を行うから、引用発明Bと本願発明は、受信機と制御装置が、各視線誘導標識にそれぞれ設けられている点で共通する。
さらに、引用発明Bにおいて、オン・オフ信号は、ディレー回路25を経て、発光制御部26に届き、発光部27の発光の制御を行うものであって、ディレー回路25のディレー時間は可変することができ、並んだ順に順次ディレー時間を増加させることにより、複数台の発光部27を流れるように発光させているとともに、発光制御部26は各誘導標に設けられているから、引用発明Bの「ディレー回路25」は本願発明の「タイミング設定部」に相当するとともに、タイミング設定部によって、「視線誘導標識の配置の順に誘導標が点灯・消灯されるように制御装置による制御のタイミングを設定」し、「ディレー回路25」は「各制御装置に設けて成る」ものといえる。

したがって、本願発明と引用発明Bは、
「点灯・消灯される誘導標が設けられた視線誘導標識を複数配置し、配置した順番に誘導標が点灯・消灯されるようにした視線誘導標システムにおいて、受信機と、受信機から出力される信号を基準にして誘導標の点灯・消灯を制御する制御装置とを各視線誘導標識にそれぞれ設け、視線誘導標識の配置の順に誘導標が点灯・消灯されるように制御装置による制御のタイミングを設定するタイミング設定部を各制御装置に設けて成る視線誘導標システム。」の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
本願発明は、GPS信号を受信し、GPS信号から検出した1秒パルス信号を出力するGPS受信機と、GPS受信機から出力される1秒パルス信号を基準にして誘導標の点灯・消灯を制御する制御装置とを備えているのに対し、引用発明Bはそのような特定がなされていない点。

(4)判断
[相違点]について検討する。
引用発明Bの「オン・オフ信号」と本願発明の「1秒パルス信号」は、いずれも誘導標の点灯・消灯を制御する基準となる信号である点で共通している。制御の基準となる信号として、1秒パルス信号を使用すること、1秒パルス信号がGPS信号から検出されることは、上記2.における「(2-3)判断」に示したように周知であるから、引用発明において、基準とする信号として、1秒パルス信号を使用し、GPS信号を受信し、GPS信号から検出した1秒パルス信号を出力するGPS受信機を誘導標に設けるとともに、1秒パルス信号を誘導標の点灯・消灯の制御に使用することは、当業者が容易に想到しうる程度のことである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用文献に記載の発明から当業者が予測出来る範囲のものである。

したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、その優先権主張日前に頒布された刊行物記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-10 
結審通知日 2008-01-15 
審決日 2008-01-28 
出願番号 特願平9-40319
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09F)
P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 史郎櫻井 茂樹  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 菅藤 政明
七字 ひろみ
発明の名称 視線誘導標システム  
代理人 西川 惠清  
代理人 森 厚夫  

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