• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1174849
審判番号 不服2006-3076  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-20 
確定日 2008-03-13 
事件の表示 特願2001- 34360「連続光光源」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月23日出願公開、特開2002-236301〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年2月9日の出願であって、平成18年1月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年3月15日に手続補正がなされたものである。

2.平成18年3月15日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年3月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本願補正発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「繰り返し周波数に相当する周波数間隔の縦モードで発振する分布ブラッグ反射器を集積したモード同期半導体レーザを用いた繰り返し光パルス列発生手段と、
前記繰り返し光パルス列発生手段から発生した繰り返し光パルス列を入射して該繰り返し光パルス列のスペクトル幅を拡大する正常分散分散平坦特性を有する非線形光学媒質と、
前記非線形光学媒質によりスペクトル幅を拡大された光スペクトルからただ一つの縦モードからなる光スペクトル成分を、一つあるいは複数分波する波長分波器と
を有し、信号対雑音比が21.6dB以上のただ一つの縦モードからなる光スペクトル成分の連続光を発生することを特徴とする連続光光源。」へ補正された。

上記補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「発生する」「ただ一つの縦モードからなる光スペクトル成分の連続光」を「信号対雑音比が21.6dB以上の」ものに限定するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
(2-1)本願出願前に頒布された刊行物である「H.Takara et al., “More than 1000 channel optical frequency chain generation from single supercontinuum source with 12.5GHz channel spacing”, ELECRONICS LETTERS, 2000年12月7日, Vol.36, No.25, p.2089-p.2090」(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「This Letter reports a 1000 channel optical frequency chain with 12.5GHz spacing. The SNR, Q factor, optical frequency stability and linewidth of each channel were evaluated after slicing one mode of the SC spectrum with a 12.5GHz-spaced arrayed-waveguide-grating demultiplexer (AWG DEMUX). More than 600 channels have been confirmed to offer SNR values sufficient for multi-span transmission.」(第2089頁左欄第32行?第38行)
(当審訳)「この論文は、12.5GHzの間隔をもった1000チャネルの光学的周波数の連鎖を報告する。SNR,Qファクター,光学的周波数の安定性及び各チャネルの線幅が、12.5GHz間隔のアレイ導波路回折格子のデマルチプレクサ(AWG DEMUX)でSCスペクトルの1つのモードを切り取った後に評価された。600以上のチャネルが、マルチスパン伝送に十分なSNRの値を提供することが確認された。」

(イ)「Experiment and results: Fig.1 shows the experimental setup for optical frequency chain generation. A 12.5GHz optical pump pulse train was generated from a 1538nm modelocked laser diode(ML-LD)[8]. It was then amplified with an EDFA and coupled into a polarization-maintaining (PM) dispersion-flattered dispersion-decreasing SC fibre[9].」(第2089頁左欄第39行?第44行)
(当審訳)「実験と結果:図1は光学的周波数の連鎖の生成のための実験の機構を示す。12.5GHzの光学的ポンプパルス列が1538nmのモード同期レーザダイオード(ML-LD)[8]から生成された。それから、それは、EDFAで増幅され、偏光維持(PM)分散平坦分散減少SCファイバ[9]に連結された。」

(ウ)「The noise characteristics(RIN and Q factor) of each optical frequency were measured after one frequency was extracted with a 12.5GHz spaced AWG DEMUX[10,11]. Fig.2d is the optical spectrum at one port of the AWG DEMUX.・・・(中略)・・・Fig.3 shows the wavelength dependencies of the SNR and the Q factor. The SNR exceeded 20dB over a 100nm range.・・・(中略)・・・The results show that more than 600 channels have SNRs sufficient to realise transmission over several hundreds of kilometers. For wavelengths shorter than 1530nm, the SNR and the Q factor were relatively low due to the larger noise figure of the SOA used.」(第2089頁左欄第54行?右欄第18行)
(当審訳)「各光学的周波数のノイズ特性(RINとQファクター)は、一つの周波数が12.5GHz間隔のAWG DEMUX[10,11]で抽出された後に計測された。図2dは、AWG DEMUXの一つのポートでの光学スペクトルである。・・・(中略)・・・図3は、SNRとQファクターの波長依存性を示す。SNRは100nmの範囲にわたり20dBを超えた。・・・(中略)・・・これらの結果は、600以上のチャネルが数百キロメートルを超えた伝送を実現するのに十分なSNRを持っていることを示す。1530nmより短い波長では、SNRとQファクターは使用されたSOAのより大きなノイズにより相対的に小さかった。」

(エ)「Conclusion: We have generated an optical frequency chain with over 1000 channels(12.5GHz spacing) from a single SC source. It was confirmed that 600-700 channel offered SNR values sufficient for achieving Q factors more than 18.3dB for the wavelength range from 1512 to 1580nm. The channel spacing is strictly determined by the microwave modelocking frequency of the source later within kHz accuracy. It is expected that more than 1000 channels can be applied for DWDM systems by optimizing the SC source and utilising optical amplifiers that suit shorter wavelength such as Raman amplifiers or thulium-doped fibre amplifiers.」(第2090頁左欄第6行?第16行)
(当審訳)「結論:我々は、1つのSC源から1000以上のチャネル(12.5GHz間隔)の光学的周波数の連鎖を生成した。600?700チャネルが、1512?1580nmの波長域において18.3dB以上のQファクターを達成するのに十分なSNR値をもたらしたことが確認された。チャネルの間隔は、ソースレーザのマイクロ波モード同期周波数によって、kHzの正確さの範囲内で、厳密に決定される。SC源を最適化し、ラマン増幅器やツリウムドープファイバー増幅器のようなより短波長に適合した光学的増幅器を利用することによって、1000以上のチャネルがDWDMシステムに応用されうることが期待される。」

(オ)「8 SATO, K., HIRANO, A., and ISHII, H.; ‘Chirp-compensated 40-GHz mode-locked lasers integrated with electroabsortion modulators and chirped gratings’, IEEE J. Sel Topics Quantum Electron, 1999, 5, pp.590-595」(第2090頁右欄第5行?第8行)

(カ)Fig.3から、波長が1500?1600nmの範囲にわたり、波長1540nm弱における1つのデータを除き、SNRのデータが21.6dB以上であることが見て取れる。

上記各記載事項からみて、引用例1には、
「1つのSC源から1000以上のチャネル(12.5GHz間隔)の光学的周波数の連鎖を生成するものであって、
12.5GHzの光学的ポンプパルス列が1538nmのモード同期レーザダイオード(ML-LD)[8]から生成され、それから、その光学的ポンプパルス列は、EDFAで増幅され、偏光維持(PM)分散平坦分散減少SCファイバ[9]に連結されており、
SNR,Qファクター,光学的周波数の安定性及び各チャネルの線幅が、12.5GHz間隔のアレイ導波路回折格子のデマルチプレクサ(AWG DEMUX)でSCスペクトルの1つのモードを切り取った後に評価されたものであり、
600以上のチャネルが数百キロメートルを超えた伝送を実現するのに十分なSNRを持っており、波長が1500?1600nmの範囲にわたり、波長1540nm弱における1つのデータを除き、SNRのデータが21.6dB以上であり、
DWDMシステムに応用されうるもの。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

(2-2)本願出願前に頒布された刊行物である「K.Sato et al., “Chirp-Compensated 40-GHz Mode-Locked Lasers Integrated with Electroabsorption Modulators and Chirped Gratings”, IEEE JOURNAL OF SELECTED TOPICS IN QUANTUM ELECTRONICS, 1999年5月/6月, Vol.5, No.3, p.590-p.595」(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(キ)「Fig.1 shows the configuration of a mode-locked laser. It consists of an EA modulator acting as a pulse-shortening gate, a gain section acting as an optical amplifier, and a distributed Bragg reflector(DBR) acting as a bandpass filter. Introducing chirped gratings to the DBR makes it possible to control the cavity dispersion.」(第590頁右欄第21行?第26行)
(当審訳)「図1は、モード同期レーザの構成を示す。それは、パルス短縮ゲートとして動作するEA変調器、光学的増幅器として動作するゲイン部、及び、バンドパスフィルタとして動作する分布ブラッグ反射器(DBR)からなる。DBRにチャープグレーティングを導入することは、キャビティのばらつきをコントロールすることを可能とする。」

(ク)「B. Device Structure
A schematic drawing of a monolithic later integrated with an EA modulator and a DBR is shown in Fig.5. A stack structure of multiquantum wells(MQW-LD and MQW-MD) is used[2].」(第592頁左欄第1行?第3行)
(当審訳)「B.デバイス構成
EA変調器とDBRが集積されたモノリシックレーザの概略図が図5に示されている。多重量子井戸(MQW-LDとMQW-MD)の積み重ね構造が使用されている[2]。」

上記各記載事項からみて、引用例2には、
「EA変調器と、チャープグレーティングを導入した分布ブラッグ反射器(DBR)とが集積されたモード同期レーザ」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

(2-3)本願出願前に頒布された刊行物である「Y. Takushima, et al., “10-GHz, Over 20-Channel Multiwavelength Pulse Source by Slicing Super-Continuum Spectrum Generated in Normal-Dispersion Fiber, IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, 1999年3月, Vol.11, No.3, p.322-p.324」(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ケ)「Previously, such broad-band spectra have been generated by using super-continuum(SC) from optical fibers [1]-[3], nonlinear soliton compression [4], and femtosecond pulse sources [5]. Among them, the SC generation in fibers is the most attractive technique in order to obtain the broad-band spectrum, and SC spectra with over 100-nm bandwidth have actually been demonstrated by using several types of fibers and pulse sources [1]-[3], [6]-[10]. In order to apply the SC spectrum to the spectral slicing pulse source, the SC spectrum must be very flat for the channel power equalization. However, in most of the experiments, the SC spectrum has the large fluctuation of spectral density and the strong residual pump component.」(第322頁左欄第21行?第33行)
(当審訳)「従来、そのようなブロードバンドスペクトルは光学ファイバからのスーパーコンティニウム(SC)[1]-[3]、非線形ソリトン圧縮[4]、及び、フェムト秒パルス源[5]を用いることによって生成されてきた。それらのうち、ファイバにおけるSC生成は、ブロードバンドスペクトルを得るために最も魅力的な技術であり、100nmのバンド幅を超えるSCスペクトルが、種々のタイプのファイバ及びパルス源によって示されてきた[1]-[3]、[6]-[10]。SCスペクトルをスペクトル切り出しパルス源に応用するためには、SCスペクトルはチャネルパワーの均等化のために非常に平坦でなければならない。しかしながら、ほとんどの実験においては、SCスペクトルはスペクトル密度の大きな変動及び強い残余ポンプ成分をもっている。」

(コ)「In this letter, we develop a multiwavelength pulse source which can support over 20 channels of 10-GHz pulse train. The SC spectrum, which is generated from a normal dispersion fiber pumped by a mode-locked semiconductor laser, is sliced by an arrayed-waveguide grating(AWG). The pulsewidth is almost the same in these 20 channels. Such superior uniformity of pulses can be attributed to the SC generation in a dispersion-flattened fiber with a normal dispersion (β_(2) > 0). In the normal dispersion region, the spectrum is spread flatly and the SC pulse shape becomes nearly rectangular with a linear frequency chirp as shown in our preceding works [9] and [10]. When such SC spectrum is sliced by a filter, the uniformity of the power and the pulse width is assured.」(第322頁左欄第36行?右欄第9行)
(当審訳)「この論文において、我々は、20チャネル以上の10GHzのパルス列をサポートしうる多波長パルス源を開発する。SCスペクトルは、モード同期半導体レーザによってポンプされた正常分散ファイバから生成されており、アレイ導波路回折格子(AWG)によって切り取られる。パルス幅はこれら20チャネルにおいてほとんど等しい。パルスのそのような優れた均一性は、正常分散(β_(2)>0)の分散平坦化ファイバにおけるSC生成に帰着されうる。正常分散領域において、スペクトルは平坦に広がり、SCパルスの形状は、我々の以前の成果[9]及び[10]でみられるように線形の周波数チャープをもったほぼ長方形となる。そのようなSCスペクトルがフィルタによって切り取られるとき、パワーとパルス幅の均一性が確保される。」

(サ)「Fig.1 shows the schematic diagram of the proposed multi-wavelength pulse source.
The initial pulse is produced by a hybrid mode-locked semiconductor laser (MLL), which consists of a semiconductor optical amplifier with a saturable absorption section placed in an external cavity [11]. ・・・(中略)・・・The pulse is amplified and led to the SC fiber section. We use a dispersion-flattened fiber having a normal dispersion (β_(2) = 0.1ps^(2)/km at 1569 nm)[10].」(第322頁右欄第20行?第323頁左欄第5行)
(当審訳)「図1は、提案された多波長パルス源の概略図を示す。イニシャルパルスは、ハイブリッドモード同期半導体レーザ(MLL)であって、外部キャビティに設置された可飽和吸収部をもった半導体光学的増幅器からなるもの[11]によって生成される。・・・(中略)・・・パルスは増幅され、SCファイバ部に導かれる。我々は、正常分散(1569nmにおけるβ_(2)=0.1ps^(2)/km)をもった分散平坦化ファイバを使用する。」

(シ)「When an optical pulse with an intense power is launched into a normal-dispersion fiber whose third-order dispersion is zero, the spectrum of the pulse broadens flatly. In such a case, the output pulse has a quasi-rectangular waveform and its frequency chirp becomes almost linear.
Fig.2 shows an example of SC-pulse characteristics obtained by numerical calculations. We assume that the input pulse has a sech^(2) profile with 1.6-ps FWHM and the peak power is 2.0 W. The pulse is launched to an ideal dispersion-flattened fiber having a uniform dispersion value of β_(2) = 0.1ps^(2)/km and the nonlinear coefficient of 2.7 W^(-1)/km. The propagation distance is 1.7 km.
The spectrum shown in Fig.2(a) has neither deep ripple nor residual pump component.」(第323頁左欄第14行?第27行)
(当審訳)「強いパワーをもった光学的パルスが、3次分散が0の正常分散ファイバに放たれると、そのパルスのスペクトルは平坦に広がる。そのような場合、出力パルスは疑似長方形の波形を持ち、その周波数チャープはほぼ線形となる。
図2は、数値計算により得られたSCパルス特性の例を示す。我々は、入力パルスが半値幅1.6psのsech^(2)プロファイルをもち、ピークパワーが2.0Wであると仮定する。そのパルスは均一な分散値β_(2)=0.1ps^(2)/kmをもち、非線形係数が2.7W^(-1)/kmである理想的な分散平坦化ファイバに向けて放たれる。伝播距離は1.7kmである。
図2(a)に示されたスペクトルは深いリプルも残余ポンプ成分ももっていない。」

上記各記載事項からみて、引用例3には、
「SCスペクトルをスペクトル切り出しパルス源に応用するためには、SCスペクトルはチャネルパワーの均等化のために非常に平坦でなければならないが、ほとんどの実験においては、SCスペクトルはスペクトル密度の大きな変動及び強い残余ポンプ成分をもっているという背景において、
多波長パルス源を提供するものであって、
そのパルスの優れた均一性は、正常分散(β_(2)>0)の分散平坦化ファイバにおけるSC生成に帰着されうるものであり、
強いパワーをもった光学的パルスが、3次分散が0の正常分散ファイバに放たれると、そのパルスのスペクトルは平坦に広がるのであって、
数値計算によって得られたSCパルス特性の例においては、入力パルスが均一な分散値β_(2)=0.1ps^(2)/kmをもち、非線形係数が2.7W^(-1)/kmである理想的な分散平坦化ファイバに向けて放たれて得られるSCスペクトルは、深いリプルも残余ポンプ成分ももっていないもの。」という発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを以下に対比する。

(ア)引用発明1の「1538nmのモード同期レーザダイオード(ML-LD)[8]」について、「[8]」に該当する文献は引用例2であって(上記(2)の記載事項(オ)参照。)、当該引用例2に示されたモード同期レーザダイオードが引用発明2であるから、引用発明1の「1538nmのモード同期レーザダイオード(ML-LD)[8]」が、本願補正発明の「分布ブラッグ反射器を集積したモード同期半導体レーザ」に相当することは明らかである。
そして、引用発明1の「1538nmのモード同期レーザダイオード(ML-LD)[8]」は、12.5GHzの光学的ポンプパルス列を生成するものであるから、引用発明1が、本願補正発明の「繰り返し周波数に相当する周波数間隔の縦モードで発振する分布ブラッグ反射器を集積したモード同期半導体レーザを用いた繰り返し光パルス列発生手段」を備えていることは明らかである。

(イ)引用発明1では、生成された光学的ポンプパルス列が、EDFAで増幅され、偏光維持(PM)分散平坦分散減少SCファイバ[9]に連結されているから、引用発明1は、「前記繰り返し光パルス列発生手段から発生した繰り返し光パルス列を入射して該繰り返し光パルス列のスペクトル幅を拡大する非線形光学媒質」を備えている点で、本願補正発明と一致する。

(ウ)引用発明1では、SNR,Qファクター,光学的周波数の安定性及び各チャネルの線幅が、12.5GHz間隔のアレイ導波路回折格子のデマルチプレクサ(AWG DEMUX)でSCスペクトルの1つのモードを切り取った後に評価されたものであり、また、600以上のチャネルが数百キロメートルを超えた伝送を実現するのに十分なSNRを持っているとされているから、引用発明1の「12.5GHz間隔のアレイ導波路回折格子のデマルチプレクサ(AWG DEMUX)」は、本願補正発明の「波長分波器」に相当するとともに、「前記非線形光学媒質によりスペクトル幅を拡大された光スペクトルからただ一つの縦モードからなる光スペクトル成分を、一つあるいは複数分波する」ものであることが明らかである。

(エ)引用発明1は、1つのSC源から1000以上のチャネル(12.5GHz間隔)の光学的周波数の連鎖を生成するものであって、SNR,Qファクター,光学的周波数の安定性及び各チャネルの線幅が、12.5GHz間隔のアレイ導波路回折格子のデマルチプレクサ(AWG DEMUX)でSCスペクトルの1つのモードを切り取った後に評価されたものであり、600以上のチャネルが数百キロメートルを超えた伝送を実現するのに十分なSNRを持っており、DWDMシステムに応用されうるものであるから、引用発明1が、ただ一つの縦モードからなる光スペクトル成分の連続光を発生する連続光光源として用いられることは明らかである。

してみれば、本願補正発明と引用発明1とは、「繰り返し周波数に相当する周波数間隔の縦モードで発振する分布ブラッグ反射器を集積したモード同期半導体レーザを用いた繰り返し光パルス列発生手段と、
前記繰り返し光パルス列発生手段から発生した繰り返し光パルス列を入射して該繰り返し光パルス列のスペクトル幅を拡大する非線形光学媒質と、
前記非線形光学媒質によりスペクトル幅を拡大された光スペクトルからただ一つの縦モードからなる光スペクトル成分を、一つあるいは複数分波する波長分波器と
を有し、ただ一つの縦モードからなる光スペクトル成分の連続光を発生する連続光光源。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
非線形光学媒質について、本願補正発明は「正常分散分散平坦特性を有する」ものであるのに対し、引用発明1は偏光維持(PM)分散平坦分散減少SCファイバである点。

[相違点2]
発生するただ一つの縦モードからなる光スペクトル成分の連続光について、本願補正発明では、「信号対雑音比が21.6dB以上」であるとされているのに対し、引用発明1にはそのような限定がない点。

(4)判断
上記各[相違点]について検討する。

[相違点1]について
スーパーコンティニウム(SC)に関する技術分野において、SCスペクトルの平坦性を向上させることは本願出願前に周知の技術課題である(例えば、「多久島裕一他1名、“正常分散領域におけるスーパーコンティニューム発生の解析”、1997年電子情報通信学会エレクトロソサイエティ大会C-4-4,第250頁」の「概要」の記載、「Y. Takushima, et al., “Generation of over 140-nm-wide Super-Continuum from a Normal Dispersion Fiber by using a Mode-Locked Semiconductor Laser Source”, IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, 1998年11月, Vol.10, No.11, p.1560-p.1562」の「Abstract」及び「Conclusion」の記載、「J. Kim, et al., “150^(+) Channel Ultra-DWDM Source with Nx10 GHz Spacing Utilizing Longitudinal Mode Slicing of Supercontinuum”, Technical Digest Optical Fiber Communication Conference 2000 ThA2」の第6/ThA2-2頁第7行、「F. FUTAMI et al., "Generation of Widband and Flat Supercontinuum over a 280-nm Spectral Range from a Dispersion-Flattened Optical Fiber with Normal Group-Velocity Dispersion", IEICE TRAN. ELECTRON., 1999年8月,Vol.E82-C, No.5, p.1531-p.1538」の「SUMMARY」の記載を参照。)。
そして、引用発明3は、SCスペクトルの平坦性を向上させるために、非線形光学媒質として正常分散分散平坦光ファイバを用いたものである。
してみれば、引用発明1及び引用発明3の両者に接した当業者であれば、引用発明1において、SCスペクトルの平坦性を向上させるという上記周知の技術課題を解決するために、非線形光学媒質として、引用発明3に示された正常分散分散平坦光ファイバを用いることは容易に想到し得たことである。

[相違点2]について
引用発明1が、1つのSC源から1000以上のチャネル(12.5GHz間隔)の光学的周波数の連鎖を生成するものであるとともに、600以上のチャネルが数百キロメートルを超えた伝送を実現するのに十分なSNR(本願補正発明の「信号対雑音比」に相当。)を持っているとされていることに照らせば、引用例1には、十分な信号対雑音比を持っているチャネルのみを伝送に用いることが示唆されているということができる。そして、十分な信号対雑音比としてどの程度の値を要求するかは当業者が仕様に応じて適宜選択する事項というべきであって、また、本願補正発明で特定されている信号対雑音比の21.6dB以上という値自体も、引用例1の「SNRは100nmの範囲にわたり20dBを超えた。」という記載(上記(2)の記載事項(ウ)を参照。)、及び、引用発明1では「波長が1500?1600nmの範囲にわたり、波長1540nm弱における1つのデータを除き、SNRのデータが21.6dB以上であ」ることからみると格別なものとはいえないものである。
してみれば、引用発明1において、発生するただ一つの縦モードからなる光スペクトル成分の連続光の信号対雑音比が21.6dB以上であるもののみを伝送に用いるようにすること、また、そのことと引用発明3とを同時に採用することは、両者とも当業者が容易に想到し得たことであるから、結局、上記[相違点2]は当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明1ないし3及び上記周知事項に基づいて当業者が予測し得たものにすぎない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1ないし3及び上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たさないものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成18年3月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年5月30日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「繰り返し周波数に相当する周波数間隔の縦モードで発振する分布ブラッグ反射器を集積したモード同期半導体レーザを用いた繰り返し光パルス列発生手段と、
前記繰り返し光パルス列発生手段から発生した繰り返し光パルス列を入射して該繰り返し光パルス列のスペクトル幅を拡大する正常分散分散平坦特性を有する非線形光学媒質と、
前記非線形光学媒質によりスペクトル幅を拡大された光スペクトルからただ一つの縦モードからなる光スペクトル成分を、一つあるいは複数分波する波長分波器と
を有し、ただ一つの縦モードからなる光スペクトル成分の連続光を発生することを特徴とする連続光光源。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明において、「発生する」「ただ一つの縦モードからなる光スペクトル成分の連続光」が「信号対雑音比が21.6dB以上の」ものであるとの限定を削除したものに相当する。そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用発明1ないし3及び上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1ないし3及び上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1ないし3及び上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-08 
結審通知日 2008-01-15 
審決日 2008-01-28 
出願番号 特願2001-34360(P2001-34360)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
P 1 8・ 575- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 貴之三橋 健二  
特許庁審判長 向後 晋一
特許庁審判官 山村 浩
吉野 公夫
発明の名称 連続光光源  
代理人 本山 泰  
代理人 根岸 裕一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ