ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
---|---|
管理番号 | 1174961 |
審判番号 | 不服2004-15870 |
総通号数 | 101 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-05-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-07-29 |
確定日 | 2008-03-21 |
事件の表示 | 特願2001- 87433「パチンコ機受け皿及びこれを備えたパチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月 2日出願公開、特開2002-282495〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1,手続きの経緯 本願は、平成13年3月26日の出願であって、平成16年2月13日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年4月19日付けで手続補正がなされ、同年6月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月29日に拒絶査定不服の審判請求がなされたものである。 第2,本願発明 本願の請求項1乃至7に係る発明は、上記平成16年4月19日付けで補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に記載された発明は次のとおりのものである。 【請求項1】 パチンコ機に設けられ、貯留した遊技球を底部に形成された排出口から下方へ配置された球箱に排出するパチンコ機受け皿であって、 前記排出口の内壁面が遊技者側に向かって傾斜していることを特徴とするパチンコ機受け皿。(以下「本願発明」という。) 第3,刊行物に記載された発明 刊行物1:実公昭28-7247号公報 原査定の拒絶理由通知に引用された、実公昭28-7247号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、以下の記載がある(なお、以下における「撥」の表記は、引用刊行物1の表記と異なるが便宜上、使用する。)。 (1-1)公報第1頁左欄第6行乃至第23行には「図面に示した弾球遊戯器は器匣1の前面に設けた弾撥ハンドル2を操作する事によつて遊戯球3を撥ね上げ障碍釘4の間隙を経て球孔4に入らせるときは貯溜部5に保持されている一定数の玉aが下部の吐出口6から吐出されるようになつている型式のものであつて・・・ Aは前記の吐出口6からの吐出物を受容れる受器であつて底壁が円弧断面で其の最低部に排出口10を有し上面を透明板9で被つた匣体8の外側に同じく円弧状断面を有し後方部分に開口12と其の開口に連通する排出道管13とを有する塞鈑11を被装し其の両側の腕片11’,11’を枢軸14,14によつて匣体8に回動自在に枢着して其の自然位置に於いては自重によつて匣体8の排出口10を塞ぐ位置にあるようにしたものである。此の匣体8は鍔16によつて器匣1に取付けられ後部開口15が吐出口6と連通している。」と、 (1-2)公報第1頁右欄第1行乃至第10行には「依つて吐出口6から玉aが受器A内へ吐出されたとき排出導管13を前方へ引けば第4図に示すように開口10は開かれて吐出物aは導管13を通じて排出されるから之を手又は袋に受容れる事ができ管13を釈放すれば塞鈑11は自重で閉塞位置へ復帰するものである。 本案は貯溜部5に保持されている或数の遊戯球が受器へ吐出される公知の弾球遊戯器に実施するとき球の取出しを容易ならしめる事ができるものであるが・・・」と、 (1-3)公報第1頁右欄第16行乃至第23行には「・・・弾撥された球が所定の球孔に入つた時に一定数の吐出物を器匣前面の受器内へ吐出させるようにした弾球遊戯器に於いて最低部に開口10を有する円弧状断面の底壁を有する匣体8の外側に同じく円弧状断面をなし後部に開口12とそれに連通する排出導管13とを有する塞鈑11を回動自在に枢着した受器Aを器匣1に固定して其の後面の開口15を吐出口6と連通させた構造。」と、それぞれ記載されている。 ところで、上記のように符号「10」の用語として「排出口」と「開口」とを混用しているが、以下では「排出口」として統一して表記する。 (1-4)また、図面、特に吐出物受器の斜面図である第2図及び側面図である第3図並びに縦断側面図である第4図に示された技術を併せると、図面には「排出導管13の内壁面は、器匣1の前面から離れる方向に下向き傾斜している」様子、及び「排出口10と開口12と排出導管13とが連通し、吐出物aが、器匣1の前面から離れる方向に下向き傾斜している排出導管13を通じて排出される」様子が示されている。 したがって、上記の記載事項及び示された技術事項を「導管13を通じて排出される吐出物aを袋に受容れる」場合についてまとめると、引用刊行物1には、 「 器匣1の前面に設けたハンドル操作によって遊戯球3を球孔4に入らせるときは、貯溜部5に保持されている一定数の玉aが下部の吐出口6から受器A内へ吐出される弾球遊戯器において、 吐出口6からの吐出物を受容れる受器Aは、底壁が円弧断面で其の最低部に排出口10を有し上面を透明板9で被った匣体8の外側に、同じく円弧状断面を有し後方部分に開口12と其の開口に連通する排出導管13とを有する塞鈑11を回動自在に枢着して被装し、塞鈑11の自然位置に於いては自重によって匣体8の排出口10を塞ぐ位置にあるようにし、 前記匣体8は器匣1に取付けられ、 前記排出導管13の内壁面は、器匣1の前面から離れる方向に下向きに傾斜し、 吐出口6から玉aが受器A内へ吐出されたとき排出導管13を前方へ引けば、排出口10と開口12と排出導管13とが連通し、吐出物aが、器匣1の前面から離れる方向に下向き傾斜している排出導管13を通じて排出され、袋に受容れる事ができ、球の取出しを容易ならしめる事ができる、弾球遊戯器。」の発明(以下「引用発明1」という。)が、記載されていると認められる。 第4,本願発明との比較・検討 本願発明と引用発明1とを比較する。 (4-1)引用発明1の「弾球遊戯器」は、本願発明の「パチンコ機」に相当し、以下同様に「玉a」及び「吐出物a」は「遊技球」に相当する。 (4-2)引用発明1の「受器A」について検討すると、「受器A」は「匣体8の外側に、塞鈑11を被装し」たものであり、「吐出口6からの吐出物を受容れる」ものであり、「匣体8は器匣1に取付けられ」るものであるから、上記(4-1)記載の事項と併せると、引用発明1の「受器A」は、本願発明の「パチンコ機に設けられる、パチンコ機受け皿」の技術事項を有しているといえる。 (4-3)引用発明1の「排出導管13」について検討すると、「排出導管13を通じて吐出物aが排出され、袋に受容れる事ができ」るものであるから、本願発明の「排出口」に相当する。また、引用発明1の「排出導管13の内壁面」について検討すると、「器匣1の前面から離れる方向に下向きに傾斜」するものであり、器匣1の前面には遊技者が位置することは当該技術分野においては明らかであるから、引用発明1の「排出導管13の内壁面は、器匣1の前面から離れる方向に下向きに傾斜し」の技術事項は本願発明の「排出口の内壁面が遊技者側に向かって傾斜している」の技術事項を有しているといえる。 (4-4)引用発明1の「排出口10と、開口12に連通する排出導管13を有する受器A」について検討すると、「排出導管13」は「下向き傾斜し」、「前方へ引けば、排出口10と連通し」、「吐出物aを排出」するものであって、当該排出口10は「匣体8の底壁の最低部」に設けられるものであるから、上記(4-1)乃至(4-3)記載の事項と併せると、引用発明1は、本願発明の「遊技球を底部に形成された排出口から下方へ排出するパチンコ機受け皿」の技術事項を有しているといえる。 次に、引用発明1の「吐出口6からの吐出物を受容れる受器A」について検討すると、「吐出口6から玉aが受器A内へ吐出され」、吐出された玉aが「排出導管13を通じて排出され」るまでは受器A内に位置することは明らかである。そうすると、引用発明1は、本願発明の「貯留した遊技球を排出口から排出するパチンコ機受け皿」の技術事項を有しているといえる。 (4-5)引用発明1の「吐出物aが、器匣1の前面から離れる方向に下向き傾斜している排出導管13を通じて排出され、袋に受容れる事ができ」の技術事項と、本願発明の「遊技球を排出口から下方へ配置された球箱に排出する」技術事項とを比較すると、「袋」及び「球箱」は「受入容器」において共通し、容器を下方に配置し受け入れることは当然の技術常識であるから、上記(4-1)乃至(4-4)記載の事項と併せると、両者は「遊技球を排出口から下方へ配置された受入容器に排出する」において一致する。 したがって、本願発明と引用発明1とを比較すると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 一致点 パチンコ機に設けられ、貯留した遊技球を底部に形成された排出口から下方へ配置された受入容器に排出するパチンコ機受け皿であって、 前記排出口の内壁面が遊技者側に向かって傾斜していることを特徴とするパチンコ機受け皿。 相違点 受入容器が、本願発明では球箱であるのに対し、引用発明1では袋である点。 そこで、上記相違点について検討する。 遊技球を内壁面が傾斜している排出口から下方へ配置された球箱に排出する技術は、例えば、特開平9-38301号公報における「球抜き通路24及び受け箱27」(段落番号【0017】、【0029】及び【図3】並びに【図5】参照)を設けた技術、及び特開平7-163729号公報における「排出用ノズル30及び玉箱」(段落番号【0013】、【0030】及び【図1】並びに【図3】参照)を設けた技術にそれぞれ示されたように、周知・慣用の技術である。 ところで、本願発明の「玉箱の外部に遊技球がこぼれることを防止」という課題は、遊技球排出機構及び受け皿についていえる一般的な課題、つまり、排出機構及び受け皿の構成を考える場合における自明な課題にすぎない。 したがって、この課題と遊技球を内壁面が傾斜している排出口から下方へ配置された球箱に排出する前記周知・慣用の技術とを併せて考慮し、引用発明1の受入容器(袋)を前記自明の課題に従って受入容器の外部に遊技球がこぼれることを防止しようとして、周知・慣用の技術である前記排出口から下方へ配置された球箱に排出する技術を、内壁面が傾斜している排出口において共通する引用発明1に適用して、上記相違点に係る本願発明を特定する事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたものである。 また、効果においても、本願発明が格別の効果を奏するものとは認められない。 第5,むすび したがって、本願発明は、引用発明1及び周知・慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-01-17 |
結審通知日 | 2008-01-22 |
審決日 | 2008-02-07 |
出願番号 | 特願2001-87433(P2001-87433) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 池谷 香次郎 |
特許庁審判長 |
小原 博生 |
特許庁審判官 |
太田 恒明 川島 陵司 |
発明の名称 | パチンコ機受け皿及びこれを備えたパチンコ機 |
代理人 | 福田 浩志 |
代理人 | 西元 勝一 |
代理人 | 加藤 和詳 |
代理人 | 中島 淳 |