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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01D
管理番号 1174969
審判番号 不服2004-22582  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-04 
確定日 2008-03-21 
事件の表示 平成 7年特許願第113476号「水切り濾過用不織布」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年11月19日出願公開、特開平 8-299724〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成7年5月12日の出願であって、平成16年4月19日付けの拒絶理由に対して、平成16年6日25日付けで手続補正がなされたが、平成16年9月28日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、平成16年11月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年6日25日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された下記のとおりのものである。

「単糸繊度が5?12デニールの芯鞘構造の複合長繊維のみにて構成され、目付けが10?30g/m^(2)であり、一定間隔で配された複数の融着区域とこれら融着区域間の非融着区域とを有し、融着区域の面積率が35?40%であり、前記非融着区域では構成繊維どうしの間隔が50?1600μmであることを特徴とする水切り濾過用不織布。」

3.引用刊行物

(1)実開平03-008900号(実開平04-106614号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
(a)「本考案はソフトでフィット性が良く、水切れ性に優れ、かつ汚れ除去性に優れた不織布製台所流し台水切り用濾過袋に関するものである。」(【0001】)
(b)「本考案は、単糸が3?15デニールのポリオレフィン系繊維から構成された不織布製シートからなり・・・不織布の目付けは10?30g/m^(2)の範囲であることが好ましい・・・本考案で使用されるポリオレフィン系繊維としてはポリプロピレン繊維や、芯成分がポリエステル重合体、あるいはポリプロピレン重合体、鞘成分がポリエチレン重合体からなる芯鞘型複合繊維などが挙げられる。」(【0005】、【0008】、【0009】)
(c)「なお、前記不織布製シート2としては短繊維からなる不織布あるいは長繊維からなる不織布の何れも用いることができる。」(【0011】)

(2)特開平6-270361号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。
(d)「【請求項1】 多数の疏水性長繊維を集積してなる長繊維不織布の上に親水性パルプ繊維を湿式抄紙してなる繊維シートを積層し、高圧水柱流処理を施すことにより該長繊維と該パルプ繊維が相互に絡み合っていると共に、前記繊維シートに多数の開孔を形成させた複合不織布を用いて構成されていることを特徴とする台所用水切り袋。」(【特許請求の範囲】)
(e)「本発明において使用する長繊維不織布は、疎水性長繊維相互間が自己融着した、いわゆる長繊維不織布であって、不織布の形態をきちんと保持するために、熱エンボスロール間に長繊維不織布を通過させて、疎水性長繊維の相互間が自己融着した点融着区域が、散点状に多数配置されたものを使用するのが好ましい。」(【0016】)

4.対比・判断

上記引用刊行物1には、記載事項(c)に「不織布製シート2としては長繊維からなる不織布も用いることができる」ことが記載されているから「長繊維のみにて構成されている不織布製シート」が記載されていると云え、そして、引用刊行物1の記載事項(a)?(c)を本願発明の記載ぶりに則って整理すると、
「単糸繊度が3?15デニールの芯鞘型複合繊維の長繊維のみにて構成され、目付けが10?30g/m^(2)である台所流し台水切り濾過袋に用いる不織布製シート。」(以下、「刊行物発明」という。)が記載されていると云える。

本願発明と上記刊行物発明とを対比すると、刊行物発明の「台所流し台水切り濾過袋に用いる不織布製シート」は本願発明の「水切り濾過用不織布」に相当し、刊行物発明の「芯鞘型複合繊維の長繊維」は本願発明の「芯鞘構造の複合長繊維」と表現が異なるだけで同一のものであり、刊行物発明の「単糸繊度が3?15デニール」と本願発明の「単糸繊度が5?12デニール」とは、「単糸繊度が5?12デニール」である点で重複しているので、両者は、
「単糸繊度が5?12デニールの芯鞘構造の複合長繊維のみにて構成され、目付けが10?30g/m^(2)である水切り濾過用不織布。」である点で一致し、

本願発明においては、一定間隔で配された複数の融着区域とこれら融着区域間の非融着区域とを有し、融着区域の面積率が35?40%であるものと規定されているのに対して、刊行物発明においては、この点について明示的な記載がない点(相違点1)、及び、
本願発明においては、非融着区域における構成繊維どうしの間隔が50?1600μmであると規定されているのに対して、刊行物発明においては、この点について明示的な記載がない点(相違点2)で相違している。

以下、相違点について検討する。

(相違点1について)

例えば、引用刊行物2として例示した特開平6-270361号公報の記載事項(d)に台所用水切り袋に用いる長繊維不織布が記載されており、そして、記載事項(e)に「本発明において使用する長繊維不織布は、疎水性長繊維相互間が自己融着した、いわゆる長繊維不織布であって、不織布の形態をきちんと保持するために、熱エンボスロール間に長繊維不織布を通過させて、疎水性長繊維の相互間が自己融着した点融着区域が、散点状に多数配置されたものを使用するのが好ましい。」と記載されているように、水切り濾過用長繊維不織布においては、熱エンボスロール等を用いて繊維の相互間を自己融着し、点融着区域を散点状に多数配置するようにすることは、この技術分野における常套手段である。そうすると、係る手段を刊行物発明に適用して、「一定間隔で配された複数の融着区域とこれら融着区域間の非融着区域とを」設けることは当業者が容易になしえることであり、その際、融着区域の面積率は、水切り濾過効率や不織布の強度等を考慮して、当業者が適宜に設定しうるものであるから、これを、本願発明のように35?40%に限定することについても格別な困難性を認めることはできない。
そして、本願発明の、相違点1の構成に基づく作用効果は当業者が予測しうる範囲を出ないものであり、相違点1の構成に基づき、格別顕著な効果が奏されているとは認められない。

(相違点2について)

長繊維不織布に点融着を散点状に設けるときに、非融着区域において構成繊維どうしに間隔が生ずることは自明であり、本願発明の間隔の範囲は、格別な範囲ではない。
そして、本願発明の、相違点2の構成に基づく作用効果は当業者が予測しうる範囲を出ないものであり、相違点2の構成に基づき、格別顕著な効果が奏されているとは認められない。

してみると、本願発明は、上記引用刊行物1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.まとめ

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-11 
結審通知日 2008-01-22 
審決日 2008-02-04 
出願番号 特願平7-113476
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新居田 知生  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 森 健一
斎藤 克也
発明の名称 水切り濾過用不織布  
代理人 笹原 敏司  
代理人 森本 義弘  
代理人 原田 洋平  
代理人 板垣 孝夫  

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