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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01G
管理番号 1175021
審判番号 不服2006-1327  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-19 
確定日 2008-03-21 
事件の表示 特願2000-143239「微小加重検出器および微小加重測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月22日出願公開、特開2001-324375〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年5月16日付の出願であって、平成17年12月12日付(発送日平成17年12月20日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年1月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成18年2月14日付で手続補正がなされたものである。

第2 平成18年2月14日付手続補正書による補正(以下、「本願補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本願補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本願補正は、特許請求の範囲の請求項1の内容を、補正前の、
「【請求項1】
先端部に窪みを設けた加重受け部と、
前記加重受け部に連結されピエゾ抵抗体を設けた微小梁部と、
前記微小梁部の他端で該微小梁部を支持する支持部とからなるレバーを備え、
前記加重受け部に加えられた加重により生じる前記レバーの撓みを前記ピエゾ抵抗体の抵抗値変化に変換することを特徴とする微小加重検出器。」
から、
「【請求項1】
加重を受ける加重受け部と、
前記加重受け部に連結されピエゾ抵抗体を設けたレバー部と、
前記レバー部の他端で該レバー部を支持する支持部とからなり、
該記加重受け部に加えられた加重により生じる前記レバー部の撓みが水平方向の捩れを含むことなく鉛直方向のみの変位となるように前記加重受け部の先端部に窪みを設け、
前記レバー部の撓みを前記ピエゾ抵抗体の抵抗値変化に変換することを特徴とするカンチレバー微小加重検出器。」
と補正する補正事項を含むものである。

2.補正の適否
上記の補正内容は、
a.請求項1に係る微小荷重検出器が、「加重受け部」と「微小梁部」と「支持部」とからなる「レバー」を備えたものであるとの発明特定事項を、本願明細書段落【0033】?【0035】に記載されるように、微小荷重検出器が、「加重受け部」と「レバー部」と「支持部」とからなるものとする補正。
b.請求項1に係る発明特定事項である加重受け部の先端部に設けた「窪み」について、その位置が「加重受け部に加えられた加重により生じる前記レバー部の撓みが水平方向の捩れを含むことなく鉛直方向のみの変位となるように」設けるとの限定を付加する補正。
c.発明特定事項である「微小荷重検出器」が、「カンチレバー微小荷重検出器」であるとの限定を付加する補正
である。
上記補正事項a.は、平成18年法改正前特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、補正事項b.c.はともに平成18年法改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.刊行物記載の発明・事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の平成6年4月19日に頒布された刊行物である特開平6-109561号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに下記の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、走査型力顕微鏡や高分解能な表面電位計に用いられる力検出装置に関する。」(段落【0001】)
(2)「【0027】
【実施例】請求項1記載の発明の第一の実施例を図1に基づいて説明する。シリコンからなる台座19には、絶縁物である酸化シリコンからなる片持ち梁20が固定されている。この片持ち梁20の先端部には下方に向けて探針21が形成されている。また、片持ち梁20の梁の一部分(ここでは、付け根部分)Aには、電気的検出手段としての多結晶シリコンからなるピエゾ抵抗22が取付けられている。このピエゾ抵抗22の両端部には、外部との電気的接続をとるために、アルミニウム薄膜からできた配線23が接続されている。
【0028】このような構成において、図示しない試料の表面上の帯電電荷と探針21との間の静電引力により片持ち梁20が変形し、その機械的な変形量を梁の付け根部分Aに設けられたピエゾ抵抗22により電気的に検出し、配線23を介して外部に取出し電気的出力として得ることにより、探針21に加わる力を測定することができる。」(段落【0027】?【0028】)
(3)図面の図1(a)(b)には、片持ち梁20の幅に対する略中心線上の先端部に探針21が形成されている構成が示されている。

上記摘記事項(1)における「本発明は、走査型力顕微鏡や高分解能な表面電位計に用いられる力検出装置に関する。」記載から、刊行物1に記載の力検出装置は微小な力を検出する装置であることが読み取れる。
これら、摘記事項(1)?(3)の記載内容からみて、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認める。
<刊行物1記載の発明>
「力を受ける探針21と、
探針21を先端部に形成しピエゾ抵抗22を取り付けた片持ち梁20と、
片持ち梁20の端部で該片持ち梁20を固定する台座19とからなり、
片持ち梁20の幅に対する略中心線上の先端部に探針21を形成し、
探針21に加わる力により生じる片持ち梁20の変形をピエゾ抵抗22により電気的に検出する微小力検出装置。」

4.対比
本願補正発明1と刊行物1記載の発明とを対比する。
・後者における「力を受ける探針21」、「ピエゾ抵抗22」、「片持ち梁20」、「探針21を先端部に形成しピエゾ抵抗22を取り付けた片持ち梁20」、「片持ち梁20を固定する台座19」、「片持ち梁20の変形」は、それぞれ、前者における「加重を受ける加重受け部」、「ピエゾ抵抗体」、「レバー部」、「加重受け部に連結されピエゾ抵抗体を設けたレバー部」、「レバー部を支持する支持部」、「レバー部の撓み」に相当する。
・後者における「片持ち梁」は検出しようとする力に対して「カンチレバー」として機能することは明らかであること、から、後者における「微小力検出装置」は、前者における「カンチレバー微小加重検出器」に相当する。
してみると、両者は、次の一致点、相違点を有している。

<一致点>
「加重を受ける加重受け部と、
前記加重受け部に連結されピエゾ抵抗体を設けたレバー部と、
前記レバー部の他端で該レバー部を支持する支持部とからなり、
該記加重受け部に加えられた加重により生じる前記レバー部の撓みを前記ピエゾ抵抗体の抵抗値変化に変換することを特徴とするカンチレバー微小加重検出器。」

<相違点>
本願補正発明1においては、加重受け部の先端部に「レバー部の撓みが水平方向の捩れを含むことなく鉛直方向のみの変位となるように窪み」が設けられているのに対し、刊行物1記載の発明においては、加重受け部に相当する箇所には窪みではなく探針21が設けられており、レバー部に相当する片持ち梁20は、その変形による捩れの有無について不明である点。

5.判断
上記相違点について検討する。
刊行物1記載の発明において、探針21は、片持ち梁20の幅に対する略中心線上の先端部に形成されている。そして、片持ち梁20の幅に対する略中心線上に加わる力は、同片持ち梁20に対して水平方向の捩れを含むことなく鉛直方向にのみ変形させることは、加わる力による弾性体の変形という材料力学等の技術常識からみて明らかである。また、片持ち梁の幅方向の略中央部に検出しようとする力を作用させることは、刊行物1の他にも、例えば、特開昭57-66326号公報(その第2頁左上欄8?18行を参照。)に記載されるように周知の技術である。
更に、レバー状の部材を用いて加重を検出する装置において、加重を受ける箇所の形状を検出対象物の形状等に応じて適宜変更することが望ましいことは当業者にとって明らかな事項といえるのであり、しかも、レバー状の部材の検出しようとする加重を受ける箇所に窪みを設けることは、例えば、実公昭63-1223号公報(その第2頁左欄7?14行、及び、図面に記載の受部5に係る構成を参照。)、実公昭61-31362号公報(その第2頁左欄43行?同頁右欄15行、及び、図面の第1図、第2図に示される支持孔5a,5bに係る構成を参照。)に記載されるように周知の技術である。
してみれば、刊行物1記載の発明における片持ち梁20に対し、これら周知の技術を適用することによって、上記相違点に係る特定事項を得ることは当業者が容易に成し得たものといえる。

<本願補正発明1の作用効果について>
そして、本願補正発明1の作用効果は、刊行物1に記載の発明及び上記周知の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別なものではない。

したがって、本願補正発明1は刊行物1記載の発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.むすび
以上のとおり、本願補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
1.本願発明
平成18年2月14日付手続補正書による補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、願書に最初に添付された明細書及び平成17年11月22日付手続補正書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。
<本願発明1>
「【請求項1】
先端部に窪みを設けた加重受け部と、
前記加重受け部に連結されピエゾ抵抗体を設けた微小梁部と、
前記微小梁部の他端で該微小梁部を支持する支持部とからなるレバーを備え、
前記加重受け部に加えられた加重により生じる前記レバーの撓みを前記ピエゾ抵抗体の抵抗値変化に変換することを特徴とする微小加重検出器。」

2.刊行物記載の発明・事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び同刊行物に記載された発明・事項は、前記「第2 3.(1)ないし(3)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明1における「微小梁部」は、本願補正発明1における「レバー部」に相当し、また、刊行物1記載の発明における「片持ち梁20」に相当する。
してみれば、本願発明1は、全体として、本願補正発明1における「窪み」について「加重受け部に加えられた加重により生じる前記レバー部の撓みが水平方向の捩れを含むことなく鉛直方向のみの変位となるように」設けるとの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の限定を付加したものに相当する本願補正発明1が前記「第2 5.」に記載したとおり、前記刊行物1記載の発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明1も同様の理由により、刊行物1記載の発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであって、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明が特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項2ないし6に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-16 
結審通知日 2008-01-22 
審決日 2008-02-04 
出願番号 特願2000-143239(P2000-143239)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01G)
P 1 8・ 575- Z (G01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森 雅之  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 上原 徹
岡田 卓弥
発明の名称 微小加重検出器および微小加重測定装置  
代理人 松下 義治  

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