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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09F
管理番号 1175059
審判番号 不服2005-15465  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-11 
確定日 2008-03-17 
事件の表示 平成 9年特許願第 92898号「広告宣伝媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成10年10月 9日出願公開、特開平10-268818〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成9年3月28日に出願したものであって、平成17年7月8日付けで拒絶査定がなされたため、これを不服として同年8月11日付けで本件審判請求がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成19年10月23日付けで拒絶の理由を通知したところ、請求人は同年12月21日付けで意見書を提出した。

第2 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年6月27日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のものと認める。
「【請求項1】個包装材料により個包装した商品を充填包装した包装容器の外面に、該商品を表示する商品名、商標名、製造者、販売者、商品説明事項等の商品表示にかかる文字、図形、記号、絵柄等からなる印刷画像表示部を形成し、更に、商品を個包装する個包装材料の表面に、包装容器内に充填包装された商品以外の他の商品を広告宣伝する文字、図形、記号、絵柄等からなる印刷画像表示部を形成したことを特徴とする広告宣伝媒体。」

第3 当審の判断
1.拒絶理由の骨子
当審において平成19年10月23日付けで通知した拒絶の理由の概要は、次のようなものである。
第1:請求項1?6に係る発明は、本願出願前に頒布された実願昭63-86379号(実開平2-6494号)のマイクロフィルム、実願平5-49425号(実開平7-12108号)のCD-ROM、実願平5-14085号(実開平6-73198号)のCD-ROMに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下、「理由1」という。)。
第2:請求項1?6に係る発明は、本願出願前に頒布された登録実用新案第3023126号公報に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下、「理由2」という。)。

2.理由1についての判断
2-1 引用刊行物
(1)実願昭63-86379号(実開平2-6494号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
A)「(2) 紙巻タバコの巻紙部分に...インク等により所望の広告宣伝文字、あるいは図形等を記載したことを特徴とするカラーシガレツト。」(実用新案登録請求の範囲)
B)「第3図に示すものは、巻紙部分の所望の箇所に...インク等により広告宣伝文や図形等を印刷したものであり...巻紙部分に広告宣伝文や図形等を浮き出させて視認することができるものである。」(明細書第4頁5?10行)
C)「タバコ自体を大きな広告宣伝効果を持つ媒体とすることができる。」(明細書第5頁1?2行)
D)第1図から、タバコパッケージの外面に「Rainbow 100’s FILTER CIGARETTES office Creation&Technology Tokyo Japan」の文字が表示されていること、第3図から、タバコの巻紙部分に「OOOのドライビール」の文字が記載されていることが看取できる。
「Rainbow」はタバコの銘柄名あるいは商標、「100’s FILTER CIGARETTES」はタバコの長さとフィルターがついているとの商品説明事項、「office Creation&Technology」は製造者あるいは販売者を表示したものと認められ、タバコパッケージに表示される文字が印刷されたものであることは、従来から周知である。
広告宣伝文「OOOのドライビール」は、タバコ以外の他の商品を広告宣伝する文字と認められ、記載B)から印刷されたものと解される。
上記記載及び図面を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。
「紙巻タバコのパッケージの外面に、紙巻タバコの銘柄名あるいは商標、製造者あるいは販売者、商品説明事項の表示があり、紙巻タバコの巻紙部分に、タバコ以外の他の商品を宣伝広告する文字や図形等が印刷されている広告宣伝効果を持つ媒体。」

(2)実願平5-49425号(実開平7-12108号)のCD-ROM(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
a)「個別包装することを特徴とするデンタルフロス」(段落【0001】)
b)「デンタルフロスに、塵、埃がつきやすく不潔であった。」(段落【0003】)
c)「図3、図4、図5は個別包装の実施例である。...包装素材に...宣伝を刷りこむと便利である」(段落【0007】)
d)「パッケージ自体、全く自由に制作できるので、社名など宣伝文句を印刷して広告媒体として配布することも可能であり、更に全体を宣伝したい商品の色、形などにあわせることもできる。」(段落【0009】)
e)図4から、デンタルフロスを個包装する個包装材料の表面に「BEER」、図5から、デンタルフロスを個包装する個包装材料の表面に「TAIWAN BANANA」の文字が印刷されていることが看取できる。

(3)実願平5-14085号(実開平6-73198号)のCD-ROM(以下、「刊行物3」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
i)「消毒薬品液を含有した薄厚シートを、消毒薬品液等の揮発成分が浸透蒸発しないように加工処理した包装用袋に一回使用分のみを包装したことを特徴とする便座除菌紙の構成である。また、前記便座除菌紙の一回使用分包を積重して複数個貯蔵し、一個の分包のみを取り出すことができる保管箱に収納した」(段落【0004】)
ii)「一枚の消毒薬品液を含浸した薄厚シート毎一個の包装体として個別に包装されているから、衛生的であるばかりでなく...一個の包装体毎表面に印刷することができ、特に、使用期限やホテル、旅館の名前を印刷することができので広告宣伝媒体としても使用でき」(段落【0008】)
2-2 対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを比較すると、刊行物1記載の発明の「紙巻タバコ」、「紙巻タバコのパッケージ」及び「広告宣伝効果を持つ媒体」は、それぞれ、本願発明の「商品」、「包装容器」及び「広告宣伝媒体」に相当する。
刊行物1記載の発明の「紙巻タバコ」がパッケージ内に充填包装されていることは一般常識である。
刊行物1記載の発明の「紙巻タバコの銘柄名あるいは商標、製造者あるいは販売者、商品説明事項の表示」がある領域は、本願発明の「商品を表示する商品名、商標名、製造者、販売者、商品説明事項等の商品表示にかかる文字、図形、記号、絵柄等からなる印刷画像表示部」と、「商品表示にかかる表示部」で共通する。
刊行物1記載の発明の「タバコ以外の他の商品を宣伝広告する文字や図形等が印刷されている」領域は、本願発明の「包装容器内に充填包装された商品以外の他の商品を広告宣伝する文字、図形、記号、絵柄等からなる印刷画像表示部」と、「包装容器内に充填包装された商品以外の他の商品を広告宣伝する表示部」で共通する。
刊行物1記載の発明の「紙巻タバコの巻紙部分」と、本願発明の「商品を個包装する個包装材料の表面」は、「個商品にかかわる被表示領域」で共通する。

したがって、両者は、「商品を充填包装した包装容器の外面に、該商品を表示する商品表示にかかる表示部を形成し、更に、個商品にかかわる被表示領域に、包装容器内に充填包装された商品以外の他の商品を広告宣伝する表示部を形成した広告宣伝媒体。」の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願発明は、包装容器内に充填包装された商品が個包装材料により個包装された商品であって、個商品にかかわる被表示領域が、個包装材料の表面であると特定されているのに対して、刊行物1記載の発明では、包装容器内に充填包装された商品である紙巻きタバコは個包装材料により個包装されておらず、個商品にかかわる被表示領域が、紙巻きタバコの巻紙部分であって上記特定がない点。
[相違点2]
商品表示にかかる表示部が、本願発明では、商品を表示する商品名、商標名、製造者、販売者、商品説明事項等の商品表示にかかる文字、図形、記号、絵柄等からなる印刷画像表示部であると特定されているのに対して、刊行物1記載の発明では、紙巻タバコの銘柄名あるいは商標、製造者あるいは販売者、商品説明事項の表示部であって上記特定と異なる点。

[相違点3]
包装容器内に充填包装された商品以外の他の商品を広告宣伝する表示部が、本願発明では、文字、図形、記号、絵柄等からなる印刷画像表示部であると特定されているのに対して、刊行物1記載の発明では、文字や図形等が印刷されている表示部であって上記特定と異なる点。

2-3 判断
上記相違点1について検討する。
刊行物2、3には、商品(デンタルフロス、便座除菌紙)を、個包装材料(包装素材、包装用袋)により個包装し、該個包装材料の表面に、個包装した商品以外の他の商品(BANANAとBEER、ホテルや旅館の名前)を広告宣伝する表示部を形成した広告宣伝媒体が記載されている。
刊行物1記載の発明の巻きタバコは、その表面を直接被表示領域とすることが可能であるが、商品の種類によっては、衛生上の問題や使い勝手を考えて個包装されている。そして、個包装した場合、他の商品を広告宣伝する個商品にかかわる被表示領域をどこに形成するかは宣伝効果やスペース等を勘案して当業者が適宜選択する事項であり、個商品にかかわる被表示領域を個包装材料の表面とすることが上記刊行物2、3に記載されているように従来から周知であるから、刊行物2、3記載のように商品を個包装材料により個包装し、該個包装材料の表面を個商品にかかわる被表示領域とし、個包装材料の表面に個包装した商品以外の他の商品を広告宣伝する表示部を形成することは、当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点2について検討する。
商品表示にかかる表示部に表示する内容として何を選定し、どのような表示部を形成するかは、充填包装した商品や、視認性等に応じて当業者が適宜選定する設計事項にすぎず、包装容器の外面の表示部として文字、図形、記号、絵柄等からなる印刷画像表示部は最も一般的なものであるから、本願発明のように、商品表示にかかる表示部を、商品を表示する商品名、商標名、製造者、販売者、商品説明事項等の商品表示にかかる文字、図形、記号、絵柄等からなる印刷画像表示部とすることは、当業者が必要に応じて適宜なす設計事項にすぎない。

上記相違点3について検討する。
包装容器内に充填包装された商品以外の他の商品を広告宣伝する印刷表示部をどのような表示部とするかは、広告宣伝する他の商品や、視認性等に応じて当業者が適宜選定する設計事項にすぎず、表示部として文字、図形、記号、絵柄等からなる印刷画像表示部は最も一般的なものであるから、本願発明のように、他の商品を広告宣伝する表示部を文字、図形、記号、絵柄等からなる印刷画像表示部とすることは当業者が必要に応じて適宜なす設計事項にすぎない。

そして、本願発明の作用効果も、刊行物1乃至3記載の発明から当業者が予測できる範囲のものである。

2-4 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物1乃至3記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.理由2についての判断
3-1 引用刊行物
(1)登録実用新案第3023126公報(以下、「刊行物4」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
あ)「外容器内に複数の酒菓子をレイアウトしてなる酒菓子詰合セットであって、上記複数の各酒菓子を、内容器と、該内容器に収容され、酒類を原料とし、アルコール分を飛ばして製造された菓子と、上記内容器に表示され、原料酒類の販売容器に貼着される商品ラベルと実質的に同一の態様をなす商品ラベルとから構成し、原料酒類の商品ラベルと実質的に同一の態様をなす商品ラベルにて原料酒類の種類を表示するとともに、原料酒類の菓子販売ルートを介しての宣伝広告を可能となしたことを特徴とする。」(段落【0007】)
い)「図1は本考案の一実施例による酒菓子詰合セットを示す。図において、外容器であるケース10は相互に嵌め合わせ可能な上下の紙器11、12で構成され、上側の紙器11の上面には酒ゼリーの商品表示とブランド名とを印刷したラベル13が貼付されている。下紙器12内には中紙器14が配置され、中紙器14には酒菓子である酒ゼリー20・・・が収容されて保持される6つの凹所15・・・が上下2段に形成されている。
酒ゼリー20はプラスチック製のカップ21内にゼリー菓子を充填し、ヒートシール等によってカップ21の上面開口を樹脂フィルム22で封鎖し」(段落【0015】?【0016】)
う)「カップ21の外側面には商品ラベル23が貼着され、商品ラベル23は...日本酒の販売用壜に貼着される商品ラベルA、B、C・・・と実質的に同一の態様に製作されている。...飲酒を嗜まない人に対して日本酒を知ってもらうことができ、日本酒を宣伝広告しうる範囲を拡大することができる。」(段落【0018】)
上記記載及び図面を含む刊行物4全体の記載から、刊行物4には、以下の発明が開示されていると認められる。
「内容器であるカップ21に充填された酒ゼリー(酒菓子)20を収容してなる外容器であるケース10の上面に、酒ゼリーの商品表示とブランド名とを印刷したラベル13を貼付し、更に、カップ21の外側面には、原料酒類の商品ラベルと実質的に同一の態様をなす商品ラベル23にて原料酒類の種類を表示した原料酒類の宣伝広告を可能となした酒菓子詰合セット。」

3-2 対比
本願発明と刊行物4記載の発明とを比較すると、
刊行物4記載の発明の「カップ21に充填された酒ゼリー(酒菓子)20」、「収容してなる」、「外容器であるケース10」、「ケース10の上面」、「原料酒類」及び「宣伝広告を可能となした酒菓子詰合セット」は、それぞれ、
本願発明の「個包装した商品」、「充填包装した」、「包装容器」、「包装容器の外面」、「包装容器内に充填包装された商品以外の他の商品」及び「広告宣伝媒体」に相当する。
刊行物4記載の発明の「内容器であるカップ21」及び「カップ21の外側面」と、本願発明の「個包装材料」及び「個包装材料の表面」は、商品を個包装するものを一方は形で、他方は材料として記載したものであり、刊行物4記載の発明の「内容器であるカップ21」及び「カップ21の外側面」は、材料として記載して「個包装材料」及び「個包装材料の表面」と表現できる。
刊行物4記載の発明の「酒ゼリーの商品表示とブランド名とを印刷したラベル13」が貼付された部分は、本願発明の「該商品を表示する商品名、商標名、製造者、販売者、商品説明事項等の商品表示にかかる文字、図形、記号、絵柄等からなる印刷画像表示部」と、「該商品を表示する商品表示にかかる表示部」で共通する。
刊行物4記載の発明の「原料酒類の商品ラベルと実質的に同一の態様をなす商品ラベル」が貼付された部分は、本願発明の「他の商品を広告宣伝する文字、図形、記号、絵柄等からなる印刷画像表示部」と、「他の商品を広告宣伝する表示部」で共通する。

したがって、両者は、「商品を充填包装した包装容器の外面に、該商品を表示する商品表示にかかる表示部を形成し、更に、商品を個包装する個包装材料の表面に、包装容器内に充填包装された商品以外の他の商品を広告宣伝する表示部を形成した広告宣伝媒体。」 の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
商品表示にかかる表示部が、本願発明では、商品を表示する商品名、商標名、製造者、販売者、商品説明事項等の商品表示にかかる文字、図形、記号、絵柄等からなる印刷画像表示部であると特定されているのに対して、刊行物1記載の発明では、酒ゼリーの商品表示とブランド名とを印刷したラベル13が貼付されていて、上記特定と異なる点。

[相違点2]
他の商品を広告宣伝する表示部が、本願発明では、他の商品を表示する文字、図形、記号、絵柄等からなる印刷画像表示部であると特定されているのに対して、刊行物1記載の発明では、原料酒類の商品ラベルと実質的に同一の態様をなす商品ラベル23が貼付されていて、上記特定と異なる点。

3-3 判断
上記相違点1について検討する。
商品表示にかかる表示部に表示する内容として何を選定するかは、充填包装した商品や、視認性等に応じて当業者が適宜選定する設計事項にすぎず、本願発明のように、商品を表示する商品名、商標名、製造者、販売者、商品説明事項等とすることは当業者が必要に応じて適宜なす設計事項にすぎず、そのような内容を印刷した部分を印刷画像表示部と称することができる。

上記相違点2について検討する。
他の商品を広告宣伝する表示部をどのような表示部とするかは、広告宣伝する他の商品や、視認性等に応じて当業者が適宜選定する設計事項にすぎず、表示部として文字、図形、記号、絵柄等からなる印刷画像表示部は最も一般的なものであるから、本願発明のように、文字、図形、記号、絵柄等からなる印刷画像表示部とすることも当業者が必要に応じて適宜なす設計事項にすぎない。

そして、本願発明の作用効果も、刊行物4記載の発明から当業者が予測できる範囲のものである。

3-4 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物4記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 結論
本願発明は、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて、または、刊行物4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-21 
結審通知日 2008-01-22 
審決日 2008-02-04 
出願番号 特願平9-92898
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 櫻井 茂樹  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 藤井 靖子
尾崎 俊彦
発明の名称 広告宣伝媒体  
代理人 岡田 淳平  
代理人 吉武 賢次  
代理人 永井 浩之  
代理人 勝沼 宏仁  

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