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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41F
管理番号 1175065
審判番号 不服2005-24974  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-26 
確定日 2008-03-17 
事件の表示 平成10年特許願第268708号「オフセット印刷機」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 6月 2日出願公開、特開平11-147305〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年8月30日に出願した特開平7-222284号の一部を平成10年9月22日に新たな特許出願(パリ条約による優先権主張1994年8月30日、独国)としたものであって、平成17年9月22日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年12月26日付けで本件審判請求がされるとともに、平成18年1月19日付けで明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。

2.補正目的・本願発明
本件補正は特許請求の範囲を補正するものであって、本件補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
少なくとも一つの版胴およびゴム胴(1.1?1.5;2.1?2.5)を備えた複数の印刷ユニット(図1?図20;21?24)、および、少なくとも一つの折畳みユニット(25)、および、少なくとも一つの駆動装置としての電気モータ(7)を有するウェブ輪転オフセット印刷機であって、
一つの印刷ユニット(図1?図20;21?24)につき、前記胴(1.1?1.5;2.1?2.5)のうち少なくとも一つが別個の電気モータ(7)と駆動連結され、該胴(1.1?1.5;2.1?2.5)が、別個の電気モータ(7)によって直接または間接的に駆動されるさらなる胴(1.1?1.5;2.1?2.5)と機械的に連結されていないか、あるいは、駆動されない胴(1.1?1.5;2.1?2.5)と歯車(8,10,19,20)を介して機械的に駆動連結されており、
異なるウェブ経路および/あるいは製品の構成に適合させるように複数の印刷ユニット(図1?図20;21?24)を予備調整するため、調整すべき印刷機構(3,4,12,13,14,34,35,46,47,58?61,67,68)の電気モータ(7)のモータ制御器(41,52,56,66,73)の入力側に、調整すべき胴の位置が記憶された演算・記憶装置(45,51,57,65,74)が接続されていることを特徴とするウェブ輪転オフセット印刷機。
【請求項2】
少なくとも一つの版胴およびゴム胴(1.1?1.5;2.1?2.5)を備えた複数の印刷ユニット(図1?図20;21?24)、および、少なくとも一つの折畳みユニット(25)、および、少なくとも一つの駆動装置としての電気モータ(7)を有するウェブ輪転オフセット印刷機であって、
一つの印刷ユニット(図1?図20;21?24)につき、前記胴(1.1?1.5;2.1?2.5)のうち少なくとも一つが別個の電気モータ(7)と駆動連結され、該胴(1.1?1.5;2.1?2.5)が、別個の電気モータ(7)によって直接または間接的に駆動されるさらなる胴(1.1?1.5;2.1?2.5)と機械的に連結されていないか、あるいは、駆動されない胴(1.1?1.5;2.1?2.5)と歯車(8,10,19,20)を介して機械的に駆動連結されており、
版胴(69,70)の張り溝(75,76)を版の交換位置に回転させるため、版胴(69,70)あるいはゴム胴(71,72)を駆動する電気モータ(7)のモータ制御器(73)の入力側に、調整すべき版交換のための胴の位置が記憶された演算・記憶装置(74)が接続されている(図28)ことを特徴とするウェブ輪転オフセット印刷機。
【請求項3】
張り溝のないゴム胴(71,72,図28)がそれぞれモータ(M)によって駆動可能であり、張り溝(75,76)を有する版胴(69,70)が所定の停止位置に回転されることを特徴とする請求項2に記載のウェブ輪転オフセット印刷機。
【請求項4】
電気モータ(7)によって裁断見当が調整可能であり、ウェブ(55,62)に印刷する印刷機構(58?61)の電気モータ(7)のモータ制御器(56,66)の入力側に、ウェブ(55,62)に印刷する全ての印刷機構(58?61)の胴(2.1?2.5)をそれぞれのウェブ経路(図21,図22,図23,図27)に対する所定の位置に設けるために、可能なウェブ経路に対する裁断見当のための胴の位置が記憶された演算・記憶装置(57,65)が接続されていることを特徴とする請求項1に記載のウェブ輪転オフセット印刷機。
【請求項5】
少なくとも一つの印刷機構(58?61)によって印刷されるウェブ(62)の裁断見当を調整するため、ウェブ(62)に印刷された見当マークを検出する裁断見当のための測定値表示器(63)と、ウェブ(62)に印刷する印刷機構(58?61)のうち一つの印刷機構の電気モータの位置表示器(64)とが、比較装置(65)に接続されており、該比較装置の出力がウェブ(62)に印刷する印刷機構(58?61)の一つまたは複数の電気モータ(M)のモータ制御器(66)の入力に接続されており、比較装置(65)において検出された見当誤差(図27)を調整するために必要な位置までモータを先行または後行させることを特徴とする請求項4に記載のウェブ輪転オフセット印刷機。
【請求項6】
異なる複数の印刷ユニット(21?24)間で異なるウェブ経路に適合させるように複数の印刷ユニット(21?24)を予備調整するため、調整すべき印刷機構(58?61)の電気モータ(M,7)のモータ制御器(56)の入力側に、調整すべき胴の位置が記憶された演算・記憶装置(57)が接続され、該演算・記憶装置の設定値に従って印刷機構(58?61)が相応の位置に設けられる(図21,図22)ことを特徴とする請求項に記載のウェブ輪転オフセット印刷機。
【請求項7】
ウェブ(48)を続けて印刷する二つの印刷機構(46,47)の間の色見当を調整するため、印刷機構(46,47)から送られてきたウェブ(48)上の見当マークを検出する二つの測定値表示器(49,50)が比較装置(51)に接続されており、その比較装置の出力が、調節すべき印刷機構(47)の一つあるいは複数の電気モータ(54)のモータ制御器(52)の入力に接続されていることを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載のウェブ輪転オフセット印刷機。
【請求項8】
調整すべき印刷機構(58?61)において版胴(1.1?1.5)が、モータ(7,M)によって直接的に、あるいは、モータ(7,M)によって駆動される対応するゴム胴(2.1?2.5)によって間接的に駆動されることを特徴とする請求項1?7のいずれかに記載のウェブ輪転オフセット印刷機。
【請求項9】
印刷進行中に裁断見当と外周見当とが調整可能である(図27,図26)ことを特徴とする請求項1?8のいずれかに記載のウェブ輪転オフセット印刷機。
【請求項10】
少なくとも一つの版胴およびゴム胴(1.1?1.5;2.1?2.5)を備えた複数の印刷ユニット(図1?図20;21?24)、および、少なくとも一つの折畳みユニット(25)、および、少なくとも一つの駆動装置としての電気モータ(7)を有するウェブ輪転オフセット印刷機であって、
一つの印刷ユニット(図1?図20;21?24)につき、前記胴(1.1?1.5;2.1?2.5)のうち少なくとも一つが別個の電気モータ(7)と駆動連結され、該胴(1.1?1.5;2.1?2.5)が、別個の電気モータ(7)によって直接または間接的に駆動されるさらなる胴(1.1?1.5;2.1?2.5)と機械的に連結されていないか、あるいは、駆動されない胴(1.1?1.5;2.1?2.5)と歯車(8,10,19,20)を介して機械的に駆動連結されており、
ターン条の裁断見当が長さ調整装置によって調整可能であるとともに、ウェブ(55,62)の裁断見当が電気モータ(7)によって調整可能であり、ウェブ(55,62)に印刷する印刷機構(58?61)の電気モータ(7)のモータ制御器(56,66)の入力側に、ウェブ(55,62)に印刷する全ての印刷機構(58?61)の胴(2.1?2.5)をそれぞれのウェブ経路(図21,図22,図23,図27)に対する所定の位置に設けるため、可能なウェブ経路に対する裁断見当のための胴の位置が記憶された演算・記憶装置(57)が接続され、折畳みユニット(25)における裁断のための裁断見当が、印刷に関与する全ての印刷機構(58?61)の胴の位置を介して調整可能であることを特徴とするウェブ輪転オフセット印刷機。
【請求項11】
演算・記憶装置(57)に、異なる複数の印刷ユニット(21?24)間の異なる紙の経路についても、選択された製品の構成に応じた裁断見当の調整についても、必要な胴の位置が記憶され、ウェブ(55)に印刷する全ての印刷機構(21?24)の駆動モータ(7)がコンピュータ式モータ制御器(56)によって予備調整可能であることを特徴とする請求項1に記載のウェブ輪転オフセット印刷機。」
から、
「【請求項1】
少なくとも一つの版胴およびゴム胴(1.1?1.5;2.1?2.5)を備えた複数の印刷ユニット(図1?図20;21?24)、および、少なくとも一つの折畳みユニット(25)、および、少なくとも一つの駆動装置としての電気モータ(7)を有するウェブ輪転オフセット印刷機であって、
一つの印刷ユニット(図1?図20;21?24)につき、前記胴(1.1?1.5;2.1?2.5)のうち少なくとも一つが別個の電気モータ(7)と駆動連結され、該胴(1.1?1.5;2.1?2.5)が、別個の電気モータ(7)によって直接または間接的に駆動されるさらなる胴(1.1?1.5;2.1?2.5)と機械的に連結されていないか、あるいは、駆動されない胴(1.1?1.5;2.1?2.5)と歯車(8,10,19,20)を介して機械的に駆動連結されており、
異なるウェブ経路および/あるいは製品の構成に適合させるように複数の印刷ユニット(図1?図20;21?24)を予備調整するため、調整すべき印刷機構(3,4,12,13,14,34,35,46,47,58?61,67,68)の電気モータ(7)のモータ制御器(41,52,56,66,73)の入力側に、調整すべき胴の位置が複数記憶された演算・記憶装置(45,51,57,65,74)が接続されていることを特徴とするウェブ輪転オフセット印刷機。
【請求項2】
電気モータ(7)によって裁断見当が調整可能であり、ウェブ(55,62)に印刷する印刷機構(58?61)の電気モータ(7)のモータ制御器(56,66)の入力側に、ウェブ(55,62)に印刷する全ての印刷機構(58?61)の胴(2.1?2.5)をそれぞれのウェブ経路(図21,図22,図23,図27)に対する所定の位置に設けるために、可能なウェブ経路に対する裁断見当のための胴の位置が記憶された演算・記憶装置(57,65)が接続されていることを特徴とする請求項1に記載のウェブ輪転オフセット印刷機。
【請求項3】
少なくとも一つの印刷機構(58?61)によって印刷されるウェブ(62)の裁断見当を調整するため、ウェブ(62)に印刷された見当マークを検出する裁断見当のための測定値表示器(63)と、ウェブ(62)に印刷する印刷機構(58?61)のうち一つの印刷機構の電気モータの位置表示器(64)とが、比較装置(65)に接続されており、該比較装置の出力がウェブ(62)に印刷する印刷機構(58?61)の一つまたは複数の電気モータ(M)のモータ制御器(66)の入力に接続されており、比較装置(65)において検出された見当誤差(図27)を調整するために必要な位置までモータを先行または後行させることを特徴とする請求項2に記載のウェブ輪転オフセット印刷機。
【請求項4】
異なる複数の印刷ユニット(21?24)間で異なるウェブ経路に適合させるように複数の印刷ユニット(21?24)を予備調整するため、調整すべき印刷機構(58?61)の電気モータ(M,7)のモータ制御器(56)の入力側に、調整すべき胴の位置が記憶された演算・記憶装置(57)が接続され、該演算・記憶装置の設定値に従って印刷機構(58?61)が相応の位置に設けられる(図21,図22)ことを特徴とする請求項1に記載のウェブ輪転オフセット印刷機。
【請求項5】
ウェブ(48)を続けて印刷する二つの印刷機構(46,47)の間の色見当を調整するため、印刷機構(46,47)から送られてきたウェブ(48)上の見当マークを検出する二つの測定値表示器(49,50)が比較装置(51)に接続されており、その比較装置の出力が、調節すべき印刷機構(47)の一つあるいは複数の電気モータ(54)のモータ制御器(52)の入力に接続されていることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載のウェブ輪転オフセット印刷機。
【請求項6】
調整すべき印刷機構(58?61)において版胴(1.1?1.5)が、モータ(7,M)によって直接的に、あるいは、モータ(7,M)によって駆動される対応するゴム胴(2.1?2.5)によって間接的に駆動されることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載のウェブ輪転オフセット印刷機。
【請求項7】
印刷進行中に裁断見当と外周見当とが調整可能である(図27,図26)ことを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載のウェブ輪転オフセット印刷機。
【請求項8】
少なくとも一つの版胴およびゴム胴(1.1?1.5;2.1?2.5)を備えた複数の印刷ユニット(図1?図20;21?24)、および、少なくとも一つの折畳みユニット(25)、および、少なくとも一つの駆動装置としての電気モータ(7)を有するウェブ輪転オフセット印刷機であって、
一つの印刷ユニット(図1?図20;21?24)につき、前記胴(1.1?1.5;2.1?2.5)のうち少なくとも一つが別個の電気モータ(7)と駆動連結され、該胴(1.1?1.5;2.1?2.5)が、別個の電気モータ(7)によって直接または間接的に駆動されるさらなる胴(1.1?1.5;2.1?2.5)と機械的に連結されていないか、あるいは、駆動されない胴(1.1?1.5;2.1?2.5)と歯車(8,10,19,20)を介して機械的に駆動連結されており、
ターン条の裁断見当が長さ調整装置によって調整可能であるとともに、ウェブ(55,62)の裁断見当が電気モータ(7)によって調整可能であり、ウェブ(55,62)に印刷する印刷機構(58?61)の電気モータ(7)のモータ制御器(56,66)の入力側に、ウェブ(55,62)に印刷する全ての印刷機構(58?61)の胴(2.1?2.5)をそれぞれのウェブ経路(図21,図22,図23,図27)に対する所定の位置に設けるため、可能なウェブ経路に対する裁断見当のための胴の位置が複数記憶された演算・記憶装置(57)が接続され、折畳みユニット(25)における裁断のための裁断見当が、印刷に関与する全ての印刷機構(58?61)の胴の位置を介して調整可能であることを特徴とするウェブ輪転オフセット印刷機。
【請求項9】
演算・記憶装置(57)に、異なる複数の印刷ユニット(21?24)間の異なる紙の経路についても、選択された製品の構成に応じた裁断見当の調整についても、必要な胴の位置が記憶され、ウェブ(55)に印刷する全ての印刷機構(21?24)の駆動モータ(7)がコンピュータ式モータ制御器(56)によって予備調整可能であることを特徴と
する請求項1に記載のウェブ輪転オフセット印刷機。」
と補正された。

つまり、本件補正は、以下の補正事項を含む。
(1)補正前の請求項2及び請求項3を削除し、それにともなって、補正前の請求項4乃至請求項11の項番を繰り上げ、引用する請求項の番号を変更する補正。
(2)補正前の請求項1に記載された「調整すべき胴の位置が記憶された演算・記憶装置」を「調整すべき胴の位置が複数記憶された演算・記憶装置」とし、補正前の請求項8に記載された「裁断見当のための胴の位置が記憶された演算・記憶装置」を「裁断見当のための胴の位置が複数記憶された演算・記憶装置」とする補正。
補正事項(1)は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号に規定された請求項の削除を目的としたものと認める。
補正事項(2)は、一見すると、「調整すべき胴の位置」、「裁断見当のための胴の位置」が複数であることを限定しているものである。
しかし、これらの「胴の位置」は、「異なるウェブ経路および/あるいは製品の構成に適合させるように複数の印刷ユニット(図1?図20;21?24)を予備調整するため」(請求項1)あるいは「可能なウェブ経路に対する裁断見当のため」(請求項8)に必要なものとして「演算・記憶装置」に記憶されたものであって、「異なるウェブ経路および/あるいは製品の構成に適合させるように」あるいは「可能なウェブ経路に対する」とあるように、異なる「ウェブ経路」毎や異なる「製品の構成」毎に必要なものである以上、複数であることが前提であり、補正前の請求項1及び8においても、複数記憶されていたと解される。
したがって、補正事項(2)は、請求項1及び8に記載された発明の発明特定事項を補正の前後で実質的に何ら限定しておらず、当該補正は、特許請求の減縮(同法第17条の2第4項2号)を目的としたものとは認められない。
また、拒絶の理由として、請求項の記載を明りょうでないと指摘しておらず、明りょうでない記載の釈明(同法第17条の2第4項第4号)を目的としたものとも厳密にはいえない。
さらに、他の目的(請求項の削除、誤記の訂正)にも該当しないことは明らかである。
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に記載されたいずれを目的としたものとも認められないことから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものであるといえる。
しかしながら、上記したように、補正事項(2)は、補正の前後で、本願請求項1に係る発明を実質的に何ら限定していないものであることから、本件補正を却下しても、しなくても、請求項1に係る発明についての、進歩性等の特許性の判断に影響はなく、却下することに実質的な意味はないことから、本件補正を受け入れて(補正事項(2)については、同法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものと一応認めることとする。)、以下では、補正後の請求項1に係る発明について、原査定の拒絶の理由である、特許法第29条第2項に規定された、いわゆる進歩性について、判断を行うこととする。

ところで、補正後の請求項1の記載は上記したとおりであるが、当該補正後の請求項1には、「ゴム胴(1.1?1.5;2.1?2.5)」、「印刷機構(3,4,12,13,14,34,35,46,47,58?61,67,68)」、「演算・記憶装置(45,51,57,65,74)」など、各発明特定事項に対しカッコ書きで、符番が付され、あるいは、「印刷ユニット(図1?図20;21?24)」と、図面番号が付されている。
これらの符番や図面番号は、請求項に記載された各発明特定事項と、本願の図面や発明の詳細な説明の記載との対応関係を把握するためには参考となるものであるが、これらの符番や図面番号自体は、発明特定事項であるとは認められない。
また、例えば、上記「印刷ユニット(図1?図20;21?24)」の記載における、図1?20が、「印刷ユニット」のみを表すものとは認められず、上記「演算・記憶装置(45,51,57,65,74)」における、符番45、51、65は、「比較装置」として本願明細書の発明の詳細な説明に記載されていることから、これらの図面番号及び符番は、かえって、請求項に記載された発明特定事項を不明確とするものといえる。
以上のことをふまえ、補正後の請求項1に係る発明を、カッコ書きされた符番及び図面番号について、その記載を削除し、以下のとおりのものと認定することとした。

「【請求項1】
少なくとも一つの版胴およびゴム胴を備えた複数の印刷ユニット、および、少なくとも一つの折畳みユニット、および、少なくとも一つの駆動装置としての電気モータを有するウェブ輪転オフセット印刷機であって、
一つの印刷ユニットにつき、前記胴のうち少なくとも一つが別個の電気モータと駆動連結され、該胴が、別個の電気モータによって直接または間接的に駆動されるさらなる胴と機械的に連結されていないか、あるいは、駆動されない胴と歯車を介して機械的に駆動連結されており、
異なるウェブ経路および/あるいは製品の構成に適合させるように複数の印刷ユニットを予備調整するため、調整すべき印刷機構の電気モータのモータ制御器の入力側に、調整すべき胴の位置が複数記憶された演算・記憶装置が接続されていることを特徴とするウェブ輪転オフセット印刷機。」(以下、「本願発明」という。)

3.引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前である平成5年3月19日に頒布された特開平5-64882号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

(ア)【特許請求の範囲】
【請求項1】 印刷ユニット及びその他の所要のユニットを含むウェブ加工機において、これらの各ユニットはユニットごとに独立した駆動軸とその駆動軸に連結されたモータを有し、各ユニットごとにその回転部の初期位相設定手段と、各ユニットに共通の基準信号に基づき各ユニットごとのモータの速度と位相とをフィードバック制御する同調位相制御手段とを有することを特徴とするウェブ加工機。
(イ)【0001】
【産業上の利用分野】この発明は輪転印刷機のようにウェブ状のシートに印刷を施し、印刷後所要の加工を行うようにしたウェブ加工機に関し、特に各ユニットを機械的に独立化し、各ユニットの駆動モータを同調位相制御するようにした、いわゆるシャフトレス型のウェブ加工機に関するものである。
(ウ)【0011】
【実施例1】 図1は3台の墨印刷ユニット1、2、3と1台の色印刷ユニット4及び折畳ユニット5を有する輪転印刷機の概略を示すものである。これらの各ユニットはフレーム6上に搭載され、フレーム6は脚部7により支持される。フレーム6上には各ユニットごとにモータ8が設置され、そのモータ8にユニットごとの駆動軸9が連結される。各駆動軸9には、ベベルギヤ11を介してユニットごとの縦軸12が結合される。各ユニットはユニットごとのモータ8、駆動軸9及び縦軸12により駆動される。
(エ)【0012】
上記のフレーム6の脚部7には給紙部13が設けられ、これらの給紙部13から引き出された紙ウェブ14が各印刷ユニット1、2、3、4を経て折畳ユニット5に引き込まれる。上記の各モータ8は直流サーボモータが使用され、それぞれ共通の制御装置15により制御される。
(オ)【0013】
図2に示すように、上記のモータ8にはタコジェネレータ16及びパルス発生器17が付設される。また、各ユニットの回転部18には、その適当な位置に原点マーク19が付され、回転部18の近傍に原点センサ20が設置される。
(カ)【0014】
また図2には、上記のモータ8、タコジュネレータ16、パルス発生器17及び原点センサ20と接続された制御装置15の一例が示されている。
(キ)【0015】
この制御装置15は、各ユニットごとに対応した初期位相設定回路21、初期位相設定スイッチ22、原点データ設定器23及び制御回路24を有する。また全てのユニットに共通した速度設定器25及び基準パルス発生器26を有する。
(ク)【0016】
図3は1つのユニットごとに対応して設けられた初期位相設定回路21及び制御回路24の具体例である。初期位相設定回路21は、位相パルスカウンタ27、初期設定パルス発生器28及び比較器29から成る。また、制御回路24は、F/V変換器30、基準パルスカウンタ31、パルス演算回路32、D/A変換器33及びアナログレギュレータ34から成る。
(ケ)【0017】
初期位相設定回路21の位相パルスカウンタ27は、その入力側に原点センサ20とパルス発生器17が接続され、また出力側に比較器29と、制御回路24のパルス演算回路32が接続される。この位相パルスカウンタ27は、原点センサ20が前述の原点マーク19を検出するとリセットされ、パルス発生器17が発生するモータ8の位相、すなわちモータ8により駆動される各ユニットの回転部18の位相を示すパルスを計数する。
(コ)【0018】
初期位相設定スイッチ22は、ユニットごとに回転部18の初期位相を設定するためにマニュアルで操作される。初期設定パルス発生器28は、その入力側に上記のスイッチ22と比較器29が接続され、出力側に制御回路24のF/V変換器30が接続される。この初期設定パルス発生器28は、上記のスイッチ22により起動され、モータ8の初期設定用駆動パルスを発生し、これをF/V変換器30に出力する。
(サ)【0019】
比較器29の入力側は、位相パルスカウンタ27と、原点データ設定器23に接続され、出力側は初期設定パルス発生器28に接続される。比較器29は、位相パルスカウンタ27の出力パルス数φ_(C)と、原点データ設定器23の記憶パルス数φ_(B)とを比較し、両者が一致すると初期設定パルス発生器28の動作を停止させる信号を出力する。
(シ)【0020】
なお、原点データ設定器23は、各回転部18の原点データが入力されるとこれを初期位相に等しいパルス数φ_(B)に換算して記憶する。
(ス)【0021】
制御回路24のF/V変換器30は、その入力側に設定速度と位相に応じたパルス列を発生する基準パルス発生器26が接続され、出力側にアナログレギュレータ34が接続される。このF/V変換器30は、一定の周波数の基準パルスを一定の基準電圧に変換し、アナログレギュレータ34に出力する。
(セ)【0022】
基準パルスカウンタ31は、その入力側に基準パルス発生器26が接続されると共に、出力側にパルス演算回路32が接続され、基準パルスを計数し、そのパルス数φ_(A)をパルス演算回路32に出力する。
(ソ)【0023】
パルス演算回路32は、その入力側に前記の位相パルスカウンタ27、原点データ設定器23及び基準パルスカウンタ31が接続され、出力側にD/A変換器33が接続される。このパルス演算回路32は、基準パルス数φ_(A)と原点データ設定器23の記憶パルス数φ_(B)との和(φ_(A)+φ_(B))と、位相パルスカウンタ27から出力されるパルスφ_(C)との差(φ_(A)+φ_(B)-φ_(C))を演算し、その演算結果をD/A変換器33に出力する。D/A変換器33はその出力を直流電圧に変換し、アナログレギュレータ34に出力する。
(タ)【0024】
アナログレギュレータ34は、その入力側にF/V変換器30、D/A変換器33、タコジェネレータ16、及びレジスタ補正回路35が接続され、出力側にモータ8が接続される。このアナログレギュレータ34は、F/V変換器30の出力電圧を基準入力とし、D/A変換器33の出力及びタコジュネレータ16の出力をフィードバック入力としてモータ8の電源装置(図示せず)をフィードバック制御する。
(チ)【0025】
タコジュネレータ16は、モータ8が上記の基準電圧に対応する所定の基準速度で回転しているときは、基準電圧に等しい電圧を、また基準速度よりずれたときはそのずれた速度に比例した電圧をアナログレギュレータ34にフィードバック入力し、常にモータ8の回転速度を基準速度に保つように作用する。
(ツ)【0026】
レジスタ補正回路35は、例えばレジスタ作動スイッチ(図示せず)を作動させるごとに、速度調整用の電圧(+または-の定電圧)をアナログレギュレータ34に出力する。アナログレギュレータ34はその電圧をF/V変換器34から出力される速度設定用の基準電圧に加算しその加算された基準電圧に従った基準速度でモータ8を回転制御する。
(テ)【0027】
制御装置15は以上のごとき構成であり、次にその作用について説明する。
(ト)【0028】
まず、初期位相合わせを行なうには、各ユニットごとの回転部18の原点データ(原点センサ20から原点マーク19までの距離に相当するパルス数φ_(B))を原点データ設定器23に入力し、また初期位相設定スイッチ22により、初期設定パルス発生器28を作動させる。そうすると、その出力パルスがF/V変換器30によって直流電圧に変換され、モータ8を回転させる。この回転にともなってパルス発生器17より発生する位相パルスφ_(PG)が位相パルスカウンタ27に入力される。カウンタ27は各回転部18の原点マーク19が原点センサ20により検出された時にリセットされて位相パルスφ_(PG)の計数を開始する。
(ナ)【0029】
カウンタ27の出力パルスが比較器29に入力されそのパルス数φ_(C)と、原点データ設定器23の記憶内容、すなわち原点データのパルス数φ_(B)と比較される。両者のパルス数(φ_(C)とφ_(B))が一致すると、比較器により初期設定パルス発生器28の動作を停止させる信号が供給される。その結果、モータ8により駆動される各回転部18はそれぞれの原点データ設定器23に設定記憶された初期位相をもって停止する。
(ニ)【0030】
このようにして各ユニットごとに回転部の初期位相を設定したならば、速度設定器25に所望の基準速度を入力する。これを入力すると、基準パルス発生器26から基準速度に比例した一定周波数の基準パルスφ_(A)が出力される。
(ヌ)【0031】
この基準パルスφ_(A)はF/V変換器30に入力され、ここにおいて基準電圧に変換され、この基準電圧により、アナログレギュレータ34を介してモータ8を基準速度で回転させる。モータ8の回転速度が基準速度よりずれると、タコジュネレータ16の出力と基準電圧との差によってそのずれが修正されるので、モータ8は常に基準速度を保つように同調制御される。
(ネ)【0032】
一方、各回転部18の位相を表わすパルス発生器17からの位相パルスφPGが位相パルスカウンタ27によって計数され、パルス演算回路32において、原点データ設定器23に記憶されたパルス数φ_(B)と基準パルス数φ_(A)との和(すなわち、各回転部18の初期位相+基準パルスに応じた基準の位相変化量)と、位相パルスカウンタ27の出力パルス数φ_(C)(初期位相+実際の位相変化量)との差(φ_(A)+φ_(B)-φ_(C))が演算される。D/A変換器33によってこの差に応じたフィードバック補償用の電圧がアナログレギュレータ34にフィードバック入力され、モータ8がその分だけ増減速される。その結果、各ユニットの回転部18は、初期位相設定後の位相変化が常に基準パルスによる基準位相変化量に一致するよう位相制御される。このため、各ユニットの回転部18相互間の位相差は、運転中常に初期位相合わせで設定された位相差と等しく保って運転される。
(ノ)【0047】
・・・
(10) 紙通しコースの変更があった場合にも各ユニットごとに初期位相を変更するだけでよく、容易に対処することができる。
・・・

(ハ)図1における墨印刷ユニット1、2、3は、紙ウェブ14を挟むように配置された、複数の円形の部材から構成され、色印刷ユニット4は、1つの相対的に大径の円形部材の周りを巡る紙ウェブ14に対して、当該大径の円形部材とともに紙ウェブ14を挟むように対向配置された複数の相対的に小径の円形部材からなるものを、複数組、間隔を離して配置構成したものであり、各印刷ユニットの一つの円形部材のみがモータ8と結合されていることが看取できる。

上記(ク)には「制御回路24は、F/V変換器30、基準パルスカウンタ31、パルス演算回路32、D/A変換器33及びアナログレギュレータ34から成る。」と記載され、上記(タ)に「このアナログレギュレータ34は、F/V変換器30の出力電圧を基準入力とし、D/A変換器33の出力及びタコジュネレータ16の出力をフィードバック入力としてモータ8の電源装置(図示せず)をフィードバック制御する。」と記載され、上記(ツ)には「アナログレギュレータ34はその電圧をF/V変換器34から出力される速度設定用の基準電圧に加算しその加算された基準電圧に従った基準速度でモータ8を回転制御する。」と記載されている。
上記の記載から、「アナログレギュレータ34」を含む「制御回路24」は、「モータ8」を制御するものと解される。
また、上記(ソ)には、「パルス演算回路32は、その入力側に前記の位相パルスカウンタ27、原点データ設定器23及び基準パルスカウンタ31が接続され」と記載されており、上記した(ク)の記載を考慮すると、「パルス演算回路32」を含む「制御回路24」の入力側には「原点データ設定器23」が接続されていると解される。
さらに、上記(シ)には「なお、原点データ設定器23は、各回転部18の原点データが入力されるとこれを初期位相に等しいパルス数φ_(B)に換算して記憶する。」と記載され、上記(ト)には「初期位相合わせを行なうには、各ユニットごとの回転部18の原点データ(原点センサ20から原点マーク19までの距離に相当するパルス数φ_(B))を原点データ設定器23に入力し」と記載されている。
これらの記載から、「原点データ設定器23」は、入力された「原点データ」を、演算により初期位相に等しいパルス数φ_(B)に換算して記憶するものであると解される。

上記(ア)?(ハ)の記載等を含む引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「3台の墨印刷ユニット1、2、3と1台の色印刷ユニット及び折畳ユニット5を有し、給紙部13から引き出された紙ウェブ14が各印刷ユニット1、2、3、4を経て折畳ユニット5に引き込まれるようにされ、紙ウェブ14に印刷を施す輪転印刷機であって、各ユニットはユニットごとのモータ8、駆動軸9及び縦軸12により駆動され、各モータ8は直流サーボモータが使用され、各ユニットごとに対応した初期位相設定回路21、初期位相設定スイッチ24、原点データ設定器23及びモータ8を制御する制御回路24を有し、制御回路24の入力側には前記原点データ設定器23が接続され、各ユニットごとにモータ8により駆動される各ユニットの回転部18の初期位相を設定するために、原点データ設定器23には、各回転部18の原点データが、演算により初期位相に等しいパルス数φ_(B)に換算して記憶されている輪転印刷機。」

4.対比
a.引用発明の「3台の墨印刷ユニット1、2、3と1台の色印刷ユニット」と、本願発明の「少なくとも一つの版胴およびゴム胴を備えた複数の印刷ユニット」とは、「複数の印刷ユニット」である点で共通している。
b.引用発明の「折畳ユニット5」及び「モータ8」は、本願発明の「折畳みユニット」及び「電気モータ」にそれぞれ相当する。
c.引用発明の「紙ウェブ14に印刷を施す輪転印刷機」と、本願発明の「ウェブ輪転オフセット印刷機」とは、「ウェブ輪転印刷機」である点で共通している。
d.引用発明の「回転部18」と、本願発明の「版胴」、「ゴム胴」及びそれらを総称した「胴」とは、印刷ユニットを構成する「回転部材」である点で共通しており、引用発明の「回転部18」は、「(印刷)ユニットごとのモータ8」により「駆動される」ものであることから、本願発明の「一つの印刷ユニットにつき、前記胴のうち少なくとも一つが別個の電気モータと駆動連結され、該胴が、別個の電気モータによって直接または間接的に駆動されるさらなる胴と機械的に連結されていないか、あるいは、駆動されない胴と歯車を介して機械的に駆動連結されて」いる点とは、「一つの印刷ユニットにつき、回転部材のうち少なくとも一つが別個の電気モータと駆動連結され」ている点で共通していると解される。
e.本願発明の「印刷機構」は、本願明細書段落【0007】に「図1の印刷ユニットは、版胴1.1,1.2,およびゴム胴2.1,2.2から成る二つの印刷機構3,4を備えている。」と記載されているように、印刷ユニットを構成する、版胴やゴム胴のような電気モータにより直接的または間接的に駆動される構成部材の組み合わせを示すものと解され、一方、引用発明の回転部18も、各ユニットを構成する部材の一要素であって、モータ8により駆動されるものであることから、引用発明の「モータ8を制御する制御回路24」は本願発明の「印刷機構の電気モータのモータ制御器」と相違しない。
f.引用発明の「原点データ設定器23」には、各回転部18の原点データが、演算により初期位相に等しいパルス数φ_(B)に換算して記憶されており、この原点データは、各回転部18の初期位相、すなわち、位置を設定するためのデータであることから、この「原点データ設定器23」は、本願発明の「演算・記憶装置」に相当し、引用発明の「初期位相」と、本願発明の「調整すべき胴の位置」とは、「調整すべき回転部材の位置」である点で共通している。
g.本願発明の「予備調整」との記載について、「予備」とは「あらかじめそなえること。前もって用意しておくこと。[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]」であることから、上記「予備調整」とは予め調整することを意味すると解されるが、一方の引用発明において、「初期位相」の設定は、印刷を行うための駆動の前に予め行うことであることは明らかであり、引用発明の「各ユニットごとにモータ8により駆動される各ユニットの回転部18の初期位相を設定するため」は、本願発明の「複数の印刷ユニットを予備調整をするため」と相違しない。
つまり、引用発明と本願発明とは、「複数の印刷ユニットを予備調整するため、調整すべき印刷機構の電気モータのモータ制御器の入力側に、調整すべき回転部材の位置が記憶された演算・記憶装置が接続されている」点で共通しているといえる。

したがって、本願発明と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。

<一致点>「少なくとも一つ回転部材を備えた複数の印刷ユニット、および、少なくとも一つの折畳みユニット、および、少なくとも一つの駆動装置としての電気モータを有するウェブ輪転印刷機であって、
一つの印刷ユニットにつき、前記回転部材のうち少なくとも一つが別個の電気モータと駆動連結され、
複数の印刷ユニットを予備調整するため、調整すべき印刷機構の電気モータのモータ制御器の入力側に、調整すべき回転部材の位置が記憶された演算・記憶装置が接続されているウェブ輪転印刷機。」

<相違点1>印刷ユニットが備える回転部材に関し、本願発明では、少なくとも一つの版胴およびゴム胴と特定されているとともに、輪転印刷機の種類に関し、本願発明では、ウェブ輪転オフセット印刷機であると特定されているのに対して、引用発明では、そのような特定がなされていない点。

<相違点2>本願発明では、該胴が、別個の電気モータによって直接または間接的に駆動されるさらなる胴と機械的に連結されていないか、あるいは、駆動されない胴と歯車を介して機械的に駆動連結されておりとの特定がなされているのに対して、引用発明では、そのような特定がなされていない点。

<相違点3>演算・記憶装置に記憶された調整すべき胴の位置に関し、本願発明が、異なるウェブ経路および/あるいは製品の構成に適合させるように、複数記憶されたとの特定がなされているのに対して、引用発明では、そのような特定がなされていない点。

5.判断
<相違点1>について
本願の優先日前において、輪転印刷機が、版胴を備えていることは通常のことであり、版胴のほかに、ゴム胴を備えたオフセット印刷機も普通に知られている。
また、上記(ハ)に記載したように、図1には、各印刷ユニットが、複数の円形部材から構成されていることが示されており、この図1には、オフセット印刷機が示唆されていると解される。
したがって、引用発明の印刷ユニットを少なくとも一つの版胴およびゴム胴を備えたものとし、引用発明の紙ウェブ14に印刷を施す輪転印刷機を、ウェブ輪転オフセット印刷機とすること、すなわち、相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明、引用例の他の記載及び当業者の技術常識に基づいて、想到容易なことであるといえる。

<相違点2>について
上記(ハ)に記載したように、引用例の図1からは、各印刷ユニットが、複数の円形部材、すなわち、複数の胴を備え、各印刷ユニットの一つの円形部材のみがモータ8と結合されていることが看取できる。
このような場合、1つのモータ8の駆動力を、他の胴に伝達するために、歯車を介して機械的に駆動連結することは常套手段であり、相違点2に係る本願発明の発明特定事項のうち、「該胴が」、「駆動されない胴と歯車を介して機械的に駆動連結」されるようにすることは、引用例から想到容易であるといえる。
また、1つの印刷ユニット内の複数の胴について、それぞれ個別のモータで駆動するようにする点は、本願の優先日前において、周知であって(例えば、特開昭60-61262号公報(「圧シリンダー1と、他方において、インキローラー4と、の間の慣用の伝導装置の代わりに、本発明による輪転印刷機は3つの精確に制御された駆動モーターをそれぞれの回転成分へ連結する。」(第4頁左上欄第6行?10行)及び第1図)、特開昭56-21860号公報(「版胴2、ゴム胴3、圧胴4は、各偏心軸2a、3a、4aにモータ軸5a、6a、7aを直結して各パルスモータ5、6、7により夫々単独で駆動されるようになっている。」(第2頁左上欄第20行?右上欄第3行)、第3図)を参照。)、相違点2に係る本願発明の発明特定事項のうち、「該胴が、別個の電気モータによって直接または間接的に駆動されるさらなる胴と機械的に連結されていない」ようにすることは、引用発明及び周知技術に基づいて想到容易なことであるといえる。
いずれにしても、相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明、及び、引用例の他の記載、もしくは、周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得る程度のことである。
<相違点3>について
引用例には、原点データ設定器23に入力された原点データを演算して記憶される、初期位相に等しいパルス数φ_(B)について、複数記憶することは記載されていない。
しかしながら、引用例には、上記(ノ)に「紙通しコースの変更があった場合にも各ユニットごとに初期位相を変更するだけでよく、容易に対処することができる。」と記載されており、輪転印刷機における給紙部13から引き出された紙ウェブ14が複数の印刷ユニット1?4及び折畳ユニット5を経由する際の紙通しコースの変更があった場合に、各ユニット1?5の初期位相を変更することが記載されているといえる。
上記のように紙通しコースの変更に応じて、初期位相を変更する場合、各ユニットごとに有する原点データ設定器23に記憶された初期位相に等しいパルス数φ_(B)は変更する必要があることは容易に想起されることであるといえる。
ところで、例えば、特開平6-198858号公報には「版胴2a,2bの印刷点間距離は版胴サイズと圧胴サイズの組み合わせにより異なる。版胴2を交換すると、版胴中心位置は固定であるから印刷点が上下し、これにともなって圧胴3も上下し、圧胴3とウェブ16の接触する範囲、すなわち圧胴3とウェブ16の接触角も異なるし、前後のガイドロール4の接触角も変化する。また圧胴3を交換すると圧胴3の接触角もガイドロール4の接触角も変化する。従って圧胴サイズごとの版胴サイズとパス長の関係のテーブルを記憶部に記憶しておくとよい。」(段落【0024】参照)と記載され、印刷機を構成する版胴や圧胴等のサイズの違いに応じた特定パラメータ(パス長)を対応させて複数記憶することが記載されている。
また、特開昭62-297173号公報には「紙通しパターンに応じて複数のアジャストロールを調整することにより、印刷物の最適な位置で断ち切りが行えるようにした輪転機において、・・・紙通しパターンに対応して各アジャストロールADのプリセット値を格納しておく記憶装置3と・・・」(特許請求の範囲を参照)と記載され、紙通しパターンに応じた調整において必要になる特定パラメータ(プリセット値)を対応させて複数記憶することが記載されている。
これらの文献で例示されるように、本願の優先日前において、印刷機に係る調整をする際に調整に必要な特定パラメータを条件に応じて複数記憶させるようなことは、周知技術であるといえる。
また、輪転印刷機内における各ユニット1?5の配置は決まっており、そのユニット間を経由する、紙通しコースの変更の仕方は、無限にあるわけではなく、所定数のパターンであると予想される。
引用発明の、紙通しコースの変更に応じた初期位相の変更を行う際に、当該初期位相に等しいパルス数φ_(B)の変更を、その都度、原点データを入力することにより行うことも考えられるものの、上記した周知技術及び紙通しコースの変更の仕方が、所定数のパターンであると予想されることを考慮するならば、予め紙通しコースに合わせた初期位相に等しいパルス数φ_(B)を、原点データ設定器23に複数記憶させておき、紙通しコースの変更に応じて、複数の初期位相に等しいパルス数φ_(B)の中から、対応するものを選択するようにすることも当業者が容易に想到し得ることであって、どちらを採用するかは、紙通しコースの変更の頻度、初期位相に等しいパルス数φ_(B)の設定時の原点データ入力の手間や演算の時間、コストなどの各種条件を考慮して当業者が適宜になし得る設計事項であるといえる。
また、相違点3に係る本願発明の発明特定事項のうち、「製品の構成に適合させるように・・・」の記載は、その意味内容が必ずしも明確ではないものの、印刷機において、「製品」とは印刷され、完成された「印刷物」を示すものと解され、印刷物のサイズや色などの構成が変われば、必要とされる印刷ユニットの数や、印刷位置が変わるのは当然であり、それに対応して「胴の位置」が調整されることは引用発明の輪転印刷機においても同じであると解され、この場合も、上記したのと同様であるといえる。
したがって、相違点3に係る本願発明の発明特定事項は引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることであるといえる。

このように、相違点1乃至3に係る本願発明の発明特定事項は、それぞれ引用発明、引用例の他の記載及び周知の技術事項に基づいて当業者が想到容易な事項であり、これらの発明特定事項を採用したことによる本願発明の効果も当業者が容易に予測し得る程度のものである。

6.むすび
以上のように、本願発明は、引用発明、引用例の他の記載及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-18 
結審通知日 2007-10-23 
審決日 2007-11-05 
出願番号 特願平10-268708
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 康司清水 督史國田 正久  
特許庁審判長 番場 得造
特許庁審判官 坂田 誠
尾崎 俊彦
発明の名称 オフセット印刷機  
代理人 渡邊 隆  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 志賀 正武  
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