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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1175122
審判番号 不服2004-15074  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-07-20 
確定日 2008-03-19 
事件の表示 特願2003-322717「記録条件設定方法、記録方法、プログラム及び記録媒体、並びに光ディスク装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月 7日出願公開、特開2005- 92952〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本件審判の請求に係る特許願(以下「本願」という。)は、平成15年9月16日に出願され、平成16年6月15日付けで拒絶すべきものである旨の査定がなされ、これに対して、平成16年7月20日付けで拒絶査定不服審判が請求され、平成16年8月10日付けで手続補正がなされたものである。


II.平成16年8月10日付け手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成16年8月10日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1.本件補正について
平成16年8月10日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするものであって、そのうち特許請求の範囲の請求項1乃至17については、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光をパルス発光して角速度一定で回転している光ディスクの記録面に情報を記録する際の記録条件を設定する記録条件設定方法であって、
前記情報が記録される前記記録面における記録位置での前記光ディスクの線速度に応じた記録条件に関連する所定の複数項目の各設定値をそれぞれ取得する第1工程と;
前記光ディスクに情報が記録されている時に、前記複数項目の各設定値を複数回に分けて順次設定する第2工程と;を含む記録条件設定方法。
【請求項2】
前記複数項目は、前記レーザ光のパルスの形状を特定するパラメータを含むことを特徴とする請求項1に記載の記録条件設定方法。
【請求項3】
前記パラメータは、前記パルスのパルス幅、前記パルスの立上がりタイミング及び立下がりタイミングのうちの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項2に記載の記録条件設定方法。
【請求項4】
前記パラメータは、前記パルスの立上がりタイミングと立下がりタイミングとを含み、
前記第2工程では、前記複数項目の各設定値を前記パルスの立上がりタイミングと立下
がりタイミングとの組毎に分けて順次設定することを特徴とする請求項3に記載の記録条件設定方法。
【請求項5】
前記第1工程では、前記複数項目の項目毎に、前記記録面に形成されるマーク領域の長さに対応した複数の設定値がそれぞれ取得されることを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の記録条件設定方法。
【請求項6】
前記第2工程では、前記複数項目の各設定値を前記マーク領域の長さ毎に分けて順次設定することを特徴とする請求項5に記載の記録条件設定方法。
【請求項7】
前記第1工程では、前記複数項目の項目毎に、前記記録面に形成されるマーク領域の直前に位置するスペース領域の長さ又は前記マーク領域の直後に位置するスペース領域の長さに対応した複数の設定値がそれぞれ取得されることを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の記録条件設定方法。
【請求項8】
前記第2工程では、前記複数項目の各設定値を前記スペース領域の長さ毎に分けて順次設定することを特徴とする請求項7に記載の記録条件設定方法。
【請求項9】
前記第1工程では、前記記録位置での前記複数項目の各設定値の少なくとも1つは、線速度と設定値との関係を示す既知の関係式に基づいて取得されることを特徴とする請求項1?8のいずれか一項に記載の記録条件設定方法。
【請求項10】
前記第1工程では、前記記録位置での前記複数項目の各設定値の少なくとも1つは、既知の線速度と設定値との複数組の組み合わせに基づいて行なわれる所定の演算の演算結果から取得されることを特徴とする請求項1?8のいずれか一項に記載の記録条件設定方法。
【請求項11】
前記演算は、近似演算又は補間演算であることを特徴とする請求項10に記載の記録条件設定方法。
【請求項12】
レーザ光をパルス発光して角速度一定で回転している光ディスクに情報を記録する記録方法であって、
請求項1?11のいずれか一項に記載の記録条件設定方法によって設定された記録条件を用いて前記光ディスクに情報を記録する工程を含む記録方法。
【請求項13】
光ディスクに対して、情報の記録、再生及び消去のうち少なくとも記録を行なう光ディスク装置に用いられるプログラムであって、
角速度一定で回転している前記光ディスクの記録面における記録位置での線速度に応じた記録条件に関連する所定の複数項目の各設定値をそれぞれ取得する第1手順と;
前記光ディスクに情報が記録されている時に、前記複数項目の各設定値を複数回に分けて設定する第2手順と;を前記光ディスク装置の制御用コンピュータに実行させるプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項15】
光ディスクに対して、情報の記録、再生及び消去のうち少なくとも記録を行なう光ディスク装置であって、
角速度一定で回転している前記光ディスクの記録面における記録位置での線速度を取得する線速度取得手段と;
前記記録面に記録を行なう際の記録条件に関連する所定の複数項目について予め線速度毎に得られている各設定値を参照し、前記線速度取得手段で取得された線速度に基づいて、前記記録位置での前記複数項目の各設定値をそれぞれ決定する設定値決定手段と;
前記光ディスクに情報が記録されている時に、前記決定された前記複数項目の各設定値を複数回に分けて設定する設定手段と;
前記設定された前記複数項目の各設定値を用いて記録を行なう記録手段と;を備える光ディスク装置。
【請求項16】
前記光ディスクは情報の書き換えが可能な光ディスクであることを特徴とする請求項15に記載の光ディスク装置。
【請求項17】
前記書き換えが可能な光ディスクは、CD-RW、DVD-RW及びDVD+RWのいずれかの規格に準拠した光ディスクであることを特徴とする請求項16に記載の光ディスク装置。」

として、補正前の請求項1,13,15に係る各発明について、各発明の構成要件である、前記複数項目の各設定値を複数回に分けて設定する第2工程、第2手順及び設定手段について、それぞれに「前記光ディスクに情報が記録されている時に、」との下線部の要件を付加するものである。

2.本件補正の目的
本件補正の内容は、補正前の請求項1,13,15に係る各発明の要件を具体的に限定しようとするものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
次に、本件補正の特許請求の範囲に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するか)について、検討する。
(1)補正後発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後発明」という。)は、上記1.本件補正について(補正の内容)の【請求項1】に記載されたとおりである。
(2)刊行物及びその記載
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物は、特開2002-208139号公報(平成14年7月26日出願公開、以下「刊行物」という。)で、映像用DVDやDVD-ROMなどの再生専用のDVDメディアとフォーマットの互換性を有するDVD-R又はDVD-RWディスク等の光ディスク媒体に対し、CAV制御によって記録を行う場合に、全ての記録線速度に対して記録パルス列の簡易な設定を用いながら、かつ、記録パワーの簡易な補正方法によって光ディスク媒体全面に渡って低ジッタな記録を行えることを目的としてなされた情報記録方法、情報記録装置ないしは情報処理装置に関する発明について、以下の記載がある。
(2-1)「【請求項1】記録パルス列による発光波形のレーザ光によりマーク情報が記録される記録層を有する光ディスク媒体上に記録する際に、
記録線速度の変化に応じて記録クロック周期を変化させて、記録線密度が略一定となるようにして記録を行うとともに、
前記記録線速度の変化に対応する記録パワーを得るための近似式によって算出された記録パワーを用いて記録する時に、前記光ディスク媒体を半径方向に複数に分割した記録領域のうちで所定の記録領域の記録を終了した終端部の記録部分を再生し、その再生信号により得られた信号特性から理想的な信号特性が得られる記録パワーの補正を施した近似式を導出し、各々の記録領域に対応して各々前記補正が施された近似式によって算出された記録パワーを用いて記録するようにした情報記録方法。
【請求項2】前記光ディスク媒体における所定の試し書き領域で最小記録線速度と最大記録線速度との少なくとも一方の記録線速度における複数の記録パワーによる試し書き記録を行い、各々の再生信号から得られた信号特性の変化から最適記録パワーを算出し、
前記試し書きから若しくは予め前記光ディスク媒体に記録されているディスク情報から取得した最小記録線速度及び最大記録線速度の両方の最適記録パワーを用いて、記録線速度の変化に対応する記録パワーを得るための第1の近似式を導出し、
実際に記録を行う時に、前記光ディスク媒体を半径方向に複数に分割した記録領域のうちで最内周部の第1の記録領域に対して前記第1の近似式によって算出された記録パワーを用いて記録を行い、
前記第1の記録領域の記録を終了した直後にこの第1の記録領域の終端部の記録部分を再生し、その再生信号により得られた信号特性から理想的な信号特性が得られる記録パワーの補正を施した第2以降の近似式を導出し、
第2以降の記録領域毎に対応する前記第2以降の近似式によって算出された記録パワーを用いて記録を行うようにした請求項1記載の情報記録方法。
【請求項3】?【請求項6】・・・。」
(2-2)「【0029】
【発明の実施の形態】本発明の第一の実施の形態を図1ないし図9に基づいて説明する。まず、光ディスク媒体である色素系光ディスクで用いる基本的な記録パルス列の設定として、図1に示すように、各々のマークデータ長nT(nは3?14なる整数、Tは記録クロック周期)に対する記録パルス列は複数の加熱パルスによって構成している。
【0030】基本的な記録パルス列の設定として、各々のマークデータ長nTに対する記録パルス列を構成するパルス数n-x(xは1又は2)や、記録クロック周期Tに対する先頭加熱パルスのパルス幅の比Ttop と、後続する中間マルチパルス部分の加熱パルスのデューティ比Tmp や、記録クロック周期Tに対する最後尾加熱パルスのパルス幅の比Ttailなどがある。また、記録パワーの設定として、マークを形成するための加熱パルス部の記録パワーPwと、マーク中の冷却パルス部及びスペースを形成するためのバイアスパワーPbがある。記録パワーについては、マーク形成の状態は記録線速度Lvと強い相関を持つため、記録線速度が大きくなると記録パワーの最適値が大きくなることは周知の通りである。また、ディスクの線速度依存性である、最内周位置(即ち、最小記録線速度)における最適記録パワーPminに対する最外周位置(即ち、最大記録線速度)における記録パワーPmaxの比ρ=Pmax/Pminがある。本実施の形態では、これらの設定値のうち、記録クロック周期Tに対する先頭加熱パルスのパルス幅の比Ttopと、記録クロック周期Tに対する最後尾加熱パルスのパルス幅の比Ttailと、記録パワーの比ρとについて、記録線速度に応じたより詳細な設定を行う必要がある。本実施の形態では、特に記録パワーについて詳細な補正を行うものである。」
(2-3)「【0032】まず、図2に示すように最内周位置における最小記録線速度においては、記録パルス列を構成する加熱パルス数をn-1(nはマークデータ長)、先頭加熱パルス幅の比Ttopを1.30T、後続する中間のマルチパルス幅の比Tmpと最後尾加熱パルス幅の比Ttailを0.65T、加熱パルスの最適記録パワーPwminを9.0mWに設定している。これらの設定値は、色素系の記録ディスクの代表的な数値値であり、各種チューニングや記録材料の種類によって異なった最適値となる。そして、図2に示すように、記録線速度の増加に応じて、比Ttopと比Ttailの設定値と、記録パワーPwの比ρ=Pw/Pminを、何れも増加するように変化させることで、マーク先頭と最後尾部分に最適な熱量を加え、かつ、最適な記録パワーで記録することができるようになり、マーク幅が均一に形成できるようになり、ジッタ特性を良好に維持することができる。」
(2-4)「【0035】次に、記録パワーの設定については、最内周位置(即ち、最小記録線速度)における加熱パルスの最適記録パワーPminに対する、所望の任意の半径位置(記録線速度)における記録パワーPwの比ρ=Pw/Pminを1.0から1.50まで、即ち、累積の増加分で0.50大きくなるように記録線速度の増加に応じて若しくは半径位置に応じて設定値を更新変化させるようにする。
【0036】このように設定された、最内周位置と最外周位置との記録パルスをそれらの時間軸を合わせて相対的に比較すると図3に示すような発光波形が得られる。図3では、7Tマークデータの場合をデータの代表例として図示している。
【0037】以下に各々の設定値について、より詳細に説明する。一般的に色素系の記録ディスクに対して異なる記録線速度で記録する場合、記録パワーは記録線速度の平方根に略比例することが知られている(例えば、前述した特開平10-106008号公報参照)。即ち、記録パワーをPw、記録線速度をLv、定数をKlvとすると、Pw=Klv√Lvで算出された記録パワーとしている。しかしながら、前述のように先頭加熱パルス幅の記録クロック周期Tに対する比Ttop及び最後尾加熱パルス幅に対する比Ttailと、加熱パルス部の記録パワーPwの最内周位置での最小記録線速度に対する最外周位置での最大記録線速度での記録パワーPwの比ρmax=Pwmax/Pwminとを含めた全ての設定値を、記録線速度Lvに応じて最適化する場合においては、前述の記録パワーの比をρ、定数Kpwとすると、最小と最大の記録線速度での最適な記録パワーは、ρ=Klv×Lv+Kpwによって直線近似して算出した記録パワーが、全域の記録線速度に対して適正な値を示すようになる。また、比Ttop、比Ttailについても同様に直線近似して算出した設定値を用いることで全域の記録線速度に対して最適な設定値を得ることができる。本実施の形態の設定値においては、各々
Ttop=0.030×Lv+1.195
Ttail=0.036×Lv+0.544
Pw=Pwmin×ρ=Pwmin×(0.100×Lv+0.650)
なる近似式を用いている。このような記録線速度の関数の他に、半径位置の関数として記録パルスの設定を更新したり、プリフォーマット情報から得られるアドレスに対応付けて更新するようにしてもよい。従って、設定値を更新する設定方法を用いることで、簡易な演算によって任意の記録線速度に対して最適な設定値を算出することが可能となる。
【0038】ちなみに、CAV記録に対応する記録パルス列の組合せは、前述の他に、CD-Rディスクで用いられるような先頭部分を強調したマルチパルスではない矩形波パルスの前エッジ位置と後エッジ位置をマーク長に応じて補正する方式や、DVD-Rディスクで用いられるような先頭加熱パルスの前後の両エッジ位置を補正する方式などによって、記録線速度の変化に対して詳細に設定を最適化することでも実現可能である。本実施の形態では、先頭加熱パルスの前エッジ位置と最後尾加熱パルスの後エッジ位置を変化させる方法によるので制御が容易で処理を簡略化させ得るが、本方式に限定するものではない。」
(2-5)「【0048】本実施の形態は、図6で示すように、光ディスク媒体1の半径方向に複数に分割した記録領域を設定して記録する際に、以下に説明するような方法を用いて各々の記録領域毎に補正された最適な記録パワーを用いて、ディスク全面に均一で良好なジッタ特性で記録するようにしている。
【0049】そこで、本実施の形態による記録方法を図7に示すフローチャートを参照して説明する。前述したような光ディスク媒体1のプリフォーマット情報から、最小(最内周)記録線速度や最大(最外周)記録線速度や中間(中周)記録線速度などの複数の記録線速度における推奨する記録パルス幅の設定値、及び、推奨する記録パワーPw若しくは記録パワーの比ρmax(内外周での記録パワーの比ρ)などの推奨の設定値を光ディスク媒体1から読み出し(ステップS1)、当該情報記録装置により光ディスク媒体1の試し書き領域を用いて最小(最内周)記録線速度と最大(最外周)記録線速度とにおける試し書き(OPC)で新たに最適記録パワーを設定し直すようにする(S2)。
【0050】次に、光ディスク媒体1全面に対応する、記録線速度に対する各々のパルス幅と記録パワーの基本近似式(第1の近似式)の導出によって設定値を算出できるようにして(S3)、記録するデータ量に応じた光ディスク媒体1全面に対する記録領域を図6に示す如く複数に分割し、各々の記録領域に対応したアドレス領域を個別に算出しておく(S4)。
【0051】この後、最初の記録領域(最内周の第1の記録領域)内における、各々のパルス幅と記録パワーの設定値を更新する間隔と、その間隔に対応したアドレスの範囲を割り付けて(S5)、最初の記録領域内における詳細な更新間隔に対応したパルス幅と記録パワー設定値を算出する(S6)。そして、実際のCAV制御による記録を行いながら、現在のアドレスをプリフォーマット情報から読み出し(S7)、設定値を更新する範囲内、即ち、アドレス範囲内にあるかを判定し(S8)、範囲外になった場合(S8のN)、新たに算出された設定値に更新する(S6,S7)ことで、異なる記録領域に跨って連続的に記録を行うことができる。アドレス範囲内にある場合には(S8のY)、前述した通り、CAV制御にて記録を行い、現在の記録領域終了のアドレスに達するまで同様の処理を繰り返す(S9)。
【0052】次に、現在の記録領域の記録が終了した後、この記録領域での終端部の記録済みトラックにジャンプバックして再生を行い、速やかにアシンメトリ検出を行って(S10)、記録マークが最適記録パワーで形成されているかどうかを、OPCでの記録パワー依存性(Asy若しくはMod近似式)から最適記録パワーとのずれΔPwを算出して判定し(S11)、判定結果が良好でない場合には(S11のN)、記録パワー設定の基本近似式をΔPwだけ補正する(S12)。このように補正された記録パワー設定の近似式(第2以降の近似式)を用いて、後続の記録領域に対して同様の動作を繰り返す(S5?S12)。
【0053】なお、終端部の記録済みトラックの再生特性が良好であると判定されると(S11のY)、記録パワー設定の基本近似式(第1の近似式)を用いて、後続の記録領域に対する動作を繰り返せばよい(S5?S11)。
【0054】そして、記録するデータのアドレス範囲内にある期間中は、前述した通りCAV制御にて記録を行い、記録終了のアドレスに達するまで同様の処理を繰り返し(S13)、記録を終了する。
【0055】このような記録方法とすることで、コントローラによる記録パルスの制御管理の負担を大幅に軽減することができる。」
(2-6)「【0057】なお、記録パワー設定の近似式は、前述のように光ディスク媒体1の特性に合わせて算出すればよく、線形近似やそれ以外の多項近似式で高精度に算出することもできる。このようにして得られた設定値の近似式は記録線速度に対するものであり、実際には前述のウォブル信号やPLL信号を復調して得られるアドレス情報で認識する必要がある。特定のアドレスが最内周位置から最外周位置まで決められており、記録線速度と対応付けできる。」
(2-7)「【0058】本発明の第二の実施の形態を図9に基づいて説明する。本実施の形態は、上述した情報記録方法を用いて光ディスク媒体1に記録するための情報記録装置に関する。」
(2-8)「【0061】次に、半導体レーザによる記録パルスを発生させるため、記録パルス列生成部17には記録チャンネルクロックと記録情報であるEFMデータが記録クロック生成部11、EFMエンコーダ15から各々入力され、記録パルス列生成部17で、先頭加熱パルスと最後尾加熱パルスと中間の加熱マルチパルスを含む記録パルスに対する記録パルス制御信号を生成する。そして、LD駆動手段20で記録パワーPwとバイアスパワーPbとの各々の駆動電流源19をスイッチングする。記録時にはバイアス電流源により定常的に再生パワー相当のバイアスパワーPbで半導体レーザを発光させ、前述の記録パルス列生成部17で生成された記録パルス制御信号により図1に示したような記録パルスのレーザ発光波形を得ることができる。
【0062】ここに、本実施の形態では、エッジ信号生成部18中の先頭加熱パルスの前エッジ信号生成部として、ゲート素子を用いた遅延量0.5ns程度の多段遅延回路を配置しており、マルチプレクサ構成のエッジセレクタに入力された後、システムコントローラ13によって選択されたエッジパルスによって前エッジ位置を可変する先頭加熱パルスの記録パルス制御信号(前エッジ信号)が生成される。同様に、最後尾加熱パルスの後エッジ位置を可変するエッジ信号生成部18中のエッジ信号生成部においても、ゲート素子を用いた遅延量0.5ns程度の多段遅延素子を配置し、エッジセレクタに入力された後、システムコントローラ13によって選択されたエッジパルスによって、最後尾加熱パルスの記録パルス制御信号(後エッジ信号)が生成される。
【0063】このような構成によって、前述した情報記録方法のように各々の設定値を決定し、所望の記録線速度で最適なエッジパルスが選択され、所望の記録パルスが発生するように動作させている。また、このような構成で生成した記録パルスを所定の間隔で更新させるようにすると、各々の設定値は図2に示すように変化する。なお、多段遅延素子を用いると更新区間中は、各々のパルス幅が固定値となり記録チャネルクロックの変化に応じてパルス幅の比やデューティは変化するように設定される。
【0064】・・・(省略)・・・。
【0065】このような構成によって、前述した情報記録方法のように各々の設定値を決定し、所望の記録線速度で最適なエッジパルスが選択され、所望の記録パルスが発生するように動作させている。なお、このような構成で生成した記録パルスを所定の間隔で更新させるようにすると、各々の設定値はのこぎり歯形状に変化し、PLL構成のエッジパルス生成部を用いると更新区間中は、各々のパルス幅の比TtopとTtailは記録クロック周波数の変化に対しても一定値となるように設定される。」

以上の摘示事項を、特に、【図7】のフローチャートを参照し、記録開始後のプリフォーマット情報又は記録条件情報の読出しを行うステップS1?現在の記録領域の記録の終了判断処理ステップS9までの処理動作に着目して整理すると、刊行物には、結局、以下のとおりの発明が記載されているものと認める。
「記録パルス列による発光波形のレーザ光によりマーク情報が記録される記録層を有する光ディスク媒体上に記録する際に、
光ディスク媒体のプリフォーマット情報から、最小記録線速度や最大記録線速度や中間記録線速度などの複数の記録線速度における推奨する記録パルス幅の設定値、及び、推奨する記録パワー若しくは記録パワーの比などの推奨の設定値を読み出し(ステップS1)、
当該情報記録装置により光ディスク媒体の試し書き領域を用いて最小記録線速度と最大記録線速度とにおける試し書きで新たに最適記録パワーを設定し直すようにし(ステップS2)、
光ディスク媒体全面に対応する記録線速度に対する各々のパルス幅と記録パワーの基本近似式(第1の近似式)の導出によって設定値を算出できるようにし(ステップS3)、
記録するデータ量に応じた光ディスク媒体全面に対する記録領域を半径方向に複数に分割し、各々の記録領域に対応したアドレス領域を個別に算出しておき(テップS4)、
最初の記録領域内における各々のパルス幅と記録パワーの設定値を更新する間隔と、その間隔に対応したアドレスの範囲を割り付け(ステップS5)、
最初の記録領域内における詳細な更新間隔に対応したパルス幅と記録パワー設定値を算出し(ステップS6)、
実際のCAV制御による記録を行いながら、現在のアドレスをプリフォーマット情報から読み出し(ステップS7)、
設定値を更新する範囲内、即ち、アドレス範囲内にあるかを判定し(ステップS8)、
範囲外になった場合(ステップS8でN)、新たに算出された設定値に更新することで、異なる記録領域に跨って連続的に記録を行い、
アドレス範囲内にある場合(ステップS8でY)、CAV制御にて記録を行い、現在の記録領域終了のアドレスに達するまで同様の処理を繰り返し(ステップS9)、
次に、現在の記録領域の記録が終了した後、この記録領域での終端部の記録済みトラックにジャンプバックして再生を行い、速やかにアシンメトリ検出を行い(ステップS10)、
記録マークが最適記録パワーで形成されているかどうかを、OPCでの記録パワー依存性(Asy若しくはMod近似式)から最適記録パワーとのずれΔPwを算出して判定し(ステップS11)、
判定結果が良好でない場合には(ステップS11のN)、記録パワー設定の基本近似式をΔPwだけ補正し(ステップS12)、
補正された記録パワー設定の近似式(第2以降の近似式)を用いて、後続の記録領域に対して同様の動作(ステップS5?S12)を繰り返し、
終端部の記録済みトラックの再生特性が良好であると判定されると(ステップS11のY)、記録パワー設定の基本近似式(第1の近似式)を用いて、後続の記録領域に対する動作(ステップS5?S11)を繰り返し、
記録するデータのアドレス範囲内にある期間中は、前述した通りCAV制御にて記録を行い、記録終了のアドレスに達するまで同様の処理を繰り返して(ステップS13)、
記録を終了する情報記録方法。」

(3)対比・判断
〔対比〕
補正後発明と刊行物記載の発明とを対比する。
(i)いずれの発明も、角速度一定で回転する光ディスクにパルス状に発光するレーザ光を照射して記録する、いわゆるCAV記録方式を用いた情報記録方法に関する点で共通するものである。
(ii)刊行物記載の発明では、光ディスク媒体の媒体全面に対する記録領域は、記録するデータ量に応じて半径方向に複数の記録領域に分割され(ステップS4)、分割された各記録領域内は、更に、各々のパルス幅と記録パワーの設定値を更新する記録領域内における詳細な更新間隔とその間隔に対応したアドレスの範囲が割り付けられている(ステップS5)。
そして、分割された記録領域内では、詳細な更新間隔に対応したパルス幅と記録パワー設定値を算出するとしている(ステップS6)。
少なくとも、記録領域内での詳細な更新間隔と対応アドレスの範囲の割り付けステップS5からステップS11までの各ステップは、各記録領域で繰り返されており、複数に分割された各記録領域内で、詳細な更新間隔に対応してパルス幅と記録パワー設定値の算出及び更新が行われていることは明らかである。
パルス幅と記録パワー設定値は、それぞれ、光ディスク媒体全面に対応する記録線速度に対する近似式(例えば、上記(2)(2-4)【0037】の式)によって設定値として算出されるものであり、いずれも、更新間隔位置における記録線速度に対応していることは明らかである。
パルス状のレーザ光を用いた光ディスクへの情報記録において、パルス幅と記録パワーの各設定値は、それぞれ、記録条件項目に他ならず、刊行物記載の発明におけるパルス幅及び記録パワー設定値が、補正後発明における光ディスクの記録位置での線速度に応じた記録条件に関する所定の複数項目の各設定値に相当することは明らかである。したがって、刊行物記載の発明における記録領域内における詳細な更新間隔に対応したパルス幅と記録パワー設定値を算出するステップS6が、補正後発明における情報が記録される前記記録面における記録位置での前記光ディスクの線速度に応じた記録条件に関連する所定の複数項目の各設定値をそれぞれ取得する第1工程に相当することは明らかである。
(iii)刊行物記載の発明では、実際のCAV制御による記録を行いながら、現在のアドレスをプリフォーマット情報から読み出し、設定値を更新する範囲内、即ち、アドレス範囲内にあるかを判定し、範囲外になった場合、新たに算出された設定値に更新して、異なる記録領域に跨って連続的に記録を行うとされている。
算出された設定値を算出後、記録パルス列生成のための設定値として設定され、更新間隔毎に更新されるということである。
刊行物記載の発明においても、複数項目の各設定値を『複数回に分けて順次設定する』か否かはともかく、補正後発明における複数項目の各設定値を設定する第2工程は当然に備えているものと認める。
(iv)ところで、補正後発明では、第1工程で取得された複数の項目についての設定動作について、「前記光ディスクに情報が記録されている時に、前記複数項目の各設定値を複数回に分けて順次設定する第2工程」として、記録処理動作と設定処理動作との関係が規定されているので検討する。
本願出願当初の明細書及び図面には、「前記光ディスクに情報が記録されている時に、前記複数項目の各設定値を複数回に分けて順次設定する第2工程」という表現自体は、いずれにも記載がないが、審判請求人の審判請求理由(平成16年8月10日付け手続補正書参照)によれば、「前記光ディスクに情報が記録されている時に」に相当する本願出願当初の明細書及び図面の記載は、【0016】【0034】の「記録中に線速度が変化すると」(以下「根拠1」という。)、【0100】(審決注:「段落0101」は【0100】の誤記と認める。)の「書き込みが終了していなければ、ここでの判断は否定されステップ553に移行する。」及び図16のフローチャート(以下「根拠2」という。)等が対応するとされている。
そこで、検討する。
刊行物記載の発明では、「実際のCAV制御による記録を行いながら、現在のアドレスをプリフォーマット情報から読み出し(ステップS7)、
設定値を更新する範囲内、即ち、アドレス範囲内にあるかを判定し(ステップS8)、
範囲外になった場合(ステップS8でN)、新たに算出された設定値に更新することで、異なる記録領域に跨って連続的に記録を行い、
アドレス範囲内にある場合(ステップS8でY)、CAV制御にて記録を行い、現在の記録領域終了のアドレスに達するまで同様の処理を繰り返し(ステップS9)」とされている。
実際のCAV制御による記録を行いながら、プリフォーマット情報から読み出した現在のアドレスは、光ディスクの現在書き込み中の位置に相当するアドレスである。
上記した刊行物の記載(上記(2)(2-6)【0057】)のように、「特定のアドレスが最内周位置から最外周位置まで決められており、記録線速度と対応付けできる。」のであるから、アドレスを読み出し、検出するということは、書き込み中の位置における記録線速度を検出していることと同等であり、設定値を更新する範囲内、即ち、アドレス範囲内にあるか否かを判定することは、記録中に線速度が変化したか否かを判定することと同等であることは明らかである。
結局、刊行物記載の発明でも、設定値を更新・設定するのに、記録中の線速度の変化を判定しているということができ、審判請求人が主張する「根拠1」に相当する判定に従った設定値の更新・設定を行っていることは明らかである。
同様に、刊行物記載の発明では、「実際のCAV制御による記録を行いながら」とされていることから、書き込み許可後であることは自明であり、したがって、新たに算出された設定値が更新設定されるのは、書き込み許可後であって、記録領域内の範囲の記録終了のアドレスに達するまでの期間であり、刊行物記載の発明でも、審判請求人が主張する「根拠2」に相当する「書き込みが終了していない」とされた期間で更新・設定を行っていることは明らかである。
いずれの根拠においても、刊行物記載の発明と補正後発明における記録処理動作と設定処理動作との関係に差異はなく、したがって、刊行物記載の発明においても、補正後発明と同様に、光ディスクに情報が記録されている時に、複数項目の各設定値を設定していることは明らかである。

結局、両発明の[一致点]及び[相違点]は、以下のとおりである。
[一致点]
「レーザ光をパルス発光して角速度一定で回転している光ディスクの記録面に情報を記録する際の記録条件を設定する記録条件設定方法であって、
前記情報が記録される前記記録面における記録位置での前記光ディスクの線速度に応じた記録条件に関連する所定の複数項目の各設定値をそれぞれ取得する第1工程と;
前記光ディスクに情報が記録されている時に、前記複数項目の各設定値を設定する第2工程と;を含む記録条件設定方法。」の点。

[相違点]
複数項目の各設定値を設定する第2工程の動作について、補正後発明では、各設定値を「複数回に分けて順次」設定するとしているのに対して、刊行物記載の発明では明確でない点。

〔判断〕
以下、相違点について検討する。
刊行物記載の発明は、記録パルス列を規定する設定値として、記録パルス幅及び記録パワーを用いるとされてはいるが、刊行物には、更に、上記3.(2)(2-2)のとおり、各々のマークデータ長に対する記録パルス列を構成するパルス数、記録クロック周期に対する先頭加熱パルスのパルス幅の比、後続する中間マルチパルス部分の先頭加熱パルスのデューティ比、最後尾加熱パルスのパルス幅の比、又、記録パワーとバイアスパワー(以上、【0030】参照)などが記載され、又、上記3.(2)(2-4)においての【図3】に、代表例として、7Tマークデータについての最内周と最外周における記録パルスの波形の違いが示されている。
マーク長によって記録パルス列の波形が異なることは、周知のことであるから、記録パルス列の波形を規定する各設定値は、少なくとも、マーク長に対応させて、記録パルス列生成部17又はエッジ信号生成部18(いずれも、上記3.(2)(2-7)の【図9】)での記録パルス制御信号生成のために、例えば、マーク長毎などに個々に設定する必要があることは自明である。
刊行物記載の発明のように、記録パルス列生成のための設定項目が多数ある場合、例えば、マーク長毎に、或いは、項目毎に、複数回に分けて順次設定することは、当業者であれば、当然に想到し得る設定手法であり、格別の発明力を要すことなく、必要に応じて、適宜になし得る範囲内のことと認める。
そして、審判請求人が主張する、装置の大型化、高コスト化についての効果も、補正後発明がどのような機器要素を用いるのか特別に限定されてなく請求項に基づかない効果である。また、仮に、限定されたとしても、当業者であれば、当然に想定し得る範囲内のものであって、格別の効果とも認められない。
結局、相違点における補正後発明が採用した要件は、刊行物記載の発明においても、当業者が、格別の発明力を要すことなく、適宜に採用し得る範囲内のことと認める。

以上のとおりであるから、本件補正後の請求項1に係る発明は、刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものであり、特許法第29条第2項の規定より、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.補正についての結び
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


III.本願発明について
1.本願発明
平成16年8月10日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項1乃至17に係る各発明は、出願当初の明細書及び図面からみて、特許請求の範囲請求項1乃至17に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1の記載は、以下のとおりである。
「レーザ光をパルス発光して角速度一定で回転している光ディスクの記録面に情報を記録する際の記録条件を設定する記録条件設定方法であって、
前記情報が記録される前記記録面における記録位置での前記光ディスクの線速度に応じた記録条件に関連する所定の複数項目の各設定値をそれぞれ取得する第1工程と;
前記複数項目の各設定値を複数回に分けて順次設定する第2工程と;を含む記録条件設定方法。」(以下「本願発明」という。)

2.刊行物及びその記載
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載は、上記「II.〔理由〕3 .(2)」のとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記II.で検討した補正後発明から、第2工程について、「前記光ディスクに情報が記録されている時に、前記複数項目の各設定値を複数回に分けて順次設定する第2工程」としていた構成から、下線部の構成要件を省いて、「前記複数項目の各設定値を複数回に分けて順次設定する第2工程」とした上位概念の構成にあたるものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正後発明が、上記「II.〔理由〕3.(3)対比・判断」に記載したとおり、刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、本願発明も、同様の理由により刊行物記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-08 
結審通知日 2008-01-15 
審決日 2008-02-04 
出願番号 特願2003-322717(P2003-322717)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 達也岩井 健二  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 山田 洋一
吉川 康男
発明の名称 記録条件設定方法、記録方法、プログラム及び記録媒体、並びに光ディスク装置  
代理人 立石 篤司  
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