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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 F23Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F23Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F23Q
管理番号 1175200
審判番号 不服2006-14592  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-06 
確定日 2008-03-24 
事件の表示 平成10年特許願第306202号「セラミックグロープラグ」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 5月12日出願公開、特開2000-130755〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本件に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成10年10月28日の特許出願であって、平成18年5月30日付け(発送日:同6月6日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月6日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年8月4日に手続補正がなされたものである。

2.平成18年8月4日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年8月4日付け手続補正を却下する。

[理由1]
本願補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。(以下「本願補正発明」という)

「主体金具と、その主体金具に保持された金属外筒と、その金属外筒に外周部を保持されて先端部を露出させ略円柱状をした電気絶縁物からなる基体セラミックと、その基体セラミック中に埋設されて通電により発熱するセラミック発熱体と、を備え、前記金属外筒から露出される前記基体セラミックの先端部が燃焼室に曝されるセラミックグロープラグにおいて、前記基体セラミックが金属外筒から露出した付近の基体セラミックの直径(以下基径D
1と称す)より基体セラミックの先端近傍の直径(以下先端径D2と称す)が細くなるように(D1>D2)形成され、前記基体セラミックのうち、前記金属外筒の先端側に露出したセラミック露出長が9.0mm?11.0mmであり、前記基径D1の部分から前記先端径D2の部分へ移行する径差のある部分が滑らかな曲線で形成され、前記基体セラミックの基径D1が、3.35mm以上あり、前記基体セラミックの先端径D2が、基径D1以下であり、かつ、3.30≦D2≦3.50、(単位はmm)であることを特徴とするセラミックグロープラグ。」

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定する事項である「セラミックグロープラグ」について「前記金属外筒から露出される前記基体セラミックの先端部が燃焼室に曝される」との限定を付加し、また、「基体セラミック」について「前記基体セラミックのうち、前記金属外筒の先端側に露出したセラミック露出長が9.0mm?11.0mmであり」、「前記基径D1の部分から前記先端径D2の部分へ移行する径差のある部分が滑らかな曲線で形成され」、「前記基体セラミックの基径D1が、3.35mm以上あり」、「前記基体セラミックの先端径D2が、基径D1以下であり、かつ、3.30≦D2≦3.50、(単位はmm)である」との限定を付加するものであって、平成18年改正法前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
しかしながら、補正後のセラミック露出長を9.0mm?11.0mmとする点について、願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「当初明細書等」という)には、セラミック露出長については、9.0mmとしたこと、11.0mmとしたことのみが記載されているのであって、セラミック露出長の下限を9.0mmとすること、セラミック露出長の上限を11.0mmとすること、セラミック露出長を9.0mmから11.0mmの範囲とすることについての記載はなく、また、当初明細書等の記載が、セラミック露出長が9.0mm?11.0mmの範囲であることを意味していたことが当業者にとって明らかとも認められない。したがって、このセラミック露出長についての記載は当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとはいえない。

したがって、この補正は当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内でするものではないので、特許法第17条の2第3項に違反し、平成18年改正前特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項に規定により却下すべきものである。

[理由2]
上記理由1とは別に、本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであることは、明らかであるので、本願補正発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)についても、以下に検討する。

(1)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用した特開平9-14659号公報(以下、「公知刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「本発明は、ディーゼルエンジンの始動補助に用いられる自己制御型のグロープラグに関する。」(段落【0001】)

ロ.「図1に示す自己制御型セラミックグロープラグ1は、セラミックヒータ10を発熱部とするもので、2は機関への取付けのためのねじ2aが形成された取付け金具、3はセラミックヒータ10を支持する外筒、4はねじ4aが形成された通電用の中軸、5は中軸4とセラミックヒータ10を接続するリードコイル、6は中軸4と取付け金具2との絶縁のための絶縁体、7は中軸4にねじ止めされて絶縁体6を固定する丸ナット、8はシール材である。」(段落【0008】)

ハ.「セラミックヒータ10は、セラミック焼結体11内に、発熱体12、抵抗体13、タングステン製のリード線14、15を設けたもので、次のとおり形成される。」(段落【0009】)

ニ.「以下、セラミックヒータ10の製造方法を図2に基づいて説明する。なお、図中、30?34はプレス型である。
1(原文丸数字。以下、同様。)Si_(3)N_(4)粉末で半割りプレス体11aを作る(図2A)。
2発熱体用粉末混合物からなる略U字形状の発熱体用成形体12aと抵抗体用粉末混合物からなる棒状の抵抗体用成形体13aとを、上記1のSi_(3) N_(4) の半割りプレス体11上に電気的に直列に接続されるように配置するとともに、抵抗体用成形体13a側の各末端にタングステン(W)からなるリード線14、15を配置する(図2B)。
・・・
4上記3のプレス体11cを左、右方向よりN_(2)雰囲気中、1750℃×30分(圧力200kg/cm^(2 ))でホットプレスして、ヒータ用セラミック焼結体を作成する。
5上記4のヒータ用セラミック焼結体を研磨して、円柱状のセラミックヒータ10として仕上げる。
・・・
8上記7の外筒3と取付け金具2をろう付けし、・・・
9上記8の取付け金具2と中軸2間に絶縁体6を配して丸ナット7で固定して、自己制御型セラミックグロープラグ1の組み付けを終わる。」(段落【0010】、【0011】)

ホ.「発熱体用成形体12aとなる発熱体用粉末混合物の組成は、Re-W合金、Si_(3) N_(4) の各粉末を混合して結合剤を加えたもの、あるいは、Re-W合金、WC、Si_(3) N_(4)の各粉末を混合して結合剤を加えたもののいずれかを用いる。」(段落【0012】)

ヘ.【図1】には、セラミックヒータ10の先端部を外筒3から露出させたことが図示されている。

上記記載事項及び図面の記載内容からみて、公知刊行物1には、次の発明(以下、「公知刊行物記載の発明1」という。)が記載されている。

「取付け金具2と、取付け金具2にろう付けされた外筒3と、外筒3に支持され、先端部を外筒3から露出させた円柱状のセラミック焼結体11と、セラミック焼結体11内に設けられた、Re-W合金、Si_(3) N_(4)の各粉末を混合して結合剤を加えたもの、あるいは、Re-W合金、WC、Si_(3) N_(4) の各粉末を混合して結合剤を加えたもののいずれかからなる発熱体12とを備えたセラミックグロープラグ1。」

原査定の拒絶の理由に引用した特開昭63-65234号公報(以下、「公知刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「産業上の利用分野:本発明は主としてディーゼルエンジンの始動補助装置として使用されるセラミックグロープラグに関するものである。」(第1ページ左下欄第15?17行)

ロ.「セラミックヒータ-をSi_(3) N_(4)、SiCのごとき非酸化物系のセラミック材で、径大部と先端側の径小部とに段部を介して一体に連成し、該径大部を主体金具内腔に鑞付けして成るもので、主体金具端面から径大部が燃焼室間に突出することになる。第1図は実施例の断面図で、2aはセラミックヒータ-2の径小部、2bは仝じく径大部を示す。」(第1ページ右下欄第20行?第2ページ左上欄第7行)

ハ.「作用及び効果:本発明の構成では、燃焼温度の高いエンジンに対して径大部或はセラミック外筒部が燃焼室内に突出状態におかれても該径大部やセラミック外筒部は焼損することなく、セラミックヒータ一部の強度補強は充分に確保される。」(第2ページ左下欄第18行?右上欄第2行)

上記記載事項及び図面の記載内容からみて、公知刊行物2には、次の発明(以下、「公知刊行物記載の発明2」という。)が記載されている。

「セラミックヒータ2の燃焼室内に突出状態におかれた部分を、径大部2bと先端側の径小部2aとから形成することによりセラミックヒータ部の強度補強を充分に確保したセラミックグロープラグ。」

原査定の拒絶の理由に引用した実願昭53-110094号(実開昭55-25700号)のマイクロフィルム(以下、「公知刊行物3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「第1図において、1はステンレス鋼等の耐熱金属より成るパイプで、一端が開口し他端が閉じた形状である。2はニクロム線等より成るコイル状の発熱線で、この発熱線2の一端は耐熱金属パイプ1の閉塞端内側に溶接等により接合されている。3はマグネシア等より成る耐熱電気絶縁粉末で、耐熱金属パイプ1と発熱線2との間の空間に密に充填されてシーズ型発熱部7が構成されている。」(第3ページ第6行?14行)

ロ.「デーゼルエンジンの渦流型燃焼室8に突き出ている部分1aは例えば外径3mmに絞られており、他の根本部1bは例えば外径5mmである。6はグロープラグ取付用の栓体で、耐熱金属パイプ1は栓体6にロウ付等により接合固定される。」(第3ページ第18行?第4ページ第3行)

ハ.「シーズ型発熱部の燃焼室内に突出する部分の全体を細くしいるが、その部分の一部を細くしても勿論である。」(第5ページ第20行?第6ページ第2行)

二.「以上述べたように本考案のグロープラグは、そのシーズ型発熱部のうちデイーゼルエンジンの燃焼室内に突き出た部分の外径を他の部分よりも細くしたから、シーズ型発熱部の発熱線で発生した熱を耐熱金属パイプに迅速に伝達することができるため、シーズ型発熱部の温度の立上りが極めて速く、そのためデイーゼルエンジンの始動に必要なグロープラグの予熱時間が短かくなるという効果がある。また、シーズ型発熱部の外径を細くすることによつてデイーゼルエンジンの燃焼室内に突出する部分の体積が減少し、燃料と空気の混合性が良くなり、従つて燃焼効率が良くなつて出力と燃費が向上するという効果がある。」(第6ページ第10行?第7ページ第2行)

ホ.第1図には、非細径部1bから細径部1aへ移行する径差のある部分を滑らかな曲線で形成したことが、図示されている。

上記記載事項及び図面の記載内容からみて、公知刊行物3には、次の発明(以下、「公知刊行物記載の発明3」という。)が記載されている。

「発熱部の燃焼室内に突出する部分の一部を細くすることにより、発熱部の温度の立上りを早くしたこと、径差のある部分を滑らかな曲線で形成したことを特徴とするグロープラグ。」

(2)対比
本願補正発明と公知刊行物記載の発明1を対比する。
公知刊行物記載の発明1に記載された「外筒」は、取付け金具2にろう付されることより、「金属」からなるものであるから、公知刊行物記載の発明1における「取付け金具2」は本願補正発明における「主体金具」に相当する。
以下、同様に、「取付け金具2にろう付けされた外筒3」は「主体金具に保持された金属外筒」に、「外筒3に支持され、先端部を外筒3から露出させた円柱状のセラミック焼結体11」は「金属外筒に外周部を保持されて先端部を露出させ略円柱状をした電気絶縁物からなる基体セラミック」に、「セラミック焼結体11内に設けられた、Re-W合金、Si_(3)N_(4) の各粉末を混合して結合剤を加えたもの、あるいは、Re-W合金、WC、Si_(3)N_(4) の各粉末を混合して結合剤を加えたもののいずれかからなる発熱体12」は「基体セラミック中に埋設されて通電により発熱するセラミック発熱体」にそれぞれ相当する。

したがって、上記両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「主体金具と、その主体金具に保持された金属外筒と、その金属外筒に外周部を保持されて先端部を露出させ略円柱状をした電気絶縁物からなる基体セラミックと、その基体セラミック中に埋設されて通電により発熱するセラミック発熱体と、を備え、前記基体セラミックの先端部を外筒3から露出させたセラミックグロープラグ。」

[相違点1]
本願補正発明では、金属外筒から露出される基体セラミックの先端部が燃焼室に曝され、前記基体セラミックが金属外筒から露出した付近の基体セラミックの直径(以下基径D1と称す)より基体セラミックの先端近傍の直径(以下先端径D2と称す)が細くなるように(D1>D2)形成され、基体セラミックの基径D1が、3.35mm以上あるのに対して、公知刊行物記載の発明1では、この点が不明である点。

[相違点2]
本願補正発明では、金属外筒の先端側に露出したセラミック露出長が9.0mm?11.0mmであるのに対して、公知刊行物記載の発明1では、この点が不明である点。

[相違点3]
本願補正発明では、基径D1の部分から先端径D2の部分へ移行する径差のある部分が滑らかな曲線で形成され、基体セラミックの先端径D2が、基径D1以下であり、かつ、3.30≦D2≦3.50、(単位はmm)であるのに対して、公知刊行物記載の発明1では、この点が不明である点。

(3)当審の判断
相違点1について
公知刊行物記載の発明2は、本願補正発明と同様にセラミックヒータ部の強度補強を充分に確保することを目的として、セラミックヒータ2の燃焼室内に突出状態におかれた部分を、径大部と先端側の径小部とから形成したものである。
そして、この公知刊行物記載の発明2は、本願補正発明及び公知刊行物記載の発明1と同様にセラミックヒータグロープラグに関するものであって技術分野を同じくするものであるから、セラミックヒータ部の強度補強を充分に確保することを目的として公知刊行物記載の発明2を公知刊行物記載の発明1に適用することは、当業者が容易になし得たことといえる。
また、適用に際し、セラミックヒータの径の下限値は、セラミックヒータ部の強度補強を充分に確保するために、セラミックヒータの断面形状、材料及び製造条件、セラミックヒータグロープラグの使用環境等の諸条件を総合勘案して当業者が適宜決定するものである。
そして、本願補正発明において、セラミックヒータの断面形状、材料等の諸条件が十分特定されずに、基体セラミックの基径D1の下限値を3.35mm、先端径D2の下限値を3.30mmとしたことに臨界的意義を確認することはできない。
したがって、公知刊行物記載の発明1において、相違点1に係る本願補正発明の構成を採用することには、当業者にとっての格別の創意工夫が見いだせない。

相違点2について
公知刊行物記載の発明1において、基体セラミックの先端部を金属外筒から露出させる長さをどのような値とするのかは、セラミックヒータに必要とされる強度のみならず、セラミックヒータの断面形状、材料及び製造条件、セラミックヒータグロープラグの使用環境等といった諸条件を総合勘案して当業者が適宜決定し得る事項である。
そして、本願補正発明において、セラミックヒータの断面形状、材料等の諸条件が十分特定されずに、金属外筒の先端側に露出したセラミック露出長を9.0mm?11.0mmとしたことに臨界的意義を確認することはできない。
したがって、公知刊行物記載の発明1において、相違点2に係る本願補正発明の構成を採用することには、当業者にとっての格別の創意工夫が見いだせない。

相違点3について
公知刊行物記載の発明3は、「発熱部の燃焼室内に突出する部分の一部を細くする」ものであるが、「発熱部の燃焼室内に突出する部分の一部」には、当然「発熱部の燃焼室内に突出する部分の先端部」も含まれている。
したがって、公知刊行物記載の発明3には、本願補正発明と同様に発熱部の温度の立上りを早くするために、発熱部の燃焼室内に突出する部分の先端部を細くするとともに、径差のある部分を滑らかな曲線で形成したものである。
そして、この公知刊行物記載の発明3は、本願補正発明、公知刊行物記載の発明1及び公知刊行物記載の発明2と同様にグロープラグに関するものであって技術分野を同じくするものであるから、公知刊行物記載の発明3に倣って、公知刊行物記載の発明1のセラミックヒータの燃焼室内に突出する部分の先端部を発熱部の温度の立上りを早くするために細くすること、また、先端部を細くすることにより生ずる径差のある部分を滑らかな曲線で形成することは、当業者が容易になし得たことといえる。
また、細くされた先端部の径は、既に相違点1で述べた強度確保の観点のみならず、発熱部の温度の立上りを早くするとうい観点からも、セラミックヒータの形状、材料及び製造条件、セラミックヒータグロープラグの使用環境等の諸条件を総合勘案して、当業者が適宜決定し得たものである。
そして、本願補正発明において、セラミックヒータの断面形状、材料等の諸条件が十分特定されずに、基体セラミックの先端径D2を、基径D1以下であり、かつ、3.30≦D2≦3.50、(単位はmm)としたことに臨界的意義を確認することはできない。
したがって、公知刊行物記載の発明1において、相違点3に係る本願補正発明の構成を採用することには、当業者にとっての格別の創意工夫が見いだせない。

さらに、本願補正発明の作用効果も、公知刊行物記載の発明1ないし公知刊行物記載の発明3から当業者が予測できた範囲内のものである。

したがって、本願補正発明は、公知刊行物記載の発明1ないし公知刊行物記載の発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、平成18年改正前特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成18年8月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものである。

「主体金具と、その主体金具に保持された金属外筒と、その金属外筒に外周部を保持されて先端部を露出させ略円柱状をした電気絶縁物からなる基体セラミックと、その基体セラミック中に埋設されて通電により発熱するセラミック発熱体と、を備えるセラミックグロープラグにおいて、前記基体セラミックが金属外筒から露出した付近の基体セラミックの直径(以下基径D1と称す)より基体セラミックの先端近傍の直径(以下先端径D2と称す)が細くなるように(D1>D2)形成されていることを特徴とするセラミッ
クグロープラグ。」

(2)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、及び、その記載事項は、前記「2.(1)」に記載したとおりである。

(3)対比
本願発明と公知刊行物記載の発明1を対比すると、公知刊行物記載の発明1に記載された「外筒」は、取付け金具2にろう付されることより、「金属」からなるものであるから、公知刊行物記載の発明1における「取付け金具2」は本願発明における「主体金具」に相当する。
以下、同様に、「取付け金具2に保持された外筒3」は「主体金具に保持された金属外筒」に「外筒に支持された先端部を外筒3から露出させた円柱状のセラミック焼結体11」は「金属外筒に外周部を保持されて先端部を露出させ略円柱状をした電気絶縁物からなる基体セラミック」に、「セラミック焼結体11内に設けられた、Re-W合金、Si_(3)N_(4)の各粉末を混合して結合剤を加えたもの、あるいは、Re-W合金、WC、Si_(3)N_(4) の各粉末を混合して結合剤を加えたもののいずれかからなる発熱体12」は「基体セラミック中に埋設されて通電により発熱するセラミック発熱体」にそれぞれ相当する。

本願発明と公知刊行物記載の発明1を対比すると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「主体金具と、その主体金具に保持された金属外筒と、その金属外筒に外周部を保持されて先端部を露出させ略円柱状をした電気絶縁物からなる基体セラミックと、その基体セラミック中に埋設されて通電により発熱するセラミック発熱体と、を備えるセラミックグロープラグ。」

[相違点]
本願発明では、前記基体セラミックが金属外筒から露出した付近の基体セラミックの直径(以下基径D1と称す)より基体セラミックの先端近傍の直径(以下先端径D2と称す)が細くなるように(D1>D2)形成されるのに対して、公知刊行物記載の発明1では、当該事項が不明である点。

(4)当審の判断
この相違点は、前記「2.(2)対比」の相違点1に含まれるものであり、この相違点1についての判断は、前記「2.(3)当審の判断」の相違点1についてに記載したとおりである。
したがって、本願補正発明と同様に、本願発明も公知刊行物記載の発明1及び公知刊行物記載の発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる、

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、公知刊行物記載の発明1及び公知刊行物記載の発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-17 
結審通知日 2008-01-22 
審決日 2008-02-04 
出願番号 特願平10-306202
審決分類 P 1 8・ 561- Z (F23Q)
P 1 8・ 575- Z (F23Q)
P 1 8・ 121- Z (F23Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平城 俊雅  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 今井 義男
長崎 洋一
発明の名称 セラミックグロープラグ  

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