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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成17行ケ10197審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成17行ケ10312審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
平成16ワ14321特許権譲渡代金請求事件 | 判例 | 特許 |
平成14行ケ199特許取消決定取消請求事件 | 判例 | 特許 |
不服20058936 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由)(定型) G01N 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由)(定型) G01N |
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管理番号 | 1175210 |
審判番号 | 不服2004-25970 |
総通号数 | 101 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-05-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-12-20 |
確定日 | 2008-03-26 |
事件の表示 | 特願2002-316974「ネオスポラ・カニヌムの血清学的分析方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年6月13日出願公開、特開2003-166992〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
本願は、平成14年10月31日の出願(パリ条約による優先権主張、平成13年10月31日 米国)であって、「ネオスポラ・カニヌムの血清学的分析方法」に関するものと認める。 これに対して、平成19年6月13日付けで拒絶理由を通知したが、これに対して指定期間内に応答がなく、依然として上記の拒絶理由で指摘した点は解消していない。 拒絶理由の内容は、以下のとおりである。 『<理由1> 本件出願は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第6項第1号並びに第2号に規定する要件を満たしていない。 記 1.特許請求の範囲の請求項1においては、「トキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質」であればどのようなものであっても、血清サンプルと接触させることによってネオスポラ・カニヌムに対して自然にセロポジティブを示す動物とネオスポラ・ワクチンを接種した動物とを識別することができるものとして記載されているが、発明の詳細な説明には、配列番号2及びそのN-末端の28アミノ酸が失欠した配列番号3のタンパク質、という2種類の特定のトキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質を検出抗原として使用した場合に、ネオスポラ・カニヌムに対して自然にセロポジティブを示す動物とネオスポラ・ワクチンを接種した動物とを識別できることしか記載されていない。 ネオスポラ・カニヌムに対して自然にセロポジティブを示す動物とネオスポラ・ワクチンを接種した動物の血清は共にネオスポラ・カニヌムに対する抗体を有するにもかかわらず、自然にセロポジティブを示す動物とネオスポラ・ワクチンを接種した動物とが識別できるということは、ネオスポラ・カニヌム・タンパク質抗原とトキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質に対して共通に生じる抗体のうちでネオスポラ・ワクチンにより生じる抗体を除いた抗体だけを検出できる特定のアミノ酸配列のタンパク質を検出抗原として使用しなければならないはずであり、いかなるトキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質でもその検出抗原として使用できるとは認められない。したがって、上記2種類の特定のトキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質以外のトキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質をも検出抗原として使用する請求項1記載の発明は、発明の詳細な説明に記載されているものとは認められない。 2.特許請求の範囲の請求項2の「前記トキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質が、配列番号2で表されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。」および請求項3の「前記トキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質が、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。」という記載において、「・・を含む」という記載がどのようなトキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質を意味するのか明確でない。 また、それらの配列を含んでさえいればネオスポラ・カニヌムに対して自然にセロポジティブを示す動物とネオスポラ・ワクチンを接種した動物とを必ず識別できることまでは、発明の詳細な説明に開示されていないから、これらの請求項に記載の発明は、発明の詳細な説明に記載されているものとは認められない。 3.特許請求の範囲の請求項4には「前記トキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質が、BAG-1である、請求項2に記載の方法。」、請求項5には「前記トキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質が、BAG-5である、請求項2に記載の方法。」と記載されており、一方、明細書の段落【0008】には「一つの態様においては、完全長ブラディゾイト抗原グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質(BAG-1)が、検出抗原である(配列番号2)。別の態様では、BAG1のN-末端の28アミノ酸が欠失した先端切断BAG-1-GST融合タンパク質が検出抗原である(配列番号3)。BAG-1は、当業界においてBAG-5としても知られている。」と記載されていて、 (i)段落【0008】の記載によれば、配列番号2のタンパク質も、配列番号3のタンパク質も、GST融合タンパク質であることになるが、配列表に示された配列番号2および3のタンパク質が、両者ともGST融合タンパク質であるのかどうか明確でなく、 (ii)また、段落【0008】の記載によれば、同一のタンパク質に対して使用されている「BAG-1」と「BAG-5」という別々の用語が請求項4及び5でそれぞれ使用されていることになり、同一のものに別異の用語を使用するのはまぎらわしく、特許請求の範囲の記載が明確でないものとなるので不適切である。(2つの用語を使用することに、何か特別の技術的意義や理由があるのか?) 4.特許請求の範囲の請求項11に記載されている発明も、請求項1の場合と同様「トキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質」であればどのようなタンパク質であっても、ネオスポラ・カニヌムに感染されてしまっている動物かどうか検査することができるものとして記載されているが、発明の詳細な説明には、配列番号2とそのN-末端の28アミノ酸が失欠した配列番号3のタンパク質、という2種類の特定のトキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質を検出抗原として使用した場合しか記載されていない。 そして、「トキソプラスマ・ゴンディイ」と「ネオスポラ・カニヌム」とはそもそも異なる寄生虫であって、「トキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質」であればどのようなタンパク質であっても、ネオスポラ・カニヌムに感染されてしまっている動物とそうでない動物を区別して検査できるものとは認められないから、上記2種類の特定のトキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質以外のトキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質を検出抗原として使用する請求項11記載の発明は、発明の詳細な説明に記載されているものとは認められない。 5.特許請求の範囲の請求項12の「前記トキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質が、配列番号2で表されるアミノ酸配列、又は配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の方法。」という記載についても、前記2.で述べたのと同様に、どのようなトキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質まで意味するのか明確でなく、かつ、それらの配列を含んでさえいれば必ずネオスポラ・カニヌムに感染した動物であるかないかを検査できることまでは、発明の詳細な説明に開示されていないから、請求項12に記載の発明は、発明の詳細な説明に記載されているものとは認められない。 6.特許請求の範囲の請求項13の「前記トキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質が、BAG-1又はBAG-5である、請求項12に記載の方法。」という記載は、明細書の段落【0008】の記載によれば、同一のタンパク質に対して「BAG-1」と「BAG-5」という別々の用語がわざわざ使用されていることになり、同一のものに別異の用語を使用するのはまぎらわしく、特許請求の範囲の記載を明確でないものとなるので不適切である。(2つの用語を使用することに、何か特別の技術的意義や理由があるのか?) 7.特許請求の範囲の請求項14の「血清とトキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質とを接触させ、そして結合抗体の存在に関して前記血清を検査することを含む、血清サンプル中の、ネオスポラ・カニヌムに対する抗体の検出方法。」という記載からすると、請求項14に係る発明は、何の特定もされていないトキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質と血清とを接触させ、単にネオスポラ・カニヌムに対する抗体というだけで何の特定もされていない抗体を検出する方法の発明に係るもので、実際に何を検出するのか不明であり、他の請求項の発明に係る、ネオスポラ・カニヌムに対して自然にセロポジティブを示す動物とネオスポラ・ワクチンを接種した動物とを識別する方法との関係も明らかでない。 また、請求項1及び11と同様、血清試料中の抗体と反応させる検出抗原について、「トキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質」であればどのようなタンパク質であっても、ネオスポラ・カニヌムに対する抗体の検出ができるように記載されているが、発明の詳細な説明には、配列番号2とそのN-末端の28アミノ酸が失欠した配列番号3のタンパク質、という2種類の特定のトキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質を検出抗原として使用した場合しか記載されていない。 そして、「トキソプラスマ・ゴンディイ」と「ネオスポラ・カニヌム」とはそもそも異なる寄生虫であるから、「トキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質」であればどのようなタンパク質であれ、ネオスポラ・カニヌムに対する抗体の検出ができるものとは認められないから、上記2種類の特定のトキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質以外をも検出抗原として使用する請求項14記載の発明は、発明の詳細な説明に記載されているものとは認められない。 8.特許請求の範囲の請求項15の「動物から血清サンプルを取得し、トキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質断片と前記血清とを接触させ、そして結合抗体の存在に関して前記血清を検査することを含む、ネオスポラ・カニヌムに対して自然にセロポジティブを示す動物とネオスポラ・ワクチンを接種した動物とを識別する方法。」という記載は、「トキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質」について「断片」という記載がないだけで他は請求項1に係る発明と同じものであるが、前記1.で述べたのと同様、「トキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質断片」であればどのような該タンパク質のどのような断片であっても、ネオスポラ・カニヌムに対して自然にセロポジティブを示す動物とネオスポラ・ワクチンを接種した動物とを必ず識別することができるような記載となっているにもかかわらず、発明の詳細な説明には、配列番号2とそのN-末端の28アミノ酸が失欠した配列番号3のタンパク質、という2種類の特定のトキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質を検出抗原として使用した場合に、ネオスポラ・カニヌムに対して自然にセロポジティブを示す動物とネオスポラ・ワクチンを接種した動物とを識別できることしか記載されていない。 ネオスポラ・カニヌムに対して自然にセロポジティブを示す動物とネオスポラ・ワクチンを接種した動物との血清は共にネオスポラ・カニヌムに対する抗体を有するにもかかわらず、自然にセロポジティブを示す動物とネオスポラ・ワクチンを接種した動物とが識別できるということは、ネオスポラ・カニヌム・タンパク質抗原とトキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質断片に対して共通に生じる抗体のうちでネオスポラ・ワクチンにより生じられる抗体を除いた抗体だけを検出できる特定のアミノ酸配列のタンパク質断片を検出抗原として使用しなければならないはずであり、いかなるトキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質断片でもその検出抗原として使用できるとは認められない。したがって、上記2種類の特定のトキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質以外のトキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質断片をも検出抗原として使用する請求項15記載の発明は、発明の詳細な説明に記載されているものとは認められない。 <理由2> この出願の請求項1ないし13、15に係る発明は、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。 記 請求項1、11、15に係る方法の発明は、いずれも「動物から血清サンプルを取得し、」という工程を有しており、「動物」には「ヒト」が含まれているので、そのようなヒトからの採血工程を含む上記請求項に係る発明、およびそれらを引用する請求項2ないし10、12、13に係る発明は、各請求項の方法についての表現は「診断方法」ではないとしても、実質的に人体の診断方法を含み得るので、産業上利用できる発明であるとは認められない。 (例えば、「動物から取得した血清サンプルをトキソプラスマ・ゴンディイ・タンパク質と接触させ、・・・」というように、動物から血清サンプルを取得する工程(行為)を含まないような記載とすれば、この点の問題は解消できる。)』 そして、上記拒絶理由は妥当なものと認められるので、本願は、上記の拒絶理由によって拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-10-24 |
結審通知日 | 2007-10-30 |
審決日 | 2007-11-13 |
出願番号 | 特願2002-316974(P2002-316974) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WZF
(G01N)
P 1 8・ 537- WZF (G01N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 加々美 一恵 |
特許庁審判長 |
秋月 美紀子 |
特許庁審判官 |
黒田 浩一 山村 祥子 |
発明の名称 | ネオスポラ・カニヌムの血清学的分析方法 |
代理人 | 南条 雅裕 |
代理人 | 室伏 良信 |