• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1175250
審判番号 不服2005-3807  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-03 
確定日 2008-03-27 
事件の表示 平成11年特許願第315883号「クライアント・サーバーシステム及び業務支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月18日出願公開、特開2001-134519〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明の要旨
本願は、平成11年11月5日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年11月15日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりものと認める。

「操作入力された処理要求を受付けるWebブラウザが組込まれたクライアントと、このクライアントに対してネットワークを介して接続され、前記クライアントからの処理要求をWebサーバーで受信し、処理部で処理するサーバーとからなるクライアント・サーバーシステムであって、
前記クライアントは、
動作モードをネットワークモード又はローカルモードに選択する動作モード選択手段と、
この動作モードがローカルモードに選択された状態で、前記Webブラウザから出力された処理要求を受ける前記Webサーバーと同一機能を有するHTMLサービス部と、
このHTMLサービス部で受けた処理要求が指定する処理を実施する、前記サーバー側の処理部と同一処理機能を有する処理部と、
前記動作モードがネットワークモードに選択された状態で、前記Webブラウザから出力された処理要求を前記ネットワークを介して前記サーバーへ送信する処理要求送信手段と
を備えたことを特徴とするクライアント・サーバーシステム。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-254803号公報(以下、「引用例」という。)には、図とともに以下のような記載がある。

(イ)「【0002】
【従来の技術】インターネットは、ウェブ・サーバ・コンピュータをクライアント・コンピュータに接続することにより、世界規模のコンピュータ・ネットワークをもたらす。接続は、伝送制御プロトコル/インターネット・プロトコル(TCP/IP)として知られる通信プロトコルを通じて、提供される。TCP/IPは本来、インターネットのための構造基盤を提供する一組のプロトコルである。
【0003】ウェブ・サーバ・コンピュータは、インターネットを通じて、データをクライアント・コンピュータに送信する関連プログラムを有するコンピュータであり、クライアント・コンピュータは、データを解釈できるブラウザを有する。データはウェブ・ページとして参照され、一般にハイパーテキスト・マークアップ言語(HTML)文書を含む。HTMLはタグ・ベースの言語であり、ウェブ・ページの形式及び内容を定義するために使用される。ウェブ・ページはまた、例えばJAVA(商標)スクリプトなどのインターネット・プログラミング言語を含みうる。JAVAスクリプトは、HTMLタグの制限を越えて、ウェブ・ページの機能性を拡張する。クライアント・コンピュータ内で実行されるブラウザが、HTMLタグ及びJAVAスクリプトの両方を解釈できることが好ましい。ネットスケープ(商標)及びマイクロソフト・インターネット・エクスプローラ(商標)は、HTMLタグ及びJAVAスクリプトの両方を解釈できるブラウザの例である。
【0004】クライアント・コンピュータはインターネットを通じて、共通ゲートウェイ・インタフェース(CGI)を介在して、ウェブ・サーバにデータを送信しうる。CGIは、データを受信し、解釈できる共通のゲートウェイ・スクリプト(CGIスクリプト)を実行する。CGIはスクリプトが実行される様式を提供するプロトコルである。CGIスクリプトは、非HTMLタスクを実行するウェブ・サーバ上に配置されるアプリケーション・プログラムである。
・・・・(中略)・・・・
【0006】簡素なクライアント・モデル、ハードウェア/ソフトウェアの独立性、及びモバイル・コンピュータのインターネットへの集中化など、多大な利点に関連付けられるインターネットの驚異的な成長率は、データ入力及び中央サーバ処理の分野において、たくさんのビジネス・チャンスを提供する。金融業界の例は、こうしたチャンスを物語っていよう。
【0007】抵当証券の外交員は抵当証券の申込書を完成するために、顧客の家に出向き、顧客を訪ねる。抵当証券の申込書のために各顧客を訪問する間、外交員は顧客データを、モバイル・クライアント・コンピュータ上のブラウザ内に配置される電子書式に入力する。顧客データはウェブ・サーバに伝送され、顧客情報を中央業務レポジトリに伝送し、抵当証券の申込プロセスを完了する以前に、即時確認される。チャンスはビジネスにとって非常に魅力的である。なぜなら、それはインターネットとブラウザ技術との結合によりもたらされる、世界的規模のアクセス、及びハードウェア/ソフトウェアの独立性を提供するからである。
【0008】インターネット上でこうしたビジネス・システムを構築することは魅力的であるが、その一方で、モバイル・インターネット・ベースのデータ入力システムの構築に関連する数多くの問題が存在する。通常、訪問外交員は、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)接続または切断モードに対する要求を必要とする電話装置へのアクセスを有さない。
【0009】ブラウザ技術は現在、切断モードをサポートしていない。切断モードでは、ブラウザからの局所データ・ファイル記憶が、セキュリティ問題により禁止される。ブラウザ内に配置されるファイル・プルダウンからのファイル保管オプションは、単に基本HTMLファイルを保管するだけで、アクティブ・フィールドに入力されたデータは保管しない。
【0010】インターネット上でファイル転送するためのファイル転送プロトコル(FTP)として知られるプロトコルは、データ転送の間における外交員との対話の必要性により、望ましくない。
【0011】データ入力のための特注のアプリケーション・プログラムは、開発コスト、保守コスト、及び特注ソフトウェアの配布及び導入に関連する困難により、望ましくない。」(段落【0002】?【0011】第3頁第3欄第35行?第4頁第5欄第29行)

(ロ)「【0015】本発明の更に別の目的は、接続モード及び切断モードの両方において、ユーザがデータを同様に入力することを可能にする、データ入力のための一貫したユーザ・インタフェースをブラウザ内に提供することである。
【0016】本発明の更に別の目的は、既存のインターネット技術、並びにHTML及びJAVAスクリプトとして知られるインターネットのウェブ・ページ言語を用いることにより、ブラウザ、ハードウェア、及びオペレーティング・システムの独立性を提供することである。」(段落【0015】、【0016】第4頁第5欄第44行?第6欄第3行)

(ハ)「【0024】図2を参照すると、クライアント・コンピュータ10とウェブ・サーバ22との間の、インターネット16を通じるデータ・フローの図式表現が提供される。クライアント・コンピュータ10を操作するユーザは、例えば電話装置からインターネット16への接続14を形成する。接続モードでは、ユーザはウェブ・サーバ22のURLを入力し、これがインターネット16及び接続20を通じて、特定のウェブ・サーバ22に転送される。ウェブ・サーバ22はハード・ディスク26からウェブ・ページ31を獲得し、ファイル34をインターネットを介して、一連の接続32を通じて、クライアント・コンピュータのブラウザに提供する。ウェブ・ページ31はHTMLタグ、特に書式タグ(<FORM>)、関連入力タグ(<INPUT>)、及びサブミット・タグ(<SUBMIT>)を含む。ユーザはウェブ・ページと対話し、要求入力フィールドを記入し、入力データ36がサブミット・ボタン上のマウス・ポインタのポイント及びクリックにより、インターネットを介して、一連の接続38を通じて、ウェブ・サーバ22に返送されて処理される。ウェブ・サーバ22は、ハード・ディスク26上に配置されるCGIスクリプトを呼び出し、受信データ39を処理する。
【0025】切断モードでは、クライアント・コンピュータ12を操作するユーザは、内部接続33を通じて、局所ハード・ディスク35上にデータを保管しうる。切断モードでは、ウェブ・サーバ22と、またはウェブ・サーバ22に参照番号24で示されるように接続されるハード・ディスク26上に配置される関連CGIスクリプトと通信することはできない。従って、ユーザは切断モードにおいて、保管済みデータ・ファイルの局所ファイル管理の責任を負う。或いは、局所ファイル管理の機能を実行するために、JAVAアプレットがクライアント・コンピュータ上に配備されうる。」(段落【0024】、【0025】第5頁第7欄第32行?第8欄第14行)

(ニ)「【0032】図4を参照すると、本発明の有限状態マシンが、一般に参照番号70で示される。初期状態はロード状態72であり、これは本発明の初期書式メニュー・ウェブ・ページを、クライアント・コンピュータ上のブラウザにロードする。ロード状態72はブラウザの機能である。初期書式メニュー・ウェブ・ページは、接続モードにおいてインターネットを通じて、または切断モードにおいて、クライアント・コンピュータ上の局所ハード・ディスクから、ブラウザにロードされうる。切断モードでは、ウェブ・ページはインターネットへのアクセスを通じて以前に獲得済みであり、クライアント・コンピュータ内のハード・ディスク上に局所的に保管されている。ウェブ・ページ、原始HTMLファイル、図形イメージ、または他の要素の完全な内容が、本発明を操作しようと試行する以前に、インターネットから受信されなければならない。」(段落【0032】第5頁第8欄第48行?第6頁第9欄第13行)

(ホ)「【0077】図15を参照すると、データ入力以前の本発明の基本文書402の操作表示がブラウザ400内に示される。メニュー・バー及びツール・バーが除去されている点に注意されたい。基本文書のソース・コンテンツは図8乃至図12に示され、既に前述した通りである。
【0078】マイクロソフト・インターネット・エクスプローラ・ブラウザ400が、基本文書402を含むように示される。基本文書402は、局所URLをブラウザのアドレス領域に入力することにより、或いは"ファイルを開く"オプションを有するプルダウン・メニューから、ロードされる。
【0079】基本文書402は、一般に404で示されるラジオボタン・タイプの入力フィールドのリストを含む。ユーザによるマウス・ポイント及びクリック・アクションが、特定のラジオ・フィールドを選択する。入力フィールド406は、ファースト・ネームのデータ入力を提供する。入力フィールド408は、ミドル・イニシャルのデータ入力を提供する。入力フィールド410は、ラスト・ネームのデータ入力を提供する。入力フィールド412は、電子メール・アドレスのデータ入力を提供する。入力フィールド414は、自宅の電話番号のデータ入力を提供する。入力フィールド416は、勤務先の電話番号のデータ入力を提供する。入力フィールド418は、自宅のファックス番号のデータ入力を提供する。最後に、ボタン420"データ収集"は、入力データを収集し、副次文書を作成するコード生成状態の活動化を提供する。
【0080】図16を参照すると、データ入力後の本発明の基本文書402の別の操作表示が、ブラウザ400内に示される。依然として、ブラウザ内にはメニュー・バーまたはツール・バーが存在しない。基本文書のソース・コンテンツは図8乃至図12に示され、前述した通りである。
【0081】ユーザはマウス・ポイント及びクリック・アクションによりラジオボタン・フィールド422と対話し、"Mr."をデータ入力として選択する。"Derek"424がキーボードからファースト・ネーム・フィールドに、"K"426がキーボードからミドル・イニシャル・フィールドに、及び"Smith"428が、キーボードからラスト・ネーム・フィールドに入力されている。更に、"smitty@ibm.net"430がキーボードから電子メール・フィールドに、"1111111111"432がキーボードから自宅電話番号フィールドに、"2222222222"434がキーボードから勤務先電話番号フィールドに、そして最後に"3333333333"436が、キーボードから自宅ファックス番号フィールドに入力されている。
【0082】この時点で、データ入力はブラウザ400にとって局所的なだけである。入力データを収集し、副次文書を作成するために、図15に示したように、ユーザはボタン420"データ収集"を選択し、コード生成状態に入力しなければならない。ボタン420はマウス・ポイント及びクリック・アクションにより選択される。
【0083】図17を参照すると、本発明により生成される副次文書458の操作表示が、ブラウザ400内に収集データと一緒に示される。ここではメニュー・バー及びツール・バーがブラウザ内で使用可能である。副次文書のソース・コンテンツは図13に示され、前述した通りである。
【0084】ラジオ・ボタンがリスト・ボックス内に変換され、そこにはデータ入力"Mr."が初期値442として収集されている。ファースト・ネーム入力フィールドは、収集済みデータ入力"Derek"を初期値444として含む。ミドル・イニシャル入力フィールドは、収集済みデータ入力"K"を初期値446として含む。ラスト・ネーム入力フィールドは、収集済みデータ入力"Smith"を初期値448として含む。電子メール入力フィールドは、収集済みデータ入力"smitty@ibm.net"を初期値450として含む。自宅電話番号入力フィールドは、収集済みデータ入力"1111111111"を初期値452として含む。勤務先電話番号入力フィールドは、収集済みデータ入力"2222222222"を初期値454として含む。自宅ファックス番号入力フィールドは、収集済みデータ入力"3333333333"を初期値456として含む。
【0085】この時点における副次文書は、ウェブ・サーバへの後の伝送のために、ユーザによりクライアント・コンピュータ内の局所ハード・ディスク上に記憶される準備が整う。ボタン440"書式のサブミット"が副次文書458に追加されており、接続モードにおいてユーザによるマウス・ポイント及びクリック・アクションを通じて、収集データをインターネットを通じてウェブ・サーバに伝送する機構を提供する。
【0086】図18を参照すると、副次文書458を収集データと一緒に記憶する第1のステップが示される。ユーザは最初に、マウス・ポイント及びクリック・アクションにより、ブラウザ400からファイル・プルダウン462を選択する。リスト内において、ユーザは"Save As"オプション460を選択する。
【0087】図19を参照すると、副次文書458を収集データと一緒に、クライアント・コンピュータのハード・ファイルに局所的に記憶する第2のステップが示される。ユーザはキーボードを通じて、ファイル名をファイル名フィールド466に入力し、OKボタン464上での別のマウス・ポイント及びクリック・アクションを通じて、副次文書及び収集データを、クライアント・コンピュータ内のハード・ディスク上に、"customer.htm"の名前により局所的に保管する。
【0088】副次文書及び収集データは接続モードの間に、インターネットを通じて、ウェブ・サーバに送信されうる。ユーザはLANまたは電話装置により、クライアント・コンピュータをインターネットに接続し、インターネットへのアクセスをダイヤルする。1度接続されると、特定のウェブ・サーバのURLがブラウザのアドレス行に入力され、接続が確立される。ブラウザのアドレス行またはファイル・プルダウンから、保管済みのファイル"customer.htm"が、ブラウザ内にロードされる。ユーザはマウス・ポイント及びクリック・アクションを通じて、"サブミット"・ボタンを選択することにより、収集データをウェブ・サーバに伝送し、関連CGIスクリプトを活動化して、受信データを処理する。プロセスは、追加の保管済み副次文書の各々に対して繰り返されうる。」(段落【0077】?【0088】第10頁第17欄第24行?第11頁第19欄第35行)

(ヘ)「【0090】まとめとして、本発明の構成に関して以下の事項を開示する。
・・・・(中略)・・・・
(10)ウェブ・ブラウザ内に表示されるウェブ・ページに入力されるユーザ生成データを収集及び記憶するコンピュータ・システムであって、前記ウェブ・ブラウザ内に表示される基本文書の入力オブジェクト内で、ユーザ生成データを受信する手段と、前記入力オブジェクトにアクセスし、前記ユーザ生成データを抽出する手段と、前記ウェブ・ブラウザ内に副次文書を生成し、前記ユーザ生成データを収集する手段と、前記副次文書及び前記ウェブ・ブラウザからの前記ユーザ生成データを、前記コンピュータ・システム内の局所記憶に記憶する手段と、を含む、コンピュータ・システム。
(11)前記入力オブジェクトにアクセスする手段、及び前記副次文書を生成する手段を選択的に活動化する、前記基本文書内の活動化制御手段を含む、前記(10)記載のコンピュータ・システム。
(12)ウェブ・サーバ・アドレス及びサブミット制御を前記副次文書内に生成することにより、前記ユーザ生成データをウェブ・サーバに送信して処理する手段を含む、前記(10)または(11)記載のコンピュータ・システム。」(段落【0090】?【0091】第11頁第19欄第42行?第12頁第21欄第4行)

以上の記載によれば、この引用例には以下のような発明(以下、「引用例発明」という。)が開示されていると認められる。

「HTMLウェブ・ページを表示し、ユーザのデータ入力を受付けるウェブ・ブラウザを有するクライアント・コンピュータと、このクライアント・コンピュータに対してインターネットを介して接続され、前記クライアント・コンピュータからのデータ入力をCGIを介在してウェブ・サーバで受信し、処理するコンピュータ・システムであって、
前記クライアント・コンピュータは、
電話装置によりインターネットとの接続を形成しウェブ・サーバと接続する接続モードとウェブ・サーバと接続しない切断モードを有し、
切断モードで、ウェブ・ブラウザにおいて入力オブジェクトにアクセスし、ユーザがデータを入力し、ユーザがボタン420"データ収集"を選択すると、収集済みデータを含む副次文書が作成されて表示され、ユーザが"Save As"オプション460を選択してファイル名を入力してOKボタンをクリックすると、副次文書及び収集データがクラインアント・コンピュータのハードディスクに格納され、
接続モードにおいて、前記ウェブ・ブラウザにおいてユーザが入力したデータをCGIを介在して前記ウェブ・サーバーに伝送し、関連CGIスクリプトを動作させて受信データを処理する手段を備えたことを特徴とするコンピュータ・システム。」

3.対 比
本願発明と上記引用例発明を対比すると、引用例発明の「ウェブ・ブラウザ」、「クライアント・コンピュータ」、「インターネット」、「ウェブ・サーバ」及び「コンピュータ・システム」は、それぞれ本願発明の「Webブラウザ」、「クライアント」、「ネットワーク」、「Webサーバー」及び「クライアント・サーバーシステム」に相当するものと認められる。
そして、引用例発明のウェブ・ブラウザにおけるユーザのデータ入力、ボタンの選択等は、データを収集、伝送し、記憶させるものであるから、本願発明の「操作入力された処理要求を受付ける」に相当する。
引用例発明の「ウェブ・ブラウザにおいてユーザが入力したデータをCGIを介在して前記ウェブ・サーバーに伝送し、関連CGIスクリプトを動作させて受信データを処理する」は、本願発明とは「クライアントからの処理要求をWebサーバで受信し、処理部で処理するサーバとからなる」点に相当する。
また、引用例発明は、接続モードと切断モードを有し、切断モードにおいて、ウェブ・ブラウザでデータ入力し、ユーザがボタン420"データ収集"を選択すると、収集済みデータを含む副次文書が作成されて表示され、ユーザが"Save As"オプション460の選択してファイル名を入力してOKボタンをクリックすると、福次文書と収集データをハードディスクに格納し、接続モードにおいて、前記ウェブ・ブラウザにおいてユーザが入力したデータをCGIを介在して前記ウェブ・サーバーに伝送するから、本願発明とは「動作モードをネットワークモード又はローカルモードに選択する」、「動作モードがローカルモードに選択された状態で、前記Webブラウザから出力された処理要求を受け、処理要求が指定する処理を実施し」及び「動作モードがネットワークモードに選択された状態で、ブラウザから出力された処理要求を前記ネットワークを介して前記サーバへ送信する」点で対応する。

したがって、両者は、
「操作入力された処理要求を受付けるWebブラウザが組込まれたクライアントと、このクライアントに対してネットワークを介して接続され、前記クライアントからの処理要求をWebサーバーで受信し、処理部で処理するサーバーとからなるクライアント・サーバーシステムであって、
前記クライアントは、
動作モードをネットワークモード又はローカルモードに選択し、
この動作モードがローカルモードに選択された状態で、前記Webブラウザから出力された処理要求を受け、処理要求が指定する処理を実施し、
前記動作モードがネットワークモードに選択された状態で、前記Webブラウザから出力された処理要求を前記ネットワークを介して前記サーバーへ送信する処理要求送信手段と
を備えたことを特徴とするクライアント・サーバーシステム。」
で一致するものであり、次の(1)、(2)の点で相違している。

(1)本願発明では、「クライアントは、動作モードをネットワークモード又はローカルモードに選択する動作モード選択手段」を備えたのに対し、引用例発明は、接続モード、切断モードを有しているが、モード選択手段については明らかではない点。

(2)本願発明では、「動作モードがローカルモードに選択された状態で、前記Webブラウザから出力された処理要求を受ける前記Webサーバーと同一機能を有するHTMLサービス部と、このHTMLサービス部で受けた処理要求が指定する処理を実施する、前記サーバー側の処理部と同一処理機能を有する処理部」を備えるのに対し、引用例発明は、切断モードにおいてWebブラウザから出力された処理要求を受け、処理要求が指定する処理を実施しているが、Webブラウザから出力された処理要求を受けるWebサーバと同一機能を有するHTMLサービス部については不明であり、また、引用例発明では、接続モードにおいてサーバ側で関連CGIスクリプトを用いてデータをどのように処理するかは明らかではなく、切断モードにおける入力したデータの処理がクライアント側の何により行われるのか明らかではない点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
・相違点(1)について
引用例発明は、接続モードと切断モードを有し、切断モードにおいては、ウェブ・サーバと接続せずにクライアント・コンピュータ単独で動作し、接続モードにおいては、電話装置によりインターネットに接続を形成してウェブ・サーバに接続し動作するものであり、切断モードではウェブ・サーバに接続しないものであるから、接続モードと切断モードを切り換えるための何らかの手段を備えることは明らかである。
したがって、引用例発明において、クライアントが、動作モードをネットワークモード又はローカルモードに選択する動作モード選択手段を備えるようにすることは、当業者ならば容易になし得る設計事項である。

・相違点(2)について
引用例には、「抵当証券の外交員は抵当証券の申込書を完成するために、顧客の家に出向き、顧客を訪ねる。抵当証券の申込書のために各顧客を訪問する間、外交員は顧客データを、モバイル・クライアント・コンピュータ上のブラウザ内に配置される電子書式に入力する。顧客データはウェブ・サーバに伝送され、顧客情報を中央業務レポジトリに伝送し、抵当証券の申込プロセスを完了する以前に、即時確認される。」(記載事項(イ))及び「切断モードでは、ウェブ・サーバ22と、またはウェブ・サーバ22に参照番号24で示されるように接続されるハード・ディスク26上に配置される関連CGIスクリプトと通信することはできない。従って、ユーザは切断モードにおいて、保管済みデータ・ファイルの局所ファイル管理の責任を負う。或いは、局所ファイル管理の機能を実行するために、JAVAアプレットがクライアント・コンピュータ上に配備されうる。」(記載事項(ハ))と記載されており、接続モードにおいて、クライアント側のブラウザで入力した顧客データがサーバ側に伝送されて顧客情報としてレポジトリに格納され、切断モードにおいてもブラウザで入力した顧客データを収集し、顧客データファイルとして格納管理することが示されている。
そして、オフライン時にクライアントのブラウザにおいてユーザの要求するファイル検索、ファイル出力処理をオンライン時のサーバと同様に実行することは本出願前周知である。(特開平11-249951号公報、特開平9-259025号公報参照)
そうすると、引用例発明において、動作モードがローカルモードに選択された状態で、前記Webブラウザから出力された処理要求を受ける前記Webサーバーと同一機能を有するHTMLサービス部と、このHTMLサービス部で受けた処理要求が指定する処理を実施する、前記サーバー側の処理部と同一処理機能を有する処理部を備えるようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

(なお、本願発明において、「前記Webサーバと同一機能を有するHTMLサービス部」及び「前記サーバー側の処理部と同一機能を有する処理部」の構成はそれぞれ、「Webブラウザから受けた処理要求を受ける」及び「HTMLサービス部で受けた処理要求が指定する処理を実施する」こと以外は明らかではなく、「HTMLサービス部」及び「前記サーバー側の処理部と同一機能を有する処理部」は、それぞれ「前記Webサーバ」及び「前記サーバー側の処理部」と一定の機能が同じであることを意味している(必ずしも全く同一の機能を有するということはできない。)ものである。)

結局、上記の相違点は、格別なものではなく、また、前記相違点を総合的に検討しても奏される効果は当業者であれば、引用例発明及び周知技術から予想できる範囲内のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-25 
結審通知日 2008-01-29 
審決日 2008-02-13 
出願番号 特願平11-315883
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 茂和  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 和田 志郎
坂東 博司
発明の名称 クライアント・サーバーシステム及び業務支援システム  
代理人 中村 誠  
代理人 橋本 良郎  
代理人 河野 哲  
代理人 村松 貞男  
代理人 鈴江 武彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ