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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1175260
審判番号 不服2005-9675  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-23 
確定日 2008-03-27 
事件の表示 特願2000-326531「遊技機表示制御方法、遊技機表示制御装置、該遊技機表示制御装置を備えた遊技機および遊技機表示制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月 8日出願公開、特開2002-126257〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年10月26日の出願であって、平成17年1月28日付の拒絶理由通知に対して同年4月4日付で手続補正がなされ、これに対し、同年4月21日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月23日に拒絶査定不服の審判請求がなされたものであって、その請求項1乃至8に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至8に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明は以下のとおりのものである。
「【請求項1】 遊技機に取り付けられ当該遊技機に係る遊技画像を表示する表示画面を有する表示手段と、前記表示画面上に設定された複数列に対応させて識別情報を変動表示させた後に仮停止させる基本変動を行わせ、その後、基本変動時の列と交差方向に、予め設定された配列で識別情報を変動表示して本停止させる後続変動を実行する表示制御手段とを具備し、
前記後続変動の表示を行う際、識別情報の大きさを基本変動の際よりも縮小し、かつ、識別情報の隙間を基本変動の際よりも狭くした状態で、前記列と同数の識別情報群を前記表示画面の中央部に表示させるとともに、その表示画面の両端部の一方に前記識別情報群の前後の識別情報の片方を、前記両端部の他方に前記前後の識別情報のもう片方を表示させることを特徴とする遊技機表示制御装置。」(以下、「本願発明」という。)


第2.引用例に記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、平成11年3月16日に頒布された刊行物である引用例(特開平11-70224号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(ア)「【0012】【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。・・・なお、装飾図柄表示器に表示される装飾図柄は、図柄表示領域を3行3列(すなわちj=k=3の場合)に区分した例について説明する。」(第3頁第3欄31?45行)
(イ)「【0013】パチンコ機10は、図2に示すように、遊技盤面12上に・・・複合装置16,・・・等が適宜に配置して設けられている。これらの構成要素のうちで複合装置16は、図3に示すように、・・・装飾図柄表示器60・・・等が設けられている。」(第3頁第3欄46行?同頁第4欄3行)
(ウ)「【0014】・・・装飾図柄表示器60は・・・装飾図柄を表示する。装飾図柄は装飾効果を高めるための図柄であって、キャラクタや英数字、記号等がある。装飾図柄は上記特別図柄表示器14における特別図柄の変動開始とほぼ同時に(あるいはそれ以後)変動が始まり、その特別図柄の変動停止後すぐに(あるいはしばらくしてから)停止する。」(第3頁第4欄9?35行)
(エ)「【0016】・・・図4においてメイン制御部100は、CPU(プロセッサ)110,ROM102,RAM104,・・・表示制御回路114,・・・によって構成されている。CPU110は、ROM102に格納されている遊技制御プログラムに従ってパチンコ機10におけるパチンコ遊技を制御する。ROM102には遊技制御プログラムの他に、乱数発生プログラムや、装飾図柄あるいは特別図柄等が記憶される。・・・RAM104には、後述する図柄行列300や・・・特別図柄変動期間データ等の各種データあるいは入出力信号が格納される。」(第4頁第5欄11?29行)
(オ)「【0018】表示制御回路114は表示制御手段6を具体化したものである。この表示制御回路114はCPU110からバス118を介して送られた表示データ(すなわち図柄データと制御データとを含むデータ群)を受けて、・・・装飾図柄表示器60のそれぞれに対して、文字や図柄あるいは画像等を表示するための制御を行う。」(第4頁第5欄42?48行)
(カ)「【0025】そして、特別図柄変動期間が経過したか否か、すなわちタイマー106から変動停止信号があるか否かを判別する[ステップS36]。特別図柄変動期間が経過すると(YES)、特別図柄表示器14に変動して表示していた特別図柄を、装飾図柄表示器60に変動して表示していた装飾図柄をそれぞれ停止させる[ステップS38]。ここで、ステップS32からステップS38までの間に装飾図柄表示器60に表示される図柄について、その一例(第1表示態様から第4表示態様)を図7?図11を参照しながら説明する。なお、装飾図柄表示器60の表示領域を単に「画面」と呼ぶことにする。」(第5頁第7欄44行?同頁第8欄1行)
(キ)「【0026】ここで、図柄表示領域8aが3行3列(すなわちj=k=3)の領域に区分されており、第1種始動口22に遊技球が入賞すると、特別図柄の変動とともに装飾図柄が例えば上から下に向かって変動する。その後、・・・装飾図柄が次の態様で表示される。すなわち、・・・第2の態様としては、装飾図柄の図柄表示領域8aが例えば図示するように第2行(中央の行)について右2列(第2列、第3列)が「77」の様に特定態様で一旦停止させておき、再度リーチアクションを行った後に大当たり表示を行う。・・・以下では、上記第2の態様について、具体的な実施態様を説明する。」(第5頁第8欄7?24行)
(ク)「【0028】〔第2表示態様〕次に、第2表示態様を図9に示す。図9(A)では第1表示態様と同様に、3行3列の当たり判別枠60aには、第2行(中央の行)について右二列(第2列,第3列)が「77」で停止して表示されているためリーチ状態となる。ただし、リーチ状態にならずに終了する場合もある。このとき、図6のステップS34で読み込まれた乱数値に基づいて決定された移動方向(スクロール方向)やその移動量に従って、その移動方向と移動量に対応する行または列を画面に表示する。例えば、移動方向を右方向とし、移動量を1列とするときには、図9(B)に示すように1列分の図柄が当たり判別枠60aの右隣に表示される。すなわち、図9(A)では表示されていなかった列の図柄(この例では上から「471」の図柄)が、図9(B)で表示される。この表示では、図9(A)に示す当たり判別枠60aと同じ大きさの領域内に、図9(B)に示す当たり判別枠60aとその右隣に追加された1列分を合わせた領域内に入るように大きさが調整(拡大/縮小)される。この調整によって、当初は3行3列(すなわちj=k=3の場合)であった図柄表示領域がこれよりも大きな3行4列(すなわちp=3,q=4の場合)になる。そのため、図柄表示領域内に表示可能な情報量が増える。そして、最終的には乱数値に基づいて決定された移動方向と移動量とに従って当たり判別枠60aを画面上で移動させ、図9(C)に示すような状態になる。なお、第1表示態様と同様に、乱数値に基づいて決定された移動方向と移動量とに応じて、画面上に追加して表示される行列数やスクロール方向を異ならせてもよい。」(第6頁第9欄8?35行)
(ケ)【図9】(B)には、装飾図柄表示器60の図柄表示領域内に、装飾図柄の隙間を狭くした状態で所定量の装飾図柄の列を右隣に追加表示した点が記載されている。

上記(ア)?(ケ)の記載によれば、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が、図面とともに記載されている。
「パチンコ機10に設けられ当該パチンコ機10に係る装飾図柄を表示する図柄表示領域8aを有する装飾図柄表示器60と、前記図柄表示領域8aに区分された3行3列の領域において上から下に向かって装飾図柄を変動表示させて一旦停止させ、その後、図柄表示領域8a内に、装飾図柄の隙間を狭くした状態で所定量の装飾図柄の列を右隣に追加表示させ、当たり判別枠60aを右方向に所定量移動させ停止させる、CPU110、表示制御回路114、ROM102及びRAM104を備えたメイン制御部100と、よりなるパチンコ機10の装置」


第3.本願発明と引用発明との対比
(1)本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「パチンコ機10に設けられ」は、本願発明の「遊技機に取り付けられ」に相当し、以下同様に、
「装飾図柄」は、「遊技画像」及び「識別情報」に、
「図柄表示領域8a」は、「表示画面」に、
「装飾図柄表示器60」は、「表示手段」に、
「図柄表示領域8aに区分された3行3列の領域において」は、「表示画面上に設定された複数列に対応させて」に、
「一旦停止」は、「仮停止」に、
「停止させる」は、「本停止させる」に、
「CPU110、表示制御回路114、ROM102及びRAM104を備えたメイン制御部100」は、「表示制御手段」に、それぞれ相当する。

(2)引用発明における、装飾図柄表示器60(表示手段)とメイン制御部100(表示制御手段)とよりなる「パチンコ機10の装置」は、本願発明の、表示手段と表示制御手段とを具備した「遊技機表示制御装置」に対応する。

(3)引用発明は、メイン制御部100(表示制御手段)によって、装飾図柄(識別情報)を、「上から下に向かって」変動表示させて一旦停止(仮停止)させ、その後、所定量の装飾図柄の列を「右隣に追加表示」させ、「当たり判別枠60aを右方向に所定量移動」させ停止させる(本停止させる)ものである。
ここで、引用発明における、装飾図柄を一旦停止させるまでの変動表示と、一旦停止させた後の当たり判別枠60aを停止させるまでの表示とは、それぞれ、本願発明における、表示制御手段により行われる「基本変動」と、「基本変動」の後に表示制御手段により実行される「後続変動」とに対応する。
そして、当たり判別に係る装飾図柄は、当たり判別枠60aに相対して、見かけ上、「予め設定された配列で変動」しており、また、その見かけ上の変動方向(当たり判別枠60aの移動方向である右方向とは反対の方向)は、前記「基本変動」時の列である上から下に向かう方向とは、「交差方向」にあると言うことができる。
そうすると、引用発明は、表示制御手段によって、識別情報を変動表示させた後に仮停止させる基本変動を行わせ、その後、基本変動時の列と交差方向に、予め設定された配列で識別情報を変動して見えるように表示して本停止させる後続変動を実行するものである点で、本願発明と共通する。

(4)引用発明は、装飾図柄(識別情報)を変動表示させて一旦停止(仮停止)させ、その後、図柄表示領域8a(表示画面)内に、装飾図柄の「隙間を狭くした状態」で「所定量の装飾図柄の列を右隣に追加表示させ、当たり判別枠60aを右方向に所定量移動させる」ものである。
ここで、前記一旦停止させた後の表示が、本願発明の「後続変動」に対応することは、上記(3)に示したとおりである。
そして、装飾図柄の列の前記追加と、当たり判別枠60aの前記移動とが、いずれも所定量行われるものであって、単数に限るものでないことは、前記第2.(ク)に摘示した記載からみて明らかであるから、これが複数の場合には、当たり判別枠60aの前記移動が行われる途中段階において、当たり判別に係る3列(前記列と同数)の装飾図柄群が、図柄表示領域8aの中央部に表示され、その図柄表示領域8aの両端部の一方に前記装飾図柄群の前後の装飾図柄の片方が、前記両端部の他方に前記前後の装飾図柄のもう片方が表示されるようになることは、当業者において自明の事項といえる。
そうすると、引用発明は、本願発明が、「後続変動の表示を行う際、識別情報の大きさを基本変動の際よりも縮小し、かつ、識別情報の隙間を基本変動の際よりも狭くした状態で、前記列と同数の識別情報群を前記表示画面の中央部に表示させるとともに、その表示画面の両端部の一方に前記識別情報群の前後の識別情報の片方を、前記両端部の他方に前記前後の識別情報のもう片方を表示させる」ようにしていることと、「後続変動の表示を行う際、識別情報の隙間を基本変動の際よりも狭くした状態で、前記列と同数の識別情報群を前記表示画面の中央部に表示させるとともに、その表示画面の両端部の一方に前記識別情報群の前後の識別情報の片方を、前記両端部の他方に前記前後の識別情報のもう片方を表示させる」ものである点で共通する。

(5)してみると、本願発明と引用発明とは、
「遊技機に取り付けられ当該遊技機に係る遊技画像を表示する表示画面を有する表示手段と、前記表示画面上に設定された複数列に対応させて識別情報を変動表示させた後に仮停止させる基本変動を行わせ、その後、基本変動時の列と交差方向に、予め設定された配列で識別情報を変動して見えるように表示して本停止させる後続変動を実行する表示制御手段とを具備し、前記後続変動の表示を行う際、識別情報の隙間を基本変動の際よりも狭くした状態で、前記列と同数の識別情報群を前記表示画面の中央部に表示させるとともに、その表示画面の両端部の一方に前記識別情報群の前後の識別情報の片方を、前記両端部の他方に前記前後の識別情報のもう片方を表示させることを特徴とする遊技機表示制御装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点A.後続変動の表示を行う際に、本願発明は、実際に、識別情報を変動表示させているのに対し、引用発明は、当たり判別枠を右方向に所定量移動させて、当たり判別枠に相対して、変動して見えるように表示させている点。
相違点B.本願発明は、後続変動の表示を行う際に、「識別情報の大きさを基本変動の際よりも縮小し」ているのに対し、引用発明は、前記構成を備えていない点。


第4.判断
(1)相違点Aの検討
遊技機の表示画面上で、実際に識別情報を変動表示することは一般的であり、引用発明の基本変動においても同様の変動表示が行われるものであるが、引用発明の後続変動において、当たり判別枠と識別情報のどちらを実際に移動させるかは、表示演出上の設計事項に過ぎず、当たり判別枠を右方向に所定量移動させて、当たり判別枠に相対して、変動して見えるように表示される識別情報を、所定の段階(当たり判別枠が表示画面の中央部にある段階)で、実際に変動表示させるようにすることは、当業者であれば想到容易である。

(2)相違点Bの検討
遊技機の表示画面のスペース上の制約から、演出情報の表示量を増やす際に、必要に応じて、識別情報を縮小表示することは、例えば、特開2000-185139号公報(段落【0002】、【0011】等)に記載されたもののように、従来周知の技術事項(以下、「周知技術」という。)であるから、引用発明において、後続変動の際に表示画面に列が追加されることに伴う識別情報の表示に、前記周知技術を適用して、相違点Bに係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば想到容易である。

(3)本願発明の作用効果の検討
本願発明の作用効果は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に予測できるものである。


第5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載の発明(引用発明)及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-24 
結審通知日 2008-01-29 
審決日 2008-02-12 
出願番号 特願2000-326531(P2000-326531)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 保  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 小林 俊久
太田 恒明
発明の名称 遊技機表示制御方法、遊技機表示制御装置、該遊技機表示制御装置を備えた遊技機および遊技機表示制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体  
代理人 小谷 悦司  
代理人 伊藤 孝夫  

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