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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61J
管理番号 1175267
審判番号 不服2005-13035  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-07 
確定日 2008-03-27 
事件の表示 平成11年特許願第175325号「薬剤分包装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月 9日出願公開、特開2001- 508号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年6月22日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年7月7日付けの手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「薬包帯の各薬包に異なる色彩の表示部を形成するための着色部を備えた複数の着色手段と、該各着色手段の着色部を薬包帯に接離可能とする駆動手段と、服用時期に対して前記各着色手段を関連付ける手段とを備え、処方データに含まれる服用時期に基づいて、前記駆動手段を駆動することにより、関連付けた着色手段を該当する薬包に当接させて表示部を形成させるようにしたことを特徴とする薬剤分包装置。」

2.引用刊行物
これに対して、当審における、平成19年9月12日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-19478号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 服用時を同じにする異種又は同種の薬剤を一つの薬包に封入して連設するとともに、これに対応して服用時を色別に分類指定した色線を、この連設した複数の薬包の縦シール部に沿って施し、さらにこの服用時を表示し、かつ前記色線と同色の記号を表示した表示シールを設け、該シールを連設した薬包の一部に貼着したことを特徴とする薬包。
【請求項2】 服用時を表示する色線に、朝は橙色、昼は緑色、夕は青色、ねる前は赤色としたことを特徴とする請求項1に記載の薬包。」(特許請求の範囲)
(イ)「【発明が解決しようとする課題】錠剤やカプセルなどからなる複数種の薬剤が患者に支給された場合において、たとえば薬Aは朝,昼,夕、薬Bは朝,昼,夕、薬Cは朝,夕、薬Dは朝とねる前にそれぞれ1個宛服用するように処方されて、その旨、薬袋に表示され、かつ説明を受けたとしても、これを適確に識別して服用するためには、相当な注意力が要求される。特に患者が高齢者の場合には、誤って服用したり、服用しなかったりすることは避けられず、何等かの工夫が必要となっている。本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、前記問題点を解消し、一包化した薬包を提供することを目的とする。」(段落【0003】)
(ウ)「【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。図1において、1,2,3,4は透明のシートで作成した薬包を連設した連続薬包である。この連続薬包1は、縦シール部11と単一の各薬包12を、それぞれ区分して密封する横シール部13とからなり、横シール部13の端部に切離しを容易にするための切り込み14をそれぞれ設けてある。15は縦シール部11に沿って設けた色線で、たとえば橙色からなる。連続薬包2,3,4も同様に構成してあり、それぞれ縦シール部21,31,41と横シール部23,33,43と色線25,35,45とを備えている。そして色線は、たとえば色線25は緑色、色線35は青、色線45は赤のように構成してある。また16は表示シールで、連続薬包1の端部の薬包12上に貼付し、たとえば「朝」という文字を緑色で表示してある。26,36,46も同様な表示シールで各連続薬包2?4の同じ位置に貼布してあり、たとえば表示シール26は緑色で「昼」、表示シール36は青色で「夕」、表示シール46は赤色で「ねる前」の表示がしてある。すなわち、各連続薬包の各色線と各表示シールの色は同一としてある。」(段落【0005】)
(エ)「いま、調剤された薬が、たとえば次のように処方されていたとする。即ち、薬剤A,B,C,Dを、服用する時に応じて、下記のように指定したとする。
【表1】・・・
前記図1に示す状態に、前記薬剤の種類を封入するため、次の要領で処理する。まず、調剤薬局で薬を分包する。これには慣用の分包機を用いる。たとえば、約12cm幅に巻かれたロール状の透明シールの一端をロールの間に導入し、それを縦方向に2つ折りにしながら、先端を横方向に熱シールして横シール部13を作り、そこで分包すべき薬剤を投入し、縦方向の開放されている部分を熱シールに縦シール部11を作り、更に横シール部13を作り、単一の薬包を形成する。このようにして、次々と同様な操作を繰返して連続薬包を形成する。この場合、前記表1において、まず服用時が朝の場合の薬剤A,B,C,Dの分包の一単位として、図1の薬包12のなかに収容し、この薬包12を連続して設けた連続薬包1を作る。分包機より連続的に送り出される連続薬包1に対し、送出部分に設けた着色装置によって、この場合はオレンジ色の着色料を付着させ、色線15を形成する。また、表示シール16は貼着装置によって連続薬包1の端末の薬包12上に貼着する。なお、前記色線15と表示シール16の貼着は、手動によっておこなってもよい。同じ要領で服用時が昼の場合の薬剤A,Bを分色の一単位として薬包22のなかに収容し、このような連続薬包2を作る。そして色線25と表示シール26を設ける。服用時が夕、ねる前の場合についても同じ要領で色線と表示シールを設けた連続薬包3及び4を作成する。」(段落【0006】)
(オ)「本発明に係る薬包は以上のように構成してあるので、服用時を色で判断して服用すればよい。よって、本発明の薬包を用いることによって、服用すべき薬を、服用すべき時に処方通りに間違いなく分別し、服用できる。特に老人の場合には、薬包に記入されている内容を読むだけでも困難をともなうが、色を覚えておくだけで極めて簡単に服用すべき複数の薬を、適正な服用時に必要な数量だけ服用することができる。即ち処方通りに服用できる。また、服用時の色別のみならず、同色で服用時を表示したシールを薬包の一部に貼布してあるため、仮に色別を忘却した場合にも、誤って服用することがなく、二重のチェックが施されている。」(段落【0007】)
(カ)「【発明の効果】本発明に係る薬包によれば、服用時が、また服用時に服用すべき多種類の薬が、間違いなく確実に判別でき服用できる。」(段落【0008】)
(キ)図1には、連続薬包に色線を設けた点が図示されている。
また、(エ)の記載より、分包器と着色装置とで連続薬包形成装置を構成している。さらに、(エ)の記載より、服用時は処方データに含まれるものであり、服用時と着色料は関連付けられているから、服用時と着色料を関連付ける手段を備えているといえる。
したがって、引用刊行物1には、
「分包器と、連続薬包の各薬包に異なる色彩を形成するための複数の着色料を設けた着色装置と、服用時と着色料を関連付ける手段とを備え、処方データに含まれる服用時に基づいて、関連付けた着色料により該当する薬包に色線を形成させるようにした連続薬包形成装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

また、当審における、平成19年9月12日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平04-49068号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ク)「一方、第19図に示す薬袋の場合は、シール方向が搬送方向(イ)に平行になり、このまま印字装置に送り込まれると、その表面に横書きされる文字の配列方向とプリンタヘッドの移動方向(ロ)が直角になる。このために、文字情報をプリントするためには、プリンタヘッドで打ち出す文字の配列を編集しなおす必要があり、その打ち出し作業に長い時間がかかる不具合がある。特に、薬袋への文字のプリントを各行によって異なる色で印字するような場合は、プリンタヘッドを1文字分だけ移動させるごとに着色用のリボンを移動させたり、着色液を交換する必要があるため、作業に著しい時間がかかる欠点がある。」(第2頁左下欄第16行?同頁右下欄第8行)

3.対比及び判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能又は作用からみて、後者における「連続薬袋作成装置」は前者における「薬剤分包装置」に相当し、以下同様に、「連続薬袋」は「薬包帯」に、「着色料」は「着色部」又は「着色手段」に、「着色装置」は「着色手段」に、「色線」は「色彩の表示部」又は「表示部」に、「服用時」は「服用時期」に、それぞれ相当すると認められる。
また、後者の「連続薬包の各薬包に異なる色彩を形成するための複数の着色料を設けた着色装置」と前者の「薬包帯の各薬包に異なる色彩の表示部を形成するための着色部を備えた複数の着色手段」とは、「薬包帯の各薬包に異なる色彩の表示部を形成するための着色部を備えた着色手段」で共通するものである。
また、後者の「服用時と着色料を関連付ける手段とを備え、処方データに含まれる服用時に基づいて、関連付けた着色料により該当する薬包に色線を形成させるようにした」と、前者の「服用時期に対して前記各着色手段を関連付ける手段とを備え、処方データに含まれる服用時期に基づいて、関連付けた着色手段により該当する薬包に表示部を形成させるようにした」とは、「服用時期に対して前記着色手段を関連付ける手段とを備え、処方データに含まれる服用時期に基づいて、関連付けた着色手段により該当する薬包に表示部を形成させるようにした」という概念で共通する。
したがって、両者は、
「薬包帯の各薬包に異なる色彩の表示部を形成するための着色部を備えた着色手段と、服用時期に対して前記各着色手段を関連付ける手段とを備え、処方データに含まれる服用時期に基づいて、関連付けた着色手段により該当する薬包に表示部を形成させるようにした薬剤分包装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点:本願発明においては、着色手段が複数であり、各着色手段の着色部を薬包帯に接離可能とする駆動手段と、前記駆動手段を駆動することにより、関連付けた着色手段を該当する薬包に当接させて表示部を形成させるのに対して、引用発明においては、着色装置がそのような構成を有するどうか不明である点。

そこで、上記相違点について検討する。
引用刊行物2には、異なる色を印字する場合、着色用のリボンを移動させる着色手段が記載されている。異なる色を印字するためには着色手段が複数設けられていることは自明であり、また、そのようなインクリボンを用いるものの場合、印字するには印字対象物にインクリボンを当接するものであるので、着色手段の着色用のリボンを印字対象物に接離可能とする駆動手段が設けられているは自明であるから、引用刊行物2に記載された着色手段を引用発明の着色手段に代えて適用して上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
また、本願発明の効果は、引用発明及び引用刊行物2に記載された発明から当業者が予測し得る範囲内のものというべきであって,格別のものということはできない。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び引用刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-28 
結審通知日 2008-01-29 
審決日 2008-02-12 
出願番号 特願平11-175325
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 門前 浩一  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 蓮井 雅之
豊永 茂弘
発明の名称 薬剤分包装置  
代理人 青山 葆  
代理人 前田 厚司  
代理人 古川 泰通  

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