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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B23B
管理番号 1175274
審判番号 不服2005-19199  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-05 
確定日 2008-03-27 
事件の表示 特願2002- 30424「ホールカッター」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月19日出願公開、特開2003-231013〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年2月7日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は、当審に提出された平成19年4月27日付けの手続補正書及び出願当初の図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明は、次のとおりである。(以下「本願発明」という。)
「円筒状のコア体の下端開口周縁部に、コア体の内外両周面から側面が突出するチップからなる複数個の切削刃が設けられ、木材、樹脂系材料又は金属板から成るそれぞれの被穿孔物に対し環状溝を削成して刳り抜き状に穴あけをすることができるホールカッターにおいて、
コア体の下部外周面に内向きに傾斜する傾斜面を形成して、コア体の開口周縁を尖端状に形成し、該傾斜面のコア体周面に対する傾斜角を30?45度に設定し、切削刃外側面のコア体外周面からの突出量を、切削刃内側面のコア体内周面からの突出量に比べて大きくし、コア体外周面と切削刃の外側面との間に形成されるクリアランス量を、切削刃の掬い刃幅の1/2?1/3に設定した構成とし、被穿孔物である木材に対する穴あけ時に発生する比較的大きな切り屑を、その発生直後に傾斜面と環状溝の底部とで形成される拡大隙間に入り込ませ、しかる後にコア体外周面と環状溝外壁との間に通してコア体外に排出することができ、前記被穿孔物である比較的大きな切削抵抗が掛かる金属板に対して穴あけすることができることを特徴とするホールカッター。」

2 引用刊行物記載の発明
これに対して、当審での平成19年3月23日付けの拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である昭和55年1月18日に頒布された実公昭55-1775号公報 (以下「引用例1」という。)、同じく本願の出願の日前である昭和49年8月16日に頒布された実公昭49-30391号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の発明が記載されている。
2-1 引用例1の記載事項
(1)実用新案登録請求の範囲
「柄部に続きまた下方部分に鋸歯状の切削刃部を多数有し、かつ切削刃部の縦縁面に超硬質合金の刃版を主体の外側と内側に夫々張出して設けた主体と主体内の中心部に下向のセンタードリルを有するホールソーにおいて、主体1の鋸歯状刃部2の傾斜縁面を主体1の外側上方に向って傾斜した傾斜面4にしたホールソー。」
(2)明細書の第1欄第26行-第37行
「本案は被穿孔物に大口径の孔を穿つ際に用いるホールソーが穿孔時に発生する切くずを鋸歯状の切削刃部間の谷に詰らせないようにした考案で、その詳細を例示の図面により説明すると1は逆カツプ状の主体で下方部分に鋸歯状の切削刃部2を多数有し、鋸歯状の切削刃部2は縦縁面に超硬質合金の刃版3をその端部分が主体1の外側と内側に夫々張出すように設け、かつ鋸歯状の切削刃部2の傾斜縁面を主体1の外側上方に向つて傾斜する傾斜面4にしたものであり、さらに、主体1内の中心部にはセンタードリル5を設け、また主体1上の中心部に柄部を設けて構成したものである。」
(3)明細書の第2欄第28行-第3欄第2行
「鋸歯状の切削刃部2の傾斜縁面が従来品のような水平面ではなく主体1の外側上方に向つて傾斜する傾斜面4となつているものであるから穿孔作業中刃版3の被切物の切削によつて生じた切くずが切削刃部2と2の間の谷6に集中しかゝると、主体1の回転による遠心力および後続して発生する切くずに最初の切くずが押されて傾斜面4を滑り主体1外方に放出されて谷6に切くずの残留を許さないものであつて、この結果谷6が常に空間を維持するものであるから谷6の目詰りによる穿孔不良は解消され常に良好な能率のよい穿孔をするものである。」
(4)明細書の第4欄第1行-第5行
「被穿孔物が金属や、石、コンクリート等の硬いものでは特に間隙を設けておくことがより必要で不幸にして両者が接触をすると簡単に主体は磨滅し破損をするものである。」
(5)ここで、主体1は、逆カップ状であり、図面の第1図及び第2図を参照すると、ほぼ円筒状になっているものである。また、刃版3は、主体1の下端開口周縁部に設けられている。
また、摘記事項(4)より、当該ホールソーは金属も穿孔するものであって、被穿孔物である比較的大きな切削抵抗が掛かる金属板に対しても穴あけすることができるものであることは明らかである。
以上(1)?(4)の記載、及び(5)の認定事項から、引用例1には、「円筒状の主体1の下端開口周縁部に、主体1の外側と内側から夫々張出すように超硬質合金の複数個の刃版3が設けられ、金属や石、コンクリート等の硬いものの被穿孔物に対し大口径の孔を穿つ際に用いるホールソーにおいて、
主体1の下方部分の鋸状刃部2に外側上方に向って傾斜した傾斜面4を形成し、被穿孔物である比較的大きな切削抵抗が掛かる金属板に対して穴あけすることができるホールソー。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
2-2 引用例2の記載事項
(1)実用新案登録請求の範囲
「円胴本体1の下端部に、傾斜面部2を構成し該傾斜面部2に切削刃3、3・・・・・・を植設し、円胴本体1の中心部に、センタードリル4及び柄5を植設せしめて成る鋸状穿孔刃物。」
(2)明細書の第2欄第2行-第6行
「以下実施の一例を示す図面に就いて説明すると円胴本体1の下端部に、傾斜面図2を構成し、該傾斜面部2に切削刃3、3・・・・・・を植設し、円胴本体1の中心部に、センタードリル4及び柄5を植設せしめて成る鋸状穿孔刃物である。」
(3)ここで、図面の第1図及び第2図を参照すると、傾斜面部2は、円胴本体1の下部外周面に内向きに傾斜するように設けられ、円胴本体1の開口周縁は尖端状に形成されていることが見てとれる。
上記(1)ないし(2)の摘記事項、及び(3)の認定事項から、引用例2には、次の発明が記載されていると認める。
「円胴本体1の下部外周面に、内向きに傾斜する傾斜面部2を形成し、円胴本体1の開口周縁を尖端状に形成した鋸状穿孔刃物。」(以下「引用発明2」という。)

3 対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「主体1」、「超硬質合金の刃版3」、「ホールソー」は、それぞれ、本願発明の「コア体」、「チップからなる切削刃」、「ホールカッター」に相当する。
また、引用発明1の「主体1の外側と内側から夫々張出す刃版3」は、主体1の内外両周面から刃版3の側面が突出することであるので、本願発明の「コア体の内外両周面から側面が突出する切削刃」に相当する。
さらに、引用発明1の刃版3は、それにより環状溝を作成して刳り抜き状に穴あけすることにより大口径の孔を穿つものであるので、引用発明1の「被穿孔物に対し大口径の孔を穿つ」ことは、本願発明の「被穿孔物に対し環状溝を削成して刳り抜き状に穴あけをする」ことに相当する。
以上の点から、両者は、次の「ホールカッター」で一致し、また、以下の相違点を有している。
<一致点>
「円筒状のコア体の下端開口周縁部に、コア体の内外両周面から側面が突出するチップからなる複数個の切削刃が設けられ、被穿孔物に対し環状溝を削成して刳り抜き状に穴あけをすることができるホールカッターにおいて、
コア体の下部に傾斜面を形成し、被穿孔物である比較的大きな切削抵抗が掛かる金属板に対して穴あけすることができるホールカッター。」
<相違点1>
ホールカッターで穴あけする被穿孔物に関し、本願発明では「木材、樹脂系材料又は金属板から成るそれぞれの被穿孔物」として種々の材料の穴あけに利用可能としているのに対し、引用発明1では「金属や石、コンクリート等の硬い被穿孔物」としている点。
<相違点2>
コア体の下部に設けられる傾斜面に関し、本願発明では、「コア体の下部外周面に内向きに傾斜する傾斜面を形成してコア体の開口周縁を尖端状に形成し、該傾斜面のコア体周面に対する傾斜角を30?45度に設定」しているのに対し、引用発明1では「主体1の下方部分の鋸状刃部2に外側上方に向って傾斜した傾斜面4を形成」しているものであり、また、傾斜面4の主体1周面に対する傾斜角については不明な点。
<相違点3>
切削刃に関し、本願発明では、「切削刃外側面のコア体外周面からの突出量を、切削刃内側面のコア体内周面からの突出量に比べて大きくし、コア体外周面と切削刃の外側面との間に形成されるクリアランス量を、切削刃の掬い刃幅の1/2?1/3に設定した構成とし」ているのに対し、引用発明1では、刃版3の主体1の内側と外側に張出す寸法について不明であるし、また、外側に張出す寸法が、刃版3の掬い刃幅のどのくらいになっているのかについても不明である点。
<相違点4>
本願発明では、「被穿孔物である木材に対する穴あけ時に発生する比較的大きな切り屑を、その発生直後に傾斜面と環状溝の底部とで形成される拡大隙間に入り込ませ、しかる後にコア体外周面と環状溝外壁との間に通してコア体外に排出することができ」るようにしているのに対し、引用発明1では、木材を切削するものではないことから、木材に対する穴あけ時に発生する比較的大きな切り屑の排出経路について不明な点。

4 当審の判断
上記相違点について検討する。
(1)<相違点1>について
1つのホールカッターを木材や樹脂系材料又は金属板から成る種々の材料の被穿孔物に用いることは、例えば、特開平4-183508号公報(第1頁左下欄第19行ないし右下欄第1行には、「本発明は、鋼板、アルミ板、合板、木材などの板材に口径の大きい孔をあけるのに使用する穿孔カッターに関するものである。」と記載されている。)や特開2000-107919号公報(段落【0008】?【0011】には、「【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のような従来の孔開け工具100にあっては、被加工物が建造物の木製やモルタル製のみからなる壁部である場合には、壁部の穿設作業に良好に適用することが可能であるが、壁部に金網や鉄板等の金属材料が内装されている場合には、切削部133が本来的に金属切削用の仕様になっていないことから、金属材料を切削することができず、結局壁部に孔を開けることができなくなるという問題点を有していた。・・・
そこで、金属材料専用のホールソー130と非金属材料専用のホールソー130との2種類のホールソー130を予め用意し、都度交換使用することが行われるが、壁部への穿設作業の途中で工具装着部110に対してホールソーの交換を行わなければならず、非常に面倒であり、作業効率が大幅に低下する。
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、金属材料が混在している建造物の壁部等の被加工物に対し、ホールソーを交換することなく対応することが可能であり、これによって作業効率の低下をきたさない状態で被加工物に穿設作業を施すことができるホールソーおよび孔開け工具を提供することを目的としている。」と記載されている。)に記載されているように、従来周知の課題であることから、引用発明1においても、当該ホールソーを木材や樹脂系材料又は金属板から成る種々の材料の被穿孔物に用いようと当業者が試みることは、ごく自然なことであると言わざるを得ない。
(2)<相違点2>について
引用発明2において、「円胴本体1」、「傾斜面部2」は、それぞれ、本願発明の「コア体」、「傾斜面」に相当する。そうすると、引用発明2は、「コア体の下部外周面に内向きに傾斜する傾斜面を形成してコア体の開口周縁を尖端状に形成した」発明である。そして、引用発明1も、引用発明2も、ともに、刳り抜き状に穴あけするホールカッターに関するものであることからすれば、引用発明2の円胴本体1の下端に設けられた傾斜面部2及び尖端状形状を引用発明1に適用することは、当業者が容易になし得たものである。
また、傾斜面のコア体周面に対する傾斜角を30?45度に限定した点については、その限定した値に対する臨界的な意義が存在しないことから、当該傾斜角の限定については、当業者が必要に応じて適宜選定する、単なる設計的事項に過ぎない。
(3)<相違点3>について
コア体の下端部に内外周に突出する切削刃を有するホールカッターにおいて、切削刃外周面のコア体外周面からの突出量を、切削刃内側面からの突出量に比べて大きくすることは実願昭56-66330号(実開昭57-177613号)のマイクロフィルム(明細書の第3頁第17-19行には、外側の段差9を内側の段差10より大きくする点について記載されている。)、実願昭48-139712号(実開昭50-82789号)のマイクロフィルム(図面の第2図を参照すると、内側刃3Aよりも外側刃3Bの方が、突出量が大きくなっている。)、実願昭60-55192号(実開昭61-172719号)のマイクロフィルム(図面の第1図及び第2図を参照すると、外側の突出量fは内側の突出量cよりも明らかに大きくなっている。)に記載されているように周知の事項であることから、引用発明1においても、刃版3の外側に張出す寸法を内側に張出す寸法よりも大きくすることは、当業者が容易になし得たものである。
また、コア体外周面と切削刃の外側面との間に形成されるクリアランス量を、切削刃の掬い刃幅の1/2?1/3に限定した点については、クリアランス量の限定した範囲による臨界的な意義が認められないことから、クリアランス量をどのくらいとするかは、当業者が必要に応じて適宜選定する、単なる設計的事項である。
(4)<相違点4>について
ホールカッターにおいて切り屑をコア体の外周面と環状溝との間から排出することは、引用例1の摘記事項(3)にも記載されているように、当然の作用であることから、引用発明1を木材の穴あけに適用すれば、被穿孔物である木材の穴あけ時に発生する比較的大きな切り屑であっても、その発生直後に傾斜面4と環状溝の底部とで形成される拡大隙間に入り込ませ、しかる後に主体1の外側と環状溝外壁との間に通して主体1外に排出することになるものである。したがって、相違点4については、引用発明1を木材の穴あけに適用すれば当然奏する作用に過ぎない。
(5)本願発明の作用効果について
本願発明が奏する作用効果は、引用発明1ないし引用発明2から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。

5 むすび
したがって、本願発明は、引用発明1、引用発明2、及び上記周知の課題及び事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-28 
結審通知日 2008-01-29 
審決日 2008-02-12 
出願番号 特願2002-30424(P2002-30424)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B23B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今関 雅子  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 加藤 昌人
菅澤 洋二
発明の名称 ホールカッター  
代理人 角田 嘉宏  
代理人 古川 安航  

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