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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B42D
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 B42D
管理番号 1175318
審判番号 不服2005-24011  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-14 
確定日 2008-03-28 
事件の表示 平成 8年特許願第131039号「PCカード」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年11月11日出願公開、特開平 9-290588〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年4月25日に出願したものであって、平成17年11月10日付けで同年10月21日付けの明細書についての手続補正が補正却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月14日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成18年1月11日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成18年1月11日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年1月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、【請求項1】は、
「フレーム、シールドケースを有するPCカードであって、前記フレーム及びシールドケースのうち少なくともどちらか一方が、表面に酸化皮膜を有する軟磁性粉末と有機結合材からなり、10MHz以上の周波数領域で虚部透磁率の周波数特性に複数のピークを有する複合磁性体で形成されていることを特徴とするPCカード。」
と補正された。(下線部が補正された個所である。)

(2)新規事項についての検討
複合磁性体の「周波数」と「透磁率のピーク」の関係について、本願当初明細書及び図面(以下、図面も含めて「当初明細書」という。)には、明示的な記載はなく、関連する記載は、以下の記載a、bのみである。
a.「 【0024】
【実施例】
以下に、本発明のPCカードの実施例を説明する。複合磁性体は、表面に酸化皮膜を有する軟磁性体として、粒径が32?60μmで、アスペクト比が5以上で、アルゴン雰囲気中で、650℃×2時間で、酸化処理を施したFe-Al-Si合金の微粉末を、有機結合材として、アクリロニトル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)を用いて加熱・混練し、加圧成形して、製作した。軟磁性体粉末は、酸素分圧20%の窒素-酸素混合ガス雰囲気中で気相酸化し、表面に酸化皮膜が形成されている。混合割合は、軟磁性体粉末が70wt%、有機結合材が30wt%である。この複合磁性体のμ-f特性を図3に示す。」
b.【図3】


請求人は、本件補正について平成18年1月11日付け審判請求書についての手続補正書で以下のように主張している。
イ.「図3より、実施例の複合磁性体は10MHz以上の周波数領域で虚部透磁率(μb)が複数のピークを持っております。図3においては、この虚部透磁率の周波数特性は、一見、平坦である様にも見えますが、ある程度の大きさを持って平坦に見える特性を示すとすれば、ピークが複数あって重畳された結果であることは、透磁率の挙動を知っている当業者であれば当然にわかる事柄であります。また、図3のμb:虚部透磁率につきましては、一般に一つの材料についてμーf特性を示した図が示され、そこに2つの曲線があった場合、当業者であればそれが実部並びに虚部透磁率特性を各々表していることは説明が無くとも理解される事柄であり、いずれの曲線がそれに相当するかというのも当業者間の常識によって十二分に判断できる程度の事柄であります。」(第2頁第13?22行)
ロ.「具体的な軟磁性体粉末としては実施例にFe-Al-Si合金粉末が記載されており、その複合軟磁性体が、虚部透磁率の周波数特性が複数のピークを持つものかどうかは実際に測定することにより、容易にわかることですから、本願発明は当業者が実施できる程度に明細書中に開示されております。」(同頁第28?31行)

本願当初明細書中に記載された複合磁性体の具体例は、上記a.に記載のものが唯一の具体例であり、上記a.の記載から、上記b.【図3】記載のμ-f特性は、上記a.記載の特定の複合磁性体の測定値であることは明らかであり、請求人の上記主張もそれを裏付けている。複合磁性体の具体例が上記a.に記載の唯一のものであるから、上記b.【図3】記載のμ-f特性が、請求人の主張のように虚部透磁率の周波数特性に複数のピークを有するとしても、そのピークの個数は、特定の個数であって、しかも特定の周波数にピークを有するものしか記載されていないものといわざるを得ない。
一方、補正後の請求項1の記載によると、虚部透磁率の周波数特性のピークの個数は、複数であればどのようなものも含まれ、更に、虚部透磁率の周波数特性のピークは、10MHz以上の周波数領域であれば、どのような周波数のものも含まれることになる。
そうすると、請求項1についての補正は、出願当初の明細書に記載された事項の範囲内においてしたものとはいえず、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するもので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願について
(1)本願明細書
平成18年1月11日付け手続補正は上記のとおり補正却下され、平成17年10月21日付け手続補正は原審で補正却下されたので、本願明細書は、平成17年7月15日付け手続補正で補正された後のもので、その特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである。

「フレーム、シールドケースを有するPCカードであって、前記フレーム及びシールドケースのうち少なくともどちらか一方が、表面に酸化皮膜を有する軟磁性粉末と有機結合材からなり、高周波領域で虚部透磁率特性に複数のピークを有する複合磁性体で形成されていることを特徴とするPCカード。」(下線部が補正された個所である。)

(2)原審の拒絶理由
平成17年8月8日付けでした原審の拒絶理由の内容は以下の通りである。
「平成17年7月15日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


補正された請求項1に記載の「高周波領域で虚部透磁率特性に複数のピークを有する複合磁性体」は、出願当初明細書及び図面に開示されたものではない。
即ち、補正の根拠とする図3において、そもそもμbが虚部透磁率特性であることは明記されておらず、仮にμbが虚部透磁率特性であるとしても、高周波領域として具体的にいかなる周波数領域であるのか、また、図3からは、「高周波領域」において虚部透磁率特性が平坦であるとも解することができるので、本願発明の「高周波領域で虚部透磁率特性に複数のピークを有する複合磁性体」が明確に定義の上開示されているとは認められず、加えて、図3は【0024】に記載の複合磁性体についての特性であって、他の「高周波領域で虚部透磁率特性に複数のピークを有する複合磁性体」としてどのような複合磁性体を用いることができ、また、その場合にも同様の効果を奏することまでも開示されているとも認められない。」

(3)当審の判断
複合磁性体の「周波数」と「透磁率のピーク」の関係について、本願当初明細書における関連する記載は、上記2.(2)で摘記したa.及びb.の記載のみである。
そうすると、上記2.(2)で検討したのと同様に、本願当初明細書のb.【図3】記載のμ-f特性が、虚部透磁率特性に複数のピークを有するとしても、そのピークの個数は、特定の個数であって、しかも特定の周波数にピークを有するものしか記載されていないものといわざるを得ない。
一方、平成17年7月15日付け手続補正によって補正された請求項1の記載によると、虚部透磁率特性のピークの個数は、複数であればどのようなものも含まれ、更に、虚部透磁率特性のピークは、高周波領域であれば、どのような周波数のものも含まれることになる。
そうすると、請求項1についての平成17年7月15日付け手続補正は、出願当初の明細書に記載された事項の範囲内においてしたものとはいえず、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願の平成17年7月15日付け手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-24 
結審通知日 2008-01-30 
審決日 2008-02-13 
出願番号 特願平8-131039
審決分類 P 1 8・ 55- Z (B42D)
P 1 8・ 561- Z (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武田 悟  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 酒井 進
名取 乾治
発明の名称 PCカード  

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