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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A01G
管理番号 1175456
審判番号 無効2007-800156  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-08-03 
確定日 2008-03-31 
事件の表示 上記当事者間の特許第3945421号発明「刈込機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 本件の経緯の概要

本件特許第3945421号についての手続きの経緯の概要は以下のとおりである。

平成15年 2月28日 特許出願
平成19年 4月20日 特許権設定登録
平成19年 8月 3日 本件無効審判請求
平成19年10月18日 答弁書提出
平成19年12月18日 口頭審理

なお、口頭審理に当り、請求人、被請求人とも各々口頭審理陳述要領書を同日付で提出した。

第2 本件発明

本件特許第3945421号の請求項1,2に係る発明は、平成19年7月18日に発行された特許公報の特許請求の範囲の請求項1,2に各々記載されたとおりの次のものである。

「【請求項1】
ハウジングに形成された主ハンドルと、前記ハウジングに着脱可能及び回動可能に取り付けたループ状の補助ハンドルと、ハウジングの前部に装着され、操作者を保護するプロテクタとを有する刈込機において、
前記補助ハンドルのハウジングへの取付部に設けられた凸部と、ハウジングに設けられた補助ハンドル取付用取付穴とを備え、取付穴と凸部との当接によって、補助ハンドルがプロテクタに接触するのを防止するように補助ハンドルの回動範囲を規制したことを特徴とする刈込機。
【請求項2】
前記ハウジングの補助ハンドル取付用取付穴は一対の円弧形状部分を有し、円弧形状部分の周方向に沿う幅を補助ハンドルの凸部の周方向に沿う幅より大きくしたことを特徴とする請求項1記載の刈込機。」(以下、請求項1,2に係る発明をそれぞれ「本件発明1」、「本件発明2」という。)

第3 請求人の請求の趣旨及び理由の概要

請求人(リョービ株式会社)は、「特許第3945421号の請求項1及び請求項2に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として下記の甲第1号証ないし甲第6号証を提示し、以下の理由により、本件発明に係る特許は、無効にすべきものであると主張している。

無効理由1(進歩性の欠如):
本件発明1及び2は、その出願前に頒布された刊行物である甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とされるべきである。

無効理由2(進歩性の欠如):
本件発明1及び2は、その出願前に頒布された刊行物である甲第1号証及び甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とされるべきである。

無効理由3(進歩性の欠如):
本件発明1及び2は、その出願前に頒布された刊行物である甲第1号証及び甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とされるべきである。

甲第1号証 :実願平4-34064号(実開平5-91285号)のCD-ROM
甲第2号証 :特開昭62-124881号公報
甲第3号証 :実公昭60-16278号公報
甲第4号証 :実公平2-19000号公報
甲第5号証 :実公昭31-12244号公報
甲第6号証 :実願昭62-160004号(実開平1-64373号)のマイクロフィルム

第4 被請求人の主張

被請求人(日立工機株式会社)は、答弁書を提出し、本件審判の請求は成り立たない旨主張している。

第5 無効理由についての当審の判断

1.各甲号証に記載された技術的事項
甲第1号証
本件の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証(実願平4-34064号(実開平5-91285号)のCD-ROM、以下、「刊行物1」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

(1a)「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は切断作業時に飛散した枝等から作業者を保護する刈込機用プロテクタに関するものである。」(段落【0001】)

(1b)「【0003】
【考案が解決しようとする課題】
従来の刈込機用プロテクタ14は、例えば芝草の刈込み作業を行う時、刈込機本体3を両手で保持するため刈込み高さを一定にすることが難しく、また長時間保持すると疲れ易いという問題があった。
本考案の目的は、刈込み高さを任意に調整して一定の刈込みができると共に、保持による作業者の疲れを軽減することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、プロテクタの刈込機への取付部側壁に刈込み量調整用の長孔を形成すると共にプロテクタ底部には芝草等の地面上を滑らかに移動可能な半円状の突起を形成させることにより達成される。
【0005】
【作用】
上記のように長孔と突起部を形成したプロテクタは、固着ボルトを軸にして刈込機本体とプロテクタとの嵌合部に設けた上下方向の隙間分長孔に沿って上下に移動し、また芝草等の刈込み作業時には前後左右の切断動作に半円状の突起を利用して作業者の疲れを低減する。」(段落【0003】?【0005】)

(1c)「【0006】
【実施例】
本考案の一実施例を図1?図7を用い以下説明する。本体3に内蔵した電動機の回転を往復動に変換してブレード8を往復動させることにより生垣や芝草等の刈込みを行う。本体3にはスイッチ4が内蔵され、また本体3の保持のためループ式のハンドル2がボルト5で固着されている。切断した枝の飛散から作業者を保護するため、本体3前方にプロテクタ1が固着ボルト6で装着され、該プロテクタ1には刈込み量aを任意に調整できる調整用長孔9と、芝草等が生えている地面上を滑らす半円状の突起7が形成されている。プロテクタ1は前記長孔9を利用して上下動させることによりブレード8の刈込み量aを調整することができる。
また芝草等の切断時にはプロテクタ1の底面に設けられた前記突起7が地面上を移動するため、作業者が作業中刈込機本体3を支え続ける必要がないので作業者の疲れを低減することができる。」(段落【0006】)

【図1】、【図2】からは、
(1d)「本体3は、後方に突出するとともにスイッチ4を備えたハンドルを有する。また、ループ式のハンドル2を本体3に固着するボルト5の頭部に『摘み』のような突起を有する。」点が見て取れる。

また、【図面の簡単な説明】によれば、【図8】は、「従来の刈込機の一例を示す刈込機の側面図。」であって、該【図8】、及び上記【図1】、【図2】を併せ参酌すると、該【図8】からは、
(1e)「ループ式のハンドル2は着脱が可能である。」点が見て取れる。

刊行物1発明
上記(1a)ないし(1d)の記載事項からみて、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「本体に内蔵した電動機の回転を往復動に変換してブレードを往復動させることにより生垣や芝草等の刈込みを行う刈込機であって、上記本体は後方に突出するとともにスイッチを備えたハンドルを有し、また、上記本体の保持のためループ式のハンドルがボルトで固着されており、該ループ式のハンドルは着脱が可能であり、上記ボルトは頭部に『摘み』のような突起を有し、さらに、切断した枝の飛散から作業者を保護するため、本体前方にプロテクタが固着ボルトで装着されている刈込機。」

甲第2号証
同様に、甲第2号証(特開昭62-124881号公報、以下、「刊行物2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

(2a)「(1)モータを収容した第1のケースと、電池を収容した第2のケースとからなり、第1のケースの一端の傾斜面とされた端面に、第2のケースの一端の傾斜面とされた端面がこれら端面と直交する軸のまわりに回動自在に連結されて折り曲げ自在とされている電動ドライバーにおいて、モーターに接続された端子と、電池に接続された端子との接触部を両ケースの回動中心の近傍に配設したことを特徴とする電動ドライバー。」(特許請求の範囲)

(2b)「〔技術分野〕
本発明は電動ドライバー、殊に2つのケースから構成されて直線の状態と、L字状に折れ曲がったピストル状とした状態との2つの形態をとることができるようにされている電動ドライバーに関するものである。」(1頁左下欄20行?同頁右下欄5行)

(2c)「〔発明の開示〕
・・・・(中略)・・・・
以下本発明を図示の実施例に基づいて詳述すると、一端にドライバービット3を装着するためのチャック4を備えている筒状のケース1と、このケース1の後端に接続される筒状のケース2とからなるこの電動ドライバーは、ケース1内にドライバービット3駆動用のモータ5及び減速機6を内蔵し、ケース2内に電源としての電池7を内蔵している。
そしてこれらケース1,2は、その断面形状が共に横長の楕円形となるようにされており、またケース1の後端面及びケース2の前端面は、端面と直交する軸方向から見た形状(端面と平行な面で切った断面形状)が真円となるように、軸線に対して角度αをなす傾斜面とされており、ケース2はケース1に対して前記傾斜した端面と直交する軸のまわりに回動自在となるように、ケース2の傾斜面である前端面から突出した回動係合部20が、ケース1の傾斜面である後端面に設けた軸受部10によって支持されている。
しかして第1図に示すところの両ケース1,2が直線状となっている状態から、ケース2を180度回転させたならば、ケース2はケース1に対して折れ曲がった状態となる。またケース2を回動させて直線状から折れ曲がった状態へと移行させる際、あるいは逆に移行する際に、ケース1の後端面及びケース2の前端面は常に周縁が一致した状態にあり、端面の一部が外部に露出するということがない。」(2頁左上欄15行?同頁左下欄16行)

(2d)「そしてこの電動ドライバーにおいては、リード線17にかかるねじれの負荷を小さくするために、ケース1に対するケース2の回動範囲の規制を行っている。ケース1の後端面の軸受部10内周面に、第5図に示すように半周強にわたる溝19を設けるとともに、ケース2から突出する回動係合部20の基部に、上記溝19内を摺動する突片29を設けているものである。溝19内を突片29が摺動することができる範囲内でのみ、ケース1に対してケース2を回動させることができるように、つまりは180度の回動のみができるようにしているわけである。」(3頁左上欄1?12行)

(2e)「またばね13による付勢で回動係合部20に設けられた係止溝21に係合して、第1図に示す状態及び第2図に示す状態にロックするロック釦12にかかる負荷が小さくなるからである。尚、図中11はスイッチハンドルである。」(3頁左上欄19行?同頁右上欄4行)

これら(2a)ないし(2e)の記載事項によれば、刊行物2には次のような発明(以下、「刊行物2発明」という。)が開示されているものと認められる。
「(2i)2つのケースから構成されて直線の状態と、その状態から180度回動してL字状に折れ曲がったピストル状とした状態とでロックされ、これら2つの形態をとることができるようにされている電動ドライバーであって、第1のケースの一端の傾斜面とされた端面に、第2のケースの一端の傾斜面とされた端面がこれら端面と直交する軸のまわりに回動自在に連結されて折り曲げ自在とされている。
(2ii)第1のケースの上記端面に、半周強にわたる溝を設けるとともに、第2のケースの上記端面に、上記溝内を摺動する突片を設け、溝内を突片が摺動することができる範囲内でのみ、第1のケースに対して第2のケースを回動させることができるように、第1のケースに対する第2のケースの回動範囲の規制を行っている。」

甲第4号証
同様に、甲第4号証(実公平2-19000号公報、以下、「刊行物4」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

(4a)「1 伝導軸2を回転可能に内設させた外管3の一端に刈刃4が回転可能に軸支され、前記外管3の他端に備えられると共に、前記伝導軸2を介して前記刈刃4を回転駆動しうる刈払機において、前記外管3の他端に固着されるエンジンケース1の側部を跨ぐほぼコ字形に折曲されると共に、両端部がそれぞれエンジンケース1の対峙する両側部に形成される軸受部5に軸支されてなる枠体7と、枠体7の揺動中心10から外管3の延長方向と逆方向及び外管3の延長方向にほぼ直交する方向にそれぞれ沿って形成されかつ枠体7を係止可能な係止部8,9と、前記枠体7と枠体7の揺動面内において揺動中心10に関して反対側に位置する前記エンジンケース1との間に架設される弾性手段11とを備えてなる刈払機における把手兼用スタンド。」(実用新案登録請求の範囲)

(4b)「〔産業上の利用分野〕
この考案は、把手及びスタンドの両方に使用することができる枠体を備えた刈払機における把手兼用スタンドに関するものである。」(1頁右欄6?9行)

(4c)「〔考案が解決しようとする課題〕
前記従来の刈払機用エンジンにおいては前述のようであるから、スタンドeと把手dはそれぞれ独立して形成されているため、非作業時、例えば燃料注入時、及び始動時はスタンドeを必要とするが、作業時はスタンドcは不要であるばかりでなく、作業時に刈払機を傾けた時に、スタンドeが作業者の身体に当り、作業が大変しずらい。また、スタンドeと把手dはそれぞれ別に形成されるため、それだけ重量が増大し、作業者が持つて作業をする際に作業しにくいなどの解決を要する課題を有するものである。」(1頁右欄22行?2頁左欄5行)

(4d)「〔実施例〕
以下添付図面にしたがつてこの考案を詳細に説明する。
第1図及び第2図はこの考案を施こしてなる刈払機の要部側面図及び背面図で、図中、1はこの考案の一部を構成するエンジンケースで、エンジンケース1の前端部には、パイプ状でかつ伝導軸2を回転可能に内設させた外管3の基端部が固着される。外管3の先端部には刈刃4が回転可能に軸支され、刈刃4は伝導軸2を介して回転駆動しうるエンジンの駆動軸(図示を略す)に連結される。
前記外管3の他端に固着されるエンジンケース1の対峙する側面にそれぞれ軸受部である取付穴5が形成される。取付穴5を囲む近傍には図示のように外方に膨出したボス6を形成することも可能である。そして一方の取付穴5から他方の取付穴5に至る側部を跨ぐほぼコ字形に折曲される枠体7が、両端部のほぼ対峙する方向に折曲される取付部7aを回転可能に取付穴5に挿入することによつて、揺動可能にエンジンケース1に取り付けられる。
・・・・(中略)・・・・
第3図に示すように、前記枠体7の揺動中心10から外管3の延長方向と逆方向及び外管3の延長方向にほぼ直交する下方にそれぞれ形成される係止部8,9が、凸状の段部又は溝状に形成される(図面では係止部が凸状の段部とされる)。枠体7のピン7bと、枠体7のほぼ揺動面内において枠体7の揺動中心10に関して反対側に位置するエンジンケース1のピン1aとの間に、弾性手段であるコイルスプリング11が架設される。
なお第5図に示すように、枠体7を上方(矢印C方向)に揺動可能にすることにより、枠体7によつて損傷しやすいプラグ14を防御することができるだけでなく、持ち運びに便利な手提げとして枠体7を使用することができる構成とすることも可能である。この場合係止部9が枠体7の揺動中心10から上方に沿つて形成される。
第3図及び第6図に示すように、刈払い作業をしないときには、前記枠体7をエンジンスタンドとして使用することができ、すなわち、枠体7を持つてスプリング11に抗して矢印A方向に揺動し、死点13を越えて枠体7の基部が係止部9に当接されるまで回動する。
この際、スプリング11は死点13を越えた位置から枠体7を係止部9に当接する方向(矢印A方向)に押圧し、枠体7が自然に元の状態に揺動してしまうことを防止している。
そして刈払い作業をする場合には、第4図、第7図及び第8図に示すように、枠体7を矢印B方向に揺動し、係止部8に当接されるまで回動し、刈払い作業をする際の把手として使用される。この場合も、死点13を越えた位置からスプリング11によつて矢印B方向に押圧され、枠体7が自然に元のスタンドの状態に戻るのを防止している。」(2頁左欄32行?3頁左欄1行)

(4e)「〔考案の効果〕
この考案の刈払機における把手兼用スタンドは、以上に述べたようであるから、以下に述べるような効果を有するものである。
(1) 刈払い作業をしない場合には枠体7をスタンドとして使用することができ、また刈払い作業時には枠体7を揺動して把手として使用することができ、スタンド及び把手を兼用することができるため、部品点数の簡素化を図ることができる。
(2) コイルスプリング11の引力と係止部8,9により、ワンタツチにて枠体7がスタンド及び把手状態になり、頻発度の高い刈払い作業及び非作業のパタン変化に即対応することができる。
(3) 刈払い作業時において、スタンド状態から把手状態に枠体7が回動するため、作業時に身体が触れることなく、作業がしやすい。
(4) 前記枠体7を上方に揺動可能にすることにより、損傷しやすいプラグ14を防御することができると共に、持ち運びしやすい手提用把手として使用することもできる。」(3頁左欄2行?同頁右欄4行)

また、第3図、第4図、及び(4d)によれば、
(4f)「前記軸受部は、枠体7の両端部のほぼ対峙する方向に折曲される取付部7aが挿入される取付穴5であって、該取付穴5を囲む近傍には外方に膨出したボス6を有し、該ボス6の一部が前記枠体7の回動範囲にわたって平面視で扇状の凹部を備え、該凹部の両側面に枠体7が当接することにより上記係止部8,9が構成される。」ことが見て取れる。

さらに、第7図、第8図によれば、
(4g)「刈払い作業時において、作業者は、一方の手で外管3を握り他方の手で枠体7を握ることにより刈払機を保持しつつ、刈払い作業を行う。」ことが見て取れる。

これら(4a)ないし(4g)の記載事項によれば、刊行物4には次のような発明(以下、「刊行物4発明」という。)が開示されているものと認められる。
「(4i)伝導軸を回転可能に内設させた外管の一端に刈刃が回転可能に軸支され、前記外管の他端にエンジンケースが固着されると共に、前記伝導軸を介して前記刈刃を回転駆動しうる刈払機において、前記エンジンケースの側部を跨ぐほぼコ字形に折曲されると共に、両端部がそれぞれエンジンケースの対峙する両側部に形成される軸受部に軸支されてなる枠体と、(a)枠体の揺動中心から外管の延長方向と逆方向、及び(b)外管の延長方向にほぼ直交する方向、において枠体をそれぞれ係止可能な係止部とを有する。
(4ii)上記軸受部は、枠体の両端部のほぼ対峙する方向に折曲される取付部が挿入される取付穴であって、該取付穴を囲む近傍に外方に膨出したボスを有し、該ボスの一部が上記枠体の回動範囲にわたって平面視で扇状の凹部を備え、該凹部の両側面に枠体が当接することにより上記係止部が構成される。
(4iii)上記係止部により、刈払い作業時には枠体を上記(a)方向にして把手として使用することができ、また、非作業時には枠体を上記(b)方向にしてスタンドまたは手提用把手として使用することができる。
(4iv)刈払い作業時において、作業者は、一方の手で外管を握り他方の手で枠体を握ることにより刈払機を保持しつつ、刈払い作業を行う。」

甲第6号証
同様に、甲第6号証(実願昭62-160004号(実開平1-64373号)のマイクロフィルム、以下、「刊行物6」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

(6a)「〔産業上の利用分野〕
本考案は、たとえばヘッド本体に内蔵したモーターにより、ドラーバービットを回転駆動する電動ドライバー等の電動工具に関し、特に、把持用ハンドル部をヘッド本体に関節機構を介して、屈曲可能に連接した電動工具に関する。」(3頁4?9行)

(6b)「〔考案が解決しようとする問題点〕
上記従来装置は、本体部(61)と把持部(62)とを直線上の位置と、ある一定の角度に屈曲した位置との、2種の状態で使用できるにすぎず、その中間状態の角度位置で使用することはできない。しかし、実際にこの種の電動工具を使用する場合には、直線状態と、大角度に屈曲した状態との他に、中間の角度で使用したい場合もあり、両状態の中間の任意の角度でも、固定できることが望ましい。
本考案は、この要求に即した電動工具を提供するものである。」(4頁7?17行)

(6c)「〔作用〕
本体部と把持部との当接面は、同一角度で傾斜し、かつ、ボールジョイントで結合してあるので、両者を中心軸周りに相対的に回転させると、本体部と把持部とは、直線状態から、傾斜面と中心軸との角度の2倍の角度まで、屈曲状態が変化する。直線状態と最大屈曲状態の2つの位置では、止め軸により確実に固定し、その中間の複数の位置では、クリックストップにより制止する。」(5頁17行?6頁5行)

(6d)「〔実施例〕
第1図は、本考案を電動ドライバーに実施した1例を、本体部と把持部に分離して示した図である。
・・・・(中略)・・・・
本体部(1)の第1傾斜面(11)には、第1図及び第2A図に示すように、孔(15)を有する球(14)が中央部に突設され、また、球(14)を囲んで半円形の溝(16)が刻設されている。溝(16)の反対側には、右ケース(13)にクリックストップ用の係合子(17)が突設され、一方、左ケース(12)及び右ケース(13)の対称位置に、それぞれ1つの四角形の凹孔(18)及び(19)が設けてある。
把持部(2)の第2傾斜面(21)には、第1図及び第2B図に示すように、球形の凹孔(24)が中央部に設けてあり、本体部(1)側の球(14)を凹孔(24)に嵌合することにより、双方の傾斜面(11)と(21)とが摺接した状態で、相対的に回転することができるボールジョイントを構成する。
・・・・(中略)・・・・
把持部(2)の右ケース(23)側に、底面に多数(図示実施例では12個)の突起(29)を鋸刃状に立設した半円形の溝(26)が、第1傾斜面(11)の係合子(17)に整合する位置に刻設してある。また、左ケース(22)側には、第1傾斜面(11)の溝(16)に整合する位置にストッパー(27)が突設され、さらに、1個の四角形の透孔(28)が設けてある。この透孔(28)は、本体部(1)と把持部(2)とが、直線位置にあるとき、又は最大角度の屈曲位置にあるときに、第1傾斜面(11)側の凹孔(18)及び(19)のいずれか一方に整合する位置に配置してある。
・・・・(中略)・・・・
すなわち、本体部(1)と把持部(2)とが、直線位置あるいは最大角度の屈曲位置にあるときには、第2傾斜面(21)の透孔(28)が第1傾斜面(11)の凹孔(18)又は(19)の1つに整合しているため、止め軸部(321)が凹孔(18)又は(19)に挿入されて、本体部(1)と把持部(2)とを、その位置で固定する。」(6頁6行?9頁7行)

(6e)「角度を変える場合にはノブ(31)を操作して、止め軸部(321)を第2傾斜面(21)の面内に引き込め、凹孔(18)又は(19)との係合を解除することにより、本体部(1)と把持部(2)とを、それらの傾斜面(11)(21)が摺接しながら、ボールジョイントを中心として相対的に回転させることが可能になる。この回転は、第1傾斜面(11)の半円形の溝(16)と第2傾斜面(21)のストッパー(27)とにより、180度の範囲で許容され、かつ、第2傾斜面(21)の鋸刃溝(26)と、第1傾斜面(11)の係合子(17)とで構成するクリックストップにより、複数の位置で係止される。
本体部(1)と把持部(2)とは、それぞれの傾斜面(11)及び(21)が摺接しながら回転するため、回転量に対応して角度が変化する。すなわち、第4A図に示す直線位置から、把持部(2)を軸回りに回転させると、本体部(1)と把持部(2)との角度は0度から、最大角度まで変化する。最大角度は、2つの傾斜面(11)(21)の中心軸に対する傾斜角度を0(度)とすると2θ(度)になる。
また、鋸刃溝(26)と係合子(17)で構成するクリックストップにより、本体部(1)と把持部(2)とを、第5図鎖線で示すように、0度から2θ度までの中間の複数の角度位置で固定して使用することができるので、適用対象の条件に応じて所用の屈曲角度を設定して、効率よく使用することができる。」(9頁11行?10頁17行)

これら(6a)ないし(6e)の記載事項によれば、刊行物6には次のような発明(以下、「刊行物6発明」という。)が開示されているものと認められる。
「(6i)把持用ハンドル部(把持部)をヘッド本体(本体部)に関節機構を介して、屈曲可能に連接した電動ドライバー等の電動工具に関し、本体部と把持部との当接面は、同一角度で傾斜し、かつ、ボールジョイントで結合してなり、両者を中心軸周りに相対的に回転させることにより、直線状態から最大屈曲状態まで、屈曲状態が変化するとともに、直線状態と最大屈曲状態の2つの位置では、止め軸により確実に固定し、その中間の複数の位置では、クリックストップにより制止する。
(6ii)この相対的な回転は、本体部の当接面である第1傾斜面の半円形の溝と、これに係合する把持部の当接面である第2傾斜面に突設されたストッパーとにより、180度の範囲で許容され、かつ、第2傾斜面の半円形の鋸刃溝と、第1傾斜面に突設された係合子とで構成するクリックストップにより、複数の位置で制止される。」

また、甲第3号証(実公昭60-16278号公報、以下、「刊行物3」という。)には、芝刈機のハンドルが前方に倒れるのを抑止する係止部材が、
さらに、甲第5号証(実公昭31-12244号公報、以下、「刊行物5」という。)には、TVアンテナ支柱を水平位置から垂直位置までの範囲において任意の位置に固定することができる支持器が、各々記載されている。

2.本件発明1と刊行物1発明との対比
本件発明1と刊行物1発明とを対比する。
(ア)刊行物1発明の「本体」、「ハンドル」、「ループ式のハンドル」、「プロテクタ」、及び「刈込機」は、本件発明1の「ハウジング」、「主ハンドル」、「ループ状の補助ハンドル」、「プロテクタ」、及び「刈込機」に各々相当する。
(イ)「ループ状の補助ハンドル」のハウジングへの取付態様に関し、刊行物1発明では、「ループ式のハンドルがボルトで固着されており、該ループ式のハンドルは着脱が可能であ」るのに対し、本件発明1では、「ハウジングに着脱可能及び回動可能に取り付け」られていることからみて、両者はハウジングへ着脱可能に取付られている点で一致する。

上記(ア)、(イ)の対比及び検討結果を踏まえると、本件発明1と刊行物1発明とは、
「ハウジングに形成された主ハンドルと、前記ハウジングへ着脱可能に取り付けたループ状の補助ハンドルと、ハウジングの前部に装着され、操作者を保護するプロテクタとを有する刈込機。」
である点で一致しており、以下の点で相違している。

[相違点]
「ループ状の補助ハンドル」のハウジングへの取付態様に関し、本件発明1では、「ハウジングに回動可能に取り付け」られており、かつ、「前記補助ハンドルのハウジングへの取付部に設けられた凸部と、ハウジングに設けられた補助ハンドル取付用取付穴とを備え、取付穴と凸部との当接によって、補助ハンドルがプロテクタに接触するのを防止するように補助ハンドルの回動範囲を規制」するような回動範囲規制手段を有するのに対して、刊行物1発明は、「ループ式のハンドルがボルトで固着されており、該ボルトの頭部には『摘み』のような突起を有」するものの、補助ハンドルがハウジングに回動可能に取り付けられているのかが明らかでなく、また、上記のような回動範囲規制手段を有さない点。

3.相違点についての判断

3-1.刊行物1の「固着」について
刊行物1には、補助ハンドルが回動可能である旨の明示の記載はないが、刊行物1発明では、ループ状の補助ハンドルがボルトで「固着」されており、また、該ボルトの頭部には『摘み』のような突起が設けられている。そこで、これら事項から本件発明1のループ状の補助ハンドルがハウジングに回動可能に取り付けられていることが理解できるかについて検討する。

ここで、「固着」とは、「かたくしっかりとりつくこと。一定の場所に留まって移らないこと」(「広辞苑」第4版)であり、または、「系に対する一つまたはそれ以上の摩擦的束縛によって一つまたはそれ以上の自由度が失われること」(「マグローヒル科学技術用語大辞典」第3版)である。したがって、補助ハンドルがボルトでハウジングに「固着」されているとは、ボルトによって補助ハンドルがハウジングに締め付け固定されていることであると解することができる。
また、「該ボルトの頭部には『摘み』のような突起が設けられている」が、このような突起は工具を用いずに手動でボルトを締め付けたり緩めたり操作するときの手かがりとなる「摘み」であると解するのが相当であるから、この突起により、当該ボルトを手動で操作することができるものと推察される。

この場合、ボルトを緩めれば、すなわち「固着」を解除すれば、補助ハンドルが回動可能となると考えられなくもない。しかしながら、以下のような理由で、補助ハンドルが回動可能と解することは困難であるというべきである。
すなわち、刊行物1には補助ハンドルがボルトで固着されているとだけ記載されており、補助ハンドルとハウジングとの具体的な取付態様が示されている訳ではないから、ボルトを緩めることにより、ハウジングと補助ハンドルとの緊締状態は解除されるが、それにより直ちに補助ハンドルが回動可能となると解すべき特段の理由はない。
また、刊行物1において補助ハンドルが描かれている複数の図面(図1,図2,図7)をみると、それら複数の補助ハンドルの取付角度はほぼ同一角度であると見て取れること、そしてその取付角度は偶然一致している訳ではなく刈込機の操作性などの観点から設計上定められた取付角度であって、当該角度に何らかの手段で位置決め固定されていると解するのが妥当である。
さらに、上記ボルトは手動で操作が可能であると解されるところ、一般に手動による弱い締付力では刈込機の作動中の振動等によりボルトが容易に緩むことが予想される。そして、仮に、作動中にボルトが緩んだ結果、直ちに補助ハンドルが自由に回動しうるとすると、補助ハンドルは、それを介して操作者が刈込機に操作力を作用させる部位であることから推して、補助ハンドルが十分に固定されていないことにより刈込機の操作が不安定になり、酷い場合には、補助ハンドルがプロテクタに接触したり、さらには操作者が怪我をするなど、様々な不具合を惹起する虞があるものと容易に予想される。したがって、このような不具合が想定される装置において、手動でボルトを緩めることにより補助ハンドルが自由に回動可能となるように設計することは、装置の操作性や安全性の見地からも想定しえない、というべきである。

以上のとおり、補助ハンドルが回動可能であることは、刊行物1に記載がなく、また、「固着」の定義によっても回動可能であると観念することができず、さらには、装置の操作性・安全性の見地からも想定し得ないことという外になく、結局、刊行物1から補助ハンドルが回動可能であることは見出せない。

3-2.刊行物2(無効理由1)について
ア.刊行物2発明は、電動ドライバーにおいて、「第1のケースの上記端面に、半周強にわたる溝を設けるとともに、第2のケースの上記端面に、上記溝内を摺動する突片を設け、溝内を突片が摺動することができる範囲内でのみ、第1のケースに対して第2のケースを回動させることができるように、第1のケースに対する第2のケースの回動範囲の規制を行っている。」(上記2ii)点を有する。
これによれば、上記相違点のうち、本件発明1の「前記補助ハンドルのハウジングへの取付部に設けられた凸部と、ハウジングに設けられた補助ハンドル取付用取付穴とを備え、取付穴と凸部との当接によって、補助ハンドルの回動範囲を規制」する点、すなわち回動範囲の規制手段については刊行物2発明に開示があるということができる。

イ.しかしながら、刊行物2発明の回動範囲規制手段の技術上の意義は、「2つのケースから構成されて直線の状態と、その状態から180度回動してL字状に折れ曲がったピストル状とした状態とでロックされ、これら2つの形態をとることができるようにされている電動ドライバー」(上記2i)にあるのであって、本願発明1のように「補助ハンドルがプロテクタに接触するのを防止するように補助ハンドルの回動範囲を規制」する点、すなわち安全上の見地から回動規制範囲を設定することについてまで開示するものではない。したがって、上記発明特定事項が刊行物2から導出可能であるとはいえない。

ウ.そこで、刊行物1発明に刊行物2発明の上記事項を適用可能であるかについて検討するに、
(1)上述した「3-1.刊行物1発明の「固着」について」で明らかなように、刊行物1発明の補助ハンドルが回動可能であるとはいえないから、刊行物1発明には回動可能であることを前提とした回動範囲の規制機構を適用する余地が存在しないというべきであり、刊行物2発明を刊行物1発明に適用するには無理がある。
(2)仮に、刊行物1発明の補助ハンドルが回動可能であると認定し得たとしても、刊行物1は回動規制について何ら教示をしないばかりでなく、上記イ.で検討したように刊行物2からは「補助ハンドルがプロテクタに接触するのを防止するように補助ハンドルの回動範囲を規制」する点は導き出せないのであるから、結局、刊行物1及び2に基づいては相違点を充足することができないことは明らかである。

よって、本件発明1は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反して特許を受けたものではない。

3-3.刊行物4(無効理由2)について
エ.刊行物4発明は、刈払機において、「エンジンケースの側部を跨ぐほぼコ字形に折曲されると共に、両端部がそれぞれエンジンケースの対峙する両側部に形成される軸受部に軸支されてなる枠体と、(a)枠体の揺動中心から外管の延長方向と逆方向、及び(b)外管の延長方向にほぼ直交する方向、において枠体をそれぞれ係止可能な係止部とを有する。・・・上記軸受部は、枠体の両端部のほぼ対峙する方向に折曲される取付部が挿入される取付穴であって、該取付穴を囲む近傍に外方に膨出したボスを有し、該ボスの一部が上記枠体の回動範囲にわたって平面視で扇状の凹部を備え、該凹部の両側面に枠体が当接することにより上記係止部が構成される。・・・上記係止部により、刈払い作業時には枠体を上記(a)方向にして把手として使用することができ、また、非作業時には枠体を上記(b)方向にしてスタンドまたは手提用把手として使用することができる。」(上記4i,4ii,4iii)点を有する。
これによれば、上記係止部の機能が、本件発明1の「前記補助ハンドルのハウジングへの取付部に設けられた凸部と、ハウジングに設けられた補助ハンドル取付用取付穴とを備え、取付穴と凸部との当接によって、補助ハンドルの回動範囲を規制」するとの発明特定事項により奏される機能と一致するということができる。

オ.しかしながら、本件発明1の「補助ハンドルのハウジングへの取付部に設けられた凸部」を刊行物4発明が備えるとはいえず、また、その回動規制範囲も「(a)枠体の揺動中心から外管の延長方向と逆方向、及び(b)外管の延長方向にほぼ直交する方向」であって、これは、「上記係止部により、刈払い作業時には枠体を上記(a)方向にして把手として使用することができ、また、非作業時には枠体を上記(b)方向にしてスタンドまたは手提用把手として使用することができる。」ようにするためであるから、本願発明1のように「補助ハンドルがプロテクタに接触するのを防止するように補助ハンドルの回動範囲を規制」する点、すなわち安全上の見地から回動規制範囲を上記のように設定することとはその目的が明確に異なり、これについてまで刊行物4から導出可能であるとはいえない。

カ.そこで、刊行物1発明に刊行物4発明の上記事項を適用可能であるかについて検討するに、
(1)上述した「3-1.刊行物1発明の「固着」について」で明らかなように、刊行物1発明の補助ハンドルが回動可能であるとはいえないから、刊行物1発明には回動可能であることを前提とした回動範囲の規制機構を適用する余地が存在しないというべきであり、刊行物4発明を刊行物1発明に適用するには無理がある。
(2)仮に、刊行物1発明の補助ハンドルが回動可能であると認定し得たとしても、刊行物1は回動規制について何ら教示をしないばかりでなく、上記オ.で検討したように刊行物4からは、「補助ハンドルのハウジングへの取付部に設けられた凸部」及び「補助ハンドルがプロテクタに接触するのを防止するように補助ハンドルの回動範囲を規制」する点は導き出せないのであるから、結局、刊行物1及び4に基づいては相違点を充足することができないことは明らかである。

キ.さらに、刊行物1発明の補助ハンドルに代えて上記枠体を採用することが可能であるかについても検討すると、刊行物4発明の枠体は、「上記係止部により、刈払い作業時には枠体を上記(a)方向にして把手として使用することができ、また、非作業時には枠体を上記(b)方向にしてスタンドまたは手提用把手として使用することができる。」(上記4iii)、「刈払い作業時において、作業者は、一方の手で外管を握り他方の手で枠体を握ることにより刈払機を保持しつつ、刈払い作業を行う。」(上記4iv)なる構成であることからみて、むしろ、本件発明1の「主ハンドル」に当たるハンドル部であって、「補助ハンドル」には相当しないこと、及び、枠体が回動可能である目的はスタンドまたは手提用把手としても使用可能とすることであって、刈払い作業時の作業姿勢に合った持ち易い位置に調整可能とすることではないこと、などからみて、本件発明1の補助ハンドルに代えて上記枠体を採用すべき動因ないしは契機があるとはいえない。

よって、本件発明1は、刊行物1及び4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反して特許を受けたものではない。

3-4.刊行物6(無効理由3)について
ク.刊行物6発明は、電動ドライバー等の電動工具において、「本体部と把持部との当接面は、同一角度で傾斜し、かつ、ボールジョイントで結合してなり、両者を中心軸周りに相対的に回転させる・・・この相対的な回転は、本体部の当接面である第1傾斜面の半円形の溝と、これに係合する把持部の当接面である第2傾斜面に突設されたストッパーとにより、180度の範囲で許容され」(上記6i,6ii)る点を有する。
これによれば、上記相違点のうち、本件発明1の「前記補助ハンドルのハウジングへの取付部に設けられた凸部と、ハウジングに設けられた補助ハンドル取付用取付穴とを備え、取付穴と凸部との当接によって、補助ハンドルの回動範囲を規制」する点、すなわち回動範囲の規制機構については刊行物6発明に開示があるということができる。

ケ.しかしながら、刊行物6発明の回動範囲規制手段の技術上の意義は、「直線状態から最大屈曲状態まで、屈曲状態が変化するとともに、直線状態と最大屈曲状態の2つの位置では、止め軸により確実に固定」(上記6i)するにあるのであって、本願発明1のように「補助ハンドルがプロテクタに接触するのを防止するように補助ハンドルの回動範囲を規制」する点、すなわち安全上の見地から回動規制範囲を設定することではないから、これについてまで刊行物6から導出可能であるとはいえない。

コ.さらに刊行物1発明に上記事項を適用可能であるかについて検討するに、
(1)上述した「3-1.刊行物1発明の「固着」について」で明らかなように、刊行物1発明の補助ハンドルが回動可能であるとはいえないから、刊行物1発明には回動可能であることを前提とした回動範囲の規制機構を適用する余地が存在しないというべきであり、刊行物6発明を刊行物1発明に適用するには無理がある。
(2)仮に、刊行物1発明の補助ハンドルが回動可能であると認定し得たとしても、刊行物1は回動規制について何ら教示をしないばかりでなく、上記ケ.で検討したように刊行物6からは「補助ハンドルがプロテクタに接触するのを防止するように補助ハンドルの回動範囲を規制」する点は導き出せないのであるから、結局、刊行物1及び6に基づいては相違点を充足することができないことは明らかである。

よって、本件発明1は、刊行物1及び6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反して特許を受けたものではない。

4.本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに「前記ハウジングの補助ハンドル取付用取付穴は一対の円弧形状部分を有し、円弧形状部分の周方向に沿う幅を補助ハンドルの凸部の周方向に沿う幅より大きくしたこと」との限定を付した発明である。
したがって、上記「3.相違点についての判断」で述べた本件発明1におけるのと同様の理由で、刊行物1,2,4及び6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許を受けたものではない。

なお、刊行物3及び5に記載された事項についても検討したが、本件発明を無効とすべき理由が見出せなかった。

5.請求人の主張についての検討
(1)請求人は、口頭審理陳述要領書及び上申書(平成20年1月18日付)において下記のような参考文献1ないし8を提示(参考文献8のみ上申書)して、「このように、回動可能なハンドルをねじやボルトにより固定することは、本件特許の出願時に周知技術であり、『ハンドル2がボルト5で固着されている』との記載から、当業者は、『ボルト5を弛めれば、ハンドル2は回動可能である』と解釈することは容易に想像できる。」(口頭審理陳述要領書4頁下から6行?同下から3行)と主張しているので、これについても一応検討しておく。

参考文献1 :特開昭62-115212号公報
参考文献2 :実願昭51-52074号(実開昭52-143353号)のマイクロフィルム
参考文献3 :実願昭57-105125号(実開昭59-11618号)のマイクロフィルム
参考文献4 :特開昭61-224910号公報
参考文献5 :実願昭61-41941号(実開昭62-153816号)のマイクロフィルム
参考文献6 :実願昭61-163316号(実開昭63-67384号)のマイクロフィルム
参考文献7 :特開平8-243953号公報
参考文献8 :特開平9-135631号公報

すなわち、上記参考文献1ないし8によれば、「回動可能なハンドルをねじやボルトにより固定すること」なる事項が本件特許の出願時に周知技術であったことは理解できるが、参考文献1ないし8には、刊行物1の内容を直接説明したり、あるいは刊行物1を引用してそれを解説したりするような刊行物1に関連する記載はなく、それゆえ、刊行物1とは直接関連のない独立した別個の文献であるという外ないから、上記事項が本件の出願前に周知であったとしても、刊行物1発明の補助ハンドルが回動可能であったことを立証する根拠たりえないことは明らかである。

(2)請求人は、口頭審理陳述要領書において、「また、甲第1号証(刊行物1)には、プロテクタ1がボルト5と同様の形態を有する固着ボルト6で装着されており、ボルト6を弛めることで、プロテクタ1の位置を調整することができる旨が記載されている。従って、当業者は、同様の構成を有するハンドル2の角度位置も調整可能であると容易に想像することができる。」(口頭審理陳述要領書3頁11?14行)と主張している。

請求人の上記主張は要するに、ボルト6を弛めることで、プロテクタ1の位置を調整することができるのであるから、ボルト6と同様の形態を有するボルト5で固着されているハンドル2の角度位置も調整可能であるというものである。しかしながら、プロテクタ1の位置調整は上下方向であって、角度位置の調整をする訳ではなく、また、刊行物1にはハンドル2の角度位置の調整については一切記載も示唆もないのであるから、そもそも角度位置の調整を観念することは困難であり、ボルト6と同様の形態を有するボルト5でハンドル2が固着されているという一事を以てプロテクタ1とは機能及び構成が異なるハンドル2の角度位置の調整が可能であると結論づけることには飛躍がある。

(3)請求人は、審判請求書において、「図8に記載されているように本体3は円形のハンドル取付部位を有していることから、ボルト5の締め付けを緩めれば、ハンドル2を任意の位置に調整することができ、着脱可能及び回動可能であるといえる。」(審判請求書11頁19?22行)と主張している。

一般に特許出願の願書に添付された図面は単なる概念図であって、その内容を説明する明細書の記載と併せ解釈することにより初めて正確な理解が得られる類のものである。ましてや、当該特許出願の発明の主題とは直接関係がなく、明細書の記載もない単なる図示については、その意味内容を正確に読み取ることは困難であるというほかない。
本件についていえば、刊行物1の図8からは、ハンドル2の取付箇所と覚しき位置に円形が描かれていることが見て取れるが、これについて刊行物1の明細書には何らの記載もない。想像をたくましくすれば、当該円形が孔であるか凸部であるか、取付部の略図であるか、あるいは単なるハンドル取付部の位置を示した目印であるとか様々な解釈が可能であるが、正確かつ一義的にこれを特定することは困難である。
したがって当該円形が何を表したものであるのか明らかでなく、上記主張は請求人の単なる想像にすぎないものと解するほかない。

そして、刊行物1発明の補助ハンドルは、上掲の「3-1.刊行物1の「固着」について」で述べたように、補助ハンドルが回動可能であることは刊行物1に記載がなく、また、「固着」の定義によっても回動可能であると観念することができず、さらには、装置の操作性・安全性の見地からも回動可能であると想定しえず、固着を解除しても回動可能とはならないことの方がむしろ合理的といえるものである。また、仮に、刊行物1発明の補助ハンドルが回動可能であると認定し得たとしても、「補助ハンドルがプロテクタに接触するのを防止するように補助ハンドルの回動範囲を規制」する点は導き出せないのであるから、結局、刊行物1ないし6に基づいては相違点を充足し得ないことは明らかである。
それゆえ、請求人の上記主張は採用できない。

第6 むすび

以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることはできない。
また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-31 
結審通知日 2008-02-05 
審決日 2008-02-18 
出願番号 特願2003-53792(P2003-53792)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 裕一  
特許庁審判長 向後 晋一
特許庁審判官 稲積 義登
岩本 勉
登録日 2007-04-20 
登録番号 特許第3945421号(P3945421)
発明の名称 刈込機  
代理人 石川 泰男  
代理人 井沢 博  
代理人 富澤 芳安  
代理人 海田 浩明  

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