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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1175504
審判番号 不服2004-11132  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-27 
確定日 2008-04-03 
事件の表示 平成 9年特許願第230771号「電子マネーシステム及び電子マネーの払戻方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月 9日出願公開、特開平11- 66208〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は平成9年8月27日の出願であって、平成15年12月3日付けで拒絶理由通知がなされ、平成16年2月5日付けで手続補正がなされたが、同年4月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月24日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年6月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年6月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正
平成16年6月24日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の
「【請求項1】 ICカードに対する電子マネーに関する処理を行う自動取引装置を備え、
前記自動取引装置は、前記電子マネーが保留されたICカードから紙幣又は硬貨の通貨で電子マネーを払い戻すことを特徴とする電子マネーシステム。
【請求項2】 前記自動取引装置は、両替レートに基づいて前記ICカードへ保留されている電子マネーの通貨の両替を行った後、その両替された通貨を払い戻すことを特徴とする請求項1記載の電子マネーシステム。
【請求項3】 前記両替レートを格納した記憶装置を有するホストコンピュータを備え、
前記自動取引装置は、前記記憶装置に格納された前記両替レートに基づいて、前記ホストコンピュータに前記ICカードへ保留されている電子マネーの通貨の両替を行わせ、その両替された通貨を払い戻すことを特徴とする請求項2記載の電子マネーシステム。
【請求項4】 前記両替レートを格納した記憶装置を有するホストコンピュータを備え、
前記自動取引装置は、顧客に払い戻す電子マネーの払戻金額を入力させ、前記記憶装置に格納された両替レートに基づいて、前記ホストコンピュータに前記入力された払戻金額の通貨の両替を行わせ、その両替された通貨を払い戻すことを特徴とする請求項2記載の電子マネーシステム。
【請求項5】 ホストコンピュータに接続された自動取引装置により、ICカードに対する電子マネーに関する処理を行う電子マネーシステムにおいて、
前記自動取引装置は、前記電子マネーが保留されたICカードから紙幣又は硬貨の通貨で電子マネーを払い戻すことを特徴とする電子マネーの払戻方法。
【請求項6】 前記自動取引装置は、両替レートに基づいて前記ICカードへ保留されている電子マネーの通貨の両替を行った後、その両替された通貨を払い戻すことを特徴とする請求項5記載の電子マネーの払戻方法。
【請求項7】 前記ホストコンピュータは、前記両替レートを格納した記憶装置を有し、
前記自動取引装置は、前記記憶装置に格納された前記両替レートに基づいて、前記ホストコンピュータに前記ICカードへ保留されている電子マネーの通貨の両替を行わせ、その両替された通貨を払い戻すことを特徴とする請求項6記載の電子マネーの払戻方法。
【請求項8】 前記ホストコンピュータは、前記両替レートを格納した記憶装置を有し、
前記自動取引装置は、顧客に払い戻す電子マネーの払戻金額を入力させ、前記記憶装置に格納された両替レートに基づいて、前記ホストコンピュータに前記入力された払戻金額の通貨の両替を行わせ、その両替された通貨を払い戻すことを特徴とする請求項6記載の電子マネーの払戻方法。」を、

補正後の
「【請求項1】 ICカードに保留可能な電子マネーに関する処理を行う自動取引装置を備え、
前記自動取引装置は、顧客の選択した通貨の両替レートに基づいて、顧客の口座の通貨を両替した後、前記ICカードに前記顧客の選択した通貨で電子マネーを保留することを特徴とする電子マネーシステム。
【請求項2】 前記自動取引装置は通貨選択画面を備え、前記通貨選択画面に表示された通貨を顧客が選択することを特徴とする請求項1記載の電子マネーシステム。
【請求項3】 前記両替レートを格納した記憶装置を有するホストコンピュータを備え、
前記自動取引装置は、前記記憶装置に格納された前記両替レートに基づいて両替を行うことを特徴とする請求項2記載の電子マネーシステム。
【請求項4】 前記自動取引装置は、顧客に払い戻す電子マネーの払戻金額を入力させる入力手段を備え、前記入力された払戻金額の分だけ両替された通貨を払い戻すことを特徴とする請求項2記載の電子マネーシステム。
【請求項5】 ホストコンピュータに接続された自動取引装置により、ICカードに保留可能な電子マネーに関する処理を行う電子マネーシステムにおいて、
前記自動取引装置は、顧客の選択した通貨の両替レートに基づいて、顧客の口座の通貨を両替した後、前記ICカードに前記顧客の選択した通貨で電子マネーを保留することを特徴とする電子マネーの保留方法。
【請求項6】 前記自動取引装置は通貨選択画面を備え、前記通貨選択画面に表示された通貨を顧客が選択することを特徴とする請求項5記載の電子マネーの保留方法。
【請求項7】 前記両替レートを格納した記憶装置を有するホストコンピュータを備え、
前記自動取引装置は、前記記憶装置に格納された前記両替レートに基づいて両替を行うことを特徴とする請求項6記載の電子マネーの保留方法。
【請求項8】 前記自動取引装置は、顧客に払い戻す電子マネーの払戻金額を入力させる入力手段を備え、前記入力された払戻金額の分だけ両替された通貨を払い戻すことを特徴とする請求項6記載の電子マネーの保留方法。」
とする補正を含むものである。

(2)本件補正に対する判断
本件補正は、拒絶査定に対する審判請求時の補正であるから、本件補正による特許請求の範囲についてする補正は、特許法第17条の2第4項の規定により同項第1号から第4号に掲げる事項を目的とするものに限られる。
そこで、本件補正による特許請求の範囲の補正が、特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものであるかを検討する。

まず、本件補正後の請求項1についての補正を検討する。
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし4には、「電子マネーシステム」に関して記載されており、請求項5ないし8には、「電子マネーの保留方法」に関して記載されている。これに対して、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1には、「電子マネーシステム」に関して記載されているから、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1ないし4のいずれかに対応するものである。
そこで、本件補正後の請求項1と、本件補正前の請求項1ないし4とを対比すると、「電子マネーを払い戻すこと」と「電子マネーを保留すること」とは、異なる処理であるから、補正後の請求項1の「顧客の選択した通貨の両替レートに基づいて、顧客の口座の通貨を両替した後、前記ICカードに前記顧客の選択した通貨で電子マネーを保留すること」と変更する補正事項は、補正前の請求項1ないし4のいずれに記載された発明を特定するために必要な事項を概念的に下位にするものではなく、発明を特定するために必要な事項を別の概念に変更するものである。
してみると、上記補正事項を含む請求項1についての本件補正は、補正前のいずれの請求項を限定的に減縮するものではない。

以上の検討によれば、上記補正事項を含む請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲の限定的減縮)を目的とするものとはいえない。また、上記補正事項を含む請求項1についての本件補正が、特許法第17条の2第4項第1号に掲げる事項(請求項の削除)、同項第3号に掲げる事項(誤記の訂正)及び同項第4号に掲げる事項(明りょうでない記載の釈明)のいずれを目的とするものでないことも明らかである。
よって、本件補正後の請求項1についての補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、他の請求項についての補正を検討するまでもなく、本件補正は、同項の規定に違反するものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年6月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年2月5日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「ICカードに対する電子マネーに関する処理を行う自動取引装置を備え、
前記自動取引装置は、前記電子マネーが保留されたICカードから紙幣又は硬貨の通貨で電子マネーを払い戻すことを特徴とする電子マネーシステム。」

(2)引用例
(2-1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平9-160992号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。

(ア)「【0002】
【従来の技術】従来、記憶媒体に格納されている金額情報のやり取りを行なう電子財布システムとしては、例えば特開平第3-92966号公報に記載のように、かかる金額情報を格納したICカードをその所有者が店頭や自動販売機などに持参し、買物などをした場合には、これに設置されている電子財布端末にこのICカードを装着することにより、商品の取引に際しての金額情報のやり取りをこのICカードと電子財布端末との間で行ない、また、このICカードを銀行に持参し、これをこの銀行の電子財布端末に装着して所定の操作を行なうことにより、自己の口座からICカードに残高の補充ができるようにしたシステムが知られている。」

これらの記載事項及び図面の内容を総合すると、引用例1には、
「ICカードに対する金額情報に関する処理を行う銀行の電子財布端末を備え、
前記銀行の電子財布端末は、自己の口座からICカードに残高を補充することを特徴とする電子財布システム。」
との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。

(2-2)引用例2
拒絶査定の備考欄で、本願出願時の当該分野における技術水準を示す文献として引用された特開平9-218983号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、現金自動取扱装置(あるいは現金自動取引装置)において、電子貨幣を収納したカードを使用して、入金、出金、現金への換金、振込みの少なくとも一つを行うための、電子貨幣の取扱方法に関する。」

(ウ)「【0027】キャッシュカードリーダ/ライタ184は、銀行との間で予め作られているキャッシュカードの内容を読み取ったり、書き込んだりする。紙幣読み取り装置174は、紙幣を読み取り、計数し、その金額を計算する。この装置には紙幣投入/排出口144に投入された紙幣が紙幣搬入排出装置172により供給され、あるいは現金貯蔵庫173から排出すべき紙幣が供給される。紙幣搬入排出装置172はこの排出すべき紙幣を紙幣読み取り装置174から紙幣投入/排出口144に排出するのにも使用される。硬貨読み取り装置174、硬貨投入排出装置176は、硬貨投入/排出口145に投入あるいは排出される硬貨に関して同様の動作をする。」

(エ)「【0076】(E5)換金(2)
図10を参照してICカード内に収納されている電子貨幣を現金に換金して受け取る処理を説明する。
【0077】(1)まず、初期状態でタッチパネル146に表示されている種々の取引を表すメニューから一つを選択する。ここでは「換金」が選択される(ステップ801)。
【0078】(2)取引として「換金」が選択されたことにより、タッチパネル146に現金から電子貨幣への換金か、ICカード内の電子貨幣から現金への換金かを選択する表示が行われる。ここでは電子貨幣から現金への換金を行うとしているので、「電子貨幣から現金」が選択される(ステップ802)。
【0079】(3)ICカードをカード挿入口に挿入することを利用者に指示する(ステップ803)。
【0080】(4)ICカードがロックされていない場合には利用者にこれを通知し、ICカードのロックを解除することを利用者に指示する(ステップ804)。このときの装置動作と利用者の操作は、出金に関して説明したステップ412(図6)におけるものと同じである。
【0081】(5)換金額を入力することを利用者に指示する。入力された換金額を表示し、その金額を確認することを利用者に指示する。例えば、確認ボタンを押することを利用者に指示する(ステップ805、806)。
【0082】換金額が確認されると、現金自動預入支払機14は、換金処理を実行する。すなわち、入力された換金額の電子貨幣を挿入されたICカードから引き出し、銀行営業店システム1内の電子金庫15にすでに述べたのと同じ方法で移動する。さらに換金額に相当する現金を現金貯蔵庫173から排出する。
【0083】(6)その後明細書を作成し、ICカード、現金、明細書を排出する。利用者は、これらを受け取って処理を終了する(ステップ807)。」

(3)対比
本願発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「金額情報」は、ICカードに格納され、商品の取引などに際してやり取りされるものであるから、本願発明の「電子マネー」に相当する。
また、引用例1発明の「銀行の電子財布端末」は、紙幣又は硬貨の通貨で電子マネーを払い戻していないが、銀行に設置されて、顧客の操作によりICカードに対する電子マネーに関する処理を行っている点で、本願発明の「自動取引装置」に対応する。
また、引用例1発明の「自己の口座からICカードに残高を補充すること」と、本願発明の「前記電子マネーが保留されたICカードから紙幣又は硬貨の通貨で電子マネーを払い戻すこと」とは、以下の相違点があるものの、「ICカードに対する電子マネーに関する所定の処理を行うこと」という概念で共通する。
また、引用例1発明の「電子財布システム」は、以下の相違点があるものの、本願発明の「電子マネーシステム」に対応する。

そうすると、本願発明と引用例1発明とは、
「ICカードに対する電子マネーに関する処理を行う自動取引装置を備え、
前記自動取引装置は、ICカードに対する電子マネーに関する所定の処理を行うことを特徴とする電子マネーシステム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
ICカードに対する電子マネーに関する所定の処理が、本願発明では、「前記電子マネーが保留されたICカードから紙幣又は硬貨の通貨で電子マネーを払い戻すこと」であるのに対して、引用例1発明では、「自己の口座からICカードに残高の補充をすること」である点。

(4)当審の判断
上記相違点について検討する。

上記引用例2に記載されているように、ICカードに対する電子マネーに関する所定の処理として、電子マネーが保留されたICカードから紙幣又は硬貨の通貨で電子マネーを払い戻すことは、本願出願時において公知の事項であるから、引用例1発明において、ICカードに対する電子マネーに関する所定の処理として、前記電子マネーが保留されたICカードから紙幣又は硬貨の通貨で電子マネーを払い戻すようにすることは、当業者が容易に想到できたことである。
すなわち、引用例1発明及び公知の事項に基づいて、本願発明の相違点に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1発明及び公知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。

(5)むすび
したがって、本願発明は、上記引用例1発明及び公知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたのもであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-29 
結審通知日 2008-02-05 
審決日 2008-02-18 
出願番号 特願平9-230771
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 正二丹治 彰  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 ▲吉▼田 耕一
久保田 昌晴
発明の名称 電子マネーシステム及び電子マネーの払戻方法  
代理人 鈴木 弘一  

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