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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1175522
審判番号 不服2005-16326  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-25 
確定日 2008-04-03 
事件の表示 特願2000- 42060「データ転送システム、データ転送方法およびデータ転送プログラムを記録した記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月19日出願公開、特開2001- 14285〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯・本願発明
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成12年2月18日(優先日:平成11年4月28日、出願番号:平成11年特許願第122185号)の出願であって、平成17年1月13日付けで拒絶理由通知がなされ、同年3月18日付けで手続補正がなされたが、同年7月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月25日に審判請求がなされるとともに同年9月26日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成17年9月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年9月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
平成17年9月26日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)により、特許請求の範囲は、

「【請求項1】
第一の計算機システムと第二の計算機システムとの間でなされるデータ転送のサービス毎に、少なくとも該データの転送時点の時間情報、該データ転送の結果、及び異常終了時に転送されていないデータを特定する情報を含む転送履歴情報をサービス管理簿に保存することにより管理するデータ管理システムを用いてデータの転送を行うデータ転送システムであって、
データ転送の要求がなされた際、前記データ管理システムに該転送対象データの転送履歴情報が記憶されていれば、該転送履歴情報を参照して、直前の該データ転送の結果が異常終了であるか否かを判定する第一の判定手段と、
前記第一の判定手段により該データ転送の結果が異常終了であると判定されたときに、前記転送履歴情報を参照し、前回のデータ転送以降、転送対象となるデータの更新が行われたかを判定する第二の判定手段と、
前記第二の判定手段にてデータ更新されていると判定された時に、転送対象データの先頭からデータ転送を実行し、前記第二の判定手段にてデータ更新されていないと判定されたときに、前記データ管理システムの転送履歴情報を参照し、転送されていないデータの転送処理を行う転送処理手段と
を有するデータ転送システム。
【請求項2】
前記転送されていないデータを特定する情報として、既に転送されたデータに関する情報を用いるようにした請求項1記載のデータ転送システム。
【請求項3】
前記データ管理システムが記憶する転送履歴情報に含まれる該データの転送時点の時間情報は、少なくとも日付情報を含むことを特徴とする請求項1又は2記載のデータ転送システム。
【請求項4】
第一の計算機システムと第二の計算機システムとの間でなされるデータ転送のサービス毎に、少なくとも該データの転送時点の時間情報、該データ転送の結果、及び異常終了時に転送されていないデータを特定する情報を含む転送履歴情報をサービス管理簿に保存することにより管理するデータ管理システムを用いてデータの転送をコンピュータが行うデータ転送方法であって、
前記コンピュータが、
データ転送の要求がなされた際、前記データ管理システムに該転送対象データの転送履歴情報が記憶されていれば、該転送履歴情報を参照して、直前の該データ転送の結果が異常終了であるか否かを判定する第一の判定ステップと、
前記第一の判定ステップにより該データ転送の結果が異常終了であると判定されたときに、前記転送履歴情報を参照し、前回のデータ転送以降、転送対象となるデータの更新が行われたかを判定する第二の判定ステップと、
前記第二の判定ステップにてデータ更新されていると判定された時に、転送対象データの先頭からデータ転送を実行し、前記第二の判定ステップにてデータ更新されていないと判定されたときに、前記データ管理システムの転送履歴情報を参照し、転送されていないデータの転送処理を行う途中転送処理ステップと
を実行することを特徴とするデータ転送方法。
【請求項5】
前記転送されていないデータを特定する情報として、既に転送されたデータに関する情報を用いるようにした請求項4記載のデータ転送方法。
【請求項6】
前記データ管理システムが記憶する転送履歴情報に含まれる該データの転送時点の時間情報は、少なくとも日付情報を含むことを特徴とする請求項4又は5記載のデータ転送方法。
【請求項7】
第一の計算機システムと第二の計算機システムとの間でなされるデータ転送のサービス毎に、少なくとも該データの転送時点の時間情報、該データ転送の結果、及び異常終了時に転送されていないデータを特定する情報を含む転送履歴情報をサービス管理簿に保存することにより管理するデータ管理システムを用いてデータの転送をコンピュータに行わせるデータ転送プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記コンピュータに、
データ転送の要求がなされた際、前記データ管理システムに該転送対象データの転送履歴情報が記憶されていれば、該転送履歴情報を参照して、直前の該データ転送の結果が異常終了であるか否かを判定する第一の判定ステップと、
前記第一の判定ステップにより該データ転送の結果が異常終了であると判定されたときに、前記転送履歴情報を参照し、前回のデータ転送以降、転送対象となるデータの更新が行われたかを判定する第二の判定ステップと、
前記第二の判定ステップにてデータ更新されていると判定された時に、転送対象データの先頭からデータ転送を実行し、前記第二の判定ステップにてデータ更新されていないと判定されたときに、前記データ管理システムの転送履歴情報を参照し、転送されていないデータの転送処理を行う途中転送処理ステップと
を実行させるデータ転送プログラムを記録した記録媒体。
【請求項8】
前記転送されていないデータを特定する情報として、既に転送されたデータに関する情報を用いるようにした請求項7記載のデータ転送プログラムを記録した記録媒体。
【請求項9】
前記データ管理システムが記憶する転送履歴情報に含まれる該データの転送時点の時間情報は、少なくとも日付情報を含むことを特徴とする請求項7又は8記載のデータ転送プログラムを記録した記録媒体。」

と補正された。

2.新規事項の有無、補正の目的要件
本件手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており、特許法第17条の2第3項規定に適合し、かつ、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの)を目的とするものである。

3.独立特許要件
本件手続補正は特許法17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とすることから、本件手続補正後の前記請求項4に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)以下に検討する。

(1)補正後の発明
本件手続補正により、本願補正発明は、前記「1.補正後の本願発明」の「【請求項4】」に記載されたものと認められる。

(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平7-334472号公報(以下、「引用文献」という。)には以下の事項が記載されている。(注意:下線は便宜上、当審にて付与したもの。)

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,複数コンピュータ間における連携処理方式であって,特に目的のコンピュータへのファイル転送等を自動的に行うことができるようにしたコンピュータ間自動データ転送処理方式に関するものである。
【0002】 ・・・(中略)・・・
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記の従来方式では,連携処理の要求発生から実行までの処理,例えば,転送データの有無、転送処理動作手順,転送完了時の状態および転送データの整合性を操作員が監視しなければならず,操作員の負担が大きかった。また,連携処理が必要になる都度,操作員が介在して操作を行わなければならないので,連携処理の要求発生から実行までに時間がかかるという欠点があり,さらに操作を誤る恐れがあり,かつ連携処理が正常終了しなかった場合には,再び同じ処理動作を操作員が行わなければならないという欠点があった。
【0004】 ・・・(中略)・・・
【0005】本発明は上記問題点の解決を図り,データ連携処理における転送可否の認識,処理の起動,処理後の検査,異常時の修復を,状態管理によって一元管理することにより自動で行い,操作者の負担を軽減するとともに,転送ファイル数が増えた場合などにも容易に対処することができる拡張性,柔軟性のあるデータ転送手段を提供することを目的とする。」

(イ)「【0007】図1において,コンピュータ1とコンピュータ2は通信インタフェースおよび通信回線を介して接続されている。以下の説明では,データ転送は,コンピュータ1からコンピュータ2へ行われるものとする。
【0008】記憶装置3には送信データが格納され,記憶装置4には受信データが格納される。転送用管理テーブル5は,送信処理に必要な,予め与えられたデータ又は以下に説明する各処理手段により設定されたデータを格納するテーブルである。転送用管理テーブル6は受信処理に必要なデータを格納するテーブルである。特に,転送用管理テーブル5,6には,ホストコンピュータ-サーバ間の転送処理の動作中の状態または動作完了時の状態を示す状態情報(以下,ステータスという)が格納される。
【0009】 ・・・(中略)・・・
【0010】自動起動処理手段12は,転送用管理テーブル5を所定の時間間隔で周期的に監視し,転送用管理テーブル5に送信可能の情報が書き込まれたことを検出すると,サーバであるコンピュータ2に対して記憶装置3に存在する送信データの送信を開始し,終了するまでの状態情報を転送用管理テーブル5に書き込む。
【0011】コンピュータ2における自動起動処理手段13は,コンピュータ1から送信されてくるデータを記憶装置4に受信するとき,開始から終了までの状態情報を転送用管理テーブル6に書き込む。
【0012】自動検査・修復処理手段14は,転送用管理テーブル5を所定の時間間隔で周期的に監視し,転送用管理テーブル5に送信完了の情報が書き込まれたことを検出すると,送信の完了情報をコンピュータ2に通知し,コンピュータ2からのその完了情報に対する返答(状態情報)により転送データの整合性を検査する。その結果により,正常であれば通知済のステータスを転送用管理テーブル5に書き込み,転送データが不整合であり異常であれば,再送信するためのステータスを転送用管理テーブル5に書き込む。」

(ウ)「【0019】・・・(中略)・・・本実施例の転送用管理テーブル5は,コンピュータ1の共用DASD上に図2に示すような構造のファイルとして設けられる。転送用管理テーブル5のファイル編成は相対編成であり,相対番号がゼロ(ZERO)の先頭レコードは,制御レコード16である。その後に,送信ファイルおよび転送先サーバごとのデータレコード17が続く。・・・(中略)・・・
【0020】・・・(中略)・・・
【0021】・・・(中略)・・・
【0022】データレコード17は,例えば図3(B)に示すような項目からなる。図3(B)に示す各項目において,無効表示は,このレコードの内容が有効であるか否かを示す。「*」のとき無効であり,それ以外の場合には有効である。送信ファイル名は,サーバへ転送するファイルの名前である。送信ファイル番号は,送信ファイルに対して予め連番で付与された識別番号である。サーバ名は,転送先となるサーバの名称である。サーバ番号は,各サーバに対して連番で付与された識別番号である。受信ファイル名は,転送先のサーバにおいて受信したデータを格納するファイルの名前である。レコード件数は,送信するレコード件数である。送信開始年月日・時刻および送信終了年月日・時刻は,送信開始および送信終了の年月日および時刻であり,例えば先頭からの6桁で年月日を,続く残りの6桁で時刻(時間,分,秒)を表す。リトライ回数は,転送結果が不整合であった場合に何回まで再送信を繰り返すかを示すものである。処理モードは,転送時における転送の仕方を定めるモードを示し,レコードの全件分を送信する書換モード,更新分のみを送信する追加モード等がある。ステータスは,後述するような各処理手段の処理動作および処理結果を示す状態情報である。エラーコードは,エラーが発生した場合のエラーの種類を示す情報である。」

(エ)「【0030】図6および図9に示すように,自動検査・修復処理手段14は,タイマなどにより所定の周期で起動されると,ステップS21により転送用管理テーブル5における各データレコードのステータスを調べる。ステップS22において,転送用管理テーブル5のステータスが「送信済」のデータレコードがあれば,例えば送信レコード件数などの整合性のチェックに用いることができる情報を含む完了情報をサーバに通知する。ステップS23において,サーバから完了情報に対しての返答(ステータス)を受け取る。ステップS24において,その返答(ステータス)が「受信正常」であれば転送用管理テーブル5の該当するデータレコードのステータスを「通知済」に更新し,「受信異常」であれば「作成済」に更新する。以上の処理を所定の時間間隔で繰り返す。」

(オ)「【0038】自動検査・修復処理手段14は,ステップS61において「送信済」となったデータに関する完了情報をサーバに通知する。サーバ側の自動検査・修復処理手段15は,ステップS62においてホストコンピュータからの完了情報を受け取ると,ステップS63において受信したデータと完了情報との整合性をチェックする。受信データと完了情報とが一致すれば,ステップS64において転送用管理テーブル6のステータスを「受信正常」に更新する。受信データと完了情報とが不一致であれば,ステップS65において転送用管理テーブル6のステータスを「受信異常」に更新する。その後,ステップS66において,ステップS64又はステップS65で更新したステータスを返答としてホストコンピュータに対し通知する。
【0039】ホストコンピュータ側の自動検査・修復処理手段14は,ステップS67においてサーバからのステータスを受取る。ステップS68において,受け取ったステータスを判定し,受取ったステータスが「受信正常」であればステップS69の処理を行い,受取ったステータスが「受信異常」であればステップS52の処理によりステータスを「作成済」に戻す。サーバからの返答が「受信正常」の場合,ステップS69において転送用管理テーブル5のステータスを「通知済」に更新する。」

上記(ア)の段落【0001】における記載「本発明は,複数コンピュータ間における連携処理方式であって,特に目的のコンピュータへのファイル転送等を自動的に行うことができるようにしたコンピュータ間自動データ転送処理方式に関するもの」及び段落【0005】における記載「本発明は上記問題点の解決を図り,データ連携処理における転送可否の認識,処理の起動,処理後の検査,異常時の修復を,状態管理によって一元管理することにより自動で行い」、並びに(イ)の段落【0007】における記載「以下の説明では,データ転送は,コンピュータ1からコンピュータ2へ行われるものとする。」及び段落【0008】における記載「記憶装置3には送信データが格納され,記憶装置4には受信データが格納される。転送用管理テーブル5は,送信処理に必要な,予め与えられたデータ又は以下に説明する各処理手段により設定されたデータを格納するテーブルである。・・・(中略)・・・ 特に,転送用管理テーブル5,6には,ホストコンピュータ-サーバ間の転送処理の動作中の状態または動作完了時の状態を示す状態情報(以下,ステータスという)が格納される。」からすると、引用文献には、コンピュータ1とコンピュータ2との間でなされるデータ転送のサービス毎に、該データの転送処理の状態情報を転送用管理テーブルに保存するシステム(以下、「データ転送管理システム」という。)を用いてデータの転送をコンピュータが行うデータ転送方法が記載されている。

そして、(イ)の段落【0010】における記載「サーバであるコンピュータ2に対して記憶装置3に存在する送信データの送信を開始し,終了するまでの状態情報を転送用管理テーブル5に書き込む。」及び(ウ)の段落【0022】における記載「レコード件数は,送信するレコード件数である。送信開始年月日・時刻および送信終了年月日・時刻は,送信開始および送信終了の年月日および時刻であり,・・・(中略)・・・ステータスは,後述するような各処理手段の処理動作および処理結果を示す状態情報である。」からすると、前記転送用管理テーブルは、少なくともデータ転送の対象となるデータの送信開始及び送信終了時点の時間情報、データ転送の開始から終了するまでの処理動作を示す状態、該データ転送の処理結果及び送信するレコード件数を含む状態情報を保存する。

また、(ア)の段落【0003】における記載「連携処理の要求発生から実行までの処理,例えば,転送データの有無、転送処理動作手順,転送完了時の状態および転送データの整合性を操作員が監視しなければならず,操作員の負担が大きかった。」及び段落【0005】における記載「本発明は上記問題点の解決を図り,データ連携処理における転送可否の認識,処理の起動,処理後の検査,異常時の修復を,状態管理によって一元管理することにより自動で行い,操作者の負担を軽減する」からすると、引用文献記載の前記コンピュータは、連携処理の要求発生時、すなわちデータ転送の要求がなされた際、前記データ転送を状態管理により一元管理する。

そして、(イ)の段落【0010】における記載「自動起動処理手段12は,転送用管理テーブル5を所定の時間間隔で周期的に監視し,転送用管理テーブル5に送信可能の情報が書き込まれたことを検出すると,サーバであるコンピュータ2に対して記憶装置3に存在する送信データの送信を開始し」及び【0012】における記載「転送用管理テーブル5に送信完了の情報が書き込まれたことを検出すると,送信の完了情報をコンピュータ2に通知し,コンピュータ2からのその完了情報に対する返答(状態情報)により転送データの整合性を検査する。その結果により,正常であれば通知済のステータスを転送用管理テーブル5に書き込み,転送データが不整合であり異常であれば,再送信するためのステータスを転送用管理テーブル5に書き込む。」からすると、前記コンピュータは、前記転送用管理テーブル、すなわちデータ転送管理システムに該転送対象データの状態情報が記憶されていれば、該状態情報を参照して、該データ転送の整合性を検査して、直前の該データ転送の結果が異常終了であるか否かを判定する判定ステップを実行すると認められる。

そして、(ウ)の段落【0022】における記載「リトライ回数は,転送結果が不整合であった場合に何回まで再送信を繰り返すかを示すものである。」からすると、
引用文献記載の前記コンピュータは、前記判定ステップにより該データ転送の結果が異常終了であると判定されたときに、転送対象データのデータ転送を実行する再転送処理ステップを実行すると解される。

したがって、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

コンピュータ1とコンピュータ2との間でなされるデータ転送のサービス毎に、少なくとも該データの送信開始及び送信終了時点の時間情報、データ転送の開始から終了するまでの処理動作を示す状態、該データ転送の処理結果及び送信するレコード件数を含む状態情報を転送用管理テーブルに保存することにより管理するデータ転送管理システムを用いてデータの転送をコンピュータが行うデータ転送方法であって、
前記コンピュータが、
データ転送の要求がなされた際、前記データ転送管理システムに該転送対象データの状態情報が記憶されていれば、該状態情報を参照して、該データ転送の整合性を検査して、直前の該データ転送の結果が異常終了であるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより該データ転送の結果が異常終了であると判定されたときに、転送対象データのデータ転送を実行する再転送処理ステップと
を実行することを特徴とするデータ転送方法。

(3)対比
ここで、本願補正発明と引用発明とを比較する。
引用発明の「コンピュータ1」及び「コンピュータ2」は、それぞれ、本願補正発明の「第一の計算機システム」及び「第二の計算機システム」に相当する。
また、引用発明の「状態情報」及び「転送用管理テーブル」は、本願補正発明の「転送履歴情報」及び「サービス管理簿」に相当する。
また、引用発明の「該データの送信開始及び送信終了時点の時間情報」及び「データ転送の処理結果」は、それぞれ、本願補正発明の「該データの転送時点の時間情報」及び「データ転送の結果」に相当する。
また、引用発明の「データ転送管理システム」は、本願補正発明の「データ管理システム」に相当する。
また、引用発明の「判定ステップ」は、本願補正発明の「第一の判定ステップ」に相当する。

そして、引用発明の「再転送処理ステップ」と、本願補正発明の「途中転送処理ステップ」とはともに、データ転送の結果が異常終了であると判定された転送対象データを再度転送する処理ステップである点で共通する。

よって、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
第一の計算機システムと第二の計算機システムとの間でなされるデータ転送のサービス毎に、少なくとも該データの転送時点の時間情報及び該データ転送の結果を含む転送履歴情報をサービス管理簿に保存することにより管理するデータ管理システムを用いてデータの転送をコンピュータが行うデータ転送方法であって、
前記コンピュータが、
データ転送の要求がなされた際、前記データ管理システムに該転送対象データの転送履歴情報が記憶されていれば、該転送履歴情報を参照して、異常終了であるか否かを判定する第一の判定ステップと、
前記第一の判定ステップにより該データ転送の結果が異常終了であると判定されたときに、転送対象データを再度転送する処理ステップと
を実行することを特徴とするデータ転送方法。

(相違点1)
本願補正発明の「サービス管理簿」に「異常終了時に転送されていないデータを特定する情報」を「転送履歴情報」として含むものであるのに対して、引用発明の「転送用管理テーブル」に「異常終了時に転送されていないデータを特定する情報」を「状態情報」として含むものではない点。

(相違点2)
本願補正発明は、「第一の判定ステップにより該データ転送の結果が異常終了であると判定されたときに、前記転送履歴情報を参照し、前回のデータ転送以降、転送対象となるデータの更新が行われたかを判定する第二の判定ステップ」を実行するのに対して、引用発明は、「判定ステップにより該データ転送の結果が異常終了であると判定されたときに、前記状態情報を参照し、前回のデータ転送以降、転送対象となるデータの更新が行われたかを判定する第二の判定ステップ」を実行するものではない点。

(相違点3)
本願補正発明は、「第二の判定ステップにてデータ更新されていると判定された時に、転送対象データの先頭からデータ転送を実行し、前記第二の判定ステップにてデータ更新されていないと判定されたときに、前記データ管理システムの転送履歴情報を参照し、転送されていないデータの転送処理を行う」のに対して、引用発明は、「第二の判定ステップにてデータ更新されていると判定された時に、転送対象データの先頭からデータ転送を実行し、前記第二の判定ステップにてデータ更新されていないと判定されたときに、前記データ管理システムの状態情報を参照し、転送されていないデータの転送処理を行う」ものでない点。

(4)判断
まず、相違点1について検討する。
本願の優先日前である平成9年10月7日に頒布された刊行物である、特開平9-266494号公報に(注意:下線は便宜上、当審にて付与したもの。)
「【0008】本発明は、 ・・・(中略)・・・ 大容量のデータについても、ネットワークのデータ伝送誤りの劣化や端末での一時的な受信性能劣化のためのデータ紛失が起こる場合でも、大容量のデータを安定して多数の端末に対して確実に配送可能とする大容量データ配送方法及びシステムを提供することを目的とする。」、
「【0010】また、本発明は、サーバにおいて、連続するデータをシーケンス番号を付与したブロックに分割し、複数のブロックを既存のパケット配送手順により配送し、配送の成否を記録し、 ・・・(中略)・・・ サーバは、受信の成否の情報に基づいて、配送の成否の情報を修正し、修正された配送の成否の情報に基づいて配送が失敗したブロックについて再送を行う。」、
「【0046】 ・・・(中略)・・・ 配送処理部406Sの基本配送処理部502Sは、当該ブロック転送の成否をAP処理部403Sに報告する。AP処理部403Sでは、ブロック管理テーブル4031Sに当該ブロック配送の成否を記録する。」と記載されているように、
サーバ(データ配送元コンピュータ)から端末(データ配送先コンピュータ)へのデータの配送に際して、データ配送元コンピュータは、前記配送対象であるデータをシーケンス番号を付与したブロックに分割し、各ブロックをデータ配送先コンピュータに転送し、配送の異常終了時に転送されていないブロックを特定する情報(すなわち、シーケンス番号)を記録、すなわち保存することにより、転送されていないブロックの再送処理を可能とする、データ配送方法は、当業者にとって周知の技術である。
してみると、引用発明と前記周知技術とはともにデータ転送方法に関する共通技術分野に属することから、引用発明のデータ転送管理システムに前記周知技術を適用することで、本願補正発明のように、引用発明の「転送用管理テーブル」に「異常終了時に転送されていないデータを特定する情報」を「状態情報」として含む構成とすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。
よって、相違点1は格別のものではない。

次に、相違点2及び相違点3について検討する。
本願の優先日前である平成10年12月18日に頒布された刊行物である、特開平10-334001号公報に(注意:下線は便宜上、当審にて付与したもの。)
「【要約】
【課題】情報提供装置から情報処理装置への全てのデータを送信できなかった場合に、再度のデータ送信において、送信すべきデータ量を縮小して送信することにより、伝送効率を向上させる。
【解決手段】情報提供装置が情報処理装置に送信する情報の全てのデータを、その情報処理装置が取得できなかった場合に、情報処理装置による所定情報の取得要求に応じて、情報提供装置が、前記情報のうちの取得できなかったデータのみを送信することを特徴とするデータ伝送システム。」、
「【0042】次に、図6は、図5のステップP1で一時ファイルを作成した後、データ取得要求(3)をサーバ15が受け取るまでの間に、その一時ファイルを作成したもとのデータベース16が更新(P2)された場合の流れを示す。
【0043】この場合に、引き続きステップP1で作成した一時ファイルのデータを携帯情報端末装置10に送信するとなると、携帯情報端末装置10は、古いデータに基づいた情報を受け取ることとなる。そこで、ステップP1における一時ファイルの格納の際に、その一時ファイルの作成日時データも共に格納するようにする。そして、ステップS34でデータ取得要求(3)を受け取ったサーバ15は、一時ファイルの作成日時データと、データベース16の最新の更新日時データとを比較する。その比較によって、もし作成日時が更新日時よりも新しい場合は、一時ファイルのデータは最新のものであるとして、図5で示しように、データb以降のデータを携帯情報端末装置10に送信する。」と記載されているように、
情報提供装置から情報処理装置へ全てのデータを送信できなかった場合に、再度のデータ送信において、前回のデータ転送以降に該転送対象となるデータの更新が行われたかを判定し、データ更新されていないと判定された時に、前記データのうちの転送されていないデータの転送処理を行うデータ再送方法は、当業者にとって周知の技術である。
なお、データ更新されていると判定された時に、転送対象データのすべて、すなわち転送対象データの先頭からデータの再送を実行することは、当業者にとって自明である。

してみると、引用発明の「再転送処理ステップ」に前記周知技術を適用することによって、本願補正発明のように、判定ステップにより該データ転送の結果が異常終了であると判定されたときに、状態情報を参照し、前回のデータ転送以降、転送対象となるデータの更新が行われたかを判定する第二の判定ステップを実行し、
前記第二の判定ステップにてデータ更新されていると判定された時に、転送対象データの先頭からデータの転送を実行し、前記第二の判定ステップにてデータ更新されていないと判定された時に、前記データ管理システムの状態情報を参照し、転送されていないデータの転送処理を行うものとして構成することは、当業者であれば、適宜なし得たことである。
よって、相違点2及び相違点3は格別のものではない。

上記で検討したごとく、相違点1?相違点3はいずれも格別のものではなく、そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。

したがって、本願補正発明は上記引用発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件手続補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。
したがって、本件手続補正は、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
平成17年9月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項4に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成17年3月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「第一の計算機システムと第二の計算機システムとの間でなされるデータ転送のサービス毎に、少なくとも該データの転送時点の時間情報、該データ転送の結果、及び異常終了時に転送されていないデータを特定する情報を含む転送履歴情報を管理するデータ管理システムを用いてデータの転送をコンピュータが行うデータ転送方法であって、
前記コンピュータが、
データ転送の要求がなされた際、前記データ管理システムに該転送対象データの転送履歴情報が記憶されていれば、該転送履歴情報を参照して、直前の該データ転送の結果が異常終了であるか否かを判定する第一の判定ステップと、
前記第一の判定ステップにより該データ転送の結果が異常終了であると判定されたときに、前記転送履歴情報を参照し、前回のデータ転送以降、転送対象となるデータの更新が行われたかを判定する第二の判定ステップと、
前記第二の判定ステップにてデータ更新されていると判定された時に、転送対象データの先頭からデータ転送を実行し、前記第二の判定ステップにてデータ更新されていないと判定されたときに、前記データ管理システムの転送履歴情報を参照し、転送されていないデータの転送処理を行う途中転送処理ステップと
を実行することを特徴とするデータ転送方法。」

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献およびその記載事項は、前記「第2.平成17年9月26日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」の「(2)引用文献」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「第2.平成17年9月26日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」の「(1)補正後の発明」に記載された本願補正発明から本願発明を特定するために必要な事項である「少なくとも該データの転送時点の時間情報、該データ転送の結果、及び異常終了時に転送されていないデータを特定する情報を含む転送履歴情報をサービス管理簿に保存することにより管理するデータ管理システム」から「サービス管理簿に保存することにより」を省き、「少なくとも該データの転送時点の時間情報、該データ転送の結果、及び異常終了時に転送されていないデータを特定する情報を含む転送履歴情報を管理するデータ管理システム」としたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに特定の構成要件に限定要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.平成17年9月26日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」の「(4)判断」に記載したとおり、引用発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-23 
結審通知日 2008-01-29 
審決日 2008-02-15 
出願番号 特願2000-42060(P2000-42060)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 稔  
特許庁審判長 赤川 誠一
特許庁審判官 橋本 正弘
桑江 晃
発明の名称 データ転送システム、データ転送方法およびデータ転送プログラムを記録した記録媒体  
代理人 伊東 忠彦  

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