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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1175626 |
審判番号 | 不服2003-1200 |
総通号数 | 101 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-05-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-01-20 |
確定日 | 2008-04-02 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第259959号「グラフィクス・パイプラインを並列化する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 4月28日出願公開、特開平10-111858〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成9年9月25日(パリ条約による優先権主張1996年9月30日、米国)の出願であって、平成14年10月21日付け拒絶査定に対して、平成15年1月20日付けで査定不服審判請求がなされると共に手続補正がなされ、これに対して平成18年11月24日付け(発送は平成18年11月28日)で拒絶理由が通知され、平成19年5月31日付けで意見書を提出すると共に手続補正がなされたものの、該手続補正は、同年8月8日付けで決定をもって却下され、該決定は確定した。 2.本願明細書 上述したとおり、平成19年5月31日付け提出の手続補正書に係る手続は却下決定がなされたことから、本願の明細書は平成15年1月20日付け手続補正により補正された明細書となり、図面は出願当初のものとなる。 そして、請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年1月20日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「1つのスレッドにデータを送るように設計されたアプリケーションからの階層型グラフィクス・データを処理するための、データ処理装置におけるデータ処理方法において、前記データ処理装置は、第1スレッドと第2スレッドを少なくとも含む複数のスレッド及びグラフィクス表示装置を有し、 前記方法は、 複数のスレッド内の第1スレッドにて、前記アプリケーションからのグラフィクス・データを受信するステップと、 データ処理装置が、前記グラフィクス・データのストリームを複数の作業グループに分け、そして前記複数の作業グループ内の各作業グループにシーケンス番号を関連付けるステップであって、前記複数の作業グループの各作業グループは、各作業グループのために必要とされる処理の予測量に基づいてグループ化された複数のグラフィックス・プリミティブを含むところの前記ステップと、 前記複数のスレッドのそれぞれに前記複数の作業グループの一部分を割当てるステップと、 複数のスレッド内の一つのスレッドにおいて前記複数の作業グループの前記一部分を受信することに応答し、前記一部分を処理して、処理済み作業グループを含む処理済み部分を生成するステップと、 前記処理済み作業グループを前記一つのスレッドに関連付けられたメモリ内に保存するステップと、及び 前記処理済み作業グループに関連付けられたシーケンス番号によって示された順序で、前記処理済み作業グループを各メモリから前記グラフィクス表示装置に送るステップと、 を含む方法。」 3.拒絶理由 当審は、平成18年11月24日付けで、以下の拒絶理由を通知した。 「本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。 記 (1)本願請求項1の「…各作業グループのために必要とされる処理の予測量に基づいてグループ化された複数のグラフィックス・プリミティブを含むところの前記ステップ…」と記載されている事項について、以下の点が不明であるから、本願請求項1に係る発明は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (1-1)「処理の予測量」が何に対する量なのか不明である。つまり、本願請求項1に係る発明ではデータ処理は第1スレッドと第2スレッドによってなされているが、前記「処理の予測量」が各スレッドに対しての予測量であるのか、またはスレッドに対しての総合的になす予測量(スレッドが実行される全てのプロセッサに対する予測量)なのか、上述した記載内容では一義的に決定できない。 (1-2)「処理の予測量」がどのような量であるのか不明である。つまり、本願請求項1に係る発明ではデータ処理は第1スレッドと第2スレッドによってなされているが、前記「予測量」は各スレッドが処理する時間を示しているのか、またはスレッド(スレッドが実行されるプロセッサ)の容量を示しているのか、上述した記載内容では一義的に決定できない。 …(中略)… (2)本願請求項1には、「…データ処理装置が、前記グラフィクス・データのストリームを複数の作業グループに分け、そして前記複数の作業グループ内の各作業グループにシーケンス番号を関連付けるステップであって、前記複数の作業グループの各作業グループは、各作業グループのために必要とされる処理の予測量に基づいてグループ化された複数のグラフィックス・プリミティブを含むところの前記ステップと、…」と記載されているが、前記「シーケンス番号を関連付けるステップ」での処理内容が不明である。 つまり、前記「シーケンス番号を関連付けるステップ」で行われる処理が、各作業グループを処理の予測量によって複数の作業グループに大別しているのか、ストリームを複数の作業グループに大別した後、処理の予測量に基づいて各作業グループにグラフィックス・プリミティブを付与しているだけなのか、上述した記載内容では一義的に決定できない。 よって、本願請求項1に係る発明は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 …(後略)…」 4.判断 そこで、上記拒絶理由の(1),(2)について以下で検討する。 上記拒絶理由の(1)(1-1)で指摘した「「処理の予測量」が何に対する量なのか不明である」点や、同じく(1)(1-2)で指摘した「「処理の予測量」がどのような量であるのか不明である」点、上記拒絶理由の(2)で指摘した「シーケンス番号を関連付けるステップ」での処理内容が不明である点について、審判請求人(出願人)は平成19年5月31日付けの意見書で以下の主張をしている。 「【意見の内容】 …(中略)… 2.特許法第36条違反の拒絶理由について …(中略)… 2.2 拒絶理由(1-1)及び(1-2)について 別途提出の手続補正書に示すように、請求項1において「処理の予測量」の用語を使用しておりません。 なお、本補正では、「前記複数のスレッドの各々で、前記作業要素ツリーの各要素を走査し、当該要素がプリミティブ情報であればその要素に関する作業量を基に前記グラフィクス・データのストリームを複数の作業グループに分けて、当該作業グループの各々にシーケンス番号を関連付けるステップと、」とあるように、プリミティブである作業要素の作業量(例えば、処理時間や要素サイズなど)が作業グループを分ける基準であることを特徴としています。本補正に関する具体的な記載は、例えば、『「0013」…変数local_currentは、どのWGが現在処理されているかを示すのに用いられ、local_targetは、特定のスレッドがWGを処理しているかどうかを確認するため用いられる(ステップ306)。』、更に、『「0020」…要素が実行構造要素でない場合、プロシジャは次に要素がプリミティブかどうか確認する(ステップ612)。次にプロシジャは変数local_currentが変数local_targetに等しいかどうか確認する(ステップ614)。変数local_targetは、特定のスレッドが処理する作業グループのシーケンス番号であるローカル変数である。変数が等しい場合、グラフィクス・パイプライン・プリミティブ処理が行われる(ステップ616)。その後、プロシジャは変数local_WG_sizeをWG_size(element)だけ増分する(ステップ618)。…プロシジャは次に、変数local_WG_sizeがWG_sizeの基準を満たしているかどうか確認する(ステップ620)。変数が基準を満たしている場合、プロシジャは次にStartWGプロシジャの実行に進む(ステップ622)。』が挙げられます。 つまり、階層型グラフィックス・データを第1スレッドで受信すると、データの階層性を利用して作業要素(WE)をツリー構造にしていきます。その際、『「0001」表示のためにグラフィックス・データ及びコマンドを送る際、制御ブロック202はアプリケーション200からプリミティブを受信する。』とあるように、第1スレッドでプリミティブ情報も入手するので、結局、制御ブロック202によって生成されるツリーの各要素は、ツリー走査の実行指示やパイプラインのための属性である他に、上記プリミティブでもあります(図7参照)。そこで、要素がプリミティブのときは、初期値0に設定された作業グループのサイズ(local_WG_size)を(段落「0018」)、所定の基準になるまで、プリミティブ要素に遭遇するたびにその要素のサイズ分(local_WG(element))加算していくことにより、作業グループのグルーピング化を図ることが可能です。上述した補正後の請求項1における「前記複数のスレッドの各々で、前記作業要素ツリーの各要素を走査し、当該要素がプリミティブ情報であればその要素に関する作業量を基に前記グラフィクス・データのストリームを複数の作業グループに分けて、当該作業グループの各々にシーケンス番号を関連付けるステップと」は、このことを表しております。 2.3 拒絶理由(2)について 上記2.2で述べたように、「前記複数のスレッドの各々で、前記作業要素ツリーの各要素を走査し、当該要素がプリミティブ情報であればその要素に関する作業量を基に前記グラフィクス・データのストリームを複数の作業グループに分けて、当該作業グループの各々にシーケンス番号を関連付けるステップと、」に補正しました。これより、「グラフィクス・データのストリーム」が、プリミティブ要素の作業量を基にして、「複数の作業グループ」に大別されることがご理解されるものと思料致します。 …(後略)…」 (a)上記拒絶理由(1)について 本願明細書の発明の詳細な説明において、段落【0011】には「…(前略)…制御ブロック202は作業要素(WE)を作成する。…(中略)…走査の間、走査ブロック204は、本発明の好適な実施例に従ってWEを複数のセグメントに分ける。各セグメントは作業グループ(WG)とも呼ばれ、各WGに含まれるWEは制限されない。WGの中のWEの数は、WGの予測処理時間等、様々な要因により決定され得る。…(後略)…」と記載されており、本願特許請求の範囲の請求項1に記載されている「処理の予測量」に作業グループの予測処理時間が含まれていることは理解できるが、「さまざまな要因」が作業グループにおける何を示しているのか不明であるため、様々な要因により決定され得る「処理の予測量」が如何なる要因に基づいたどのような決定による量を想定しているのか不明である。 また、本願明細書の発明の詳細な説明において、段落【0020】には「 …(前略)…変数local_targetは、特定のスレッドが処理する作業グループのシーケンス番号であるローカル変数である。変数が等しい場合、グラフィクス・パイプライン・プリミティブ処理が行われる(ステップ616)。その後、プロシジャは変数local_WG_sizeをWG_size(element)だけ増分する(ステップ618)。プロシジャはまた、変数local_currentとlocal_targetが互いに等しくない場合はステップ614からステップ618に直接進む。ステップ618は、このスレッドによって処理されている現在の作業グループから現在の作業量を計算するために用いられる。…(後略)…」と記載されており、特定のスレッドによって処理されている現在の作業グループから現在の作業量を計算することが記載されているが、グラフィクス・パイプライン・プリミティブ処理が行われる場合には複数のスレッドが使用されることとなるため、このうちのいずれを「特定のスレッド」とし、パイプライン処理されているスレッドのいずれを「作業量」の算出対象とするのか不明である。 さらに、平成19年5月31日付けの意見書で述べる「本補正」とは、平成19年5月31日付け手続補正を示すものであるが、当該手続補正は上記1.で述べるように却下されているので、上記主張は、請求項の記載に基づかないものである。 してみると、本願特許請求の範囲の請求項1は、依然として「処理の予測量」が何に対する量なのか、「処理の予測量」がどのような量であるのか、本願明細書の発明の詳細な説明を参酌しても一義的に決定することができず不明である。 (b)上記拒絶理由(2)について 「処理の予測量」について、平成19年5月31日付けの意見書では、「プリミティブである作業要素の作業量(例えば、処理時間や要素サイズなど)が作業グループを分ける基準であることを特徴としています。」と述べているが、本願特許請求の範囲の請求項1には「…各作業グループのために必要とされる処理の予測量に基づいてグループ化された複数のグラフィックス・プリミティブを含むところの前記ステップ…」と記載されており、グラフィックス・プリミティブのグループ化が「処理の予測量」に基づいて行われているとも解釈できることから、本願特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項は、必ずしも「プリミティブである作業要素の作業量(例えば、処理時間や要素サイズなど)が作業グループを分ける基準であること」を一義的に示す内容とはなっていない。 してみると、本願特許請求の範囲の請求項1は、依然として「シーケンス番号を関連付けるステップ」での処理内容が不明のままである。 以上のとおりであるから、本願特許請求の範囲の請求項1に係る記載は、特許を受けようとする発明が明確に開示されていないことから、本願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 5.むすび 以上のとおり、本願特許請求の範囲の請求項1に係る記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-09-26 |
結審通知日 | 2007-10-01 |
審決日 | 2007-11-20 |
出願番号 | 特願平9-259959 |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鳥居 稔、川崎 優 |
特許庁審判長 |
吉岡 浩 |
特許庁審判官 |
相崎 裕恒 青木 重徳 |
発明の名称 | グラフィクス・パイプラインを並列化する方法及び装置 |
代理人 | 野田 雅一 |
代理人 | 山田 行一 |
代理人 | 池田 成人 |