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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01R |
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管理番号 | 1175658 |
審判番号 | 不服2005-23846 |
総通号数 | 101 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-05-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-12-09 |
確定日 | 2008-04-04 |
事件の表示 | 特願2001- 14561「基板用コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月 2日出願公開、特開2002-216878〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年1月23日の出願であって、平成17年11月7日付け(発送:11月9日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月9日に拒絶査定不服審判が請求されたものであり、平成19年11月9日付け(発送:11月14日)で当審において拒絶理由が通知され、これに対して、平成20年1月15日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成20年1月15日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。 「【請求項1】 電気回路基板に対向する取付面からPCB端子が取付方向へ突出している基板用コネクタであって、 前記PCB端子よりも長く、前記取付面から取付方向へ突設された位置決め用突起が、同一幅からなる突起本体の先端部に幅が漸減してなる丸みを有する形状であり、前記電気回路基板のスルーホールに挿入される前記PCB端子よりも先に、前記電気回路基板に設けた位置決め孔へ挿入されると共に、先端部を縦割り溝により少なくとも2つに分割され、前記位置決め孔への挿入時に、該位置決め孔の半径方向へ弾性変形可能とされており、 更に、前記基板用コネクタの絶縁ハウジング両側面の下端に設けられて前記取付方向へ突出し、先端に係止突起を有している取付用アームが、前記電気回路基板に設けられた取付部に係止されることにより、前記電気回路基板に固定されることを特徴とする基板用コネクタ。」 3.引用刊行物とその記載内容 当審での拒絶理由に引用した刊行物は、以下のものである。 刊行物1:特開平9-7711号公報(以下、「引用例1」という。) 刊行物2:特開平8-255643号公報(以下、「引用例2」という。) (1) 引用例1には、図面とともに、次の記載がある。 ・「図1,図2に示した様に、本発明の可動ガイドプレートを有する電気コネクタは、ハウジング2とハウジング2に配設された複数の端子3より成る電気コネクタ1と、上記電気コネクタ1の底部4に装着されるハウジング2に配設された複数の端子3のテール部5の各々をガイド穴13によって整列保持すると共に、上記複数の端子3のテール部5を整列保持した状態で上下に可動する可動ガイドプレート11より成るものであり、上記電気コネクタ1に装着される可動ガイドプレート11は、電気コネクタ1の底部4の後方に形成されたガイドプレート収容空間7に嵌合自在に配設されているものである。」(【0011】) ・「さらに、上記可動ガイドプレート11のガイドプレート本体12の底面18には、プリント回路基板21に形成された位置決め穴22に嵌合するガイドポスト19と、電気コネクタ1をプリント回路基板21に実装した際に可動ガイドプレート11の底面18がプリント回路基板21の表面に密着することを防止する為の小突起20が形成されているものであり、また、上記電気コネクタ1のハウジングの底部4には電気コネクタ1をプリント回路基板21固定する為の取り付けペグ10形成されているものである。」(【0016】) ・「そして、可動ガイドプレートを有する電気コネクタのプリント回路基板21への実装を示したものが、図10,図11,図12であって、可動ガイドプレート11のガイドプレート本体12の底面18に形成されたガイドポスト19をプリント回路基板21に形成された位置決め穴22に嵌合させることによって、可動ガイドプレートを有する電気コネクタをプリント回路基板21上の正確な位置に位置決めすることができるものである。」(【0027】) ・「そして、上記ガイドポスト19によってプリント回路基板21上の正確な位置に位置決めされた可動ガイドプレートを有する電気コネクタをプリント回路基板21側へ押圧することにより、電気コネクタ1に装着された可動ガイドプレート11が電気コネクタ1の底部4の後方に形成されたガイドプレート収容空間7に嵌合し収容されると共に、電気コネクタ1のハウジング2の底部4に形成された取り付けペグ10がプリント回路基板21の取り付け穴23に嵌合し、可動ガイドプレートを有する電気コネクタのプリント回路基板21への実装が終了するものである。」(【0028】) ・「さらに、上記可動ガイドプレートを有する電気コネクタのプリント回路基板21への実装時には、電気コネクタ1のハウジング2に配設された複数の端子3のテール部5が可動ガイドプレート11のガイドプレート本体12のガイド穴13によって整列保持されながらプリント回路基板21にスルーホール24に挿入されることとなるものであり」(【0029】) ・図1に、「各取り付けペグ10が、その先端に係止突起を備える」ことが図示されているとともに、「ガイドポスト19が、同一幅からなるポスト本体の先端部に幅が漸減してなる、頂部を切断した円すい面を有する形状である」ことが図示されている。 以上を総合すると、引用例1には、 「プリント回路基板に対向する取付面から端子のテール部が取付方向へ突出している電気コネクタであって、 前記端子のテール部よりも長く、前記取付面から取付方向へ突設されたガイドポストが、同一幅からなるポスト本体の先端部に幅が漸減してなる頂部を切断した円すい面を有する形状であり、前記ガイドポストが、前記プリント回路基板のスルーホールに挿入される前記端子のテール部よりも先に、前記プリント回路基板に設けた位置決め穴へ挿入されると共に、 前記電気コネクタのハウジングの底部両側に設けられて前記取付方向へ突出し、先端に係止突起を有している取り付けペグが、前記プリント回路基板に形成された取り付け穴に係止されることにより、前記プリント回路基板に固定される電気コネクタ。」 の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 (2)引用例2には、図1?4とともに ・「【実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。 (実施の形態1)図1(イ)、(ロ)、(ハ)は本発明のプリント基板用コネクタで、端子が組込まれた本体15と、本体15の左右両側面に設けられ前記本体15をプリント基板に取付ける為のロックアーム11とから構成されている。この本体15はプラスチック等で形成されている。尚、本体15に組込まれた前記端子のプリント基板に取付く部分が基板取付端子16で、相手コネクタと嵌合する部分がコネクタ取付端子17である。さらに前記基板取付端子16とコネクタ取付端子17は、各々が本体15から突出している。このプリント基板用コネクタ10のロックアーム11先端のロック部12の下面は、ロック部12をプリント基板20のロック穴21に挿入し易いようにテーパー状に形成されており、また、該ロック部12の上面13はテーパー状に傾斜して形成されている。」(【0005】) ・「(実施の形態2)図3は本発明のプリント基板用コネクタ10において、ロックアーム11部分の変形例を示す拡大説明図である。このプリント基板用コネクタ10は、ロックアーム11のロック部12のテーパー状に傾斜して形成された上面13の先端部分が鉤状に形成され、この鉤状部19がロック穴21の下縁部22に係止されるものである。このプリント基板用コネクタ10では、ロックアーム11とプリント基板20との接触面積が増加してプリント基板用コネクタ10がプリント基板20に、より安定して固定される。又ロックアーム11がプリント基板のロック孔21から抜け難い為ロック部上面13のテーパー角度θをより大きくとることも可能である。 (実施の形態3)図4は、本発明のプリント基板用コネクタ10において、ロックアーム11部分のさらに他の変形例を示す拡大説明図である。プリント基板用コネクタ10は、ロックアーム11先端のロック部12の上面13がテーパー状(テーパー角度θ=40度)に傾斜して形成されている。」(【0010】?【0011】) 以上を総合すると、引用例2には、 「コネクタ本体15両側面の下端に設けられて取付方向へ突出し、先端にテーパ状に形成されたロック部12を有しているロックアーム11が、プリント基板20に設けられたロック穴21に係止されることにより、前記プリント基板20に固定されるプリント基板用コネクタ10」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。 4.発明の対比 本願発明と引用発明1を対比するに、引用発明1の「プリント回路基板」は本願発明の「電気回路基板」に相当し、以下同様に、「端子のテール部」は「PCB端子」に、「電気コネクタ」は「基板用コネクタ」に、「ガイドポスト」は「位置決め用突起」に、「ポスト本体」は「突起本体」に、「ハウジング」は「絶縁ハウジング」に、「位置決め穴」は「位置決め孔」に、「プリント回路基板に形成された取り付け穴」は「電気回路基板に設けられた取付部」に、それぞれ相当する。 また、引用発明1の「取り付けペグ」は、基板用コネクタの絶縁ハウジング両側下部に設けられて取付方向へ突出し、先端に係止突起を有している取付具である限りにおいて、本願発明の「取付用アーム」に相当する。 したがって、両者は、 「電気回路基板に対向する取付面からPCB端子が取付方向へ突出している基板用コネクタであって、 前記PCB端子よりも長く、前記取付面から取付方向へ突設された位置決め用突起が、同一幅からなる突起本体の先端部に幅が漸減してなる形状であり、前記電気回路基板のスルーホールに挿入される前記PCB端子よりも先に、前記電気回路基板に設けた位置決め孔へ挿入されると共に、 更に、前記基板用コネクタの絶縁ハウジング両側下部に設けられて前記取付方向へ突出し、先端に係止突起を有している取付具が、前記電気回路基板に設けられた取付部に係止されることにより、前記電気回路基板に固定されることを特徴とする基板用コネクタ。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 (相違点1) 位置決め用突起における同一幅からなる突起本体の先端部の幅が漸減してなる部位の形状が、本願発明では「丸みを有する形状」であるのに対し、引用発明1では「頂部を切断した円すい面を有する形状」である点。 (相違点2) 位置決め用突起が、本願発明では「先端部を縦割り溝により少なくとも2つに分割され、前記位置決め孔への挿入時に、該位置決め孔の半径方向へ弾性変形可能とされている」のに対し、引用発明1では、かかる構成を具備していない点。 (相違点3) 取付具が、本願発明では「絶縁ハウジング両側面の下端に設けられた先端に係止突起を有している取付アーム」であるのに対し、引用発明1では「絶縁ハウジングの底部両側に設けられた先端に係止突起を有している取り付けペグ」である点。 5.当審の判断 以下、各相違点につき検討する。 (相違点1について) コネクタの技術分野において、位置決め用突起の挿入を容易とするため、突起先端部を面取りしたりテーパを付すことが広く行われており、その具体的形状として「丸みを有する形状」を採用することは、従来より周知の技術手段である[必要なら、一例として、実願昭62-200965号(実開平1-104665号)のマイクロフィルムにおける「コネクタ本体底面のポッチ9」参照]。 よって、引用発明1において位置決め用突起の突起本体の先端部の幅が漸減してなる部位の形状を「頂部を切断した円すい面を有する形状」に換えて「丸みを有する形状」とすることは、前記周知の技術手段に倣って、当業者が、容易に想到し得た事項である。 (相違点2について) 基板に設けた孔に挿入される突起の先端部を縦割り溝により2つに分割し、前記孔への挿入時に、該孔の半径方向へ弾性変形可能とすることは、従来より周知の技術手段である[必要なら、一例として、特公平6-9152号公報の【0027】参照]。 よって、引用発明1における位置決め用突起に前記周知の技術手段を適用して相違点2の構成とすることは、当業者が、容易に想到し得た事項である。 (相違点3について) 本願発明と引用発明2を対比すると、引用発明2の「コネクタ本体」は本願発明の「絶縁ハウジング」に相当し、以下同様に、「テーパ状に形成されたロック部」は「係止突起」に、「ロックアーム」は「取付用アーム」に、「プリント基板」は「電気回路基板」に、「ロック穴」は「取付部」に、「プリント基板用コネクタ」は「基板用コネクタ」に、それぞれ相当する。 したがって、引用発明2は、 「絶縁ハウジング両側面の下端に設けられて取付方向へ突出し、先端に係止突起を有している取付用アームが、電気回路基板に設けられた取付部に係止されることにより、前記電気回路基板に固定される基板用コネクタ」と言い換えることが出来る。 してみれば、引用発明1における取付具である「絶縁ハウジングの底部両側に設けられた先端に係止突起を有している取り付けペグ」に換えて「絶縁ハウジング両側面の下端に設けられた先端に係止突起を有している取付アーム」を採用することは、引用発明2に倣って、当業者が、容易に想到し得た事項である。 また、本願発明により得られる効果について検討しても、引用例1、2に記載の発明及び周知の技術手段から、当業者であれば、予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。 6.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1、2に記載の発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-02-01 |
結審通知日 | 2008-02-06 |
審決日 | 2008-02-19 |
出願番号 | 特願2001-14561(P2001-14561) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01R)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井上 哲男 |
特許庁審判長 |
岡本 昌直 |
特許庁審判官 |
前田 仁 今井 義男 |
発明の名称 | 基板用コネクタ |
代理人 | 本多 弘徳 |
代理人 | 小栗 昌平 |
代理人 | 市川 利光 |