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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) A63K
管理番号 1175737
判定請求番号 判定2007-600076  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2008-05-30 
種別 判定 
判定請求日 2007-10-09 
確定日 2008-04-08 
事件の表示 上記当事者間の特許第3075648号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号説明に示す「グラウンド」は、特許第3075648号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第一 請求の趣旨
本件判定請求人である住化タケダ園芸株式会社及び株式会社NIPPOコーポレーションは、「被請求人が「RC樹皮繊維」と称しているスギおよびヒノキの樹皮を長さ3?5cmに粉砕して得た繊維状物をグラウンドの土に混入したグラウンド(以下、「イ号」と称する)」が、特許第3075648号の請求項1、3、4、5に係る発明の技術的範囲に属するとの判定を求めるものである。

第二 本件特許発明
本件特許第3075648号に係る発明についての出願は、平成4年12月25日(優先権主張平成3年12月27日)の出願であって、平成12年6月9日にその発明について特許の設定登録がなされた。
そして、本件特許第3075648号の請求項1、3、4、5に係る発明(以下、請求番号と対応させて「本件特許発明1」、「本件特許発明3」、「本件特許発明4」、「本件特許発明5」と、また、すべてを指す場合には「本件特許発明」という。)は、平成14年3月1日付けで訂正され、平成14年4月26日付け訂正認容審決がなされ、平成14年5月10日で確定した特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、3、4、5に記載されたとおりのものであり、これを構成要件に分説すると次のとおりである。

【請求項1】
A:スギ・ヒノキ・ヒバのうちから選択される一種または二種以上の樹木の木質部の皮層を細切りして得られる皮層細切片からなり、
B:前記皮層細切片の集合体が鳥の羽毛の外観を呈するか、
C:または前記皮層細切片の直径が0.1mm?5mm、長さが10mm?100mmである、
D:走行及び歩行設備の敷設緩衝材用添加物。
【請求項3】
A1:スギ・ヒノキ・ヒバのうちから選択される一種または二種以上の樹木の木質部の皮層ごと細切りして得られる皮層含有木質細切片からなり、
B1:前記皮層含有木質細切片の集合体が鳥の羽毛の外観を呈するか、
C1:または前記皮層含有木質細切片の直径が0.1mm?5mm、長さが10mm?100mmである、
D:走行及び歩行設備の敷設緩衝材用添加物。
【請求項4】
A2:表層に、スギ・ヒノキ・ヒバのうちから選択される一種または二種以上の樹木の木質部の皮層を細切りして得られる皮層細切片であって、
B2:その集合体が鳥の羽毛の外観を呈するか、
C2:または直径が0.1mm?5mm、長さが10mm?100mmである
E:皮層細切片を混入した緩衝層を敷設してなる走行及び歩行設備。
【請求項5】
A3:表層に、スギ・ヒノキ・ヒバのうちから選択される一種または二種以上の樹木の木質部の皮層ごと細切りして得られる皮層含有木質細切片であって、
B3:その集合体が鳥の羽毛の外観を呈するか、
C3:または直径が0.1mm?5mm、長さが10mm?100mmである
E1:皮層含有木質細切片を混入した緩衝層を敷設してなる走行及び歩行設備。

第三 イ号物件
請求人が提出した判定請求書中の「イ号」によれば、イ号物件は、「被請求人が「RC樹皮繊維」と称しているスギおよびヒノキの樹皮を長さ3?5cmに粉砕して得た繊維状物をグラウンドの土に混入したグラウンド」である。
しかし、被請求人の答弁書を参照するに、請求人と被請求人との間で、当該「イ号」に係る認定には差異があるところから、当審において平成20年1月28日付けで審尋を行った。
当審では、甲第4号証から「イ号」を認定すること、及びその内容が以下のものであることを提示した。

「イ号説明」

(1)イ号物件の内容
「ライト技建株式会社が、「RC樹皮繊維工法」と呼称する施工法により、浜松市野口町の八幡中学校の運動場整備において、スギやヒノキの樹皮を長さ3?5cmに粉砕して得た繊維状物をグラウンドの土の容積の30%の割合で混ぜたグラウンド」

(2)イ号物件の説明(甲第4号証の記載内容)
1.従来は焼却処分されていたヒノキやスギの樹皮をグラウンド、河川のり面などの改修工事に活用する新技術「RC樹皮繊維工法」の導入例が静岡県内外の工事現場で存在すること。
2.土と比べ適度な湿度と排水性・クッション性があるのが特徴であること。
3.当該「RC樹皮繊維工法」は、浜松市西丘町のライト技建(大橋千秋代表)が開発したものであること。
4.当該「RC樹皮繊維工法」は、2005年度には静岡県が創設したリサイクル製品制度の認定を受けたこと。
5.当該「RC樹皮繊維工法」は、製材所などで大量に出される間伐材のヒノキやスギの樹皮を使うこと。
6.当該「ヒノキやスギの樹皮」は抗菌性が強いためにたい肥化が難しく、産業廃棄物として高コストで焼却処分されていたが、ライト技建が当該抗菌性を”特性”として利用したこと。
7.当該「RC樹皮繊維工法」は、2005年度の施工例が合計約60以上であること。
8.当該「RC樹皮繊維工法」は、平成15年に浜松市野口町の八幡中学校の運動場整備に採用されたこと。
9.当該八幡中学校の運動場整備では、3?5センチほどに粉砕した樹皮を土の容積の30%の割合で混ぜたこと。

これに対して、請求人は平成20年2月18日付け回答書でこれに同意し、一方、被請求人は平成20年2月29日付け回答書で甲第4号証から「イ号物件」を認定すること自体には異議なしとするものの、甲第4号証の記載には誤記があると指摘する。
そこで、当審は、被請求人からの前記指摘を踏まえて、後記のように「イ号物件」を修正して認定することとする。

前記項目1について、被請求人自身が開発し施工に際して用いた工法を「RCクレー工法」と呼称しているのであるから、甲第4号証記載の「RC樹皮繊維工法」なる記載には誤記があるというべきであるし、被請求人は、当該「RCクレー工法」により浜松市野口町の八幡中学校の運動場整備を行ったこと自体は認めており、当該呼称について「RCクレー工法」と修正しても実体が変更されるわけではないので、このように認定する。
この点、前記項目3、5、7、8についても同様であるから、これらの項目においても「RCクレー工法」と修正して認定する。
被請求人は、前記項目4について、2005年度に静岡県が創設したリサイクル製品制度の認定を受けたのは「RC樹皮繊維」であって「RCクレー工法」自体は、当該認定を受けていないと指摘しており、リサイクル製品制度の認定は「RC樹皮繊維」についてのものであること、それ以外に被請求人に係る認定品がないことは、甲第3号証に照らして事実と認められるので、前記のように修正して認定する。
前記項目6については、「ヒノキやスギの樹皮」が抗菌性が強いことが、直接的に本件発明との対比に影響を与えることはないので省略する。
前記項目7については、「RCクレー工法」により浜松市野口町の八幡中学校の運動場整備を行った事実は重要であるも、それ以外に当該工法による施工実績は必要でないことから省略する。
前記項目9については、なるほど甲第4号証に「三?五センチほどに粉砕した樹皮を土の容積の30%の割合で混ぜたところ」なる記載がされているものの、これに続く、浜松市野口町八幡中学校の高村一幸教頭なる請求人或いは被請求人のいずれとも利害関係にない第三者による発言と如何なる関係にあるかは定かでなく、誰の発言に基づくものかも定かでない以上は、この「三?五センチほどに粉砕した樹皮」を用いたことが事実に基づくものかは不明である。
また、本来、「イ号物件」が本件特許発明の技術分野に属することについての立証責任は請求人側にあり、判定請求にあたって静岡県リサイクル製品認定についての内容を明らかにすべきであって、イ号グラウンドが現存しているのであれば、これを実地検証するなりして、少なくとも「3?5センチほどに」粉砕した樹皮が用いられたことを立証する別途の手段も取り得るのに、そのような手段は講じられておらず、当審からの審尋に対しても、請求人は、所轄の静岡県の事務局に確認したところ、第三者にはその詳細を開示できない回答を得たとするのみで、本件審理の過程で、必要に応じ、被請求人が提出書類の写しを提出するであろうとしており、積極的に立証する意志があるものとは認められない。
そして、後記「第五 対比・判断」で検討しているように、当該甲第4号証から直ちに、前記「粉砕した樹皮」の長さが、いかほどであるかを特定することは困難と言わざるを得ないことから、「3?5センチほどに」なる表現は削除することが妥当と判断する。
他方、本件特許発明では、土の容積にどの程度粉砕した樹皮を混ぜたかの詳細について定義されていないこと、先に当審が提示した項目7自体を被請求人が否定しているわけでもないことから、粉砕した樹皮を土の容積にどの程度混ぜるかについては、修正することなく認定する。

第四 当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、平成19年10月9日付け判定請求書に記載した請求の趣旨を、平成19年11月28日付け回答書1頁下から7?4行において補正して、
「被請求人が「RC樹皮繊維」と称しているスギおよびヒノキの樹皮を長さ3?5cmに粉砕して得た繊維状物をグラウンドの土に混入したグラウンド(以下、「イ号」と称する)は、特許第3075648号(以下、「本件特許」と称する)の請求項1、3、4および/または5に係る特許発明の技術的範囲に属する、との判定を求める。」とした。

そして、請求人は、同回答書において、
「甲第4号証は被請求人が「RC樹皮繊維工法」即ち「RC樹皮繊維を用いた工法」についてプレスリリースした内容を紹介したものであり、冒頭に「ヒノキやスギの樹皮を、グラウンド、河川のり面などの改修工事に活用する新技術」と記載され、最下段に、「3?5センチに粉砕した樹皮を土の容積の30%の割合で混ぜた」と記載され、左下段の写真で手の平に乗せた状態の「RC樹皮繊維」の写真が掲載されています。
これらの内容から前記したイ号の特定が導き出されることは明らかであります。
尚、甲第4号証には、「RC樹皮繊維」の直径の明示的記載はありませんが、長さ3?5cmに粉砕した繊維状物の直径が必然的に0.1?5mmの範囲内にあることは技術常識上自明であり、また甲第4号証の左下段の写真からも明らかであります。」
と主張し、
「甲第2号証の被請求人のホームページには、「静岡県リサイクル認定製品に「RC樹皮繊維」(第17-02号)が認定。本年度に創設され4製品が認定された。」と記載されています。
この記載は、静岡県リサイクル製品認定制度がこの年に創設され、上記の「第17-02」以外に4製品も認定されたことを紹介したものであります。
そして、甲第3号証には、「認定17-02」と他の4製品が製品写真入りで紹介されています。
甲第2号証及び甲第3号証は甲第4号証に基づいて特定した「イ号」をさらに裏付ける補助証拠として位置づけうるものと考えます。」
と指摘し、本件特許発明1とイ号グラウンドとを対比して、概ね以下のように主張する。

(1)イ号グラウンドに用いられた「RC樹皮繊維」はスギやヒノキの樹皮から得られるものであり、本件特許発明1の構成要件Aを充足している。
(2)本件特許発明1の並列された構成要件BとCについては、いずれか一方または両方を満足すればよく、イ号グラウンドに用いられた「RC樹皮繊維」は、甲第3号証の写真に示される外観を典型例として包含しており、本件特許発明1の構成要件Bの「前記皮層細切片の集合体が鳥の羽毛の外観を呈する」を充足している。
また、同「RC樹皮繊維」は、長さが3?5cm即ち30?50mmであり、甲第4号証には直接の記載はないものの、甲第3号証の写真から直径が1?5mmの範囲にあることは疑問の余地がなく、本件特許発明1の構成要件Cを充足している。
(3)本件特許発明1の構成要件Dである「走行及び歩行設備の敷設緩衝材用添加物」は、学校などのグラウンドの土壌に添加してクッション性を高める物質をその典型例として包含することは明らかであり、イ号グラウンドは、本件特許発明1の構成要件Dを充足している。
(4)よって、イ号グラウンドは、本件特許発明1の構成要件A乃至Dを充足する以上、本件特許発明1の技術的範囲に属する。

そして、イ号グラウンドは、同様の理由により、本件特許発明3、4及び5に係る構成要件を充足しており、これらの技術的範囲に属する。

2.被請求人の主張
被請求人は、判定請求答弁書において、
静岡県リサイクル製品認定を受けた「RC樹皮繊維」を使用し、「RCクレー工法」と呼称する施工法により、平成15年に浜松市野口町の八幡中学校の運動場整備を行ったことは認めるものの、当該「RC樹皮繊維」が「粉砕した」ものであって、本件特許発明における「スギ・ヒノキ・ヒバのうちから選択される一種又は二種以上の樹木の木質部の皮層を細切りした」ものとは異なっており、これら「細切り」と「粉砕」とはその技術構成が全く異なるために、本件特許発明1の構成要件Cを充足しないと主張している。
また、イ号グラウンドで使用した「RC樹皮繊維」は、甲第4号証写真(甲第4号証左下欄)からみて、鳥の羽毛というよりも粉砕物の集合体の景観を呈しているものであるから、本件特許発明の構成要件Bを充足しないと主張している。

第五 対比・判断
1.当審の審尋に対する請求人及び被請求人双方の回答書を参照するに、イ号物件が、静岡県リサイクル製品認定を受けた「RC樹皮繊維」を使用し、「RCクレー工法」と呼称する施工法により、平成15年に浜松市野口町の八幡中学校の運動場整備が行われたこと自体については、当事者双方間で争いがない。
そこで、当該静岡県リサイクル製品認定を受けた「RC樹皮繊維」が、本件特許発明1に係る各構成要件を充足するかについて検討する。

2.本件特許発明1とイ号物件との対比・判断
本件特許発明1の構成要件Aは、再掲するに以下のとおりである。
「スギ・ヒノキ・ヒバのうちから選択される一種又は二種以上の樹木の木質部の皮層を細切りして得られる皮層細切片からなり」

他方、イ号物件に使用された「RC樹皮繊維」は、項目4から、「2005年度に静岡県が創設したリサイクル製品制度の認定を受けたもの」であって、項目7から、「粉砕した樹皮」である。
そこで、甲第3号証を参照するに、認定番号17-02が付された「RC樹皮繊維」に係る欄に、「品目/土木用資材」、「使用する再生資源/杉・檜の皮(バーク)」との記載があり、前記本件特許発明1の構成要件Aのうち「スギ・ヒノキ・ヒバのうちから選択される一種又は二種以上の樹木の木質部の皮層」を充足していることは明らかである。
そして、甲第3号証自体には写真が示されており、これには、様々な幅の概ね短冊状にされた杉・檜の皮が写っているものの、これらに如何なる処理を行ったかの詳細記載はない。
また、当該甲第3号証の写真には、これら杉・檜の皮がどの程度の大きさのものであるかを把握できるスケール或いは大きさを対比可能な他のものが写っておらず、その大きさを把握することは困難である。
これに対して、甲第4号証に示された写真には、人が手の上に載せた状態で概ね短冊状にされた木の皮が写っており、前記甲第3号証と対比した場合に、その幅はいくらか均一なものであることが看取される。
これら甲第3号証及び甲第4号証の各写真を対比した場合、いずれもが短冊状であることまでは把握できるとしても、それらは形状において若干異なるものとして把握されると共に、鳥の羽毛にみられる中央に軸様の羽幹が存在し、これから分岐した羽枝をもつようなものではないので、少なくとも「鳥の羽毛の外観を呈する」ものとはいえない。
よって、イ号物件に使用された「RC樹皮繊維」は、本件特許発明1の構成要件Bを充足するものとはいえない。

次に、甲第4号証に示された写真に写っている樹皮は、大人の手の平の幅が概ね10cm程度であると想定した場合、大きいものがこの程度の長さであることまでは推察できるとしても、どの程度の直径をなすものであるかまでは把握できない。
してみれば、イ号物件に使用された「RC樹皮繊維」が、本件特許発明1の構成要件Cを充足するものであるかは不明といわざるを得ない。
また、前記甲第3号証及び甲第4号証の各写真から、これらに写っているものが樹皮の木質部或いは皮層のいずれを対象としたものであるかを把握することはできない。

以上のとおりであるから、イ号物件に使用された「RC樹皮繊維」が、本件特許発明1の構成要件Aの一部を充足するといえたとしても、残る選択的な構成要件B或いはCを充足するものとはいえないか、或いは充足することを判断することができない以上、その他の構成要件を検討するまでもなく、当該「RC樹皮繊維」を使用したイ号物件が、本件特許発明1の各構成要件を充足したものとはいえないこととなる。

3.本件特許発明3?5とイ号物件との対比・判断
本件特許発明1において「皮層細切片」とされる樹皮の対象部分は、本件特許発明4とは共通するものの、本件特許発明3では「皮層含有木質細切片」、本件特許発明5では「皮層含有木質細切片」とされており、異なっている。
しかしながら、本件特許発明3?5は、
構成要件A1?A3:「スギ・ヒノキ・ヒバのうちから選択される一種または二種以上の樹木の木質部の皮層」を対象とした「細切片」であって、
構成要件B1?B3:「その集合体が鳥の羽毛の外観を呈する」か、
構成要件C1?C3:「または直径が0.1mm?5mm、長さが10mm?100mmである」ことが特定されており、これらの構成要件については、概ね本件特許発明1と同様といえる。
しかしながら、前記「2.本件特許発明1とイ号物件との対比・判断」で検討したように、イ号物件に使用された「RC樹皮繊維」が、本件特許発明1の構成要件A?Cを充足しないとしたと同様の理由により、当該イ号物件に使用された「RC樹皮繊維」が、これら本件特許発明3?5の構成要件A1?A3、B1?B3及びC1?C3を充足しているものとはいえない。
すると、その他の構成要件を検討するまでもなく、当該「RC樹皮繊維」を使用したイ号物件が、本件特許発明3?5の各構成要件を充足したものとはいえないこととなる。

4.まとめ
以上のとおりであるから、イ号物件は、少なくとも、本件特許発明1、3?5の構成要件B、B1?B3、C、C1?C3を充足していないので、本件特許発明1、3?5の技術的範囲に属するとすることはできない。

なお、被請求人は、本件特許発明における樹皮の「細切片」に対して、イ号物件に使用された「RC樹皮繊維」が「粉砕」されたものであって、その技術的構成が全く異なるから、少なくとも、「RC樹皮繊維」は本件特許発明の第1の要件(A、A1?A3)を充足しないと主張しているので、当該樹皮の「細切り」或いは「粉砕」について予備的に検討しておく。
本件特許明細書の特許請求の範囲には、樹皮を「細切り」とすると特定されており、この「細切り」と「粉砕」とが如何なる関係にあるかは把握できない。
しかしながら、同明細書の段落【0011】には「スギ等の寸断物」と、段落【0017】には〔試験例1〕に関して「米マツの木質部をクラッシャーで破砕して」と、更に、段落【0032】には「スギの皮層をクラッシャーで切削して」なる記載がされており、特許請求の範囲記載における「細切片」は、クラッシャーによる処理が加えられたものであることが窺える。
ここで挙げられている「クラッシャー」は、破砕機、切削機等と呼称されるものであって、広辞苑第5版にも「クラッシャー【crusher】:固体原料を適当な大きさに砕く機械。破砕機。粉砕機。」として掲げられているものである。
してみるに、「細切り」或いは「粉砕」と呼称されるこれら処理は、その表現のみから明確な区別がなし得るものではなく、別途、これらの処理によりどの程度の「細切り」或いは「粉砕」がなされたかが明らかにされて初めてその内容を把握できるものといわざるを得ない。
したがって、前記で検討したように、イ号物件に使用された「RC樹皮繊維」がどのような形状或いはどの程度の大きさをなすかが不明故に、本件特許発明の構成要件を充足するか否かが判断し得ないのであって、単に、文言上から「細切り」或いは「粉砕」が識別可能とする被請求人の主張は妥当でない。

第六 むすび
以上のとおり、イ号物件は、本件特許の請求項1、3?5に係る発明のいずれの技術的範囲にも属しない。
 
別掲 イ号説明

(1)イ号物件の内容
「ライト技建株式会社が、「RCクレー工法」と呼称する施工法により、浜松市野口町の八幡中学校の運動場整備において、スギやヒノキの樹皮を粉砕して得た繊維状物をグラウンドの土の容積の30%の割合で混ぜたグラウンド」

(2)イ号物件の説明(甲第4号証の記載内容)
1.従来は焼却処分されていたヒノキやスギの樹皮をグラウンド、河川のり面などの改修工事に活用する新技術「RCクレー工法」の導入例が静岡県内外の工事現場で存在すること。
2.土と比べ適度な湿度と排水性・クッション性があるのが特徴であること。
3.当該「RCクレー工法」は、浜松市西丘町のライト技建(大橋千秋代表)が開発したものであること。
4.当該「RCクレー工法」で用いた「RC樹皮繊維」は、2005年度に静岡県が創設したリサイクル製品制度の認定を受けたこと。
5.当該「RCクレー工法」は、製材所などで大量に出される間伐材のヒノキやスギの樹皮を使うこと。
6.当該「RC樹皮繊維」を用いた「RCクレー工法」は、平成15年に浜松市野口町の八幡中学校の運動場整備に採用されたこと。
7.当該八幡中学校の運動場整備では、粉砕した樹皮を土の容積の30%の割合で混ぜたこと。
 
判定日 2008-03-27 
出願番号 特願平4-359111
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (A63K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 七字 ひろみ
坂田 誠
登録日 2000-06-09 
登録番号 特許第3075648号(P3075648)
発明の名称 走行及び歩行設備の敷設緩衝材用添加物並びに走行及び歩行設備  
代理人 斉藤 武彦  
代理人 斉藤 武彦  
代理人 野末 祐司  

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