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審決分類 |
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G11B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1176189 |
審判番号 | 不服2005-4694 |
総通号数 | 102 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-03-17 |
確定日 | 2008-04-10 |
事件の表示 | 特願2002-176066「光ディスク記録再生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月22日出願公開、特開2004- 22077〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件審判の請求に係る特許願(以下「本願」という。)は、平成14年6月17日に出願されたものであって、平成16年9月15日付け拒絶理由に応答して平成16年11月18日付けで手続補正がなされ、平成17年2月9日付けで拒絶すべきものである旨の査定がなされたところ、平成17年3月17日付けで拒絶査定不服審判が請求され、平成17年4月15日付けで手続補正書が提出されたものである。 II.平成17年4月15日付け手続補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成17年4月15日付け手続補正を却下する。 〔理由〕 1.平成17年4月15日付け手続補正(以下「本件補正」という。)について補正の内容 本件補正による特許請求の範囲の補正内容は、本件補正前に 「【請求項1】 光ディスクに対して情報を記録・再生するためのレーザ光を出射すると共に光ディスクからの反射光を受光する光ピックアップを有し、光ディスクの再生時における前記光ピックアップからの再生信号に含まれるトラッキングエラー信号に基づいて前記光ピックアップの光ディスクに対するトラッキング制御を行うように構成された光ディスク記録再生装置において、光ディスクの再生時に、トラッキングエラー信号のバランス位置がセンターに調整された状態でのエラーレートを計測する第1のエラーレート計測手段と、該第1のエラーレート計測手段で計測されたエラーレートが許容範囲に入っていない場合に前記トラッキングエラー信号のバランス位置をセンターよりプラス方向にずらした位置における光ディスクの再生時のエラーレートを計測する第2のエラーレート計測手段と、前記第1のエラーレート計測手段で計測されたエラーレートが許容範囲に入っていない場合に前記トラッキングエラー信号のバランス位置をセンターよりマイナス方向にずらした位置における光ディスクの再生時のエラーレートを計測する第3のエラーレート計測手段と、前記第2のエラーレート計測手段で計測されたエラーレートと前記第3のエラーレート計測手段で計測されたエラーレートとを比較して小さい方のエラーレートを検出するエラーレート検出手段と、前記プラス方向または前記マイナス方向にずらす量を可変にするずらし量可変手段とを有し、前記エラーレート検出手段で検出された前記小さい方のエラーレートに対応する方向に前記トラッキングエラー信号のバランス位置をずらしたときのエラーレートが前記第1のエラーレート計測手段で計測されたエラーレートよりも予め定めた閾値以上改善されるまで、前記ずらし量可変手段により前記トラッキングエラー信号のバランス位置のずらす量を変更し、この改善されたエラーレートに対応するトラッキングエラー信号に基づいて光ディスクをトラッキング制御するコントローラを備えたことを特徴とする光ディスク記録再生装置。」 を、本件補正は、 「【請求項1】光ディスクに対して情報を記録・再生するためのレーザ光を出射すると共に光ディスクからの反射光を受光する光ピックアップを有し、光ディスクの再生時における前記光ピックアップからの再生信号に含まれるトラッキングエラー信号に基づいて前記光ピックアップの光ディスクに対するトラッキング制御を行うように構成された光ディスク記録再生装置において、 トラッキングエラー信号のバランス位置がセンターに調整された状態でのエラーレートを計測する第1のエラーレート計測手段と、 該第1のエラーレート計測手段で計測されたエラーレートが許容範囲に入っていない場合に前記トラッキングエラー信号のバランス位置をセンターよりプラス方向に一定距離ずらした位置における光ディスクの再生時のエラーレートを計測する第2のエラーレート計測手段と、 前記第1のエラーレート計測手段で計測されたエラーレートが許容範囲に入っていない場合に前記トラッキングエラー信号のバランス位置をセンターよりマイナス方向に前記一定距離と同一距離ずらした位置における光ディスクの再生時のエラーレートを計測する第3のエラーレート計測手段と、 前記第2のエラーレート計測手段で計測されたエラーレートと前記第3のエラーレート計測手段で計測されたエラーレートとを比較して小さい方のエラーレートを検出するエラーレート検出手段と、 前記小さいエラーレートの方向へずらす方向を決定するずらし方向決定手段と、 前記プラス方向または前記マイナス方向にずらす量を可変にするずらし量可変手段と、を有するコントローラを備え、 該コントローラは、TOC読み出し時に前記第1のエラーレート計測手段、第2のエラーレート計測手段、第3のエラーレート計測手段、エラーレート検出手段、ずらし方向決定手段を動作させてずらす方向を決定し、再生開始時に、前記決定されているずらす方向に前記ずらし量可変手段によって前記トラッキングエラー信号のバランス位置をずらし、そのずらしたときのエラーレートが前記第1のエラーレート計測手段で計測されたエラーレートよりも予め定めた閾値以上改善されるまで、前記トラッキングエラー信号のバランス位置のずらし量を変更し、この改善されたエラーレートに対応するトラッキングエラー信号に基づいて光ディスクをトラッキング制御することを特徴とする光ディスク記録再生装置。」 と、上記下線部(なお、請求人の付与する下線とは一部相違する)の構成要件を変えるものである。また、発明の詳細な説明の補正の内容は、【0008】についてするもので特許請求の範囲の補正に伴い整合させる内容である。 2.本件補正の目的 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明に関しては、『光ディスク再生時に、』との記載がある。これはTOC読み出し時、再生開始時を区別しない記載であって、願書に最初に添付した明細書では【0027】?【0035】、又、図面では【図4】及び【図5】のフロー全体に該当し、第1のエラーレート測定手段、第2のエラーレート測定手段、第3のエラーレート測定手段、エラーレートに対応する方向、ずらし量可変手段等を実行する処理工程を有している。 対して、本件補正の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、上記『光ディスク再生時に、』を削除して、TOCでの処理である【図4】のフローに対応する発明の特定要件を「TOC読み出し時に前記第1のエラーレート計測手段、第2のエラーレート計測手段、第3のエラーレート計測手段、エラーレート検出手段、ずらし方向決定手段を動作させてずらす方向を決定し、」と、再生開始時の処理である【図5】のフローに対応する発明の特定要件を「再生開始時に、前記決定されているずらす方向に前記ずらし量可変手段によって前記トラッキングエラー信号のバランス位置をずらし、そのずらしたときのエラーレートが」と、具体的にするものである。 しかしながら、願書に最初に添付した明細書又は図面の記載は、「エラーレート許容値か」(ステップ4)(【0028】及び【図4】参照)においての「Yes/No」での、Yesの場合、方向が定まらないもので、本件補正の特許請求の範囲の請求項1に係る発明ではこの処理が除外されている。要するに、願書に最初に添付した明細書又は図面では「方向決定手段」を必要としない場合、そのまま再生開始になるにも関わらずそうなっていない。 願書に最初に添付した明細書又は図面の記載は、「トラッキングエラー信号のバランス位置が動作可能範囲か」(ステップ42)(【0033】及び【図5】参照)においての「Yes/No」で、Yesの場合、そのまま再生されるのであるが、本件補正の特許請求の範囲の請求項1に係る発明ではこの処理が除外されていて、Noの場合の処理もない。要するにステップ42を削除して、再生開始時、ずらし方向決定手段に基づき「必ず」バランス調整する記載になっている。 したがって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明での「光ディスク再生時に、」の要件を削除して、本件補正の特許請求の範囲の請求項1に係る発明で「TOC読み出し時に」「再生開始時に、」と限定的に記載したことで、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明を特定する構成要件が、【図4】で『S4→S5』のフロー、【図5】で『S41→S42→S43ないし→S45』のフローがなく、一義的に『ずらし方向を決め』『ずらし量可変手段』によって『ずらす』ことを前提とする構成は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載のない新規事項の追加である。 また、本件補正の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は「TOC読み出し時に」と「再生開始時に、」を独立した処理手段としてみて、「エラーレート許容範囲か」(S4)を判断しながら、再度「トラッキングエラー信号のバランス位置が動作可能範囲内か」(S42)を判断することの技術的意義、及び、『S4→S10』でそのまま再生状態になったときに方向が不明であるにも関わらず、再生開始時『S42』で『No』の場合での「トラッキングエラー信号のバランス位置を前記決定された方向にずらす」(S43)ことが可能か否か等、技術的に容易に理解できないところはあるが、何れにしても、上記指摘のS10ないしS42に係るフローを除外する補正の発明は新規事項の追加である。 3.結局、上記本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した範囲内においてしたものでないから、特許法17条の2第3項で規定する要件を満たしていない。 4.補正についての結び したがって、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明 1.平成17年4月15日付けの手続補正は、上記II.のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年11月18日付け手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち【請求項1】に係る発明(以下「本願発明」という。)は上記II.〔理由〕1.に記載したとおりのものである。 2.刊行物 原査定の拒絶の理由で引用された特開2000-132855号公報(以下「刊行物1」という。)には、光情報記録再生装置について以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与。) (i)「【特許請求の範囲】 【請求項1】光源と、前記光源からの光ビームを透明保護層を有する光情報記録媒体の記録面上に微小スポットとして収束する集光光学系と、前記光情報記録媒体の記録面上で反射または回折した光ビームを受光し電気信号に変換する受光素子と、前記電気信号を再生情報信号に変換する信号回路と、前記電気信号より前記光情報記録媒体の記録面上の光スポットと情報トラックの位置ずれを表す誤差信号を生成する信号回路と、前記誤差信号より前記光情報記録媒体上で光スポットを情報トラックに追従させる駆動手段を具備した光情報記録再生装置であって、・・・省略・・・、光スポットを前記光情報記録媒体上の情報トラックに追従させる駆動手段に用いる誤差信号のうち前記光情報記録媒体に対して平行方向、且つ光スポットの走査方向に対して垂直方向の誤差信号に電気的なオフセットを与え、光スポットを情報トラックから前記光情報記録媒体の記録情報を再生することで得られる再生信号ジッタが良化する方向にずらすオフトラック動作回路を備えることを特徴とする光情報記録再生装置。 【請求項2】?【請求項6】・・・省略・・・ 【請求項7】前記光情報記録媒体から記録情報を再生することで得られる再生信号が、前記光情報記録媒体に記された情報信号から誤って再生された割合を表すエラーレイトを検知するエラーレイト検出装置を備え、前記エラーレイトが最適化されるように、光スポットをずらす方向であるオフトラック方向と、光スポットをずらす量であるオフトラック量を変化させる手段をオフトラック動作回路に備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光情報記録再生装置。 【請求項8】【請求項9】・・・省略・・・ 【請求項10】光スポットをずらす量であるオフトラック量が、光スポットの走査方向に垂直方向に、かつ情報トラックを中心に各向きに一点ずつの固定値とする手段をオフトラック動作回路に備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の光情報記録再生装置。 【請求項11】?【請求項15】・・・省略・・・」 (ii)「【0002】 【従来の技術】従来の光ビームを用いて、透明保護層を有する光情報記録媒体の記録再生を行う光情報記録再生装置であって、光情報記録媒体上の光スポットの中心を情報トラックの中心からずらして走査し、記録再生する事を特徴とする光情報記録再生装置は、特開平8-77583号公報に記載されたものが知られている。以下にその構成、内容を説明する。」 (iii)「【0019】 【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の発明は、光源と、前記光源からの光ビームを透明保護層を有する光情報記録媒体の記録面上に微小スポットとして収束する集光光学系と、前記光情報記録媒体の記録面上で反射または回折した光ビームを受光し電気信号に変換する受光素子と、前記電気信号を再生情報信号に変換する信号回路と、前記電気信号より前記光情報記録媒体の記録面上の光スポットと情報トラックの位置ずれを表す誤差信号を生成する信号回路と、前記誤差信号より前記光情報記録媒体上で光スポットを情報トラックに追従させる駆動手段を具備した光情報記録再生装置であって、・・・省略・・・、光スポットを前記光情報記録媒体上の情報トラックに追従させる駆動手段に用いる誤差信号のうち前記光情報記録媒体に対して平行方向、且つ光スポットの走査方向に対して垂直方向の誤差信号に電気的なオフセットを与え、光スポットを情報トラックから前記光情報記録媒体の記録情報を再生することで得られる再生信号ジッタが良化する方向にずらすオフトラック動作回路を備えることを特徴とする光情報記録再生装置としたものであり、光情報記録媒体と集光光学系の傾きによる記録再生信号の品質劣化を低減させる作用を有する。」 (iv)「【0025】本発明の請求項7に記載の発明は、前記光情報記録媒体から記録情報を再生することで得られる再生信号が、前記光情報記録媒体に記された情報信号から誤って再生された割合を表すエラーレイトを検知するエラーレイト検出装置を備え、前記エラーレイトが最適化されるように、光スポットをずらす方向であるオフトラック方向と、光スポットをずらす量であるオフトラック量を変化させる手段をオフトラック動作回路に備えることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5記載の光情報記録再生装置としたものであり、オフトラック最適位置を決定する作用と、光情報記録媒体と集光光学系の傾きを測定する作用と、光情報記録媒体と集光光学系の傾きによる記録再生信号の品質劣化を低減させる作用を有する。」 (v)「【0028】本発明の請求項10に記載の発明は、光スポットをずらす量であるオフトラック量が、光スポットの走査方向に垂直方向に、かつ情報トラックを中心に各向きに一点ずつの固定値とする手段をオフトラック動作回路に備えることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9記載の光情報記録再生装置としたものであり、オフトラック量を決定する時間を短縮する作用と、オフトラック位置を決定する作用と、光情報記録媒体と集光光学系の傾きを測定する作用と、光情報記録媒体と集光光学系の傾きによる記録再生信号の品質劣化を低減させる作用を有する。」 (vi)「【0041】次に、実施の形態1における光ディスク記録媒体を再生するための構成を説明する。図1に実施の形態1の構成を示す。1は光ディスク記録媒体であり、透明保護層2が設けられている。光ディスク記録媒体は、スピンドルモータ3の回転軸に充填され、モータ3の駆動によって所定の速度で回転する。光ディスク記録媒体1の下面には光学ヘッド4が配置されている。光学ヘッド4内の半導体レーザ5は、図示していないレーザ駆動回路により発光し、射出された光ビームは偏光ビームスプリッタ6を透過して対物レンズ8に入射する。そして、光ディスク記録媒体の記録面上に集光される。反射光は再び対物レンズ8を通って、偏光ビームスプリッタ6に入射する。途中λ/4板7で偏光状態が変化したため、偏光ビームスプリッタ6の偏光面で反射され、光センサ9に受光される。受光した光は再生信号、またはサーボ用信号として用いられる。CPU11は、このサーボ用信号を取り込み、光ディスク記録媒体上で光スポットを情報トラックに追従させるようにフォーカス・トラッキングサーボ回路13に指示を出す。その結果、フォーカス・トラッキングサーボ回路13から対物レンズアクチュエータ14に駆動電流が送られ、光ディスク記録媒体上で光スポットを情報トラックに追従し、再生信号が得られる。 【0042】次に、実施の形態1における再生信号ジッタの劣化量をもってRチルト量を検出する手段の構成を説明する。フォーカス・トラッキングサーボ回路13によって、光ディスク記録媒体上で光スポットが情報トラックに追従した状態で、ジッタ検出装置10は、光センサ9から得られた再生信号をもとにジッタを検出する。次に、CPU11は検出されたジッタ値を取り込み、起動時に光ディスク記録媒体のRチルトが最も少ない最内周部で検出したジッタ値を基準に、ジッタの劣化許容量を加算したジッタ比較値と比較する。ジッタ比較値より、検出された再生信号ジッタ値が悪い場合は、オフトラック動作を必要とするチルト量であると判断する。 【0043】次に、オフトラック動作を行うための構成を説明する。ここで、オフトラックとは光スポットの走査方向に対して垂直の方向に、光スポットをずらすことを意味する。CPU11が、検出したジッタ値が比較値より悪いと判断した時、光スポットをずらすように制御を行う。オフトラック付加装置12は、CPU11の指示に基づいてフォーカス・トラッキングサーボ回路13のトラッキングサーボ側に電気的なオフセットを与える。そして、対物レンズアクチュエータ14にはオフセットに応じた駆動電流が供給される。その結果、光スポットの中心はずれる。なお、オフトラック動作を行うためのこれらの構成をオフトラック動作回路と称する。 【0044】ここで最適オフトラック位置の決定には、以下4点の構成を挙げる。まず一つ目はジッタ検出装置10により、ジッタを検出し、ジッタが最良化されるまでオフトラック動作を繰り返す手段である。二番目は図示しないエラーレイト検出装置により、光ディスク記録媒体に記された情報信号から誤って再生された割合であるエラーレイトを検出し、エラーレイトが最適化されるまでオフトラック動作を繰り返す手段である。三番目は図示しないC1フラッグ検出装置により、光ディスク記録媒体から記録情報を再生することで得られる再生信号が光ディスク記録媒体に記された情報信号と比較して、ある一定量の情報中に誤りがあった場合にフラッグを立てるC1フラッグを検出し、C1フラッグが最適化されるまでオフトラック動作を繰り返す手段である。四番目は、図示しないRF信号検出装置により、再生信号振幅を検出し、再生信号振幅が最大化されるまでオフトラック動作を繰り返す手段である。」 以上の摘示記載を、図面を参照して総合整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されているものと認める。 「光ディスク記録媒体1であり、透明保護層2が設けられて、光ディスク記録媒体は、スピンドルモータ3の回転軸に充填され、モータ3の駆動によって所定の速度で回転し、光ディスク記録媒体1の下面には光学ヘッド4が配置されて、光学ヘッド4内の半導体レーザ5は、レーザ駆動回路により発光し、射出された光ビームは偏光ビームスプリッタ6を透過して対物レンズ8に入射し、光ディスク記録媒体の記録面上に集光され、反射光は再び対物レンズ8を通って、偏光ビームスプリッタ6に入射し、途中λ/4板7で偏光状態が変化したため、偏光ビームスプリッタ6の偏光面で反射され、光センサ9に受光され、受光した光は再生信号、またはサーボ用信号として用いられ、CPU11は、このサーボ用信号を取り込み、光ディスク記録媒体上で光スポットを情報トラックに追従させるようにフォーカス・トラッキングサーボ回路13に指示を出し、フォーカス・トラッキングサーボ回路13から対物レンズアクチュエータ14に駆動電流が送られ、光ディスク記録媒体上で光スポットを情報トラックに追従し、再生信号が得られる光情報記録再生装置であって、 前記光情報記録媒体から記録情報を再生することで得られる再生信号が、前記光情報記録媒体に記録された情報信号から誤って再生された割合を表すエラーレイトを検知するエラーレイト検出装置を備え、前記エラーレイトが最適化されるように、光スポットをずらす方向であるオフトラック方向と、光スポットをずらす量であるオフトラック量を変化させる手段をオフトラック動作回路に備える光情報記録再生装置。」(以下「刊行物1発明」という。) また、原査定の拒絶の理由で引用された特開2001-176095号公報(以下「刊行物2」という。)には、光ディスク再生装置についてのもので、以下の記載がある。 (vii)「【0072】アドレス領域におけるトラッキングオフセット値は以下のように求める。トラッキングON状態(トラッキング制御を行なっている状態)で、所定のステップで、バランス調整回路19に対する制御信号(以下「TBALPP1信号」という。)の値を変化させ、光スポットのトラッキングをずらしていく。この時、アドレスゲート信号(IDGT)を用いてアドレス領域ではトラッキング制御をホールドして記録領域の走査軌跡のままアドレス領域を走査するようにする。このようにTBALPP1信号の値を変化させることにより、加算器17、18の出力の合成バランスを変化させてプッシュプルトラッキングエラー信号が計算されるために、光スポットを記録マーク列の中心からずらして走査させることができ、意図的に光スポットの走査軌跡にオフセットを与えることができる。そして、各ステップごとにTBALPP1信号の値を変化させてプッシュプルトラッキングエラー信号(TEPP2)をモニターし、アドレス領域においてリファレンス電圧(V_(ref))からのプッシュプルトラッキングエラー信号の上半分(高圧側)と下半分(低圧側)の振幅が等しくなるようなTBALPP1信号の値を探索し、その時の値をオフセット値Aとしてアドレス領域オフセットメモリ303へ格納する。ここで、プッシュプルトラッキングエラー信号の上半分と下半分の振幅は正確に等しくなるように調整するのは困難であるため、その差が所定範囲内となったときに等しくなると判断するようにしてよい。 【0073】次に記録領域におけるトラッキングオフセット値を以下のように求める。前述のようにして求めたアドレス領域のトラッキングオフセット値Aを基準として、TBALPP1信号の値を数段階変化させながら同時にRFエンベロープ信号(以下「RFENV信号」という。)をコントローラ31で測定し、RFENV信号が最大値をとるときのTBALPP1信号の値を求める。そしてこれをオフセット値Bとしてデータ領域オフセットメモリ302へ格納する。図4を用いてオフセット値Bの求め方について詳細に説明する。 【0074】図4は本発明のトラッキングオフセット処理のRFエンベロープ信号最大値の探索動作を説明するための図である。図4(a)はTBALPP1信号の変化方向と、それに対して得られるRFENV信号の値を示し、図4(b)は順次変化させたRFENV信号の値を示した図である。 【0075】図4(a)に示すように、まず、TBALPP1信号の値をオフセット値Aから+方向へV_(c)(V)だけ増加させてRFENV1信号を測定する。次にTBALPP1信号をオフセット値Aから-方向へV_(c)(V)だけ減少させてRFENV2信号を測定する。なお、n回目に測定したRFENV信号を「RFENVn」信号と表記することにする。そして、コントローラ31はRFENV1信号とRFENV2信号を比較していずれの信号の値が大きいかを判断する。その後、コントローラ31は判断結果にしたがい、より大きいRFENV信号が得られたTBALPP1信号と同じ方向においてTBALPP1信号を段階的に変化させてRFENV信号を測定する。本例では、図4(a)に示すように、RFENV1信号がRFENV2信号よりも大きいため、その後は、+方向へTBALPP1信号を変化させる。例えば、オフセット値A(V_(ref)とする。)から+側に2V_(c)(V)だけ増加させてRFENV3信号を測定し、順次オフセット電圧をV_(c)(V)だけ増加させてRFENV4信号、RFENV5信号、RFENV6信号を測定している。このとき、図4(a)に示すように、RFENV4信号が最大値をとるのでオフセット電圧としてはV_(ref)+3V_(c)(V)をデータ領域のオフセット値Bとする。」 3.対比・判断 〔対比〕 本願発明と刊行物1発明とを対比する。 (イ)刊行物発明における「光ディスク記録媒体」「(光情報記録再生装置に使用される)半導体レーザ」「(半導体レーザ5は、レーザ駆動回路により発光し、射出された光ビームは偏光ビームスプリッタ6を透過して対物レンズ8に入射し、光ディスク記録媒体の記録面上に集光され、反射光は再び対物レンズ8を通って、偏光ビームスプリッタ6に入射し、途中λ/4板7で偏光状態が変化したため、偏光ビームスプリッタ6の偏光面で反射され、光センサ9に受光され、受光した光は再生信号、またはサーボ用信号として用いられる)光学ヘッド」「サーボ用信号を取り込み、光ディスク記録媒体上で光スポットを情報トラックに追従させるようにフォーカス・トラッキングサーボ回路13に指示を出し、フォーカス・トラッキングサーボ回路13から対物レンズアクチュエータ14に駆動電流が送られ、光ディスク記録媒体上で光スポットを情報トラックに追従」及び「光情報記録再生装置」は、本願発明の「光ディスク」「情報を記録・再生するためのレーザ光」「光ディスクからの反射光を受光する光ピックアップ」「再生信号に含まれるトラッキングエラー信号に基づいて前記光ピックアップの光ディスクに対するトラッキング制御を行う」及び「光ディスク記録再生装置」に相当する。 (ロ)刊行物1発明における「光情報記録媒体から記録情報を再生することで得られる再生信号」は、本願発明の「光ディスクの再生時」との再生する時点で共通する。 (ハ) 刊行物1発明における「光情報記録媒体に記録された情報信号から誤って再生された割合を表すエラーレイトを検知するエラーレイト検出装置を備え」の『エラーレイト検出装置』は「エラーレイトが最適化されるように、光スポットをずらす方向であるオフトラック方向と、光スポットをずらす量であるオフトラック量を変化させる手段」をもつ検出装置である。そして、光スポットをずらす方向であるオフトラック方向を決めることは、基準とするバランス位置があり、これをもって方向が決まるもので、縷々の記載がなくとも、通常、基準とするバランス位置とはセンターに調整した状態で計測がされるものと解される。また、トラッキングエラーレートの調整方向とオフトラック量は光情報記録媒体の径方向、要するに、センターに調整した位置から『内径』方向もしくは『外径』方向へ実際に移動し、それを計測して得られるものと認める。移動する方向の一方をプラス方向、他方をマイナス方向と呼称することは適宜であるから、本願発明の「トラッキングエラー信号のバランス位置がセンターに調整された状態でのエラーレートを計測する計測手段と、トラッキングエラー信号のバランス位置をセンターよりプラス方向にずらした位置における光ディスクの再生時のエラーレートを計測する計測手段と、トラッキングエラー信号のバランス位置をセンターよりマイナス方向にずらした位置における光ディスクの再生時のエラーレートを計測する計測手段と、前記プラス方向または前記マイナス方向にずらす手段」を実質的に備えている点で共通する。 (ニ)刊行物発明1における「CPU11」ないし「エラーレイト検出装置を備え、前記エラーレイトが最適化されるように、光スポットをずらす方向であるオフトラック方向と、光スポットをずらす量であるオフトラック量を変化させる手段をオフトラック動作回路」は、トラッキング制御していくコントローラであるから、本願発明の「改善されたエラーレートに対応するトラッキングエラー信号に基づいて光ディスクをトラッキング制御するコントローラ」に相当する。 結局、両発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 [一致点] 「光ディスクに対して情報を記録・再生するためのレーザ光を出射すると共に光ディスクからの反射光を受光する光ピックアップを有し、光ディスクの再生時における前記光ピックアップからの再生信号に含まれるトラッキングエラー信号に基づいて前記光ピックアップの光ディスクに対するトラッキング制御を行うように構成された光ディスク記録再生装置において、光ディスクの再生時に、トラッキングエラー信号のバランス位置がセンターに調整された状態でのエラーレートを計測する計測手段と、トラッキングエラー信号のバランス位置をセンターよりプラス方向にずらした位置における光ディスクの再生時のエラーレートを計測する計測手段と、トラッキングエラー信号のバランス位置をセンターよりマイナス方向にずらした位置における光ディスクの再生時のエラーレートを計測する計測手段と、前記プラス方向または前記マイナス方向にずらす手段とを有し、この改善されたエラーレートに対応するトラッキングエラー信号に基づいて光ディスクをトラッキング制御するコントローラを備えた光ディスク記録再生装置。」 [相違点] (a)本願発明は、トラッキングエラー信号のバランス位置がセンターに調整された状態でのエラーレートを計測する手段を「第1のエラーレート計測手段」と呼称するが、刊行物1発明にはこのような記載がない点。 (b)本願発明は上記エラーレートを計測する計測手段によるトラッキングエラー信号のエラーレートが「許容範囲に入っていない場合」にバランス位置をセンターよりプラス方向/マイナス方向にずらした位置における光ディスクの再生時の各エラーレート計測手段を「第2のエラーレート計測手段/第3のエラーレート計測手段」と呼称して、「ずらす量を可変にするずらし量可変手段」を有するが、刊行物1発明にはこのような記載がない点。 (c)トラッキング信号のバランスの調整であるが、本願発明のものは、「前記エラーレート検出手段で検出された前記小さい方のエラーレートに対応する方向に前記トラッキングエラー信号のバランス位置をずらしたときのエラーレートが前記第1のエラーレート計測手段で計測されたエラーレートよりも予め定めた閾値以上改善されるまで、前記ずらし量可変手段により前記トラッキングエラー信号のバランス位置のずらす量を変更」するものであるが、刊行物1発明のものでは明確でない点。 〔判断〕 相違点(a)について、 上記相違点(a)でのエラーレート計測手段を「第1のエラーレート計測手段」と呼称することは適宜成し得るものであるから、刊行物1発明のものにおいても「エラーレイト検出装置」による「エラーレイトを検知」する工程を「第1のエラーレート計測手段」とすることは適宜である。 相違点(b)について、 刊行物発明1においても、「前記エラーレイトが最適化されるように、光スポットをずらす方向であるオフトラック方向と、光スポットをずらす量であるオフトラック量を変化させる手段」の記載があることから、最適化される光スポットのずらす方向と量は計測されていることが想定される。そうでないとしてもセンターより一方の径方向をプラス方向、他方をマイナス方向と呼称するとともに、許容範囲に入っていない場合において、バランス調整を行うことは適宜に成し得るものである。この際、「ずらし量可変手段」の構成は設計的事項である。 相違点(c)について、 バランス調整手法であるが、刊行物2には、「オフセット値を+方向へ増加させた場合と-方向へ減少させた場合とでどちらのRF信号が大きいかを判断して、大きくなる方向に補正の方向を決める」記載がある。また、上記相違点(b)にも関連するが、検出値が許容値を超えていることでオフセット補正をする際、予め定めた閾値以上に改善されるまで調整して許容範囲内とすることは、特開平10-149613号公報,特開平9-161279号公報,特開平3-273529号公報等に記載されて周知である。 したがって、刊行物1発明においてもトラッキング信号のバランス調整をしていく際に、「エラーレート検出手段で検出された前記小さい方のエラーレートに対応する方向にトラッキングエラー信号のバランス位置をずらしたとき」さらに「エラーレートが第1のエラーレート計測手段で計測されたエラーレートよりも予め定めた閾値以上改善されるまで、ずらし量可変手段によりトラッキングエラー信号のバランス位置のずらす量を変更」することは当業者が容易に想到できるものである。 以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1,刊行物2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明し得たものと認められ、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-02-01 |
結審通知日 | 2008-02-04 |
審決日 | 2008-02-27 |
出願番号 | 特願2002-176066(P2002-176066) |
審決分類 |
P
1
8・
55-
Z
(G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 渡邊 聡、田良島 潔 |
特許庁審判長 |
江畠 博 |
特許庁審判官 |
小松 正 吉川 康男 |
発明の名称 | 光ディスク記録再生装置 |