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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B22D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B22D
管理番号 1176339
審判番号 不服2006-11814  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-08 
確定日 2008-04-11 
事件の表示 特願2001-275468「金型用冷却装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月18日出願公開、特開2002-172455〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、平成13年9月11日(優先権主張 平成12年9月25日)の出願であって、平成17年5月11日付けで拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成17年7月11日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成18年5月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年6月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成18年7月7日付けで手続補正がなされたものである。

[2]平成18年7月7日付け手続補正についての補正却下の決定
【補正却下の決定の結論】
平成18年7月7日付けの手続補正を却下する。

【理由】
1.補正後の本願発明
本件手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。
「【請求項1】 金型に設けられた流体流通路に対して冷却液を送給するポンプ部を備えた金型用冷却装置において、
前記ポンプ部のエアによる駆動と、前記流体流通路に対するエアの送給とを行わせるエア給排回路を備え、該エア給排回路によるエアの給排によって前記ポンプ部から前記流体流通路側に対して冷却液を連続送給可能に構成すると共に、前記エア給排回路は、冷却液の送給時には前記ポンプ部から前記流体流通路側に対して充分な量の冷却液が連続送給可能なエア圧の範囲内であり且つ冷却液の送給停止直後における前記流体流通路へのエアの送給時には充分な復熱作用が行われるエア圧の範囲内で、前記ポンプ部に送給されるエアのエア圧を、前記流体流通路に送給されるエアのエア圧よりも低圧に調圧するように構成されていることを特徴とする金型用冷却装置。」

この補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項であるエア給排回路のエア圧について、「冷却液の送給停止直後における前記流体流通路へのエアの送給時には充分な復熱作用が行われるエア圧の範囲内で」あることを限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

2.引用文献とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平10-80758号公報(以下、「引用文献1」という。)、特開平8-243713号公報(以下、「引用文献2」という。)の主な記載事項は次のとおりである。
〔1〕引用文献1:特開平10-80758号公報
〔摘示1a〕「【特許請求の範囲】
【請求項1】 冷却水及びエアーを圧送する圧送部と,該圧送部に接続された冷却水供給パイプとエアー供給パイプとを合流させる流体合流部と,該流体合流部に接続された冷却水マニホールドを介して金型の冷却水通路に接続される金型冷却部とから構成されている事を特徴とする金型冷却装置。」
〔摘示1b〕「【0009】冷却水を吐出・圧送するための給水用ポンプ12としては、通常用いられる周知のポンプを使用することができるが、本実施例では、図2に模式的に示した通り、高圧エアーで動作するシリンダ式のポンプを用いている。このシリンダ式のポンプは、同軸状に配置された2個のシリンダ室12a内に1本のピストンロッド12bで連結されたピストン12cを設置し、一方のシリンダ室12aのヘッド側を冷却水を溜めておくための液室12dとし、それ以外のシリンダ室内をエアー室となし、エアー室に供給する高圧エアーの作用により液室12d内の冷却水を高い吐出圧力でもって送液できると共に、格別に冷却装置を介在設置せずとも送液(水)を冷却することが出来るようにしたものである(特開平8-177720号参照)。従って、このシリンダ式ポンプを使用すれば、冷却水を吐出供給する必要がないときには冷却水の吐出動作を停止させておくことが可能となり、その分当該ポンプ及び冷却水用電磁弁に掛かる負担並びにランニングコストを軽減させることが出来る。尚、図中・・・12hは上記シリンダ式ポンプ12の吐出圧を調整するためのエアー圧力調整用レギュレーター、12iは圧力スイッチ、12jは圧力計、を示す・・・」
〔摘示1c〕「【0010】冷却水及びエアーの圧送(吐出量や吐出タイミング等)をコントロールする動作制御回路17は、・・・上記給水用ポンプ12や冷却水用電磁弁14(・・・)及びエアー用電磁弁16(・・・)をコントロールすることにより、各冷却系統の冷却水及びエアーの圧送(吐出量や吐出タイミング等)をコントロールするようになす。
【0011】・・・
【0012】この様に、流体合流部2にチェック弁21a,21bを組込むことにより、図3に示した実施例ごとく、エアー供給パイプ19(・・・)にエアー用電磁弁を組込まなくとも、エアー供給パイプ19(・・・)からエアーを吐出し続けることで冷却水が流れている間は冷却水の圧力によりエアーが流れず、冷却水の吐出が終わるとエアーの圧送が行われるようになり、冷却水とエアーを交互に圧送することができる。」
〔摘示1d〕「【0016】・・・圧送部1の動作制御回路17が鋳造・成型機からの冷却スタート信号を受信すると、動作制御回路17が動作を開始する。すると、圧送部1の動作制御回路17からの指令により給水用ポンプ12が動作して冷却水の吐出が開始されると同時に、冷却水用電磁弁14(・・・)が動作して冷却水の圧送が開始される。給水用ポンプ12から吐出圧送された冷却水は、冷却水供給パイプ18(・・・)から流体合流部2を通って冷却水マニホールド3に至り、・・・往復式冷却管42の往路を通って金型aの冷却水通路b内に入り、そこで熱交換が行なわれる。然る後、冷却水は往復式冷却管42の復路から・・・復路側口32,…を通り、冷却水マニホールド3の排水ホース33から排出される。そして、冷却水用電磁弁14(・・・)は予め設定した時間が経過すると停止し、その後にエアー用電磁弁16(・・・)が動作してエアーの圧送が開始される。
【0017】圧送部1から圧送されたエアーは、エアー供給パイプ19(・・・)から流体合流部2を通り・・・金型aの冷却水通路b内に入り、金型aの冷却水通路b内に残留した冷却水をパージ(追い出す)しながら、往復式冷却管42の復路から・・・冷却水マニホールド3を通って、金型aの外に排出される。」
〔摘示1e〕「【0019】
【発明の効果】本発明の金型冷却装置は斯様に構成したので、金型の冷却水通路内に冷却水とエアーを交互に圧送して冷却水を間欠的に供給することが出来る。よって、冷却水残りによる金型の冷やし過ぎを防止し、金型の温度をシビアにコントロールすることが可能となる。」
〔摘示1f〕図1?3には、エアー圧送部から流体合流部2へ至るエアー用配管15の途中から分岐したエアー用通路にエアー圧力調整用レギュレーター12hを設けることが示されている。

〔2〕引用文献2:特開平8-243713号公報
〔摘示2a〕「【0019】また、図3に示すように、42はピストンポンプで、このピストンポンプ42は、両エンドカバー44,46間に支持されたシリンダチューブ48内を往復動可能に挿入されたピストン50を備えている。このピストン50によりシリンダチューブ48内が仕切られて、ピストン50の両側に第1ポンプ室52と第2ポンプ室54との1組のポンプ室52,54が形成されている。両エンドカバー44,46には、それぞれ第1ポンプ室52、第2ポンプ室54に連通した接続孔56,58が形成されている。」
〔摘示2b〕「【0025】一方、ピストンポンプ42の接続孔56,58には、両ポンプ室52,54への吸入を許容する逆止め弁106,108が介装された吸入通路104がそれぞれ接続されており、吸入通路104は集合された後、電磁開閉弁102を介して図示しない冷却水源に接続されている。
【0026】また、それぞれの接続孔56,58には、両ポンプ室52,54からの吐出を許容する逆止め弁110,112が介装された吐出通路114がそれぞれ接続されており、吐出通路114は集合された後、ダイプレート8の供給孔26に接続されている。」
〔摘示2c〕「【0045】ピストン50を移動して、第1ポンプ室52の容積が最小容積になると、切換弁88を第1位置88aに切り換える。切換弁88の切り換えを繰り返して、往復動シリンダ60を往復動させ、ピストンポンプ42のピストン50を移動し、第1ポンプ室52及び第2ポンプ室54の一方では吸入作用を行い他方では吐出作用を行って、連続的に冷却通路34に高圧の冷却水を供給する。尚、本実施例では、ピストンポンプ42、往復動シリンダ60によりポンプ機構を構成しているが、これに限らず、電動モータにより駆動される渦巻ポンプによるポンプ機構であっても実施可能である。」

3.対比・判断
3-1.引用文献1に記載された発明
(ア)引用文献1の〔摘示1a〕には、請求項1に記載のとおりの、金型冷却装置が記載されている。
(イ)引用文献1の〔摘示1b〕には、冷却水を吐出・圧送するための給水用ポンプとして、エアーで動作するシリンダ式のポンプを用いる旨、該シリンダ式ポンプの吐出圧を調整するためのエアー圧力調整用レギュレーターを設ける旨が記載されている。
(ウ)引用文献1の〔摘示1c〕、〔摘示1d〕には、給水用ポンプから吐出圧送された冷却水は、金型の冷却水通路内に入り、そこで熱交換が行なわれた後、排出される旨、冷却水の吐出が終わると、圧送部から圧送されたエアーは、金型の冷却水通路内に入り、冷却水通路内に残留した冷却水をパージ(追い出す)しながら、金型の外に排出される旨が記載されている。
(エ)引用文献1の〔摘示1e〕には、該金型冷却装置により、冷却水残りによる金型の冷やし過ぎを防止し、金型の温度をシビアにコントロールすることが可能となる旨が記載されている。
(オ)引用文献1の図1?3には、〔摘示1f〕のとおり、エアー圧送部から流体合流部2へ至るエアー用配管15の途中から分岐したエアー用通路にエアー圧力調整用レギュレーター12hを設けることが示されている。

以上の(ア)?(オ)の事項を考慮し、〔摘示1a〕?〔摘示1f〕の記載を整理すると、引用文献1には、次の「金型冷却装置」の発明(以下、「引用文献1発明」という。)が記載されていると認められる。
引用文献1発明:「冷却水及びエアーを圧送する圧送部と、該圧送部に接続された冷却水供給パイプとエアー供給パイプとを合流させる流体合流部と、該流体合流部に接続された冷却水マニホールドを介して金型の冷却水通路に接続される金型冷却部とから構成されている金型冷却装置であって、冷却水を吐出・圧送するための給水用ポンプは、ポンプの吐出圧を調整するためのエアー圧力調整用レギュレーターで調圧されたエアーで動作するシリンダー式のものであり、該エアー圧力調整用レギュレーターは、エアー圧送部から流体合流部へ至るエアー用配管の途中から分岐したエアー用通路に設けられたものであり、給水用ポンプから吐出圧送された冷却水は、金型の冷却水通路内に入り、そこで熱交換が行なわれた後、排出され、冷却水の吐出・圧送が終わると、圧送部から圧送されたエアーは、金型の冷却水通路内に入り、冷却水通路内に残留した冷却水をパージ(追い出す)しながら、金型の外に排出されるように構成され、冷却水残りによる金型の冷やし過ぎを防止し、金型の温度をシビアにコントロールすることが可能な金型冷却装置。」

3-2.本願補正発明1と引用文献1発明との対比
本願補正発明1と引用文献1発明を対比すると、
(カ)引用文献1発明における「冷却水」は、本願補正発明1における「冷却液」に相当し、以下同様に、「エアー」は「エア」に、「冷却水通路」は「流体流通路」に、「圧送」は「送給」に、「ポンプ」は「ポンプ部」に、それぞれ相当する。(以下、引用文献1発明における用語の代わりに、それに相当する本願補正発明1における用語を使用することがある。)
(キ)引用文献1発明は、その「給水用ポンプは、・・・エアー圧力調整用レギュレーターで調圧されたエアーで動作するものであり」、「圧送部から圧送されたエアーは、金型の冷却水通路内に入り、冷却水通路内に残留した冷却水をパージ(追い出す)しながら、金型の外に排出され」等の構成からみて、ポンプ部のエアによる駆動と、流体流通路に対するエアの送給とを行わせるエア給排回路を備えているといえる。
(ク)引用文献1発明では、その「金型の温度をシビアにコントロールすることが可能」等の構成からみて、冷却液の送給時には金型は冷却液により適切に冷却されているといえるので、上記エア給排回路は、冷却液の送給時にはポンプ部から流体流通路側に対して充分な量の冷却液が送給可能なエア圧の範囲内であるといえる。
(ケ)引用文献1発明では、その「冷却水の吐出・圧送が終わると、圧送部から圧送されたエアーは、金型の冷却水通路内に入り、冷却水通路内に残留した冷却水をパージ(追い出す)しながら、金型の外に排出されるように構成され、冷却水残りによる金型の冷やし過ぎを防止し、金型の温度をシビアにコントロールすることが可能」等の構成からみて、上記エア給排回路は、冷却液の送給停止直後における流体流通路へのエアの送給時には充分な復熱作用が行われるエア圧の範囲内であるといえる。
(コ)引用文献1発明では、エアー圧送部からのエアは、ポンプ部に対しては、エアー圧力調整用レギュレーターで調圧したものが送給されるのに対し、流体流通路に対しては、エアー圧力調整用レギュレーターを介することなく、そのまま送給されるから、ポンプ部に送給されるエアー圧は、流体流通路に送給されるエアのエア圧をエアー圧力調整用レギュレーターで調圧したものといえる。

以上の(カ)?(ケ)の事項を勘案すると、両者は、
「金型に設けられた流体流通路に対して冷却液を送給するポンプ部を備えた金型用冷却装置において、前記ポンプ部のエアによる駆動と、前記流体流通路に対するエアの送給とを行わせるエア給排回路を備え、該エア給排回路によるエアの給排によって前記ポンプ部から前記流体流通路側に対して冷却液を送給可能に構成すると共に、前記エア給排回路は、冷却液の送給時には前記ポンプ部から前記流体流通路側に対して充分な量の冷却液が送給可能なエア圧の範囲内であり且つ冷却液の送給停止直後における前記流体流通路へのエアの送給時には充分な復熱作用が行われるエア圧の範囲内に調圧するように構成されている金型用冷却装置。」である点で一致するが、次の点で相違する。

相違点1:本願補正発明1では、ポンプ部から流体流通路側に対する冷却液の送給を「連続送給可能」としているのに対し、引用文献1には、流体流通路側に対する冷却液の送給を「連続送給可能」とすることが記載されていない点

相違点2:本願補正発明1では、ポンプ部に送給されるエアのエア圧を「流体流通路に送給されるエアのエア圧よりも低圧に調圧するように構成」しているのに対し、引用文献1発明では、ポンプ部に送給されるエアー圧は、流体流通路に送給されるエアのエア圧をエアー圧力調整用レギュレーターで調圧したものといえるが、ポンプ部に送給されるエアのエア圧を「流体流通路に送給されるエアのエア圧よりも低圧に調圧するように構成」しているか否か不明である点

3-3.相違点についての検討
(i)相違点1について
給水用ポンプとして、連続送給可能なものは、本願優先権主張日前において周知のものであるし、引用文献2の〔摘示2a〕?〔摘示2c〕には、ピストンポンプ(すなわち、シリンダー式ポンプ)を用い、金型の冷却通路に高圧の冷却水を連続的に供給する旨が記載されている。
また、ポンプの駆動にどのような手段を用いるかは、設計的な事項といえる。
さらに、引用文献1の〔摘示1b〕には、給水用ポンプとして周知のポンプも使用できる旨が記載されていることからすると、引用文献1発明において、どのような給水用ポンプを用いるかは、設計的な事項といえる。
してみれば、引用文献1発明において、その給水用ポンプを「連続送給可能」なエア駆動のものとし、ポンプ部から流体流通路側に対する冷却液の送給を「連続送給可能」とすることは、引用文献2の前示の記載や前示の周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。

(ii)相違点2について
エアー圧力調整用レギュレーターは、通常、該レギュレーターの下流側の圧力を上流側より低い所定の低圧に調圧するものであるから、上記相違点2は、実質的な相違とはいえない。
仮に、上記相違点2が実質的な相違であるとしても、送給されるエア圧をエア送給対象の機器に応じて調圧するようなことは、当業者が適宜なし得る設計的な事項であるから、引用文献1発明において、ポンプ部に送給されるエアのエア圧を「流体流通路に送給されるエアのエア圧よりも低圧に調圧するように構成」することは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして、本願補正発明1は、上記相違点1、2により、引用文献1、2の記載や周知事項から予測できないような格別に顕著な効果を奏するとは認められない。
よって、本願補正発明1は、引用文献1、2に記載された発明や周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.本件手続補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

[3]本願発明について
1.本願発明
平成18年7月7日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?7に係る発明は、平成17年7月11日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 金型に設けられた流体流通路に対して冷却液を送給するポンプ部を備えた金型用冷却装置において、
前記ポンプ部のエアによる駆動と、前記流体流通路に対するエアの送給とを行わせるエア給排回路を備え、該エア給排回路によるエアの給排によって前記ポンプ部から前記流体流通路側に対して冷却液を連続送給可能に構成すると共に、前記エア給排回路は、前記ポンプ部に送給されるエアのエア圧を、前記ポンプ部から前記流体流通路側に対して冷却液が連続送給可能なエア圧の範囲内で、前記流体流通路に送給されるエアのエア圧よりも低圧に調圧するように構成されていることを特徴とする金型用冷却装置。」

2.引用文献とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である引用文献1、2とその主な記載事項は、上記[2]2.のとおりである。

3.対比・判断
引用文献1には、上記[2]3-1.に記載したとおりの引用文献1発明が記載されていると認められる。

本願発明1と引用文献1発明を対比すると、両者は、
「金型に設けられた流体流通路に対して冷却液を送給するポンプ部を備えた金型用冷却装置において、前記ポンプ部のエアによる駆動と、前記流体流通路に対するエアの送給とを行わせるエア給排回路を備え、該エア給排回路によるエアの給排によって前記ポンプ部から前記流体流通路側に対して冷却液を送給可能に構成すると共に、前記エア給排回路は、前記ポンプ部に送給されるエアのエア圧を、前記ポンプ部から前記流体流通路側に対して冷却液が送給可能なエア圧の範囲内に調圧するように構成されている金型用冷却装置。」である点で一致するが、次の点で相違する。

相違点1’:本願発明1では、ポンプ部から流体流通路側に対する冷却液の送給を「連続送給可能」としているのに対し、引用文献1には、流体流通路側に対する冷却液の送給を「連続送給可能」とすることが記載されていない点

相違点2’:本願発明1では、ポンプ部に送給されるエアのエア圧を「流体流通路に送給されるエアのエア圧よりも低圧に調圧するように構成」しているのに対し、引用文献1発明では、ポンプ部に送給されるエアー圧は、流体流通路に送給されるエアのエア圧をエアー圧力調整用レギュレーターで調圧したものといえるが、ポンプ部に送給されるエアのエア圧を「流体流通路に送給されるエアのエア圧よりも低圧に調圧するように構成」しているか否か不明である点

これらの相違点1’、2’について検討するに、これらの相違点1’、2’は、上記[2]3-3.で検討した上記相違点1、2と実質上同じものであるから、相違点1’は、上記相違点1と同様に、引用文献2や周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものであり、相違点2’は、上記相違点2と同様に、実質的な相違とはいえないか、仮に、実質的な相違であるとしても、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願発明1は、上記相違点1’、2’により、引用文献1、2の記載や周知事項から予測できないような格別に顕著な効果を奏するとは認められない。
したがって、本願発明1は、引用文献1、2に記載された発明や周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-15 
結審通知日 2008-02-18 
審決日 2008-02-29 
出願番号 特願2001-275468(P2001-275468)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B22D)
P 1 8・ 575- Z (B22D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馳平 憲一  
特許庁審判長 綿谷 晶廣
特許庁審判官 前田 仁志
市川 裕司
発明の名称 金型用冷却装置  
代理人 城村 邦彦  
代理人 白石 吉之  
代理人 田中 秀佳  
代理人 江原 省吾  
代理人 熊野 剛  

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