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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1176352
審判番号 不服2005-18131  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-21 
確定日 2008-04-09 
事件の表示 平成 7年特許願第 42788号「めっき層の形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 9月17日出願公開、特開平 8-242061〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成7年3月2日の出願であって、平成17年8月17日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年9月21日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月20日付の手続補正により、特許請求の範囲の請求項1が補正されたものである。

II.平成17年10月20日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年10月20日付の手続補正を却下する。

[理 由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は次のとおりに補正された。

「【請求項1】
電気めっきによって、他の領域と比してめっきパターンの占有面積が粗なる領域を有するパターンのめっき層を形成するめっき層の形成方法であって、
めっき浴槽内の幅を被めっき物の幅と略同寸法とし、該被めっき物と電極との間の距離を前記被めっき物の対角線の長さの1/4?1/2とし、前記被めっき物と電極との間に前記粗なる領域に対応する形状パターンに形成された絶縁体を配して、前記他の領域及び粗なる領域のパターンのめっき層を形成することを特徴とするめっき層の形成方法。」

2.補正目的違反について
上記請求項1の補正事項は、当該補正前の平成17年5月20日付の手続補正書の請求項1に記載された「略同寸法とし、」の次に、「該被めっき物と電極との間の距離を前記被めっき物の対角線の長さの1/4?1/2とし、」を付加するものである。
しかしながら、当該補正前の請求項1には、被めっき物と電極との間の距離に関する記載は存在しないから、上記補正事項は、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではなく、特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものに該当しない。
また、上記補正事項は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的としたものにも該当しない。
したがって、上記補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

3.独立特許要件違反について
仮に、上記補正事項が、同法第17条の2第4項第2号に規定する限定的減縮を目的とするものに該当するとしても、次の(1)?(2-2)で述べるように、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明1」という。)は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものである。

(1)刊行物と周知例及びその摘記事項
平成17年3月16日付の拒絶理由に引用された本願出願前に頒布された下記の刊行物1、2と周知例1、2には次の事項が記載されている。

刊行物1:実願昭58-100601号(実開昭60-9973号)のマイクロフィルム(拒絶理由の引用文献1)
刊行物2:特開昭50-97866号公報(同引用文献2)
周知例1:特開平7-26398号公報(同引用文献3)
周知例2:特開平4-99190号公報(同引用文献4)

(1-1)刊行物1の摘記事項
「実用新案登録請求の範囲
異なるメッキ面積密度に応じた透孔を有する連続せる遮蔽シートを設け、電解メッキをなすべき被メッキ体に応じて遮蔽シートの一部を選択することを特徴とするメッキ装置。」(1頁4?8行)
「第1図は従来のプリント基板の電解メッキ装置の断面図であり、・・・
プリント基板の銅箔面及び電解メッキされたスルーホールメッキをなすべき透孔の内面に銅の電解メッキをなす手法は第1図に示す如く、メッキ槽1に満たした電解液2中に陽極3として銅板を、陰極5としてプリント基板を浸漬し、電圧を印加する電源6をリード線7で接続する。そして、陰極5のプリント基板のメッキすべき面のメッキ面積密度がメッキすべき導体パターン及びスルーホールメッキのための透孔数等によって部分的に粗密の差異があり、電解メッキされて電着する銅のメッキ厚は均一を欠くため、これを補正するために、陽極3と陰極5との略中間位置に遮蔽板4を電解液2中に浸漬して吊下げる。
遮蔽板4は略陰極5と同一面積を有する塩化ビニール等による合成樹脂平板で陰極5のメッキ面積密度を平均化するために透孔を多数穿孔し、陰極5のメッキ面積密度の状態に応じて対応する遮蔽板4が形成される。」(2頁7行?3頁8行)
「本考案によるプリント基板の電解メッキによる銅の電着量の均一な付着のための遮蔽は、第2図に示す如く・・・塩化ビニール等を用いたシート状よりなる遮蔽膜8には、プリント基板のメッキ面積密度の粗密な形状に対応するメッキ厚補正のための透孔が穿孔され、又プリント基板のコードと同一コードが付記されている。即ち、パターン密度が高い場所或は、パターン幅の広い場所に対応して多くの透孔又は大径透孔を配してある。そして、移送ローラ9aでエンドレスに走行しうる如くなり、エンドレスの遮蔽膜8に収容する遮蔽パターン数を増量するためにストックローラー10a?10nを用いてシールド膜8の全長を大ならしめる。
プリント基板の個体と遮蔽膜8の遮蔽パターンとを係合せしめるには、メッキすべきプリント基板のコード入力部11を用いて人為的にもしくは自動的に制御装置13に入力する。」(4頁17行?5頁15行)

(1-2)刊行物2の摘記事項
「本発明の方法は、陽極と陰極との間に印刷回路板においてメツキを必要としない部分については陽極からの金属イオンの流れを遮断し、同時にメツキを必要とする部分については上記金属イオンを通過させる遮蔽板を設置し、該遮蔽板により所望の回路パターン部のメツキ厚を均一化するようにしてなることを特徴とする。
・・・
第1図は本発明のメツキ法を行う装置のメツキ槽内の配置を示すもので、1は陽極、2は電流の流れをパターン部に均一に流す為の有孔遮蔽板、3は印刷回路板、4は印刷回路板3のパターン部、5は電流通過孔、および6はパターン外のメツキ部を示している。
詳しくは第2図に示す様に、回路板3のパターン部4に対応する様に遮蔽板2(絶縁材たとえば樹脂、塩ビその他でつくられている)にパターンに応じて電流が均一になる様な配置で孔5を明けると、パターン部4はこの孔により規定の電流が均一に流れ、その他の部分は電流が遮蔽されている為に電流は少くなる。この為パターン部4には規定の厚さに均一にメツキが行われ、その他の部分はメツキ厚が薄くなる。
以上のように、有孔遮蔽板を陽極と陰極との中間に設置し、陽極からの電流の流れを必要外の部分については遮断し、同時に必要部に対しては遮蔽板中に設けられた電流通過孔(パターンにより孔径、数、配置を電流分布が均一になる様にセットする)により電流を流すことにより、パターン部のメツキ厚を規格内に入る様にししかも均一にすることが出来る。」(1頁右欄6行?2頁左上欄16行)

(1-3)周知例1の摘記事項
「【0016】
【実施例1】図1に本発明によるめっき装置の一実施例の断面図を示す。ここで、被めっき物3と陽極4とを互いに対向してめっき槽の絶縁壁6に固定し、該絶縁壁6により被めっき物3と陽極4の外周部を囲って、電流が被めっき物3の外周部を外側に迂回して流れないようにしてある。上記の構成とすることによって、電流5が被めっき物3のめっき面に対して均一に流れるので、めっき膜の厚さを均一にすることができる。」

(1-4)周知例2の摘記事項
「〔作用〕
本発明によれば、めっき槽10の大きさ(B)と被めっき基板9の大きさ(A)との差を小さくしてあるので、電気力線の広がりが抑制でき、・・・したがって、めっき膜90の膜厚分布が大巾に改善され、かつ、ピットの発生も防止できるのである。」(3頁左上欄9?17行)
「〔実施例〕
第1図は本発明の実施例を示す図で、同図(イ)は斜視図、同図(ロ)は上面図である。」(3頁右上欄1?3行)
「また、めっき槽10の大きさ(B)と被めっき基板9の大きさ(A)との差が小さいので、電気力線の広がりも小さくできる。これにより、めっき膜90にはピットの発生が殆どなくなり膜厚も大巾に改善できた。」(3頁右下欄12?16行)

(2)対比・判断
(2-1)刊行物1を主引例として
刊行物1の上記摘記事項によれば、遮蔽シート(遮蔽板、遮蔽膜)には、導体パターンのパターン密度が高い場所(密な部分)に対応して多数の透孔を穿孔しているから、導体パターンのパターン密度が低い場所(粗な部分)には上記多数の透孔よりも少ない透孔を穿孔しているものと認められる。
そうすると、刊行物1には、次のメッキ層の形成方法に関する発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
刊行物1発明:「プリント基板のメッキ面積密度の粗密な形状に対応するメッキ厚補正のための透孔であって、パターン密度の高い部分(密な部分)に多くの透孔を配し、パターン密度の低い部分(粗な部分)に少ない透孔を配した遮蔽シートをメッキ槽電解液中の陽極とプリント基板の略中間位置に配置し、プリント基板に対して、電解メッキによる銅の電着量を均一に付着するメッキ層の形成方法」

本願補正発明1と刊行物1発明を対比すると、
(ア)刊行物1発明における「メッキ槽」は、本願補正発明1における「めっき浴槽」に相当し、以下同様に、「陽極」は「電極」に、「プリント基板」は「被めっき物」に、「遮蔽シート」は「絶縁体」に、「電解メッキ」は「電気めっき」に、それぞれ相当する(以下、刊行物1発明における用語の代わりに、それに相当する本願補正発明1の用語を使用することがある。)。
(イ)刊行物1発明の「パターン密度の低い部分(粗な部分)」は、本願補正発明1の「粗なる領域」に相当し、刊行物1発明の「パターン密度の高い部分(密な部分)」は、本願補正発明1の「他の領域」に相当するといえる。
(ウ)刊行物1発明における「有孔遮蔽板」には、プリント基板(被めっき物)に形成するめっきのパターンに対応する透孔が形成されており、このような透孔が形成された「有孔遮蔽板」は、本願補正発明1における「粗なる領域に対応する形状パターンに形成された絶縁体」に相当するといえる。
(エ)刊行物1発明の「パターン密度の低い部分」においても、本願補正発明1の「めっき層」と同様に、メッキを形成することは明らかである。

そうすると、両者は、「電気めっきによって、他の領域と比してめっきパターンの占有面積が粗なる領域を有するパターンのめっき層を形成するめっき層の形成方法であって、前記被めっき物と電極との間に前記粗なる領域に対応する形状パターンに形成された絶縁体を配して、前記他の領域及び粗なる領域のパターンのめっき層を形成するめっき層の形成方法」の点で一致するものの、次の点で相違する。

相違点1:本願補正発明1では、「めっき浴槽内の幅を被めっき物の幅と略同寸法」としたのに対し、刊行物1発明では、めっき浴槽内の幅と被めっき物の幅との関係が不明である点
相違点2:本願補正発明1では、「被めっき物と電極との間の距離を被めっき物の対角線の長さの1/4?1/2」としたのに対し、刊行物1発明では、被めっき物と電極との間の距離と被めっき物の対角線の長さとの関係が不明である点

そこで、上記相違点1、2について次に検討する。

相違点1について
上記周知例1には、絶縁壁により被めっき物と陽極(電極)の外周部を囲って、電流が被めっき物の外周部を外側に迂回して流れないようにして、めっき膜の厚さを均一にする旨が記載され、上記周知例2には、めっき槽(めっき浴槽)の大きさと被めっき基板(被めっき物)の大きさとの差を小さくして、電気力線の広がりを抑制して、めっき膜厚を均一にする旨が記載されている。
このような周知例1,2の記載から見て、めっき膜厚を均一にすることを課題として、めっき浴槽内の幅を被めっき物の幅と略同寸法とすることは、本願出願前において周知の事項といえる。
してみれば、刊行物1発明において、めっき膜厚を均一にすることを課題として、めっき浴槽(メッキ槽)内の幅を被めっき物(プリント基板)の幅と略同寸法とすることは、前記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。

相違点2について
電気めっきの技術分野において、被めっき物と電極との間の距離が大きいとめっき膜厚が均一化しやすいが、処理に必要な電圧、消費電力、電解液量が多大となること、該距離が小さいと、処理に必要な電圧、消費電力、電解液量が多大とならない点でメリットがあるが、めっき膜厚が不均一となりやすいことは、次の周知例3、4の記載に見られるように、本願出願前において周知の事項である。
しかも、次の周知例5には、対角線の長さが117mm〔=(61^(2)+100^(2))^(1/2)〕の陰極板(被めっき物)と一方の陽極(電極)との距離bを約40mm〔≒めっき槽の内寸法の長さ240mm×b/(a+b):ここで(a/b)=距離比P=5〕とする旨が記載されており、被めっき物と電極との間の距離を前記被めっき物の対角線の34%程度(=40/117)とする旨が示されているから、「被めっき物と電極との間の距離を前記被メッキ物の対角線の1/4?1/2」という範囲内の数値は、格別に特異なものともいえない。

周知例3:特公平4-28798号公報
「表裏面のメツキ厚さを同一にするためには、・・・前記プリント基板(陰極)の表裏面と両陽極間の距離をできる限り同一とし、電流量をほぼ同一とすることが試みられているが、前記陽極を一定位置に固定することが機械的に困難であることから、実際には両陽極とプリント基板間の距離を大きくとり、メツキ層内でのプリント基板の設置位置が多少ずれても電流量への影響が殆ど生じないようにしている。
この方法では・・・均一なメツキ層を得ることができる反面、メツキ槽が大型化し液量も多くなり、設備が大規模になるだけでなくランニングコストも嵩み、更に極間距離の増加に起因する槽電圧の上昇が前記直流電源容量の増大に繋がりかつ消費電力の増大を招くという欠点がある。」(1頁右欄22行?2頁左欄18行)

周知例4:特開平4-99898号公報
「極間距離1の変化によるメッキ膜厚の不均一化を防止するために、極間距離1を大きくしなければならないので、装置大型や建浴量が増大となる問題がある。」(1頁右下欄15?18行)

周知例5:特公平2-22158号公報
「次に、上記実験例1?11及び比較実験例1?4の電気めつき液につき、第2図に示すハーリングセルを用いて均一電着性を調べた。
ここで、第2図において5はアクリル樹脂製のハーリングセルであり、その内寸法は長さ240mm、幅63mm、深さ100mmで、その内部に1500mlのめつき液6が入れられる。また、7は61×100×1mmの大きさの陽極板であり、図示していないが、支持体に取り付けられ、ハーリングセル内の所用位置に固定されるようになつている。さらに8,8はハーリングセル5内の長さ方向両端部にそれぞれ配設された61×100×0.3mmの大きさの陰極板である。
このハーリングセルを用いて均一電着性を測定する場合は、陽極板をハーリングセル内の所用位置に固定して2枚の陰極板と陽極板との間の距離比(a/b)を所用の値に設定する(本発明においては距離比5)。そして、所定時間めつきを行つた後、2枚の陰極板に析出しためつき被膜の重量を測定し、下記式から均一電着性を算出するものである。
本実験においては、陽極に電気ニツケル板、陰極にそれぞれ裏面にテープコーテイングを施した銅板2枚を用い、距離比5に設定して、電気めつき液を液温55℃に保ち、ゆるい空気撹拌を行ないながら総電流2Aにて30分間通電した。
T(%)=P-M/P+M-2×100
但し、
T:均一電着性
P:距離比a/b(本実験では5)
M:陰極に析出しためつき被膜重量比
(M1/M2:M1は陽極に近い方の陰極重量、M2は陽極に遠い方の陰極重量)
上記の式から明らかなように、均一電着性が0%であるということは陰極に析出しためつき被膜重量比が陽極と陰極との距離比に等しいということであり、このことは陰極に対する電流分布の相違通りにめつき膜厚差が生じるということを意味する。これに対し、均一電着性が100%であるということは2枚の陰極に析出しためつき膜の重量が陽極と陰極の距離比に依存することなく同じであり、陰極に対して電流分布が生じてもめつき膜厚は均一であるということを意味する。」(6頁右欄8行?7頁左欄7行)

してみれば、刊行物1発明において、メッキ膜厚の均一性と、処理に必要な電圧、消費電力、電解液量等のコストとを勘案し、「被めっき物と電極との間の距離を前記被メッキ物の対角線の1/4?1/2」の範囲内の値とすることは、前示の周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。

したがって、本願補正発明1は、刊行物1発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(2-2)刊行物2を主引例として
刊行物2の上記摘記事項によれば、メッキ槽内の陽極と陰極の印刷回路板との間に、印刷回路板のメッキを必要としないパターン部については陽極から金属イオンの流れを遮断し、同時にメッキを必要とするパターン部については、電流分布が均一となるように金属イオンを通過させる電流通過孔を有する有孔遮蔽板を設置し、該有孔遮蔽板により所望の回路パターン部のメッキ厚を均一化する旨が記載されているから、刊行物2には、次の「メッキ層の形成方法」に関する発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されていると認められる。
刊行物2発明:「メッキ槽内の陽極と陰極の印刷回路板との間に、印刷回路板のメッキを必要としないパターン部については陽極から金属イオンの流れを遮断し、同時にメッキを必要とするパターン部については、電流分布が均一となるように金属イオンを通過させる電流通過孔を有する有孔遮蔽板を設置し、該有孔遮蔽板により所望の回路パターン部のメッキ厚を均一化するメッキ層の形成方法。」

本願補正発明1と刊行物2発明を対比すると、
(ア)刊行物2発明における「メッキ槽」は、本願補正発明1における「めっき浴槽」に相当し、以下同様に、「陽極」は「電極」に、「印刷回路板」は「被めっき物」に、「遮蔽板」は「絶縁体」に、それぞれ相当する(以下、刊行物2発明における用語の代わりに、それに相当する本願補正発明1の用語を使用することがある。)。
(イ)刊行物2発明においては、有孔遮蔽板の電流通過孔により、「メッキを必要とするパターン部については、電流分布が均一となるように金属イオンを通過させる」から、印刷回路板(被めっき物)は、メッキをあまり必要としない「めっきパターンの占有面積が粗なる領域」と、メッキを多く必要とする「他の領域」を具備するといえる。
(ウ)刊行物2発明における「有孔遮蔽板」には、印刷回路板(被めっき物)に形成するめっきのパターンに対応する電流通過孔が形成されており、このような電流通過孔が形成された「有孔遮蔽板」は、本願補正発明1における「粗なる領域に対応する形状パターンに形成された絶縁体」に相当するといえる。

そうすると、両者は、「電気めっきによって、他の領域と比してめっきパターンの占有面積が粗なる領域を有するパターンのめっき層を形成するめっき層の形成方法であって、前記被めっき物と電極との間に前記粗なる領域に対応する形状パターンに形成された絶縁体を配して、前記他の領域及び粗なる領域のパターンのめっき層を形成するめっき層の形成方法」の点で一致するものの、次の点で相違する。

相違点1:本願補正発明1では、「めっき浴槽内の幅を被めっき物の幅と略同寸法」としたのに対し、刊行物2発明では、めっき浴槽内の幅と被めっき物の幅との関係が不明である点
相違点2:本願補正発明1では、「被めっき物と電極との間の距離を被めっき物の対角線の長さの1/4?1/2」としたのに対し、刊行物2発明では、被めっき物と電極との間の距離と被めっき物の対角線の長さとの関係が不明である点

そこで、上記相違点1、2について検討するに、これらの相違点は、上記(2-1)で述べたと同様のものであるから、上記(2-1)で述べたと同様の理由で、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

したがって、本願補正発明1は、刊行物2発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.本件補正についてのまとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するか、仮に、同規定に違反していないとしても、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
平成17年10月20日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成17年5月20日付の手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】電気めっきによって、他の領域と比してめっきパターンの占有面積が粗なる領域を有するパターンのめっき層を形成するめっき層の形成方法であって、
めっき浴槽内の幅を被めっき物の幅と略同寸法とし、該被めっき物と電極との間に、前記粗なる領域に対応する形状パターンに形成された絶縁体を配して前記他の領域及び粗なる領域のパターンのめっき層を形成することを特徴とするめっき層の形成方法。」

2.引用刊行物とその摘記事項
平成17年3月16日付の拒絶理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物1、2と周知例1、2及びその摘記事項は、上記「II.3.(1)刊行物と周知例及びその摘記事項」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明1は、上記本願補正発明1の限定事項である「被めっき物と電極との間の距離を被めっき物の対角線の長さの1/4?1/2とし」た点を削除したものである。

そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明1が、前記「II.3.(2)対比・判断」に記載したとおり、刊行物1又は刊行物2に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1についても、同様の理由により、刊行物1又は刊行物2に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-08 
結審通知日 2008-02-12 
審決日 2008-02-25 
出願番号 特願平7-42788
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鏡 宣宏遠藤 邦喜  
特許庁審判長 綿谷 晶廣
特許庁審判官 市川 裕司
小川 武
発明の名称 めっき層の形成方法  
代理人 廣江 武典  

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