• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B60R
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B60R
管理番号 1176355
審判番号 不服2005-19670  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-12 
確定日 2008-04-09 
事件の表示 特願2000-291943号「車両用折り畳みシートにおける乗員保護構造」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月 2日出願公開、特開2002- 96713号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年9月21日の出願であって、平成17年9月9日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年10月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年11月11日に手続補正がなされたものである。

2.平成17年11月11日付けの手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年11月11日付けの手続補正書による補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
平成17年11月11日付けの手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、

「【請求項1】 前端を車体またはシートのベースフレームに軸支し、車両前方に反転可能なシートクッションのクッションフレームと、
該クッションフレームの後部側に起立状に固着したべースプレートと、
車床に固設したストライカと係合し、前記ベースプレートに設けられたロック機構とからなり、
該ロック機構をシートベルトのアンカーと前記ベースプレートとで挟持して前記ベースプレートに後方より共締めし、
前記ベースプレートに、クッションフレームの縦パイプと、該縦パイプよりも低い位置にクッションフレームの横パイプとを接合したことを特徴とする車両用折り畳みシートの乗員保護装置。
【請求項2】 前記ストライカを車床に前後方向に向けて固設し、前記ロック機構を左右方向に回転するラッチによって構成したことを特徴とする請求項1記載の車両用折り畳みシートの乗員保護装置。
【請求項3】 前記ベースプレートに共締めした左右一対のベルトアンカー間に、ストライカと係合するラッチを配設してなる請求項2記載の車両用折り畳みシートの乗員保護装置。」
と補正された。

前記補正後の請求項1の「縦パイプと、・・・横パイプとを接合」について、当初明細書においては、クッションフレームの縦パイプと横パイプとは、「溶接」されることのみが記載されていたが、本件補正により、縦パイプと横パイプとは「接合」されるという上位概念化されることになり、このことは、当初明細書または図面に記載されておらず、また、当初明細書または図面の記載から自明な事項とはいえないものである(新規事項の追加)。

以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法(以下「旧法」という。)第17条の2第3項(新規事項)に適合しない。

更に、前記補正後の請求項1について、本件補正前の請求項1に記載されていた「ロアレール」、「アッパーレール」、「スライドレール」、「バックフレーム」、「ラッチ」といった発明特定事項が削除され、また、本件補正前の請求項1に記載されていた「ラッチ」の回転方向や「ストライカ」の固設方向が削除された。
また、本件補正前の請求項1では、クッションフレームはベースフレームに軸支されていたが、本件補正により、クッションフレームの前端は、「車体」または「シートのベースフレーム」に軸支されるという択一的事項となった。
このことから、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1に記載された発明を限定的に減縮するものではない。

また、本件補正後の請求項1が、本件補正前のもう1つの独立請求項である請求項4を限定する目的としたものであると考えても、本件補正前の請求項4では、クッションフレームは車体に軸支されていたが、本件補正により、クッションフレームの前端は、「車体」または「シートのベースフレーム」に軸支されるという択一的事項となった。
更に、本件補正後の請求項1は、請求項2及び3という従属項を有しており、本件補正前の請求項4から見れば、該請求項4が引用される請求項がない単独の独立請求項であったことから、明らかに請求項数を増加する補正(増項補正)となっている。
このことから、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項4に記載された発明を限定的に減縮するものではない。

以上のことから、特許請求の範囲の補正は、旧法第17条の2第4項第2号で規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当せず、また、同項第1号(請求項の削除)、第3号(誤記の訂正)、第4号(明瞭でない記載の釈明)のいずれにも該当しない。

以上のとおり、本件補正は、旧法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年11月11日付けの手続補正書による補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年7月19日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものにあると認められる。

「 【請求項1】 車床に固定したロアレールと、このロアレールにスライド自在に係合するアッパーレールとからなる左右一対のスライドレール、該スライドレールのアッパーレールに一体に固定したベースフレーム、該ベースフレームの前端に、前方に反転可能に軸支するシートクッションのクッションフレーム、前記ベースフレームの後端に連結するシートバックのバックフレーム、 とから構成し、
前記クッションフレームの後部側には、左右方向に回転するラッチ付のロック機構を設け、該ロック機構のラッチが係合するコ字状のストライカを車床に前後方向に向けて固設し、
前記ロック機構と共にシートベルトのアンカーをクッションフレーム側に一体に締結してなる車両用折り畳みシートにおける乗員保護構造。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭62-182100号(実開平1-85155号)のマイクロフィルム(以下「引用例」という。)には、第1?3図と共に、次の(イ)?(ハ)の事項が記載されている。

(イ)「この考案は、衝突等の緊急時においても、ストライカーからのラッチの離脱を防止した、前倒れシートのベルトアンカー付クッションフレームに関する。」(明細書第2ページ第4行?同ページ第7行)

(ロ)「第1図に示すように、この考案に係るベルトアンカー付クッションフレーム10は、パイプ等を略コ字形に形成したクッションフレーム本体12と、剛性の大きなパイプ等から形成されたリンホース14とを、たとえば、取着片16を利用した溶着によって一体化して構成されている。ヒンジブラケット18が、クッションフレーム本体12の前端に溶着され、このヒンジブラケットが車床20(第2図参照)に回動可能に取付けられて、ベルトアンカー付クッションフレーム10はシートバック(図示しない)とともに前倒し可能に構成される。参照符号21は、クッションフレームに張架されたSばねであり、このSばねにシートパッド(図示しない)が積載されて、シートクッションが構成される。
また、第1図に加えて第2図を見るとよくわかるように、ロック機構22は、回動可能なラッチ24と固定されたストライカー26とを備えて構成されている。ここで、実施例において、リンホース14に取着されたブラケット28にラッチ24が取付けられ、車床20にストライカー26が取付けられている。しかし、これに限定されず、逆に、ブラケット28にストライカー26を、車床20にラッチ24をそれぞれ取付けて構成してもよい。シートが着座状態にある場合、ラッチ24がストライカー26に係止されて、シートは着座状態にロックされる。実施例において、ロック機構のラッチ24は、2個設けられているが、個数はこれに限定されない。
ブラケット28は、鋼板等から形成されて、リンホース14のほぼ中央に設けられる。そして、ロック機構のラッチ24と、シートベルトの一半部であるベルトアンカー30の一端に取着されたベルトアンカープレート32とがブラケット28に取付けられている。ここで、ラッチ24、ベルトアンカープレート32は、たとえば、ブラケット28の内側に溶着されたナット34にボルト36を螺着した、共締めによってブラケットに取付けられている(第2図参照)。
シートベルトは、ブラケット28に取付けられたベルトアンカー30と、クッションフレームのサイドから延出した他半部(図示しない)から構成されている。そして、ホルダー38がベルトアンカーの自由端に設けられ、使用の際、このホルダーがシートベルト他半部の対応するホルダーに連結されて、着座者を保持している。
ラッチ24の上部の挿通孔40にシャフト42が挿通され、このシャフトは取付けブラケット44に回動可能に軸支されている。ラッチ24は、溶着等によって連動可能にシャフト42に取付けられる。シャフト42の一端は取付けブラケット44から延出し、ラッチ24の回動が容易に行なえるように、折り曲げられて操作レバー46を構成している。また、ラッチ24の下部は、ストライカー26に係止可能なフック48を有している。フック48は、前方に開口されている。そして、ラッチ24、シャフト42は、ねじりばねのような偏倚手段(図示しない)によって前方に偏倚されて、ラッチはストライカー26と確実に係止される。ここで、ストライカー26からのラッチ24の離脱を防止するために、ラッチのフック48は、上部の挿通孔40を中心とした円弧形状とすることが好ましい(第2図参照)。
ストライカー26は、ラッチ24の係止可能な略コ字形に形成され、ボルト50等によって車床20に固着される(第2図参照)。しかし、ストライカー26は、ラッチ24が係止されれば足り、この形状に限定されないことはいうまでもない。
この考案によれば、第2図からよくわかるように、ロック機構のラッチ24とベルトアンカー、詳細にいえば、ベルトアンカープレート32とが、ブラケット28に共締めされている。そして、ロック機構のラッチ24とストライカー26とが係止されて、シートの着座状態が保持される。」(明細書第7ページ第7行?第10ページ第17行)

(ハ)「上記のような構成のベルトアンカー付クッションフレーム10において、衝突等の緊急時には、矢視方向への負荷(引張力)Fが、ベルトアンカー30を介してブラケット28に作用する(第2図参照)。一般的に、負荷Fの作用方向は、シートベルトを挿着した状態で前方上方に10゜?15゜となる。そのため、ベルトアンカー30は前方斜め上方へ引張られる。通常、クッションフレーム本体12、リンホース14に比較して、ブラケット28の剛性は小さく、ベルトアンカー30が引張られると、第3図に示すように、ブラケットが変形する。ここで、ブラケット28が変形することによって、ベルトアンカー30に作用する負荷Fは、リンホース14に直接作用することなく、ストライカー26に伝達され、ストライカーから車床20に逃がされる。ブラケット28の変形によってラッチ24の上端が、ストライカー26を回動中心として反時計方向に回動する。しかし、ストライカー26に係止されたフック48自体はほとんど移動しないために、ストライカーからのラッチ24の離脱は防止される。
また、第1図からわかるように、ブラケット28は、上面に切欠き29を形成することが好ましい。このような構成では、ブラケット28の全体の強度を低下させることなく、上面の強度のみを調整して、クッションフレーム本体12、リンホース14の剛性よりブラケットの剛性を小さくできる。更に、実施例では、ブラケット28は断面コ字形に形成されているが、これに限定されず、他の種々の形状をとることができる。
上記のように、この構成によれば、衝突等の緊急時における大きな負荷Fがベルトアンカー30に作用したとき、その負荷によってブラケット28を変形させ、負荷を車床20に逃がしている。そのため、負荷がリンホース14に直接作用せず、クッションフレーム本体12、リンホースを座屈、変形させることもなく、ストライカー26からのラッチ24の離脱が防止される。また、クッションフレーム本体12、リンホース14の補強が不要となり、小型、軽量のベルトアンカー付クッションフレームが得られる。更に、ブラケット28に、ベルトアンカーのベルトアンカープレート32とロック機構のラッチ24とが共締めによって1か所に取付けられるため、組立て行程が簡単化されるとともに、構成が簡素化され、煩雑な印象を与えない外観が得られる。」(明細書第10ページ第18行?第13ページ第2行)

引用例には、シートバックの具体的な構造についての記載はないが、通常、シートバックの内部には「バックフレーム」を有していることは明らかである。
また、前記記載事項(ロ)及び図面から、回転するラッチ24の回転方向は「前後方向」であり、略コ字形のストライカー26を車床20に「左右方向」に向けて固着していることがわかる。
前記記載事項(ロ)から、シートが前倒れすることから「車両用折り畳みシート」であるといえ、シートベルトを有していることから、「乗員保護」を行っているといえる。

そうすると、前記記載事項(イ)?(ハ)及び第1?3図の記載を総合すれば、引用例には、

「車床20に回転可能に取付けられたヒンジブラケット18により、シートクッションのベルトアンカー付クッションフレーム10が前倒し可能であり、シートバックのバックフレームを有し、
ベルトアンカー付クッションフレーム10の後部側に位置するリンホース14にブラケット28が取着され、該ブラケット28に前後方向に回転するラッチ24付のロック機構22を設け、該ロック機構22のラッチ24が係止する略コ字形のストライカー26を車床20に左右方向に向けて固着し、
前記ロック機構22と共にシートベルトの一半部であるベルトアンカー30の一端に取着されたベルトアンカープレート32を、ベルトアンカー付クッションフレーム10に取着されたブラケット28にボルト36で共締めしてなる車両用折り畳みシートにおける乗員保護構造。」
の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認める。

(2)対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、両者の対応関係は次のとおりである。
引用発明の「ベルトアンカー付クッションフレーム10」は、本願発明の「クッションフレーム」に相当し、同様に「略コ字形のストライカー21」は「コ字状のストライカ」に、「ベルトアンカープレート32」は「アンカー」にそれぞれ相当する。

そして、引用発明のベルトアンカー付クッションフレーム10は、車床20に回転可能に取付けられたヒンジブラケット18により前倒し可能であるから、「前方に反転可能に軸支」されているといえる。
また、引用発明のラッチ24はストライカー26に係止しているので、「係合」しているといえ、ストライカー26は車床20に固着されているので、「固設」されているといえる。
また、引用発明では、ロック機構22と共にシートベルトの一半部であるベルトアンカー30の一端に取着されたベルトアンカープレート32を、ベルトアンカー付クッションフレーム10に取り着されたブラケット28にボルト36で共締めしており、ベルトアンカープレート32は、ベルトアンカー付クッションフレーム10「側」に「一体に締結」されているといえる。

それゆえ、本願発明と引用発明とは、

[一致点]
「前方に反転可能に軸支されるシートクッションのクッションフレーム、シートバックのバックフレーム、とを有し、
前記クッションフレームの後部側には、回転するラッチ付のロック機構を設け、該ロック機構のラッチが係合するコ字状のストライカを車床に固設し、
前記ロック機構と共にシートベルトのアンカーをクッションフレーム側に一体に締結してなる車両用折り畳みシートにおける乗員保護構造。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明では、車床に固定したロアレールと、このロアレールにスライド自在に係合するアッパーレールとからなる左右一対のスライドレール、該スライドレールのアッパーレールに一体に固定したベースフレーム、該ベースフレームの前端に、前方に反転可能に軸支するシートクッションのクッションフレーム、前記ベースフレームの後端に連結するシートバックのバックフレームを有するのに対し、引用発明では、ベルトアンカー付クッションフレーム10は、車床20に回転可能に取付けられたヒンジブラケット18により前倒し可能となっている点。

[相違点2]
本願発明では、ラッチが左右方向に回転し、コ字状のストライカを車床に前後方向に向けて固設しているのに対し、引用発明では、ラッチ24が前後方向に回転し、略コ字形のストライカー26を車床20に左右方向に向けて固着している点。

(3)判断
[相違点1]について
引用発明のシートのベルトアンカー付クッションフレーム10は、車床20に直接取り付けられているが、スライドレールを介した取付、すなわち、車床に固定したロアレールと、このロアレールにスライド自在に係合するアッパーレールとからなる左右一対のスライドレール、該スライドレールのアッパーレールに一体に固定したベースフレームを用いたシートの取付構造は、周知技術(例えば、特開平11-278121号公報参照)であって、引用発明のシートの取付構造として、前記周知技術であるスライドレールを介した取付構造とし、前記相違点1に係るシートの取付構造とすることに格別の困難性はない。

なお、引用発明において、シートの取付構造として、スライドレールを介した取付構造とした場合においても、ストライカー26は、前記記載事項(ハ)の「ベルトアンカー30に作用する負荷Fは、リンホース14に直接作用することなく、ストライカー26に伝達され、ストライカーから車床20に逃がされる。」から明らかなように、スライドレールではなく車床20に取り付けたままであることが技術的に自然である。

[相違点2]について
引用発明のラッチ24の回転方向とストライカー26の固設方向が、本願発明と相違しているが、ラッチが左右方向に回転し、ストライカを車床に前後方向に向けて固設することは周知技術(例えば、実願昭63-77362号(実開平2-276号)のマイクロフィルム(第5図)、実願平3-88913号(実開平5-32098号)のCD-ROM(図3)参照)であることを考慮すれば、引用発明のラッチ24の回転方向とストライカー26の固設方向を前記相違点2に係る方向とすることに格別の困難性はない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。

(3)むすび
したがって、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2008-01-25 
結審通知日 2008-02-05 
審決日 2008-02-19 
出願番号 特願2000-291943(P2000-291943)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (B60R)
P 1 8・ 121- Z (B60R)
P 1 8・ 572- Z (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関 裕治朗  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 柿崎 拓
山内 康明
発明の名称 車両用折り畳みシートにおける乗員保護構造  
代理人 窪谷 剛至  
代理人 山田 和明  
代理人 窪谷 剛至  
代理人 山田 和明  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ