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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1176375
審判番号 不服2006-2812  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-16 
確定日 2008-04-10 
事件の表示 特願2000-365770「磁気抵抗効果型磁気ヘッドとその電磁変換特性測定方法及び電磁変換特性測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月14日出願公開、特開2002-170210〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯、本願発明
本願は、平成12年11月28日の出願であって、平成17年9月5日付けで手続補正がなされ、平成18年1月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年2月16日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成17年9月5日付けの手続補正書の本願特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】 第1のシールドと、前記第1のシールド上に形成された磁気抵抗効果素子と、前記磁気抵抗効果素子上に形成された第2のシールドとを有する再生ヘッドと、記録ヘッドとを有し、前記第2のシールドと前記記録ヘッドとを分離した構造を有する磁気ヘッドであって、
電磁変換特性測定用外部磁界を前記磁気ヘッドの媒体対向面に対して垂直となるように、かつ前記第1のシールド及び前記第2のシールドの媒体対向面全体に一様に印加したとき、前記第1のシールドと前記第2のシールドとの長さの比が0.8以上1以下であり、かつ、前記外部磁界の方向と前記磁気抵抗効果素子を通過する磁界の方向とがなす角度が1度以下となることを特徴とする磁気ヘッド。」

2 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平5-54344号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)
(ア)「【0002】
【従来の技術】例えば、ハードディスク・ドライブ装置の記録再生用ヘッドは、誘導型磁気ヘッド(以下、インダクティブヘッドと称する。)による記録ヘッドと、短波長感度に優れた磁気抵抗効果型磁気ヘッド(以下、MRヘッドと称する。)による再生ヘッドとの複合型とされるのが一般的である。
【0003】かかる複合型磁気ヘッドとしては、例えば図8及び図9に示すように構成されたものが知られている。この磁気ヘッドは、例えばAl_(2)O_(3)-TiC等よりなるスライダと称される基板51上に、ハードディスクとの対接面、すなわちABS(エア・ベアリング・サーフェス)面52に臨んで再生用磁気ギャップg_(1)を構成するMRヘッドと、記録用磁気ギャップg_(2)を構成するインダクティブヘッドが積層された構成となっている。
【0004】MRヘッドは、先端部と後端部にそれぞれ電極53,54を積層した磁気抵抗効果薄膜よりなる磁気抵抗効果感磁部(以下、MR感磁部と称する。)55と、このMR感磁部55に所要の向きの磁化状態を与えるバイアス導体56とを有してなり、上記MR感磁部55を絶縁層57a,57bを介して磁気的にシールドする一対の薄膜磁気コア58,59により挾み込まれてなっている。」
(イ)「【0011】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するために、本発明は、基板上に磁気記録媒体との対接面に臨んで再生用磁気ギャップを構成する磁気抵抗効果型磁気ヘッドと記録用磁気ギャップを構成する誘導型磁気ヘッドが積層されてなる複合型磁気ヘッドにおいて、上記誘導型磁気ヘッドのヘッド巻線と磁気抵抗効果型磁気ヘッドのバイアス導体が電気的に接続されていることを特徴とするものである。」
(ウ)「【0013】
【実施例】以下、本発明を適用した具体的な実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施例の複合型磁気ヘッドは、図1に示すように、ハードディスクとの対接面となるABS面に再生用磁気ギャップを臨ませるMRヘッドと、同様にABS面に記録用磁気ギャップを臨ませるインダクティブヘッドをAl_(2)O_(3)-TiC基板等からなるスライダ1の一側面1aに積層形成した、いわゆる2ギャップタイプの記録再生ヘッド構成となっている。」(実施例の項の記載)
(エ)「【0018】そして、本実施例のMRヘッドにおいては、上記MR感磁部4を絶縁層8を介して一対の薄膜磁気コア9,10で挾み込んだ、いわゆるシールド型構成となっている。したがって、このMRヘッドでは、上記ABS面3に臨む薄膜磁気コア9,10の対向間隔が再生用磁気ギャップg_(1)となる。なお、シールド型構成をとるのは、この種の一体型ヘッドでは短波長再生を要求されたり、再生波形がインダクティブヘッドの微分出力波形と同じものを信号処理上求められるからである。
【0019】MR感磁部4の下側に設けられる薄膜磁気コア9は、上記スライダ1との間に絶縁層8を介して上記ABS面3にその一端を臨ませるようにしてこのABS面3に対して略直交する方向に延在して設けられている。一方、これに対向して設けられる他方の薄膜磁気コア10は、下層の薄膜磁気コア9と同様に上記ABS面3にその一端を臨ませるようにしてこのABS面4に対して略直交する方向に延在して設けられている。(略)」(実施例の項の記載)
(オ)「【0027】また、上述の実施例は、MRヘッドとインダクティブヘッドの磁性体を共通化した構成としたものであるが、本発明は、例えば図7に示すようにそれぞれ専用の薄膜磁気コア17,18をMRヘッドとインダクティブヘッドに設けるようにした構成の複合型磁気ヘッドに対しても適用することができる。もちろん、このヘッドにおいても、先の複合型磁気ヘッドと同様の作用効果が得られる他、先の実施例のヘッドのように共通化した薄膜磁気コア10に大きな磁束が流れるようなことがない。」
(カ)磁気ヘッド部を拡大して示す要部拡大断面図である図2及び要部拡大平面図である図3には、複合型磁気ヘッドの、シールド型構成をなす薄膜磁気コア9と10は、ABS面3に対して略直交する方向に延在して設けられ、その長さが異なるように図示されている。なお、図2及び図3における磁気ヘッドは、薄膜磁気コア10はMR感磁部をシールドすると共に記録用ヘッドの磁路を構成していることが、図示されている。
(キ)本発明を適用した複合型磁気ヘッドにおける磁気ヘッド部の他の例を示す要部拡大断面図である図7には、図2、3と共通する番号と説明(段落18、19)を参照すると、MRヘッドは、MR感磁部4を絶縁層を介して一対の上下の薄膜磁気コア9,17で挾み込んだ、いわゆるシールド型構成であって、下側の薄膜磁気コア9は、スライダ1との間に絶縁層を介してABS面にその一端を臨ませるようにしてこのABS面に対して略直交する方向に延在して設けられ、一方、上側の薄膜磁気コア17は、下側の薄膜磁気コア9と同様に上記ABS面にその一端を臨ませるようにしてこのABS面に対して略直交する方向に延在して設けられていることが図示されており、シールド型構成をなす薄膜磁気コア9と17とは、ABS面に対して略直交する方向に延在している長さが略同じように図示されている。また、図7には、段落27を参照すると、MR感磁部をシールドするMRヘッド専用の上側の薄膜磁気コア17と、その上に層を介して形成されているインダクティブヘッド専用の薄膜磁気コア18とが、図示されている。

3 対比判断
本願発明と引用例に記載された発明とを対比する。
(1) 引用例には、上記2に摘示した記載事項、特に(イ)(エ)(オ)(キ)(下線部参照)によれば、
「基板上に磁気記録媒体との対接面に臨んで再生用磁気ギャップを構成する磁気抵抗効果型磁気ヘッドと記録用磁気ギャップを構成する誘導型磁気ヘッドが積層されてなる複合型磁気ヘッドであって、
磁気抵抗効果型磁気ヘッドは、磁気抵抗効果感磁部を絶縁層を介して一対の上下の薄膜磁気コアで挾み込んだシールド型構成であり、下側の薄膜磁気コアと上側の薄膜磁気コアとは、上記対接面にその一端を臨ませるようにして上記対接面に対して略直交する方向に延在して設けられ、略直交する方向に延在している長さが略同じであり、
記録用の誘導型磁気ヘッド専用の薄膜磁気コアが、磁気抵抗効果型磁気ヘッド専用の上記上側の薄膜磁気コアの上に、層を介して形成されている、磁気ヘッド。」
の発明が記載されている。

(2)
ア. 引用例に記載された発明の「磁気抵抗効果感磁部」「再生用磁気ギャップを構成する磁気抵抗効果型磁気ヘッド」「記録用磁気ギャップを構成する誘導型磁気ヘッド」「対接面」は、それぞれ本願発明の「磁気抵抗効果素子」「再生ヘッド」「記録ヘッド」「媒体対向面」に相当する。
引用例に記載された発明において、「磁気抵抗効果型磁気ヘッドは、磁気抵抗効果感磁部を絶縁層を介して一対の上下の薄膜磁気コアで挾み込んだシールド型構成で」あるから、引用例に記載された発明の「下側の薄膜磁気コア」「上側の薄膜磁気コア」は、それぞれ本願発明の「第1のシールド」「第2のシールド」に相当している。
引用例に記載された発明では、「記録用の誘導型磁気ヘッド専用の薄膜磁気コアが、磁気抵抗効果型磁気ヘッド専用の上記上側の薄膜磁気コアの上に、層を介して形成されている」から、本願発明の「第2のシールドと記録ヘッドが分離した構造」に相当する構造を備えている。
そうすると、引用例に記載された発明の磁気ヘッドは、本願発明の「第1のシールドと、前記第1のシールド上に形成された磁気抵抗効果素子と、前記磁気抵抗効果素子上に形成された第2のシールドとを有する再生ヘッドと、記録ヘッドとを有し、前記第2のシールドと前記記録ヘッドとを分離した構造を有する磁気ヘッド」に相当する構成を備えている。
イ. 引用例に記載された発明の磁気ヘッドは、「磁気抵抗効果型磁気ヘッドは、磁気抵抗効果感磁部を絶縁層を介して一対の上下の薄膜磁気コアで挾み込んだシールド型構成であり、下側の薄膜磁気コアと上側の薄膜磁気コアとは、上記対接面にその一端を臨ませるようにして上記対接面に対して略直交する方向に延在して設けられ、略直交する方向に延在している長さが略同じであり」という構成を備えているから、引用例に記載された発明は、本願発明の「前記第1のシールドと前記第2のシールドとの長さの比が0.8以上1以下であり」の、長さの比が略1のものに相当している。
ウ. 上記ア及びイによれば、引用例に記載された発明は、「第1のシールドと、前記第1のシールド上に形成された磁気抵抗効果素子と、前記磁気抵抗効果素子上に形成された第2のシールドとを有する再生ヘッドと、記録ヘッドとを有し、前記第2のシールドと前記記録ヘッドとを分離した構造を有する磁気ヘッドであって、前記第1のシールドと前記第2のシールドとの長さの比が略1である磁気ヘッド」に相当する構成を備えている。
エ. 本願発明に記載された発明の「磁気ヘッド」は、「電磁変換特性測定用外部磁界を前記磁気ヘッドの媒体対向面に対して垂直となるように、かつ前記第1のシールド及び前記第2のシールドの媒体対向面全体に一様に印加したとき、前記第1のシールドと前記第2のシールドとの長さの比が0.8以上1以下であり、かつ、前記外部磁界の方向と前記磁気抵抗効果素子を通過する磁界の方向とがなす角度が1度以下となること」と特定されている。
電磁変換特性測定法として「電磁変換特性測定用外部磁界を磁気ヘッドの媒体対向面に対して垂直となるように、かつ第1のシールド及び第2のシールドの媒体対向面全体に一様に印加」することは、普通に用いられる測定技術であって、磁気抵抗効果型磁気ヘッドのシールドを構成する上下の薄膜磁気コアの長さの比が略1のものであれば、磁気抵抗効果素子を通過する磁界の方向が外部磁界と同じになることが明らかである。
よって、引用例に記載された発明の、「第1のシールドと、前記第1のシールド上に形成された磁気抵抗効果素子と、前記磁気抵抗効果素子上に形成された第2のシールドとを有する再生ヘッドと、記録ヘッドとを有し、前記第2のシールドと前記記録ヘッドとを分離した構造を有する磁気ヘッドであって、前記第1のシールドと前記第2のシールドとの長さの比が略1である磁気ヘッド」は、「電磁変換特性測定用外部磁界を前記磁気ヘッドの媒体対向面に対して垂直となるように、かつ前記第1のシールド及び前記第2のシールドの媒体対向面全体に一様に印加したとき」、前記外部磁界の方向と前記磁気抵抗効果素子を通過する磁界の方向とがなす角度が同じで、1度以下であるものである。
したがって、本願発明の磁気ヘッドには、引用例に記載された発明の磁気ヘッドが含まれ、本願発明と引用例に記載された発明は実質的に同一である。
オ. また、本願発明では、「電磁変換特性測定用外部磁界を前記磁気ヘッドの媒体対向面に対して垂直となるように、かつ前記第1のシールド及び前記第2のシールドの媒体対向面全体に一様に印加したとき、前記第1のシールドと前記第2のシールドとの長さの比が0.8以上1以下であり、かつ、前記外部磁界の方向と前記磁気抵抗効果素子を通過する磁界の方向とがなす角度が1度以下となること」と特定されているのに対し、引用例1に記載された発明ではそのように特定されていない点で一応相違するとしても、上記点は、次の理由により当業者が容易に想到しうることにすぎない。
「電磁変換特性測定用外部磁界を前記磁気ヘッドの媒体対向面に対して垂直となるように、かつ前記第1のシールド及び前記第2のシールドの媒体対向面全体に一様に印加」することは、普通の測定技術であって、引用例には第1及び第2のシールドの長さが略同じである磁気抵抗効果型磁気ヘッドが示されている上、長さを略同じにすることは従来から周知の形状であって(例えば原審で引用された特開平10-275308号公報等参照。)普通に採用されている形状にすぎないことを勘案すれば、シールド長さとして略同じに近い「1の近傍」の比を採用することは、当業者が適宜なし得る程度の値にすぎず、比が0.8、角度が1度というのは、許容し得る範囲を示すにすぎないものであって、比が1、角度が0度(同じ)である場合が最適値であるから、上記比及び角度の数値範囲の限定に、格別意義があるものではない。

4 請求人の主張に対して
(1) 請求人は、意見書(3頁参照)において、引用例には、「上下シールド比が同じであって、上部シールドと下部磁気コアが分離した構造の磁気ヘッドが開示されております。」と認めながらも、「図7は「要部拡大図」である、と記載があるように、(略)シールド比は特に意味を成すものでなく、概念的に表現されたものにすぎません。」と主張している。
引用例の図は要部拡大図であり、シールドの寸法を詳細に図示したものでないが、シールドの長さについて、略同じであることは、当業者に普通に理解されるものであるから、請求人の主張は採用できない。

(2) 請求人は、請求の理由において、請求項1に係る発明は、
「第1のシールドと、前記第1のシールド上に形成された磁気抵抗効果素子と、前記磁気抵抗効果素子上に形成された第2のシールドとを有する再生ヘッドと、記録ヘッドとを有し、前記第2のシールドと前記記録ヘッドとを分離した構造を有する磁気ヘッドであって、
電磁変換特性測定用外部磁界を前記磁気ヘッドの媒体対向面に対して垂直となるように、かつ前記第1のシールド及び前記第2のシールドの媒体対向面全体に一様に印加したとき、前記第1のシールドと前記第2のシールドとの長さの比が0.8以上であり、かつ、前記第1のシールドと前記第2のシールドとの長さが異なり、かつ、前記外部磁界の方向と前記磁気抵抗効果素子を通過する磁界の方向とがなす角度が1度以下となることを特徴とする磁気ヘッド。」
である旨記載し、これに基いて主張している。
しかしながら、審判請求に際して手続補正書は提出されておらず、特許請求の範囲の記載に基づくものでないから、上記主張は、採用できない。なお、上記請求の理由において主張している内容について以下に検討する。(ア)長さが異なることを構成の1つとし、最良の構成であるとしているが、本願の明細書には、長さの比が0.8以上であって長さが異なる磁気ヘッドが最良であるという技術思想は開示されておらず、むしろ、比が1である場合(長さが同じ場合)が、「外部磁界の方向と磁気抵抗効果素子を通過する磁界の方向とがなす角度」を0とする最良の構成であると、本願の明細書から理解できるから、請求人の技術的意義に関する主張は、本願の当初からの明細書の記載に基かないものであり、0.8以上で長さが異なることにより作用効果を奏するとの主張は、採用できない。(イ)長さが異なることを構成の1つとして、長さの比が1である場合を除くことにより、引用例に記載された発明と同一ではないと主張し、また作用効果を主張している。しかしながら、長さの比が1ではなくとも、1の近傍の形状自体、当業者が適宜採用する形状であって、1に比べ格別作用効果を奏するものではないから、請求人の主張する磁気ヘッドは、引用例に記載された発明の磁気ヘッドに基いて、当業者が容易に想到しうるものにすぎない。

5 むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号及び第29条第2項の規定により特許を受けることができない。他の請求項を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-08 
結審通知日 2008-02-12 
審決日 2008-02-28 
出願番号 特願2000-365770(P2000-365770)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 113- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石坂 博明  
特許庁審判長 小林 秀美
特許庁審判官 吉川 康男
小松 正
発明の名称 磁気抵抗効果型磁気ヘッドとその電磁変換特性測定方法及び電磁変換特性測定装置  
代理人 井上 学  

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