• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1176386
審判番号 不服2006-5823  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-30 
確定日 2008-04-10 
事件の表示 特願2000-313803「太陽電池モジュールの設置構造及び設置方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月26日出願公開、特開2002-124695〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、平成12年10月13日に特許出願したものであって、本願の請求項に係る発明は、平成18年2月1日の手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりのものと認める。

「【請求項1】 複数個の太陽電池モジュールから電力を取り出すための導電性材料製の配線が形成され、各太陽電池モジュール接続位置に接続端子が設けられたルーフィング材が、太陽電池モジュール設置場所に固定され、そのルーフィング材の接続端子に各太陽電池モジュールが接続されていることを特徴とする太陽電池モジュールの設置構造。」(以下、「本願発明」という。)

2.刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用した本願の出願日前に頒布された刊行物1:実願昭62-143414号(実開昭64-49525号)のマイクロフィルムには、以下の事項が記載されている。

a.「太陽電池に接続された第1コネクタを有する太陽電池パネルと、この太陽電池パネルが収納される複数の凹所を設けた屋根部材と、この屋根部材に設けられた凹所内に夫々設けられ上記第1コネクタと結合する第2コネクタと、隣接する上記凹所内に設けられた第2コネクタ間を接続するリード体とを備え、上記太陽電池パネルを上記屋根部材に設けられた凹所に収納配置して、上記第1コネクタと第2コネクタとを結合させ、上記太陽電池の電気的接続を行うことを特徴とする太陽電池の敷設構造。」(実用新案登録請求の範囲)

b.「(ヘ)実施例
本考案の実施例を第1図乃至第5図に従つて説明する。第1図は太陽電池パネルを示す斜視図である。太陽電池パネル(1)は、ガラス等で構成された板体の一主面上に、光活性層を堆積した太陽電池(2)が設けられている。そして、太陽電池(2)の起電力を導出するため、太陽電池パネル(1)は太陽電池(2)と電気的に接続された第1コネクタ(10)を備えている。」(4頁10?18行)

c.「第2図は本考案に適応される屋根部材の一部を示す斜視図、第3図は第2図におけるX-X’線断面図である。屋根部材(3)はプラスチック、木等により構成されており、この屋根部材(3)の表面は、太陽電池パネル(1)を収納する複数の凹所(4)(4’)…が設けられている。また、屋根部材(3)の表面には太陽電池パネル(1)を敷設する作業のための足場が必要である。このため隣接する凹所(4)(4’)の間隔は、10?30cmに設けられて足場としている。上述の凹所(4)は、例えばプレス成型や切削により太陽電池パネル(1)の大きさより縦および横に10mm程度大きく設けられる。この凹所(4)内には太陽電池パネル(1)に設けられた第1コネクタ(10)と結合する第2コネクタ(20)が設けられている。この第2コネクタ(20)には、リード体(30)が接続されている。そして、このリード体(30)は、隣接する凹所(4)(4’)内に設けられた第2コネクタ(20)(20’)間を接続している。上述の屋根部材(3)は屋根の野地板に例えばボルトで固着される。」(4頁19行?5頁17行)

上記a?cによれば刊行物1には、
「太陽電池に接続された第1コネクタを有する太陽電池パネルと、この太陽電池パネルが収納される複数の凹所を設けた屋根部材と、この屋根部材に設けられた凹所内に夫々設けられ上記第1コネクタと結合する第2コネクタと、隣接する上記凹所内に設けられた第2コネクタ間を接続するリード体とを備え、上記屋根部材は屋根の野地板に固着され、上記太陽電池パネルを上記屋根部材に設けられた凹所に収納配置して、上記第1コネクタと第2コネクタとを結合させ、上記太陽電池の電気的接続を行うことからなる太陽電池の敷設構造。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

3.対比
本願発明と上記引用発明とを対比する。
ア.引用発明の「太陽電池パネル」、「第2コネクタ」、「野地板」及び「敷設構造」は本願発明の「太陽電池モジュール」、「接続端子」、「モジュール設置場所」および「設置構造」にそれぞれ相当する。

イ.引用発明の「屋根部材」は、太陽電池パネルを接続する「第2コネクタ」と、隣接する第2コネクタ間を接続する「リード体」とを備え、そのうち「リード体」は、複数の太陽電池パネルから電力を取り出すための導電性材料製の配線であるといえるから、引用発明の「屋根部材」は、「複数個の太陽電池モジュールから電力を取り出すための導電性材料製の配線が形成され、各太陽電池モジュール接続位置に接続端子が設けられた部材」である点で、本願発明の「ルーフィング材」に一致する。

ウ.引用発明の「敷設構造」は、「屋根部材は屋根の野地板に固着され、上記太陽電池パネルを上記屋根部材に設けられた凹所に収納配置して、上記第1コネクタと第2コネクタとを結合させ、上記太陽電池の電気的接続を行う」ものであるから、本願発明とは「部材が、太陽電池モジュール設置場所に固定され、その部材の接続端子に各太陽電池モジュールが接続されている太陽電池モジュールの設置構造。」を有する点で一致する。

よって、両者は、
「複数個の太陽電池モジュールから電力を取り出すための導電性材料製の配線が形成され、各太陽電池モジュール接続位置に接続端子が設けられた部材が、太陽電池モジュール設置場所に固定され、その部材の接続端子に各太陽電池モジュールが接続されている太陽電池モジュールの設置構造。」
で一致し、以下の点で一応相違する。

[相違点]
部材が、本願発明では、「ルーフィング材」であるのに対して、引用発明では、「屋根部材」である点。

4.判断
一般にルーフィングないしはルーフィング材とは、屋根を葺く際に屋根瓦などの屋根葺き材の下地に用いられる防水シートを指す建築用語であって、不織布、紙などのシートにアスファルトなどを含浸被覆したものをいう。
そこで、本願のルーフィング材なるものがいかなるものであるのか検討するに、本願の発明の詳細な説明には以下のような記載がある。
「【0009】・・・各太陽電池モジュール接続位置に接続端子が設けられた下地材(ルーフィング材)が、太陽電池モジュール設置場所(建物の屋根等)に固定され、その下地材の接続端子に各太陽電池モジュールが接続されていることによって特徴づけられる。」
「【0026】ルーフィング材2は、複数個の太陽電池モジュール1の設置・接続に用いられるもので、ゴム(EPDM系)製の基板21、補強層23及び粘着層24の3層構造となっている。・・・」
「【0039】図5のルーフィング材102は、プラスチック基板121の表面上にアルミニウム箔にて配線パターン122を形成し、その上を樹脂フィルム123で覆った構造とした点に特徴がある。・・・」
「【0040】<実施形態3>図6は、ルーフィング材を複数枚で構成する場合の実施形態の構成を示す斜視図である。
【0041】この実施形態では、4枚のルーフィング材202を用いて太陽電池モジュールの設置を行うところに特徴がある。
【0042】1枚のルーフィング材202の幅は10cmである。各ルーフィング材202には、図1に示したものと同様に、太陽電池モジュール1から電力を取り出すための配線パターン(銅箔)222と、太陽電池モジュール接続用の(+)接続端子203と(-)接続端子204が設けられている。」

上記記載によれば、本願発明の下地材(ルーフィング材)は、太陽電池モジュール設置場所(建物の屋根等)に固定されるものであって、その幅は10cm程度であってもよく、およそ屋根葺き材の下地に用いられるものではない。また、その構造は、ゴム(EPDM系)製の基板、補強層及び粘着層の3層構造であるか、または、プラスチック基板の表面上にアルミニウム箔にて配線パターンを形成し、その上を樹脂フィルムで覆った構造であって、屋根葺き材の下地に用いられる防水シートである、所謂「ルーフィング」とは具体的構造を異にするものである。
そうすると、本願発明の「ルーフィング材」とは、本来の意味の「ルーフィング」とは異なるものであって、せいぜい「複数個の太陽電池モジュールから電力を取り出すための導電性材料製の配線が形成され、各太陽電池モジュール接続位置に接続端子が設けられた部材」であるとしか解し得ないものである。したがって、本願発明の「ルーフィング材」と引用発明の「屋根部材」とに格別相違があるとはいえない。

なお、請求人は審判請求書において、引用発明の「屋根部材」は屋根葺き材であって、すでに葺かれた屋根の上に敷設する本願発明の「ルーフィング材」とは異なる旨主張しているが、本願発明はルーフィング材の設置場所を何ら特定していないのみならず、引用例には、屋根部材がプラスチック、木材など、およそ屋根葺き材(瓦、スレート、ブリキなど)には通常用いられない素材で形成される旨が記載されている(上記c)ことからみて、引用例の屋根部材が屋根葺き材としての用途のみに限定されないことは明らかである。
よって、請求人の主張は採用しない。

なお、請求人は、意見書、審判請求書等において、上記刊行物1の記載事項を検討し、それと本願発明の相違点について言及しており、その中で特許法29条1項3号の同一性を含めて検討していることは明らかである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-08 
結審通知日 2008-02-12 
審決日 2008-02-25 
出願番号 特願2000-313803(P2000-313803)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 濱田 聖司  
特許庁審判長 向後 晋一
特許庁審判官 里村 利光
吉田 禎治
発明の名称 太陽電池モジュールの設置構造及び設置方法  
代理人 倉内 義朗  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ