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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65B
管理番号 1176436
審判番号 不服2006-10741  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-25 
確定日 2008-04-17 
事件の表示 特願2001-353661「包装材料の殺菌方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月10日出願公開、特開2002-193220〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯・本願発明
本願は、平成3年12月6日(優先権主張平成3年1月14日)に出願した特願平3-322665号の一部を平成13年11月19日に新たな特許出願したものであって、その請求項1に係る発明は、平成18年3月17日付け及び平成18年6月26日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は、次のとおり記載されている。
「【請求項1】過酸化水素水溶液を気化させてから凝縮して得られる過酸化水素ミストを包装材料の表面に付着させる包装材料の殺菌方法において、 前記過酸化水素ミストを噴霧する過酸化水素ミスト噴出口を前記包装材料の口部側面に対向して設置し、前記過酸化水素ミスト噴出口から前記過酸化水素ミストを直接前記包装材料の口部側面に付着させ、かつ、前記過酸化水素ミストを前記包装材料の表面に付着させるチャンバー内に圧縮空気により空気流を発生させ、該空気流により前記過酸化水素ミストを強制的に前記チャンバー内に充満させるとともに撹拌しながら該過酸化水素ミストを前記包装材料の表面に付着させることを特徴とする包装材料の殺菌方法。」(以下請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

2. 刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭60-220067号公報(以下「刊行物」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(a)「本発明は包装材料の殺菌方法及び装置に関するものである。」(第1頁右欄第10?11行)
(b)「無菌充填包装機は容器供給部(A)、容器殺菌部(B)…とからなっている。容器(a)は垂直に積まれた状態で集積保持枠(1)に保持され、無菌チャンバー(3)内のチェーンコンベア(2)に向かって図示しない供給装置で供給される。以上が容器供給部(A)であってチェーンコンベア(2)に供給された容器(a)は次の容器殺菌部(B)に導かれる。」(第2頁右下欄第10行?第3頁左上欄第1行)
(c)「本発明方法としては殺菌活性の低い温度域で噴霧した過酸化水素の霧粒子を搬送空気流で層流状に搬送しつつ殺菌力活性の高い温度域まで加温して細粒化すると共に粒径の大きな粒子を除去する粒径選別を行つて包材表面にガス状態で均一に塗布し、爾後の乾燥気化を促進せしめることを特徴とするものである。」(第3頁右上欄第12?18行)
(d)「従来過酸化水素をガス化して殺菌した事例はなく、本発明のようにガス化した過酸化水素で複雑な容器でも深底容器でも殺菌が可能で紫外線殺菌装置を使うよりも簡素化かつ小型になる。本発明装置としては過酸化水素噴霧ノズル、加熱装置、搬送空気流発生装置、霧粒子の粒径選別装置とからなるもので、先ず第2図で管(17)から噴霧用エアー、管(18)から過酸化水素を2流体ノズル(19)に供給してノズルから噴霧チャンバー(20)に向かって過酸化水素を霧状に噴霧する。噴霧された過酸化水素の霧状粒子は噴霧チャンバー(20)外周の加熱管(21)によって加温され細粒化されるのである。」(第3頁左下欄第12行?同頁右下欄第4行)
(e)「細粒化された過酸化水素は搬送用空気流発生装置で搬送されるが、…無菌加熱搬送エアーが管(25)から送られると邪魔板(23)を迂回してフィルター(24)を通して層流状の無菌空気となってチャンバー(20)に噴霧され、加熱装置で加温されて微細粒子となった過酸化水素を粒径選別装置に送る。粒径選別装置はチャンバー(20)の下方にあって椀状を呈するドレン受け(26)で構成され、ここでその流れ方向がS字状に変化することから粒子径の大きい過酸化水素粒子はドレン受け(26)に衝突し、液化してガス中から除去される。粒径選別装置を経た過酸化水素の微細粒子は噴霧口(27)から容器に向かって噴霧されるのである。」(第3頁右下欄第7行?第4頁左上欄第4行)
(f)「以上のような噴霧口(27)に導かれた微細粒子は大きな粒径の粒子を含まず、搬送空気流によって適度のガス密度と流速をもっているため、容器表面に隙間なく均一な薄膜状に付着する。」(第4頁左上欄第8?11行)
(g)「第1図における無菌充填包装機の殺菌装置は容器の上下に2基用いた使用例である。…第4図…は本発明の変形例であって、第2図と同一の部分には同一の符号をもって図示してある。…第4図のものは噴霧ノズル(19)が上向きのものでしたがってドレン受け(26)がチャンバー(20)の下方に形成されている。そしてチャンバー(20)の彎曲部(20a)が粒径選別部となっている。噴霧口(27)周辺のドレン受け(28)は第2図ものと変わりはない。」(第4頁左上欄第20行?同頁右上欄第14行)
(h)さらに、第1図から、噴霧チャンバー(20)の一部を含む容器殺菌部(B)を構成する空間に、2流体ノズル(19)からの過酸化水素の霧状粒子を加熱管(21)で加温して細粒化した過酸化水素の微細粒子が噴霧される点が認められる。

以上の記載、及び第1図ないし第6図の記載から、刊行物には次の発明が記載されているものと認められる。
「過酸化水素の微細粒子を容器(a)の表面に付着させる容器(a)の殺菌方法において、前記過酸化水素の微細粒子を噴霧する噴霧口を前記容器(a)の上下に対向して設置し、前記噴霧口から前記過酸化水素の微細粒子を直接前記容器(a)に付着させ、かつ、前記過酸化水素の微細粒子を前記容器(a)の表面に付着させる噴霧チャンバー(20)の一部を含む容器殺菌部(B)を構成する空間に無菌加熱搬送エアーの搬送用空気流を発生させ、該搬送空気流により前記過酸化水素の微細粒子を前記容器(a)の表面に付着させる包装材料の殺菌方法。」

3. 対比
本願発明と刊行物に記載の発明とを対比すると、後者の「噴霧チャンバー(20)の一部を含む容器殺菌部(B)を構成する空間」は、第1図から明らかなように、無菌チャンバー(3)内の一部分のチャンバーを構成しているものと認められるので、前者の「チャンバー」に相当し、同様に、後者の「過酸化水素の微細粒子」は、前者の「過酸化水素ミスト」に相当する。
また、本願発明の過酸化水素水溶液を気化させてから凝縮して得られる過酸化水素ミストとは、本願明細書【0006】に記載の「ところで、本発明者は上記のいわゆるスプレー法に代わる包装材料の殺菌液付着方法として、殺菌液を加熱して気化させ、得られた殺菌ガスが凝縮することにより生じる微細な殺菌液ミストを利用する方法およびその手段を利用した成形容器外面の殺菌方法について提案している。」によると、殺菌液を加熱して気化させて殺菌ガスを凝縮することであり、刊行物に記載の発明においても、同様に、噴霧された過酸化水素の霧状粒子は噴霧チャンバー(20)外周の加熱管(21)によって加温され細粒化されることから、過酸化水素水溶液を気化させてから凝縮して得られる過酸化水素ミストという点において、本願発明と刊行物に記載の発明は一致する。
そうすると、両者は、「過酸化水素水溶液を気化させてから凝縮して得られる過酸化水素ミストを包装材料の表面に付着させる包装材料の殺菌方法において、前記過酸化水素ミストを噴霧する過酸化水素ミスト噴出口を前記包装材料に対向して設置し、前記過酸化水素ミスト噴出口から前記過酸化水素ミストを直接前記包装材料に付着させ、かつ、前記過酸化水素ミストを前記包装材料の表面に付着させるチャンバー内に空気流を発生させ、該空気流により該過酸化水素ミストを前記包装材料の表面に付着させる包装材料の殺菌方法。」である点で一致し、次の2点で一応相違している。

[相違点1]
本願発明は、過酸化水素ミスト噴出口を包装材料の口部側面に対向して設置し、前記過酸化水素ミスト噴出口から過酸化水素ミストを直接包装材料の口部側面に付着させいるのに対し、刊行物に記載の発明は、噴霧口を容器(a)の上下に対向して設置し、前記噴霧口から過酸化水素ミストを直接容器(a)に付着させている点

[相違点2]
本願発明は、「チャンバー内に圧縮空気により空気流を発生させ、該空気流により前記過酸化水素ミストを強制的に前記チャンバー内に充満させるとともに撹拌する」のに対し、刊行物に記載の発明では、2流体ノズル(19)及び加熱管(21)から噴霧された過酸化水素の微細粒子を容器(a)に付着させてはいるものの、過酸化水素の微細粒子を「強制的に充満」、「撹拌する」ことに関する言及がない点。

4. 当審の判断
上記相違点1,2について検討する。
[相違点1について]
過酸化水素ミスト噴出口を包装材料に対して設置する箇所は必要に応じて設計上適宜採用し得る事項であり、包装材料の口部側面により多くの殺菌処理を施すことは、当該技術分野において一般的技術課題である。さらに、殺菌洗浄等の噴出口を包装材料の口部側面に設置することも従来周知である。(例えば、実願昭50-121943号(実開昭52-37042号)のマイクロフィルムに記載のノズル19、特開平1-254523号公報に記載の噴霧装置4参照。)
そうしてみると、刊行物に記載の発明において、噴霧口を容器(a)の上下に対向して設置し、前記噴霧口から過酸化水素ミストを直接容器(a)に付着させる点に代えて、噴霧口を包装材料の口部側面に設置して、上記相違点1に係る本願発明のように構成することは、周知の技術事項から当業者であれば容易に想到し得ることである。

[相違点2について]
刊行物に記載の発明の噴霧チャンバー(20)に向かって過酸化水素を霧状に噴霧する過酸化水素噴霧ノズルについて検討する。
当該過酸化水素噴霧ノズルには、管(17)から噴霧用エアーを、管(18)から過酸化水素を2流体ノズル(19)にそれぞれ供給している。
ここで、当該管(17)から噴霧用エアーについて、刊行物には、その噴霧用エアーの詳細は特に記載されていない。
しかしながら、刊行物の摘示事項(c)における「本発明方法として、・・・包材表面にガス状態で均一に塗布し、・・・・ものである。」という記載からみて、刊行物に記載の発明においては、噴霧口から噴霧された過酸化水素水ミストが、搬送空気流とあいまって、容器殺菌部(B)を構成する空間内に充満し、包材表面にガス状態で均一に塗布されるように、空気流により撹拌されるものと解することができる。
また、一般に、一方の管から噴霧用エアーを、他方の管から過酸化水素を2流体ノズルに供給してノズルから過酸化水素を霧状に噴霧する装置において、当該噴霧用エアーに圧縮空気を使用することは、例えば、特開昭58-203821号公報第2頁右上欄11行?同15行「このノズルは二流体式であり、・・・コンプレッサ(16)からの圧縮空気で噴射するようになっており・・・」、特開昭55-89037号公報第3頁左上欄16行?同19行「シリンダ空室44に圧縮空気を送り・・・噴霧46として噴出するようになっている。」にみられるように本願の優先権主張の日前より周知の技術である。
したがって、刊行物に記載の発明においても、過酸化水素の微細粒子を噴霧させる際に、噴霧用エアーとして圧縮空気を使用していることは十分に示唆されている事項であり、その場合、スプレー状に生成される過酸化水素の微細粒子が、噴霧チャンバー(20)内で2流体ノズル(19)の管(17)から供給される圧縮空気によって多少なりとも充満され、撹拌されていることは当業者にとって容易に推認できる程度の事項である。
さらに、請求項1の記載では圧縮空気がいかなる構成から供給されることが特定されていないことから、圧縮空気が別に設けた圧縮空気供給手段により供給されることに限定されるものではなく、結局のところ、刊行物に記載の発明の2流体ノズル(19)の管(17)から供給される圧縮空気による空気流をなんら排除しているものではない。
仮に、圧縮空気供給手段により空気流を発生させることが請求項1の記載から読みとれるとしても、殺菌室、殺菌チャンバー等の室内に殺菌剤を強制的に充満させるとともに撹拌させる空気流を供給する手段は、本願の優先権主張の日前に周知の技術事項である。(特開昭62-28326号公報に記載の循環ファン48、特開平1-199830号公報に記載のファン64参照)。)
しかも、本願明細書を参酌しても、包装材料の口部側面に対向して設けた過酸化水素水ミスト噴射口からの過酸化水素水に対し、圧縮空気供給手段からの圧縮空気がどのような方向からどのように作用し、過酸化水素水ミストがどのように充満され、撹拌されるのか、具体的に記載されているわけではないから、相違点1を総合しても、相違点2により格別顕著な効果が奏されるものとも解されない。
したがって、本願発明の容易想到性は否定されるものではない。

5. むすび
よって、本願発明は、刊行物に記載の発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-04 
結審通知日 2008-02-05 
審決日 2008-03-04 
出願番号 特願2001-353661(P2001-353661)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 勝司  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 関口 勇
田中 玲子
発明の名称 包装材料の殺菌方法  
代理人 石川 泰男  

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