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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1176534
審判番号 不服2005-13838  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-20 
確定日 2008-04-14 
事件の表示 特願2002-339437「相変化光記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月17日出願公開、特開2004-171724〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年11月22日の出願であって、拒絶理由通知に対し平成17年5月30日付けで手続補正がされたが、同年6月16日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年7月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年8月18日付けで手続補正がされたものである。

2.平成17年8月18日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年8月18日付けの手続補正を却下する。

[理 由]

(1)補正後の本願発明
平成17年8月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「光照射により結晶質と非晶質との間で可逆的な相変化を起こし、構成元素の一部がBiおよび/またはSnで置換されており、下記一般式
(Ge_(w)Sn_((1-w)))_(x)(Sb_(v)Bi_((1-v)))_(y)Te_(z)
(ここで、x+y+z=100、0≦w<0.5、0≦v<0.7)
で表される組成を有する相変化光記録膜と、前記相変化光記録膜の少なくとも一方の面に接して形成され、下記一般式
HfO_(x)(ここで、1.8≦x≦2.2)
で表される組成を有するハフニウム酸化物を含有する膜とを有することを特徴とする相変化光記録媒体。」と補正された。
上記補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「相変化光記録膜」の組成について一般式による限定を付加し、同じく「ハフニウム酸化物」について一般式による限定を付加するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2) 明細書及び特許請求の範囲の記載要件について
本願補正発明において、相変化光記録膜の組成は、
「構成元素の一部がBiおよび/またはSnで置換されており、下記一般式
(Ge_(w)Sn_((1-w)))_(x)(Sb_(v)Bi_((1-v)))_(y)Te_(z)
(ここで、x+y+z=100、0≦w<0.5、0≦v<0.7)
で表される組成を有する」と特定されている。

ところで、本願明細書には、構成元素の一部をBi及び/又はSnで置換した例として、実施例E1、E2、J、Kが記載されている。
実施例E1、J、Kは、いずれもGe_(40)Sb_(4)Bi_(4)Te_(52)の組成であるから、一般式においてx=40、y=8、z=52、w=1、v=0.5に相当するものであるが、wの値が請求項1に記載された数値の範囲外である。
また、実施例E2は、Ge_(23)Sn_(8)Sb_(15)Te_(54)であるから、一般式においてx=31、y=15、z=54、w≒0.74、v=1に相当するものであるが、E2ではv、wとも請求項1に記載された数値の範囲外である。
このように、実施例E1、E2、J、Kはいずれも本願補正発明の実施例には該当せず、また、上記実施例以外に、本願補正発明に相当する発明は、発明の詳細な説明には何ら記載されていない。
さらに、w=0でv=0である場合、相変化光記録膜の組成は、Sn_(x)Bi_(y)Te_(z)となるが、このような組成の材料を相変化光記録膜として使用する点についても、本願明細書の発明の詳細な説明には記載されていない。

そうすると、本願補正発明は発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえないから、本件出願は特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない。
また、本願補正発明が解決すべき課題と解決のための手段との関係が明確でなく、発明の技術的意義も明らかでないから、本件出願は特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件も満たしていない。
したがって、本願補正発明は、出願の際に独立して特許を受けることができないから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項の規定により準用する同法第126条第5項の規定に適合せず、特許法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項により却下すべきものである。

(3) 進歩性について
上記のとおり、本件補正は却下すべきものであるが、本願補正発明における一般式は明確ではないが、該一般式は相変化光記録膜の材料を構成する元素の一部をSn及び/又はBiで置換されたものを意味するものと仮定して、本願補正発明が、その出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができるものであるかどうか、さらに検討する。

(3.1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された各刊行物にはそれぞれ以下の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。)

ア.特開平3-125343号公報(引用文献5。以下、「引用例1」という。)
(ア-1)「(1)透明基板上に光学記録層を設け、該光学記録層にエネルギービームを照射することによりその光学定数を変化させ情報を記録および消去する光学情報記録媒体において、該光学記録層の両側もしくは一方に光学記録層に接して密着層を設け、該密着層が周期律表第IVa族および第VIa族の元素およびその化合物から選択された少なくとも一種から成ることを特徴とする光学情報記録媒体。」(特許請求の範囲)
(ア-2)「光学記録層が、結晶質と非晶質との間で可逆的に相変化することを利用して情報の記録・消去を行ういわゆる相変化型光ディスクは、レーザー光のパワーを変化させるだけで古い情報を消去しながら同時に新たな情報を記録する(以下“オーバーライト”という。)ことが出来るという利点を有している。このオーバーライト可能な相変化型光ディスクの記録材料としては、In-Se系合金(Appl. Phys. Lett.第50巻、667ページ、1987年)やIn-Sb-Te(Appl.Phys.Lett.第50巻、16ページ、1987年)、Ge-Te-Sb合金等のカルコゲン合金が主として用いられている。」(1頁右下欄2?13行)
(ア-3)「第1図に本発明に係る層構成の1例を示す。透明基板の上に下層保護層2、下層密着層3、光学記録層4、上層密着層5、上層保護層6及びUV硬化樹脂層7が順次積層されている。つまり保護層と光学記録層の間に光学記録層と密着力の高い層(密着層)を設けた構造になっている。一般に、光学記録層と保護層との間の密着力が弱いと光学記録層が溶融状態になった時、光学記録層が温度勾配にしたがって容易に物質移動を起こしてしまう。しかし、光学記録層と保護層との間の密着力が強いと光学記録層の物質移動が起こらず繰り返し特性が向上する。
密着層材料としては、周期律表第IVa族および第VIa族の元素およびそれらの化合物、例えば、Ti,Zr,Hf,Cr,Mo,W,TiO_(2),ZrO_(2),HfO_(2),CrO_(2),MoO_(2),WO_(3),TiC,ZrC,HfC,Cr_(3)C_(2),WC,TiB_(2),ZrB_(2),MoB_(2),CrB_(2),TiN,ZrN,HfN,TiS,ZrS,HfS等の材料が好ましいが特に、その中でのCr,Ti,Mo,Cr_(2)O_(3)が密着層としてさらに好ましい。」(2頁右上欄4行?左下欄2行)
(ア-4)「上記光学情報記録媒体における保護層として、高融点で適当な熱伝導率をもち耐水性に優れているものであればよい。例えば、SiO_(2)、Al_(2)O_(3),ZrO_(2),Ta_(2)O_(5),Si_(3)N_(4),AIN、ZnS、SiCなどの材料及びそれらの混合物を用いることができるが、密着層との密着力が強いことから特にZnSが好ましい。」(2頁左下欄下8?下3行)
(ア-5)「さらに光学記録層としては、Sb-Te-Ge、In-Sb-Te、In-Se-Tl等の合金が好ましく、これらの形成方法としては、スパッタリング法や真空蒸着法等の公知の方法を用いることが出来る。」(2頁右下欄3?6行)

上記摘示事項によれば、引用例1には以下の発明が記載されている。
「エネルギービームを照射することにより、結晶質と非晶質との間で可逆的に相変化することを利用して情報の記録・消去を行い、Sb-Te-Ge、In-Sb-Te、In-Se-Tl等の合金からなる光学記録層と、Ti,Zr,Hf,Cr,Mo,W,TiO_(2),ZrO_(2),HfO_(2),CrO_(2),MoO_(2),WO_(3),TiC,ZrC,HfC,Cr_(3)C_(2),WC,TiB_(2),ZrB_(2),MoB_(2),CrB_(2),TiN,ZrN,HfN,TiS,ZrS,HfS等の材料からなる密着層とを有する光学情報記録媒体」(以下、「引用例1発明」という。)

イ.特開2001-232941号公報(引用文献9。以下、「引用例2」という。)
(イ-1)「【請求項1】光照射により結晶状態と非晶質状態との間を可逆的に変化する相変化記録層を備えた光記録媒体であって、前記相変化記録層がGe,Sb,Teを主成分とし、さらにBi,In,Sn,Pbから選択された少なくとも一種の元素を含み、前記相変化記録層中の[Ge]/[Sb]原子組成比をx、前記相変化記録層に結晶状態が形成された後の結晶粒径をR(nm)とおく時、R≧(55x+45)を満たす粒子の面積の合計が前記結晶部全体の面積の20%未満であることを特徴とする相変化光記録媒体。」
(イ-2)「【0004】記録層としては、カルコゲン系の金属化合物、例えばGeSbTe,AgInSbTeまたはInSbTeを主成分とする薄膜材料が用いられる。<以下、略>」
(イ-3)「【0037】次に添加元素の組成範囲を説明する。この組成範囲を(Ge_(x)Sb_(y)Te_(z))_(1-w)(Bi_(a)In_(b)Sn_(c)Pb_(d))_(w)とあらわしたとき、3E-4<w<0.03が好ましい。下限の3E-4は、それ以下では添加の効果がなく、実質的に記録膜の基本構成元素のみから構成される場合と同一である。すなわち結晶化速度τx短縮の効果がみられない。また、上限の0.03以上の組成比ではτx短縮効果があるものの、Ea・Txも同時に低下し、保存寿命や読み出し劣化の点で問題が生じる。添加元素の組成範囲として、さらに好ましいのは0.5%以上、2.5%以下であり、この範囲であれば実質的にEa・Tx低下の可能性は非常に小さく、結晶粒径微細化の効果が十分に得られる。」
(イ-4)「【0040】[実施例1]図1は本発明に係る相変化光ディスクの断面図である。図1において、基板1上に、第1干渉層2、相変化記録層3、第2干渉層4、および反射層5が順次積層される。基板は0.4μm幅のグルーブが設けられたポリカーボネート製光ディスク基板である。
...<中略>...
【0043】相変化記録層3の成膜条件は以下の通りである。ターゲット組成はGe_(0.225)Sb_(0.225)Te_(0.532) Bi_(0.015) とし、スパッタガスとしてArではなく、Krガスを用いた。ガス圧は4.0Paとし、ターゲットに13.56MHzのRF電力を加え、その電力は150Wとした。記録層膜厚は20nmとした。成膜速度は約1.4nm/sであり、記録膜の成膜に要した時間は14.3秒であった。」
(イ-5)「【0046】第1干渉層および第2干渉層としてはZnS:SiO_(2)(膜厚はそれぞれ60nm、20nm)、反射層としてはAl合金(膜厚100nm)を用いた。いずれもスパッタガスとしてArガスを用い、ガス圧を0.5Paに設定して成膜した。」

(3.2)対比
引用例1発明の「光学記録層」はエネルギービームの照射により結晶質と非晶質との間で可逆的に相変化することを利用して情報の記録・消去を行うから、本願補正発明の光照射により結晶質と非晶質との間で可逆的に相変化を起こす「相変化記録膜」に相当する。
また、引用例1発明の「光学情報記録媒体」は本願補正発明の「相変化光記録媒体」に相当し、引用例1発明の「密着層」は、光学記録層の両側もしくは一方に光学記録層に接して設けられるから、本願補正発明の「相変化光記録膜の少なくとも一方の面に接して形成される膜」に相当する。

本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、
「光照射により結晶質と非晶質との間で可逆的な相変化を起こす相変化光記録膜と、前記相変化光記録膜の少なくとも一方の面に接して形成される膜とを有する相変化光記録媒体。」である点で、両者は一致する一方、以下の点で相違する。

ア.本願補正発明の「相変化光記録膜の少なくとも一方の面に接して形成される膜」は「下記一般式HfO_(x)(ここで、1.8≦x≦2.2)で表される組成を有するハフニウム酸化物」を含有するのに対し、引用例1発明の密着層は「Ti,Zr,Hf,Cr,Mo,W,TiO_(2),ZrO_(2),HfO_(2),CrO_(2),MoO_(2),WO_(3),TiC,ZrC,HfC,Cr_(3)C_(2),WC,TiB_(2),ZrB_(2),MoB_(2),CrB_(2),TiN,ZrN,HfN,TiS,ZrS,HfS等の材料」からなる点。(相違点1)
イ.本願補正発明の相変化記録膜は「構成元素の一部がBiおよび/またはSnで置換されており、下記一般式(Ge_(w)Sn_((1-w)))_(x)(Sb_(v)Bi_((1-v)))_(y)Te_(z) (ここで、x+y+z=100、0≦w<0.5、0≦v<0.7)で表される組成である」のに対し、引用例1発明の相変化記録膜は「Sb-Te-Ge、In-Sb-Te、In-Se-Tl等からなる」点。(相違点2)

(3.3) 相違点についての判断
以下、上記各相違点について検討する。

ア.相違点1について
引用例1には、上層及び下層の密着層の材料として、Ti,Zr,Hf,Cr,Mo,W,TiO_(2),ZrO_(2),HfO_(2),CrO_(2),MoO_(2),WO_(3),TiC,ZrC,HfC,Cr_(3)C_(2),WC,TiB_(2),ZrB_(2),MoB_(2),CrB_(2),TiN,ZrN,HfN,TiS,ZrS,HfS等の材料が好ましいことが記載されている。(上記ア-3)
引用例1発明を実施する際、上記の材料を用いて記録媒体を作成し、より好ましいものを選択することは当業者が通常行うことであるから、引用例1に列挙された材料の中からHfO_(2)(本願補正発明の組成式においてx=2に相当する。)を選ぶことは容易である。
また、xの値として2の前後である1.8?2.2の範囲とすることも、当業者が容易に想到しうる事項にすぎない。

イ.相違点2について
引用例2には、相変化記録層がGe,Sb,Teを主成分とし、さらにBi,In,Sn,Pbから選択された少なくとも一種の元素を含む相変化光記録媒体が記載されており(上記イ-2、イ-3)、実施例1として、組成がGe_(0.225)Sb_(0.225)Te_(0.532 )Bi_(0.015) である相変化記録層を有する媒体の例が記載されている。(上記イ-4)
実施例1の組成は、Ge_(22.5)Sb_(22.5)Bi_(1.5)Te_(53.2)に相当し、本願補正発明の一般式(Ge_(w)Sn_((1-w)))_(x)(Sb_(v)Bi_((1-v)))_(y)Te_(z)において、x=22.5、y=24、z=53.2、x+y+z=99.7≒100、w=1、v≒0.94であるものに相当する。
引用例2の実施例1の相変化記録膜の組成は、本願補正発明における一般式の範囲外であるが、相変化光記録膜の材料を構成する元素の一部がBiで置換されたものである。

一方、引用例1発明は、Sb-Te-Ge系合金等からなる光学記録層と保護層との間に「密着層」を設けることにより、光学記録層が溶融状態になった時、光学記録層が温度勾配にしたがって容易に物質移動を起こしてしまうことを防止するものであって、密着層の材料としてHfO_(2)等を用いるものである(上記ア-3)。
相変化光記録膜の材料として、Sb-Te-Ge系合金、すなわち、Ge,Sb,
Teを主成分とする記録材料は周知であるから、相変化光記録膜の材料として引用例1発明におけるSb-Te-Ge系合金に代えて引用例2記載のGe,Sb,Teを主成分とする相変化記録材料の構成元素の一部をBiやSn等で置換したものを用いた場合にも、「密着層」による効果が得られることは当業者が容易に推考しうるものである。

また、本願明細書の記載からみて、相変化光記録膜がGe、Sb、Teから構成された実施例A等に比べて、構成する元素の一部がSn及び/又はBiで置換された実施例E1、E2の効果が優れているとはいえず、「実施例E1の媒体は、比較例A1の媒体よりもCNRが若干劣るが実用上問題ない値であり、比較例A1の媒体よりも消去率が優れており実用上問題なかった。」(段落[0095])と記載されていることからみても、相変化光記録膜を構成する元素の一部をSn及び/又はBiで置換されたものが顕著な効果を奏するということはできない。

さらに、上記各相違点について総合的に検討しても、これらの相違点によって奏される効果は当業者が予測しうる程度のものである。

したがって、本願補正発明において、上記一般式が相変化光記録膜を構成する元素の一部をSn及び/又はBiで置換されたものを意味するとしても、本願補正発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

以上のとおり、本願補正発明は、出願の際に独立して特許を受けることができないから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項の規定により準用する同法第126条第5項の規定に適合せず、特許法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成17年8月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成17年5月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 光照射により結晶質と非晶質との間で可逆的な相変化を起こす相変化光記録膜と、前記相変化光記録膜の少なくとも一方の面に接して形成されたハフニウム酸化物を含有する膜とを有することを特徴とする相変化光記録媒体。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(3.1)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「相変化光記録膜」の材料について一般式による限定を省き、ハフニウム酸化物の組成式による限定を省いたものであって、本願発明と引用例1発明との相違点は、本願発明が「ハフニウム酸化物を含有する膜」を有するのに対し、引用例1発明では「Ti,Zr,Hf,Cr,Mo,W,TiO_(2),ZrO_(2),HfO_(2),CrO_(2),MoO_(2),WO_(3),TiC,ZrC,HfC,Cr_(3)C_(2),WC,TiB_(2),ZrB_(2),MoB_(2),CrB_(2),TiN,ZrN,HfN,TiS,ZrS,HfS等を含む膜」を有する点である。
引用例発明1の膜の材料の中からハフニウム酸化物であるHfO_(2)を選ぶことが容易であることは、上記2.(3.3)で相違点1として検討したとおりであるから、同様の理由により、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-20 
結審通知日 2008-02-22 
審決日 2008-03-04 
出願番号 特願2002-339437(P2002-339437)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
P 1 8・ 536- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 蔵野 雅昭橘 均憲  
特許庁審判長 小林 秀美
特許庁審判官 吉川 康男
横尾 俊一
発明の名称 相変化光記録媒体  
代理人 堀口 浩  

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