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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12C
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C12C
管理番号 1176574
審判番号 不服2006-2717  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-15 
確定日 2008-04-17 
事件の表示 平成 9年特許願第364303号「発泡酒の製法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月 6日出願公開、特開平11-178564〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年12月19日に出願され、平成17年9月2日付けの拒絶理由通知に対して、平成17年11月1日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、平成18年1月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年2月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成18年3月14日付けで手続補正がなされ、平成19年1月29日付けで審尋が通知され、平成19年4月2日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成18年3月14日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年3月14日付けの手続補正を却下する。
[理由]
上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1である、
「麦芽と該麦芽よりも多い量の副原料とを使用して発泡酒を製造する方法において、発酵工程前にペプトンを0.12?0.37%の濃度で添加することにより、発泡酒の香味を調整するようにしたことを特徴とする発泡酒の製法。」を
「麦芽と該麦芽よりも多い量の副原料とを使用して発泡酒を製造する方法において、発酵工程前にペプトンを0.12?0.37%の濃度で添加することにより、発泡酒のリンゴ酸及びコハク酸を低減するようにしたことを特徴とする発泡酒の製法。」に、
及び同請求項2である、
「麦芽と該麦芽よりも多い量の副原料とを使用して発泡酒を製造する方法において、発酵工程前に酵母エキスを0.06?0.19%の濃度で添加することにより、発泡酒の香味を調整するようにしたことを特徴とする発泡酒の製法。」を
「麦芽と該麦芽よりも多い量の副原料とを使用して発泡酒を製造する方法において、発酵工程前に酵母エキスを0.06?0.19%の濃度で添加することにより、発泡酒のリンゴ酸及びコハク酸を低減するようにしたことを特徴とする発泡酒の製法。」にそれぞれ補正するものである。

これを検討するに、補正前の請求項1及び2には、「発泡酒の香味を調整するようにしたこと」が「請求項に記載した発明を特定するために必要な事項」(以下、「発明特定事項」という。)として記載されていたところ、補正後の請求項1及び2においては、該発明特定事項が削除されている。
一般に、発明特定事項を削除する補正は、発明特定事項を限定するものであるとはいえず、また、上記補正により、「発泡酒のリンゴ酸及びコハク酸を低減するようにしたこと」が新たに発明特定事項として加えられたが、これは、「発泡酒の香味を調整するようにしたこと」という発明特定事項の下位概念に相当するものではないので、やはり、発明特定事項を限定するものであるとはいえない。
よって、上記補正は、平成18年改正前の特許法17条の2第4項2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当せず、かつ、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものにも該当しない。
したがって、上記補正は、平成18年改正前の特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成18年3月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成17年11月1日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1及び2に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明1及び2」という。)は、次のとおりである。
【請求項1】
「麦芽と該麦芽よりも多い量の副原料とを使用して発泡酒を製造する方法において、発酵工程前にペプトンを0.12?0.37%の濃度で添加することにより、発泡酒の香味を調整するようにしたことを特徴とする発泡酒の製法。」
【請求項2】
「麦芽と該麦芽よりも多い量の副原料とを使用して発泡酒を製造する方法において、発酵工程前に酵母エキスを0.06?0.19%の濃度で添加することにより、発泡酒の香味を調整するようにしたことを特徴とする発泡酒の製法。」

(2)原査定の理由2及び刊行物の記載事項
拒絶査定における拒絶の理由2の概要は、本願発明1及び2は、その出願前に頒布された刊行物である引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献2:ASBC Journal,vol.47 No.4,
102-108,1989(以下、「刊行物A」という。)

刊行物Aには以下の事項が記載されている。(記載事項は訳文で示す。)
(a)「麦汁窒素源-醸造酵母によるそれらの利用:レビュー」
「副原料は、麦汁の発酵性エキスを増加し、窒素物質を希釈する。従って、高-副原料麦汁では、窒素が不足し、同化性窒素レベルを増加するために、イーストフードが使用される。」(論文タイトル、及び第102頁左欄8?11行)
(b)「麦芽の主要な機能は、酵母に同化性窒素源を供給することである。麦芽は正常な発酵性能を有すると共にビール製品の特徴的な味覚を招来するための栄養源ともなる。」(第102頁左欄下から22?19行)
(c)「ビール製造に使用できる原料及び添加物は制限を受けていたが、食品グレードの添加物の開発は、そのような添加物の添加が許されていた国々においては、発酵技術において、多くの進歩を与えることになった。イーストフードは、同化し得る窒素の供給源として及びドウの酸化剤としてベーキング工業においては広範囲に使用されている。醸造の関連においては、これらの添加物はしばしばイーストエキスである。」(第103頁右欄11?18行)
(d)「要求される酵母の増殖及び特有の香味形成を維持し、しかも最終ビールにおいて残存するアミノ酸をなくすために、麦汁において同化し得る窒素の最適濃度を持つことが必要である。これを達成するための最適レベルは、酵母の増殖では、α-アミノ態窒素レベルが100mg/Lまでは、ほとんど直線状に増大する。これは、通常の比重の発酵において、健全な酵母と十分な発酵程度の両方を維持するために要求される最少量のレベルであると考えられる。麦汁中のFANレベルは、麦汁調製方法及び用いられる副原料のレベルに依存して、100から250mg/L以上まで変動する。興味深いことに、通常の比重(12°P)の麦汁でさえも、同化し得る窒素レベルが制限されることがわかった。Jones及びRainbowは、FANレベルを140-150mg/Lであると推奨している。Ingledewらは、通常の比重の麦汁に対して、同じレベルを示唆している。」(第104頁右欄20?36行)
(e)「麦汁中の利用可能な窒素は、ビール中の香味の生成とも密接に関連している。・・(略)・・エステルの生成も窒素レベルに厳密に関係する。一般に、酵母によるビールの香味-活性構成成分の形成は、基本的に酵母の増殖能力によって決定され、そこで麦汁の窒素構成成分の代謝が行われる。」(第105頁左欄29?37行)

刊行物Aは、「麦汁窒素源-醸造酵母によるそれらの利用」と題する論文であって、「高-副原料麦汁では、同化性の窒素源が不足するので、該窒素源の不足を補うために、麦汁に酵母の栄養源としての同化性窒素源を添加すること」(記載事項(a))が記載され、「高-副原料麦汁を使用すること」は、「麦芽と該麦芽よりも多い量の副原料とを使用すること」の意味であって発泡酒の製造を意味し、「同化性窒素源としてイーストエキス(酵母エキス)」(記載事項(c))が示されているから、刊行物Aには、
「麦芽と該麦芽よりも多い量の副原料とを使用して発泡酒を製造する方法において、麦汁中の副原料の添加量を増大すると、同化性の窒素源が不足するので、該窒素源の不足を補うために、麦汁に酵母の栄養源として酵母エキス等の同化性窒素源を添加する方法」
についての発明が記載されているといえる。

(3)本願発明2について
(3-1)対比
本願発明2と刊行物Aに記載された発明とを対比すると、両者は、
「麦芽と該麦芽よりも多い量の副原料とを使用して発泡酒を製造する方法において、酵母エキスを添加する発泡酒の製法」
で一致し、(イ)?(ハ)の点で相違する。
(イ)酵母エキスを添加する時期が、前者では「発酵工程前」であるのに対し、後者ではそれが明示されてない点
(ロ)添加する酵母エキスの濃度が、前者では「0.06?0.19%」であるのに対し、後者ではそれが明らかでない点
(ハ)酵母エキスを添加する目的が、前者においては、「発泡酒の香味を調整するため」であるのに対し、後者においては、「同化性窒素源の不足を補うため」である点

(3-2)判断
相違点(イ)について
酵母エキスは、酵母の窒素源として利用されることは明らかであるから、刊行物Aに記載された発明において、これを、酵母による発酵工程前に添加するのは当然のことである。

相違点(ロ)について
本願明細書の「第1表」によると、「酵母エキス添加濃度」が「0.06%」、「0.13%」及び「0.19%」の場合、「麦汁中の遊離アミノ態窒素FAN(mg/L)」は、それぞれ「76」、「107」及び「129」である。しかるに、刊行物Aの記載事項(d)には、「酵母の増殖では、α-アミノ態窒素レベルが100mg/Lまでは、ほとんど直線状に増大する。」や「麦汁中のFANレベルは、麦汁調製方法及び用いられる副原料のレベルに依存して、100から250mg/L以上まで変動する。」との記載があり、この記載によると、例えばFAN(mg/L)が76?129、すなわち、添加する酵母エキスの濃度を「0.06?0.19%」程度にすることは、当該技術においては普通のことである。また、この濃度範囲が臨界的意味を有しているとすることもできない。
そうすると、刊行物Aに記載された発明において、「酵母エキスを0.06?0.19%の濃度で添加すること」は格別なことではない。

相違点(ハ)について
刊行物Aには、「酵母に同化性窒素源を供給することが、ビール製品の特徴的な味覚と関連すること」(記載事項(b))、「麦汁において同化し得る窒素の最適濃度を持つことが特有の香味形成と関連すること」(記載事項(d))、「麦汁中の利用可能な窒素は、ビール中の香味の生成とも密接に関連していること」(記載事項(e))が記載され、酵母エキスが、同化性窒素の不足を補うものであると同時に、香味も調整できることは十分に示唆されているといえるから、刊行物Aに記載された発明において、「香味を調整するために添加すること」も、格別なことではない。

効果について
本願発明2の効果は、本願明細書の記載によると、「リンゴ酸やコハク酸等の有機酸の生成量や酢酸エステルの生成量を制御し、発泡酒の香味を調整することができる。しかも、酵母の発酵性が向上するため、発酵期間を短縮することができる。」(段落【0024】)というものである。
しかるに、刊行物Aの記載事項(d)には「要求される酵母の増殖及び特有の香味形成を維持し、しかも最終ビールにおいて残存するアミノ酸をなくすために、麦汁において同化し得る窒素の最適濃度を持つことが必要である。」、同(e)には「麦汁中の利用可能な窒素は、ビール中の香味の生成とも密接に関連している。」との記載があり、その理由はともかく、発泡酒の香味を調整することは、これらの記載が十分に教示しているということができ、しかも、記載事項(d)では「酵母の増殖」についても言及されているから、「酵母の発酵性が向上するため、発酵期間を短縮することができる。」ことも示唆しているといえる。
したがって、本願発明2の奏する効果は、刊行物Aに記載された事項から、当業者が予測しうる範囲のものである。

(なお、請求人は、却下された平成18年3月14日付けの手続補正により、請求項2を
「麦芽と該麦芽よりも多い量の副原料とを使用して発泡酒を製造する方法において、発酵工程前に酵母エキスを0.06?0.19%の濃度で添加することにより、発泡酒のリンゴ酸及びコハク酸を低減するようにしたことを特徴とする発泡酒の製法。」としている。
しかし、請求人が、平成19年4月2日付け回答書に「参考資料」として添付した「新版 醸造成分一覧」(編者・発行所:財団法人 日本醸造協会、昭和52年6月10日、210頁)には、「4)意義 オキシ置換カルボン酸は、酸一般に共通の「すっぱさ」のほか、それぞれの酸に独特の風味をもっているから、ビール香味の構成に大きな役割をになっていると考えられる。さらに、エステル化を通じての香気への寄与も大きいであろう。」との記載があり、この記載によると、オキシ置換カルボン酸の一種である「リンゴ酸」は、ビールの香味に影響を及ぼすことが理解でき、また、「3)由来 大麦・麦芽に既存の主な酸はリンゴ酸・クエン酸・コハク酸・フマル酸などで、その移行だけでそれらのビール中含量の1/2以上を占める。」との記載もあり、この記載によれば、リンゴ酸と共にコハク酸も含有されるのであるから、リンゴ酸やコハク酸に着目して発泡酒における影響を検討し、刊行物Aに記載された発明において、これを低減するようにすることは、当業者にとって格別なことではない。
したがって、上記手続補正後の請求項2に係る発明も進歩性を有しないことを、念のため申し添える。)

(4)本願発明1について
(4-1)対比
本願発明1は、
「麦芽と該麦芽よりも多い量の副原料とを使用して発泡酒を製造する方法において、発酵工程前にペプトンを0.12?0.37%の濃度で添加することにより、発泡酒の香味を調整するようにしたことを特徴とする発泡酒の製法。」であるところ、本願発明1と刊行物Aに記載された発明とを対比すると、前者におけるペプトンも後者における酵母エキスも酵母の窒素源であるから、両者は、
「麦芽と該麦芽よりも多い量の副原料とを使用して発泡酒を製造する方法において、酵母の窒素源を添加する発泡酒の製法」
で一致し、(イ)、(ハ)、(ニ)の点で相違する。
(イ)窒素源を添加する時期が、前者では「発酵工程前」であるのに対し、後者ではそれが明示されてない点
(ハ)窒素源を添加する目的が、前者においては、発泡酒の香味を調整するためであるのに対し、後者においては、同化性窒素源の不足を補うためである点
(ニ)添加する窒素源が、前者では「ペプトンを0.12?0.37%の濃度で」であるのに対し、後者では「酵母エキス」である点

(4-2)判断
相違点(イ)、(ハ)は、本願発明2と刊行物Aに記載された発明との相違点(イ)、(ハ)と実質的に同じであり、判断は既に示した。
相違点(ニ)について
酵母の窒素源として、ペプトンは、酵母エキスと共に普通に利用されていることは周知のことである。(必要ならば、特開平08-140691号公報、特開平07-075520号公報、特開平07-046978号公報、特開平06-253872号公報、特開平06-133703号公報、及び特公昭36-014294号公報を参照のこと。)
そうすると、刊行物Aに記載された発明の発泡酒の製造に当たり、酵母の窒素源として「酵母エキス」に代えて「ペプトン」を用いることは当業者が適宜なし得る範囲のものであり、その濃度である「0.12?0.37%」は、本願明細書の「第2表」によると、FAN(mg/L)が「78?129」であり、この数値範囲は、刊行物Aの記載事項(d)に記載のように、当該技術においては普通のことであるから、刊行物Aに記載された発明において、この数値に限定することも格別なことではない。
また、その効果も、刊行物Aに記載された事項から、当業者が予測しうる範囲のものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明1及び2は、本願出願前に頒布された刊行物Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-14 
結審通知日 2008-02-19 
審決日 2008-03-03 
出願番号 特願平9-364303
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12C)
P 1 8・ 572- Z (C12C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 鈴木 紀子
鴨野 研一
発明の名称 発泡酒の製法  
代理人 矢野 裕也  
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