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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1176658
審判番号 不服2004-18735  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-09 
確定日 2008-04-24 
事件の表示 特願2000-285756「物流決済装置、及び物流決済システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月29日出願公開、特開2002- 92529〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年9月20日の出願であって、平成16年8月6日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年9月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、当審の平成19年9月4日付けの拒絶理由通知に対して同年11月12日付けで手続補正がなされ、その後、当審の同年12月11日付けの拒絶理由通知に対して平成20年2月18日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年2月18日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】店舗毎に設置され、一括払い、分割払い、ボーナス一括払いを含む取引方法によりカード取引を行う端末装置と、該端末装置からの取引データが送信されて認証と取引処理が行われる上位装置との間に、該端末装置と該上位装置間のデータの経由装置として接続されるコンピュータからなる物流決済装置であって、
前記端末装置にて入力された取引金額による取引が前記上位装置において認証されて取引処理が行われる毎に、前記端末装置から前記上位装置に送信される取引データを取り込む取引データ取込手段と、
前記取引データ取込手段で取り込まれた取引データを店舗毎に記憶する記憶手段と、
通信手段を介して接続された運送会社のコンピュータより受信した商品の発送履歴に基づいて店舗毎に該商品の発送のための費用となる支払い金額と、代引き発送にかかる入金金額と、を所定期間毎に算出する商品発送支払入金額算出手段と、
前記取引処理に係る取引方法が一括払い、分割払い、ボーナス一括払いを含む取引方法の中のどの取引方法であるか無関係に、前記記憶手段に記憶されている店舗毎の取引データ、及び商品発送支払入金額算出手段で算出された前記支払い金額と前記入金金額とに基づいて、
店舗の入金金額=(店舗の代引き発送にかかる入金金額)
+(店舗の取引処理にかかる取引金額)
-(店舗の商品の発送にかかる支払い金額)
により前記所定期間毎に店舗毎の入金金額を算出する所定期間入金金額算出手段と、
前記所定期間入金金額算出手段により算出した入金金額を店舗毎に記憶する所定期間入金金額記憶手段と、
前記所定期間入金金額記憶手段に記憶されている所定期間毎の店舗毎の入金金額に基づいて計算される各店舗に支払うべき金額データについて、全店舗のカード取引により前記上位装置から全店舗に支払うべき金額データが一括して入金され、且つ商品の代引き発送にかかる全店舗の入金金額データが一括して入金される特定口座対応記憶部と各店舗口座対応記憶部とが設定されている金融機関のコンピュータからなるホスト装置に対し、前記所定期間毎に、前記特定口座対応記憶部から前記各店舗口座対応記憶部に振込処理を通信手段を介して要求する第1の振込要求処理手段と、
金融機関の前記ホスト装置に対し、前記商品発送支払入金額算出手段により算出された店舗毎の前記支払い金額を合計した合計金額を、前記特定口座対応記憶部から運送会社の口座に振込処理を前記通信手段を介して要求する第2の振込要求処理手段と、を備えた物流決済装置。」

3.当審の拒絶の理由
平成19年12月11日付けの拒絶理由通知(以下、「当審の拒絶理由通知」という。)の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
『A.(略)
B.(略)
C.この出願の請求項1,2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[刊行物一覧]
引用例1:大澤徳司,「デビットカードの最新動向」,金融情報システム,1999年1月1日発行,財団法人金融情報システムセンター,第211号,p.67?71
引用例2:山田里恵,「ECパッケージを活用したコメの販売サイト構築ライヴ第5回 物流代行処理を取り入れECサイトついにオープン!」,ネットワークコンピューティング,平成12年9月18日特許庁情報館受入(平成12年10月1日発行),株式会社リックテレコム,第12巻,第10号,p.71
引用例3:稲垣有紀,「各社配送システムの比較・分析から最新サービスまで 各配送サービスを比較する」,eコマースSUPERマニュアル,2000年6月23日発行,株式会社バーチカルシステム,p.63
引用例4:森本繁生,「ビジネス実践講座:電子商店成功へのQ&A 8 物流を使いこなす方法」,日経マルチメディア,1998年12月15日発行,第42号,p.161?162
引用例5:「資材・購買・外注管理実践マニュアル」,1993年11月30日発行,日刊工業新聞社,初版,p.494?495
引用例6:「特集2 商店街、地域カード活用の新たなトレンド先進地域事例紹介 デビットカードサービスが先行スタートのきょうと情報カードシステムでは中小加盟店がメリットを見いだせるさまざまな工夫を凝らす」,CardWave,1998年10月10日発行,株式会社シーメディア,第11巻,第11号,p.28
引用例7:長谷川直樹,「流通イノベータ ヤマト運輸」,日経デジタルマネーシステム,1999年7月15日発行,日経BP社,第46号,p.10』

4.当審の判断
[引用例に記載された事項について]
(1)当審の拒絶理由通知にて引用した、大澤徳司,「デビットカードの最新動向」,金融情報システム,1999年1月1日発行,財団法人金融情報システムセンター,第211号,p.67?71(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の(a)ないし(d)の事項が記載されている。
(a)「デビットカードサービスのシステムの概要を[図3]に示す。また,同システムはクレジットカード一括決済システムを応用したシステムであり,参考としてクレジットカード一括決済システムの概要を[図4]に示す。」(第67頁右欄第9行?第68頁左欄第4行)
(b)「利用者」が「カード」を用い、「金額入力」が「加盟店」にて行われ、前記利用者には「商品+レシート」が前記加盟店から与えられ、前記加盟店と「CAFISセンター」の間に「(株)京都ソフトアプリケーション」の「運用センター」があって、前記運用センターが前記加盟店及び前記CAFISセンターと相互に送受信を行い、前記運用センターは少なくとも「クラスターコントローラー」と「ホストマシーン」を有しており、前記CAFISセンターと接続された「クレジットカード会社」が「利用者に請求、口座引落」を行い、また、前記クレジット会社が「提携地元金融機関」の「振込用商店街統一口座」に「一括振込(月2回)」を行い、前記ホストマシーン側から前記提携地元金融機関側に向けた「総合振込指示」が行われ、前記提携地元金融機関において前記振込用商店街統一口座から「商店口座」,「百貨店口座」に向けて「各加盟店に月2回総合振込」,「必要により当座貸越」が行われ、前記ホストマシーン側から「商店」,「百貨店」側に向けて「取引明細書 郵送」が行われることを示した「クレジットカード一括決済システム系統図」。(第68頁第4図)
(c)「利用している端末機器は,クレジットカード,キャッシュカード(中略)それぞれの読み取りが可能な共用端末となっている。」(第69頁左欄第32?35行)
(d)「将来的には,運送業者と提携して,宅配配送の代引きサービスにデビットカードを活用したいとのことであった。」(第71頁左欄第11?13行)

ここで、前記摘記事項(a)には、デビットカード決済システムがクレジットカード一括決済システムを応用したシステムであることが記載されており、また、前記摘記事項(c)には、クレジットカードとキャッシュカードの両者の読み取りが可能な共用端末としての端末機器が記載されていることからみて、前記摘記事項(b)に記載された、利用者がカードを用いて加盟店にて金額が入力され前記利用者に商品とレシートが渡されるクレジットカード一括決済システムにおける各加盟店には、クレジットカード取引を行う端末機器が設置されていることは明らかである。
また、前記摘記事項(b)には、「振込用商店街統一口座」と「商店口座」及び「百貨店口座」を含む「提携地元金融機関」が記載されているところ、「提携地元金融機関」には「コンピュータ」が設置され、前記各口座が所定の「記憶装置」により管理されていることは明らかであり、また、提携地元金融機関の前記コンピュータがホストマシーン側からの「総合振込指示」を「通信回線を介して」受けていることも明らかである。
また、前記摘記事項(b)によれば、「商店」や「百貨店」が「加盟店」であることは明らかであって、ホストマシーン側から前記商店や前記百貨店に取引明細書を郵送しているということからみて、少なくとも、前記ホストマシーンにおいて、個々のクレジットカード取引にかかる取引データを入手し、各加盟店単位での取引の詳細内容を管理していることは明らかである。
また、前記摘記事項(b)には、ホストマシーン側からの総合振込指示により、「各加盟店に月2回総合振込」することが記載されており、このような振込指示を行うために、前記ホストマシーンにおいて、前記取引明細に基づいて加盟店毎の半月分の振込金額を算出して管理していることは明らかである。
してみれば、引用例1には、
『加盟店毎に設置され、クレジットカード取引を行う端末機器と、該端末機器からの取引データが送信されて認証と取引処理が行われる「CAFISセンターに接続されたクレジットカード会社」との間に、該端末機器と該「CAFISセンターに接続されたクレジットカード会社」間のデータの経由装置として接続される「クラスターコントローラーを備えた運用センターのホストマシーン」であって、
前記端末機器にて入力された金額による取引が前記「CAFISセンターに接続されたクレジットカード会社」において認証されて取引処理が行われる毎の取引データを入手する取引データ入手手段と、
前記取引データ入手手段で入手した取引データによる加盟店毎の取引明細を管理する管理手段と、
前記管理手段により管理された加盟店毎の取引明細に基づいて、
加盟店の振込金額=(加盟店の取引処理にかかる取引金額)
により半月毎に加盟店毎の振込金額を算出する振込金額算出手段と、
前記振込金額算出手段により算出した加盟店毎の振込金額を管理する振込金額管理手段と、
前記振込金額管理手段で管理されている半月毎の加盟店毎の振込金額に基づいて計算される各加盟店に支払うべき金額データについて、全加盟店のクレジットカード取引により前記「CAFISセンターに接続されたクレジットカード会社」から全加盟店に支払うべき金額が一括振込される「振込用商店街統一口座の記憶装置」と「商店口座及び百貨店口座の記憶装置」とが設けられている「提携地元金融機関のコンピュータ」に対し、半月毎に、前記「振込用商店街統一口座の記憶装置」から前記「商店口座及び百貨店口座の記憶装置」に総合振込を通信手段を介して指示する総合振込指示手段と、を備えた「クラスターコントローラーを備えた運用センターのホストマシーン」。』
の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(2)当審の拒絶理由通知にて引用した、山田里恵,「ECパッケージを活用したコメの販売サイト構築ライヴ第5回 物流代行処理を取り入れECサイトついにオープン!」,ネットワークコンピューティング,平成12年9月18日特許庁情報館受入(平成12年10月1日発行),株式会社リックテレコム,第12巻,第10号,p.71(以下、「引用例2」という。)には、以下の(e)の事項が記載されている。
(e)「運送会社はお米屋さんや農家でお米を預り、お客様に配送します。また、商品の引渡しの際に代金を回収します。回収した商品代金は、手数料を差し引かれてモール主催者側に一括で振り込まれ、ここから販売手数料として売上の10%を差し引いた金額を各テナントにお支払します。」(第71頁左欄第15?23行)
なお、引用例2の表紙の特許庁情報館の押印によれば、引用例2は、平成12年9月18日に国立国会図書館の支部図書館である特許庁工業所有権総合情報館に受け入れられたものと認められるから、引用例2は、本願の出願日である平成12年9月20日より前に頒布された刊行物である。

(3)当審の拒絶理由通知にて引用した、稲垣有紀,「各社配送システムの比較・分析から最新サービスまで 各配送サービスを比較する」,eコマースSUPERマニュアル,2000年6月23日発行,株式会社バーチカルシステム,p.63(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、以下の(f)の事項が記載されている。
(f)ヤマト運輸のコンピュータとユーザ会社側の「e-catをインストールしたPC」とが接続されており、「請求書データ」、「発送データ」、「配完データ」、「問い合わせデータ」及び「コレクト支払いデータ」が前記ヤマト運輸側からユーザ会社側へ送信されることを示したもの。(第63頁第7図「e-cat」)

(4)当審の拒絶理由通知にて引用した、森本繁生,「ビジネス実践講座:電子商店成功へのQ&A 8 物流を使いこなす方法」,日経マルチメディア,1998年12月15日発行,第42号,p.161?162(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに、以下の(g)の事項が記載されている。
(g)「開店時に発送方法をどのようにやるべきかの情報源は、本やインターネットを見渡してもほとんどないので、日常生活と同じように宅配業者が契約しているコンビニから発送してしまう人が多いようです。しかし、これでは近県でも最低700円程度かかってしまいます。お客様が送料を持つ場合は価格的魅力が出せず、電子商店が負担する場合はよほどのことがない限り利益が出ません。
最初は郵便局から配送が基本
売れている電子商店は、個人商店でもコンビニで送る場合の半額に近い料金で、しかも全国均一料金で送っているところもあります。もちろん最初からそれは不可能ですが、実績を上げることができれば宅配会社との交渉の余地は十分にあります。
(中略)
さて、売れてきて荷物の個数が出るようになると、いちいち郵便局に持ち込むのが面倒になってきます。目安として2日に1個ぐらい荷物が出るようになったら宅配便を使うことを考えればよいでしょう。
宅配便にすると、(1)月末一括払いができる、(中略)などのメリットがあります。」(第161頁中欄第3行?第162頁中欄第13行)

(5)当審の拒絶理由通知にて引用した、「資材・購買・外注管理実践マニュアル」,1993年11月30日発行,日刊工業新聞社,初版,p.494?495(以下、「引用例5」という。)には、図面とともに、以下の(h)の事項が記載されている。
(h)「○○○株式会社(以下「甲」という)と○○○運輸株式会社(以下「乙」という)とは,甲の物品の輸送業務の委託に関し,次のとおり契約を締結する.
(中略)
(代金)
第○条 甲が輸送を委託する物品の輸送料,その他支払い条件については,甲乙別途協議のうえ決定するものとする.
2 運送料は,毎月○○日に締め切り,甲は乙に対し翌月○○日に支払うものとする.」(第494頁第25行?第495頁第1行)

(6)当審の拒絶理由通知にて引用した、「特集2 商店街、地域カード活用の新たなトレンド先進地域事例紹介 デビットカードサービスが先行スタートのきょうと情報カードシステムでは中小加盟店がメリットを見いだせるさまざまな工夫を凝らす」,CardWave,1998年10月10日発行,株式会社シーメディア,第11巻,第11号,p.28(以下、「引用例6」という。)には、図面とともに、以下の(i)の事項が記載されている。
(i)「提携地元金融機関」において「当座貸越により、加盟店に早期前倒振込」されることを示した「クレジットカード決済システム図」。(第28頁第2図)

(7)当審の拒絶理由通知にて引用した、長谷川直樹,「流通イノベータ ヤマト運輸」,日経デジタルマネーシステム,1999年7月15日発行,日経BP社,第46号,p.10(以下、「引用例7」という。)には、以下の(j)の事項が記載されている。
(j)「代引き業務は一見すると簡単なようだが,そこには様々なノウハウが盛り込まれている。YCSのサービスの特徴は,実際に集金できたかどうかを問わずに,受託した商品の代金を受注5日後に一括して荷主に支払うことだ。集金リスクはYCSが負う。(中略)短期間で確実に売上金を回収できるため,資金繰りの改善に役立つ利点がある。」(第10頁右欄第24?34行)

[対比・判断]
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「クレジットカード取引」は、本願発明の「カード取引」に包摂される。
また、引用発明の「加盟店」及び「端末機器」はそれぞれ、本願発明の「店舗」及び「端末装置」に相当するといえる。
また、引用発明の「クラスターコントローラーを備えた運用センターのホストマシーン」と本願発明の「コンピュータからなる物流決済装置」とは、以下の相違点1及び相違点2で相違しているものの、「コンピュータからなる決済装置」である点で共通している。
また、引用発明の「振込用商店街統一口座の記憶装置」及び「商店口座及び百貨店口座の記憶装置」は、本願発明の「特定口座対応記憶部」及び「各店舗口座対応記憶部」に相当するということができ、引用発明の「提携地元金融機関のコンピュータ」は本願発明の「金融機関のコンピュータからなるホスト装置」に相当するといえるものである。
また、引用発明の「CAFISセンターに接続されたクレジットカード会社」では、引用発明におけるカード取引等のオンライン処理を実行するために所定の装置を有していることは明らかであり、前記端末機器や前記運用センター側からみて該装置は取引処理として「上位」に位置付けられるということができるから、本願発明の「上位装置」に相当するといえるものである。
また、引用発明において、「取引処理が行われる毎の取引データ」が取引処理が行われる毎に、端末機器から「CAFISセンターに接続されたクレジットカード会社」に送信されることは明らかであるから、引用発明の「取引データ入手手段」は、本願発明の「取引データ取込手段」に相当するといえるものであり、また、引用発明の「管理手段」は、前記ホストマシーン内にて取引データを記憶する機能を意味していると解することができるから、本願発明の「記憶手段」に相当しているということができる。
また、引用発明の「振込金額算出手段」は、入手した取引データによる該取引明細における個々の取引に関する金額から半月毎の振込金額を各加盟店について算出するものであるから、それが行う処理が以下の相違点1及び相違点2で相違しているものの、本願発明の「所定期間入金金額算出手段」と共通するといえるものであり、また、引用発明の「振込金額管理手段」は、前記ホストマシーン内にて算出結果を記憶する機能を意味していると解することができるから、本願発明の「所定期間入金金額記憶手段」に相当するといえるものである。
また、引用発明の「総合振込指示手段」は、その指示により入金される金額が以下の相違点1で相違しているものの、本願発明の「第1の振込要求処理手段」と共通するといえるものである。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
「店舗毎に設置され、カード取引を行う端末装置と、該端末装置からの取引データが送信されて認証と取引処理が行われる上位装置との間に、該端末装置と該上位装置間のデータの経由装置として接続されるコンピュータからなる決済装置であって、
前記端末装置にて入力された取引金額による取引が前記上位装置において認証されて取引処理が行われる毎に、前記端末装置から前記上位装置に送信される取引データを取り込む取引データ取込手段と、
前記取引データ取込手段で取り込まれた取引データを店舗毎に記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている店舗毎の取引データに基づいて、
店舗の入金金額=(店舗の取引処理にかかる取引金額)
により所定期間毎に店舗毎の入金金額を算出する所定期間入金金額算出手段と、
前記所定期間入金金額算出手段により算出した入金金額を店舗毎に記憶する所定期間入金金額記憶手段と、
前記所定期間入金金額記憶手段に記憶されている所定期間毎の店舗毎の入金金額に基づいて計算される各店舗に支払うべき金額データについて、全店舗のカード取引により前記上位装置から全店舗に支払うべき金額データが一括して入金される特定口座対応記憶部と各店舗口座対応記憶部とが設定されている金融機関のコンピュータからなるホスト装置に対し、前記所定期間毎に、前記特定口座対応記憶部から前記各店舗口座対応記憶部に振込処理を通信手段を介して要求する第1の振込要求処理手段と、を備えた決済装置。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願発明は、「物流」決済装置であって、「通信手段を介して接続された運送会社のコンピュータより受信した商品の発送履歴に基づいて店舗毎に該商品の発送のための費用となる支払い金額と、代引き発送にかかる入金金額と、を所定期間毎に算出する商品発送支払入金額算出手段」と「金融機関の前記ホスト装置に対し、前記商品発送支払入金額算出手段により算出された店舗毎の前記支払い金額を合計した合計金額を、前記特定口座対応記憶部から運送会社の口座に振込処理を前記通信手段を介して要求する第2の振込要求処理手段」を備えており、前記所定期間入金金額算出手段は、「商品発送支払入金額算出手段で算出された前記支払い金額と前記入金金額」にも基づいて、店舗の入金金額として、(店舗の取引処理にかかる取引金額)に「(店舗の代引き発送にかかる入金金額)」を加え「(店舗の商品の発送にかかる支払い金額)」を減じた値を「前記」所定期間毎に算出しており、前記第1の振込要求処理手段の要求先であるホスト装置の特定口座対応記憶部は「商品の代引き発送にかかる全店舗の入金金額データが一括して入金され」るのに対して、引用発明は、決済装置であるが、物流にかかる構成を備えていない点。

[相違点2]本願発明では、「一括払い、分割払い、ボーナス一括払いを含む取引方法により」カード取引が行われ、「取引処理に係る取引方法が一括払い、分割払い、ボーナス一括払いを含む取引方法の中のどの取引方法であるか無関係に、」店舗毎の入金金額が算出されているのに対して、引用発明では、店舗への入金金額を算出しているが、取引方法について、そのようになっていない点。

以下、各相違点について判断する。
[相違点1について]
引用例2の前記摘記事項(e)には、運送会社によるお客様への商品引渡の際に回収した代金であって、モール主催者側から各テナントに支払うべき代金を、前記運送会社側から前記モール主催者側に一括して振り込み、前記モール主催者側から各テナントに支払う技術思想が記載されている。
また、引用例3の前記摘記事項(f)には、運送会社側のコンピュータとユーザー会社側のコンピュータとを通信回線で接続して、発送にかかるデータや代引きにかかるデータを前者から後者へ送信する技術思想が記載されている。
また、例えば、引用例4の前記摘記事項(g)や引用例5の前記摘記事項(h)にみられるように、発送にかかる金額を運送会社へ所定期間毎に支払うことは、一般に行われている商慣行にすぎないものであり、また、所定期間毎の支払いのために前記所定期間毎の合計金額を支払うことや、支払いを口座振込手続により行うことも、一般に行われている商慣行にすぎない。
そして、引用例1の前記摘記事項(d)には、運送業者と提携して、宅配配送の代引きサービスを行いたいということが記載されており、これは、上述したような物流にかかる技術思想や商慣行を引用発明に対して適用する動機づけの一つになり得るということができる。
したがって、通信回線を介して接続された運送会社のコンピュータより受信した商品の発送履歴に基づいて所定期間毎に算出された代引き発送にかかる入金金額及び発送にかかる支払い金額がカード取引金額から加減された店舗毎の額を前記所定期間毎に算出して、運送会社から代引き発送にかかる全店舗の額が一括して入金される特定口座から各店舗口座へ振り込んで入金するよう要求するとともに、店舗毎の前記支払い金額を合計した合計金額を前記特定口座から運送会社の口座へ振り込んで支払うよう要求する、という物流にかかる決済機能を、引用発明の決済装置に対して追加した、物流決済装置を創出することは、当業者にとって格別の困難を要することではない。
そうすると、相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明並びに引用例2ないし5記載の技術思想及び商慣行に基づいて当業者が容易に想到することができたものというべきである。

[相違点2について]
クレジットカードを利用する際に、一括払い、分割払い、ボーナス一括払いなどの取引方法を利用者が指定した上で取引を行うことは、一般に行われている商慣行にすぎず、また、特に分割払いやボーナス一括払いが指定された場合では、該取引にかかる全ての代金がクレジットカード会社から支払われるまでに相当の期間を要することも周知のことである。
そして、引用例6の摘記事項(i)には、クレジットカード決済システムの提携地元金融機関において、当座貸越を使って所定期間毎に加盟店に早期前倒振込を行うことが記載されており、また、引用例7の摘記事項(j)には、代引き業務において、代金が集金される前であっても所定期間後に荷主に代金を支払うことが記載されているから、引用例6,7には、カード会社や運送会社が客から代金を回収する時期に依存しない一定の期間で売上金を回収する技術思想が開示されている。
したがって、引用発明において、一括払い、分割払い、ボーナス一括払いのような、どのような取引方法でカード取引が行われたかとは無関係に、所定期間毎の店舗毎の入金金額を算出するようにした構成を導くことが、当業者にとって格別の困難を要することであるとはいえない。
そうすると、相違点2に係る本願発明の構成は、引用発明並びに引用例6,7記載の技術思想及び商慣行に基づいて当業者が容易に想到することができたものというべきである。

[作用効果について]
そして、本願発明が奏する作用効果についてみても、引用発明、引用例2ないし7記載の技術思想及び商慣行から、当業者が予測し得る程度のものであり、格別のものとはいえない。

5.むすび
以上のとおり、この出願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明並びに引用例2ないし7に記載された技術思想及び商慣行に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-25 
結審通知日 2008-02-26 
審決日 2008-03-10 
出願番号 特願2000-285756(P2000-285756)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関 博文  
特許庁審判長 小林 信雄
特許庁審判官 久保田 昌晴
坂庭 剛史
発明の名称 物流決済装置、及び物流決済システム  
代理人 小森 久夫  
代理人 小森 久夫  

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