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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1176699
審判番号 不服2006-20611  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-15 
確定日 2008-04-24 
事件の表示 特願2002-148582「レーザ照射装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年12月 3日出願公開、特開2003-344802〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年5月23日に特許出願したものであって、平成18年8月8日付で拒絶査定がなされ、これに対して同年9月15日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年10月13日に手続補正がなされたものである。



II.平成18年10月13日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年10月13日付の手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容
平成18年10月13日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の請求項1を以下のように補正(以下、「本件補正A」という。)し、また、請求項3?13を以下のように補正(以下、「本件補正B」という。)することを含むものである。

「【請求項1】 パルスレーザ光を出力するレーザ発振器と、前記パルスレーザ光を集光して光ファイバに入射する光ファイバ導光装置と、前記光ファイバから出射されたパルスレーザ光を集光して対象物に照射する照射ヘッドと、前記光ファイバの入射端面の状況を検出する検出器と、この検出器による検出結果からパルスレーザ光の入射状態を制御する制御手段とを備え、前記光ファイバ導光装置は、前記パルスレーザ光を光軸の異なる複数のレーザ光線に分割するレンズアレイと、前記複数のレーザ光線を重畳して前記光ファイバの入射端面上の所定の範囲内において空間的に均一なエネルギー密度を有する一つのレーザ光線にする集光光学系とを備えていることを特徴とするレーザ照射装置。」
「【請求項3】 前記レンズアレイは、複数の四角形または六角形の小レンズ、または平行に並べられた複数のシリンドリカルレンズを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ照射装置。
【請求項4】 前記光ファイバ導光装置は、前記レンズアレイの前または後に複数の透過孔を有するアパーチャを備えていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載のレーザ照射装置。
【請求項5】 前記光ファイバは、単一の光ファイバからなることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載のレーザ照射装置。
【請求項6】 前記光ファイバは、その端面を炭酸ガスレーザもしくは5μmよりも長い波長を有するレーザ光により溶融処理してなることを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載のレーザ照射装置。
【請求項7】 前記光ファイバは、その出射端に延長用光ファイバを接続可能とすべく光コネクタを設けるとともに、該光コネクタは液体を封入した水密構造を有することを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項記載のレーザ照射装置。
【請求項8】 前記検出器は前記光ファイバの入射端面を検出する画像センサを備え、前記制御手段は前記検出器の検出結果からパルスレーザ光の入射位置が前記光ファイバ端面のコア内となるように制御することを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項記載のレーザ照射装置。
【請求項9】 前記検出器は前記光ファイバの入射端面を検出する画像センサを備え、前記制御手段は前記検出器の検出結果からパルスレーザ光の前記光ファイバへの入射を停止するように制御することを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項記載のレーザ照射装置。
【請求項10】 前記検出器は前記光ファイバの入射端面を観察する音響センサを備え、前記制御手段は前記検出器の検出結果からパルスレーザ光の前記光ファイバへの入射を停止するように制御することを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項記載のレーザ照射装置。
【請求項11】 前記検出器は前記光ファイバの入射端面からの戻り光の強度を測定する測定手段を備え、前記制御手段は前記検出器の検出結果からパルスレーザ光の前記光ファイバへの入射を停止するように制御することを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項記載のレーザ照射装置。
【請求項12】 前記複数のパルスレーザ光は前記光ファイバ導光装置のレンズアレイに対して非平行の角度で入射するよう構成されていることを特徴とする請求項2乃至11いずれか1項記載のレーザ照射装置。
【請求項13】 前記複数のパルスレーザ光は前記光ファイバ導光装置のレンズアレイに対して平行の角度で入射するよう構成されていることを特徴とする請求項2乃至11いずれか1項記載のレーザ照射装置。」

2.当審の判断
2-1.本件補正Bについて
本件補正Bは、請求項3に「(請求項1)又は2記載のレーザ照射装置」の下線部分を、請求項4に「(請求項1)乃至3いずれか1項記載のレーザ照射装置」の下線部分を、請求項5に「(請求項1)乃至4いずれか1項記載のレーザ照射装置」の下線部分を、請求項6に「(請求項1)乃至5いずれか1項記載のレーザ照射装置」の下線部分を、請求項7に「(請求項1)乃至6いずれか1項記載のレーザ照射装置」の下線部分を、請求項8に「(請求項1)乃至7いずれか1項記載のレーザ照射装置」の下線部分を、請求項9に「(請求項1)乃至7いずれか1項記載のレーザ照射装置」の下線部分を、請求項10に「(請求項1)乃至7いずれか1項記載のレーザ照射装置」の下線部分を、請求項11に「(請求項1)乃至7いずれか1項記載のレーザ照射装置」の下線部分を、請求項12に「(請求項2)乃至11いずれか1項記載のレーザ照射装置」の下線部分を、請求項13に「(請求項2)乃至11いずれか1項記載のレーザ照射装置」の下線部分を、それぞれ追加することを含むものである(下線は当審で引いた。)。
しかしながら、上記本件補正Bは、平成14年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当せず、また、請求項の削除、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明、のいずれにも該当しないものである。
したがって、本件補正Bは、平成14年改正前特許法第17条の2第4項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

2-2.本件補正Aについて
本件補正Aは、請求項1に、「前記光ファイバの入射端面の状況を検出する検出器と、この検出器による検出結果からパルスレーザ光の入射状態を制御する制御手段とを備え」を追加することを含むものであるが、この発明特定事項の追加は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではないから、本件補正Aは平成14年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。
また、本件補正Aは、請求項の削除、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明、のいずれにも該当しないものである。
よって、本件補正Aは、平成14年改正前特許法第17条の2第4項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
なお、仮に本件補正Aが特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると仮定したとしても、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、以下のとおり、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるので、平成14年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

2-2-1.刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用した特開11-91115号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに下記の事項が記載されている。

ア)「【0009】
【課題を解決するための手段】・・・(略)・・・、本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法は、吐出口形成部材にレーザビームを照射して吐出口を形成する液体噴射記録ヘッドの製造方法において、液体噴射記録ヘッドの吐出口の一部または全部に対応して配列した光ファイバー束から出射したレーザビームを縮小・投影することにより吐出口を形成することを特徴とする。
【0010】さらに、本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法においては、レーザビームは紫外線パルスレーザが適している。」
イ)「【0017】図1は、本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法に適用されるレーザ加工装置を概略的に示す構成図である。
【0018】図1において、1はレーザ発振器であり、レーザ発振器1から発振されたレーザビーム2は、一対のレーザビーム反射ミラー3を介して、光学系の光軸4に合致した状態で、レーザ加工機本体5に入射される。レーザ加工機本体5には、ビーム整形光学系6、ビーム整形光学系6を出たレーザビームが入射する光ファイバー束7、光ファイバー束7の出射面をワーク10である液体噴射記録ヘッドの吐出口の一部あるいは全部に対応させて配置し固定する固定部材8、光ファイバー束7の出射面をワーク10上に投影するための投影光学系9、ワーク10の位置調整のためのワークステーション11、およびワーク10の位置を確認するための観察測定系12が設置されている。・・・(略)・・・。」
ウ)「【0020】本発明においては、レーザ発振器1としてKrFエキシマレーザを用いたが、XeClエキシマレーザ、N_(2)レーザ、Q-スイッチYAGレーザのミキシング光あるいは4倍波などの尖とう値の高いパルス紫外線レーザを用いることもできる。
【0021】光軸4上に配置されるビーム整形光学系6は、強度分布を持つ矩形のレーザビームをファイバー束の入射側の形状に合うように、しかも均一な強度分布になるように、ビームの形状を整形する光学系であって、図2の(a)および(b)に示すように、シリンドリカルレンズを用いたアフォーカル系6a、7個のレンズよりなるフライアイレンズ(ハエノメレンズ)6b、フィールドレンズ6cから構成する。」

ここで、図2から、
エ)引用刊行物の「ビーム整形光学系6」は、レーザ発振器から発振された紫外線パルスレーザビームを光ファイバ束7に集光して入射させるものであること、
オ)前記「ビーム整形光学系」に備えられた「フライアイレンズ6b」は、前記紫外線パルスレーザビームを光軸の異なる複数のレーザビームに分割するものであること、
を見て取れる。
また、図2及び上記摘記事項ウ)(【0021】)から、
カ)前記「ビーム整形光学系」に備えられた「フィールドレンズ6c」は、前記複数のレーザビームを重畳して前記光ファイバ束7の入射端面上の所定の範囲内において均一な強度分布を有する一つのレーザビームにするものであること、
を見て取れる。
さらに、図4から、
キ)引用刊行物の「投影光学系9」は、光ファイバ束7から出射された紫外線パルスレーザビームを集光してワーク10に照射するものであること、
を見て取れる。

よって、上記記載事項等を総合すると、引用刊行物には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている、といえる。

「紫外線パルスレーザビームを発振するレーザ発振器と、前記紫外線パルスレーザビームを集光して光ファイバ束に入射するビーム整形光学系と、前記光ファイバ束から出射された紫外線パルスレーザビームを集光してワークに照射する投影光学系と、前記ビーム整形光学系は、前記紫外線パルスレーザビームを光軸の異なる複数のレーザビームに分割するフライアイレンズと、前記複数のレーザビームを重畳して前記光ファイバ束の入射端面上の所定の範囲内において均一な強度分布を有する一つのレーザビームにする投影光学系とを備えたレーザ加工装置。」


2-2-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「紫外線パルスレーザビーム」、「発振する」、「レーザ発振器」、「ビーム整形光学系」、「ワーク」、「投影光学系」、「(光軸の異なる)複数のレーザビーム」、「フライアイレンズ」、「均一な強度分布を有する一つのレーザビーム」、「投影光学系」及び「レーザ加工装置」は、それぞれ本願補正発明の「パルスレーザ光」、「出力する」、「レーザ発振器」、「光ファイバ導光装置」、「対象物」、「照射ヘッド」、「(光軸の異なる)複数のレーザ光線」、「レンズアレイ」、「空間的に均一なエネルギー密度を有する一つのレーザ光線」、「集光光学系」及び「レーザ照射装置」に相当する。
また、本願補正発明の「光ファイバ」は、当該請求項1の記載からみて、それが光ファイバ束をも含みうるものであるといえるから、この点において、引用発明の「光ファイバ束」は、本願補正発明の「光ファイバ」に一致する。

したがって、両者は、
「パルスレーザ光を出力するレーザ発振器と、前記パルスレーザ光を集光して光ファイバに入射する光ファイバ導光装置と、前記光ファイバから出射されたパルスレーザ光を集光して対象物に照射する照射ヘッドとを備え、前記光ファイバ導光装置は、前記パルスレーザ光を光軸の異なる複数のレーザ光線に分割するレンズアレイと、前記複数のレーザ光線を重畳して前記光ファイバの入射端面上の所定の範囲内において空間的に均一なエネルギー密度を有する一つのレーザ光線にする集光光学系とを備えているレーザ照射装置。」
である点で一致し、以下の相違点において相違する。

相違点:本願補正発明は、光ファイバの入射端面の状況を検出する検出器と、この検出器による検出結果からパルスレーザ光の入射状態を制御する制御手段とを備えるのに対し、引用発明は、そのような検出器や制御手段を備えているのかどうか不明な点。

2-2-3.判断
上記相違点につき検討する。
光ファイバを用いるレーザ加工装置において、該光ファイバの入射端面の状況を検出器で検出し、この検出器による検出結果からレーザ光の該入射端面への入射状態(入射位置や入射の停止)を制御手段で制御するようにすることは周知であり(例えば、特開平11-264921号公報(【0026】?【0028】、図3)、特開2001-332784号公報(【0023】、図1)、特開平8-167754号公報(【0104】?【0107】、【0111】、【0112】、図10,図12)等参照。)、この周知技術を上記引用発明に適用して上記相違点に係る本願補正発明の技術的事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

したがって、本願補正発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-3.むすび
以上のとおり、前記補正A及びBを含んでいる本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第4項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



III.本願発明
1.本願発明
平成18年10月13日付の手続補正は、上記II.においてに述べたとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、同年7月14日付手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?13に記載されたものであるところ、その請求項1に係る発明は次の事項によって特定されるものである。

「パルスレーザ光を出力するレーザ発振器と、前記パルスレーザ光を集光して光ファイバに入射する光ファイバ導光装置と、前記光ファイバから出射されたパルスレーザ光を集光して対象物に照射する照射ヘッドとを備え、前記光ファイバ導光装置は、前記パルスレーザ光を光軸の異なる複数のレーザ光線に分割するレンズアレイと、前記複数のレーザ光線を重畳して前記光ファイバの入射端面上の所定の範囲内において空間的に均一なエネルギ密度を有する一つのレーザ光線にする集光光学系とを備えていることを特徴とするレーザ照射装置。」(以下、「本願発明」という。)

2.刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物、及び、その記載事項は、上記II.2-2-1.に記載したとおりである。

3.対比、判断
本願発明は、前記II.で検討した本願補正発明から、「前記光ファイバの入射端面の状況を検出する検出器と、この検出器による検出結果からパルスレーザ光の入射状態を制御する制御手段とを備え、」との限定を省いたものである。
してみると、本願発明と引用発明(上記II.2-2-1.参照)とを対比すると、両者は前記II.2-2-2.で述べた一致点で一致し、相違点は存在しないから、本願発明は引用発明と同一発明である。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-20 
結審通知日 2008-02-26 
審決日 2008-03-10 
出願番号 特願2002-148582(P2002-148582)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G02B)
P 1 8・ 57- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河原 正  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 岩本 勉
小牧 修
発明の名称 レーザ照射装置  
代理人 猪股 祥晃  
代理人 鹿股 俊雄  

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