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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G11B
管理番号 1176733
審判番号 不服2005-21398  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-04 
確定日 2008-05-13 
事件の表示 特願2004-80324「多層相変化型情報記録媒体及びその記録再生方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年9月29日出願公開、特開2005-267779、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯、本願発明

本願は、平成16年3月19日の出願であって、拒絶理由通知に対し、平成17年3月7日に手続補正をしたが、同年9月29日付けで拒絶査定されたため、同年11月4日付けで拒絶査定不服の審判を請求するとともに、同年12月5日付けで手続補正がされた。
平成17年12月5日付け手続補正は、明細書の発明の詳細な説明における背景技術についての記載事項を補正するものであって、本願請求項1乃至14に係る発明は、平成17年3月7日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至14に記載されて事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は以下のとおりである。
「【請求項1】光の入射により結晶状態と非晶質状態との相変化によって情報を記録する記録層を少なくとも有する情報層がN層(ただし、Nは2以上の整数を表す)設けられた多層相変化型情報記録媒体において、
前記情報層が、光の入射側から、第1情報層、第2情報層、・・・第N情報層であるとき、第N情報層以外の少なくとも1層の情報層が、少なくとも下部保護層、記録層、上部保護層、反射層、及び熱拡散層をこの順に積層してなり、該熱拡散層がインジウム(In)及び酸素(O)を少なくとも含み、更にチタン(Ti)及びジルコニア(Zr)の少なくともいずれかを含有し、かつInの全金属元素に対する原子比(In/全金属元素)が0.75?0.9であることを特徴とする多層相変化型情報記録媒体。」(以下、「本願発明」という。)

2.原査定の理由

原査定の拒絶の理由は、本願請求項1乃至14に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないというものである。

3.当審の判断

原査定の拒絶の理由には、以下の7件の刊行物が引用されている。(以下、それぞれ、引用例1?7という。)
(1)特開2002-298433号公報
(2)特開2004-30843号公報
(3)特開2003-242687号公報
(4)特開2004-39039号公報
(5)特開2004-47034号公報
(6)特開2004-47038号公報
(7)特開2004-5938号公報

上記各引用例には、「光の入射により結晶状態と非晶質状態との相変化によって情報を記録する記録層を少なくとも有する情報層が2層設けられた多層相変化型情報記録媒体において、1層の情報層が、少なくとも下部保護層、記録層、上部保護層、反射層、及び熱拡散層に相当する層をこの順に積層してなる多層相変化型情報記録媒体。」が記載されている。

各引用例には、本願発明の熱拡散層に相当する層を構成する材料について、それぞれ以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付加した。)

引用例1における透明放熱層25の材料は、「AlN、Al_(2)O_(3)、Si_(3)N_(4)、SiO_(2)、Ta_(2)O_(5)、TaO、ZrO_(2)、ZnO、TiO_(2)、SiC、およびこれらの複合材料からなる群より選択される。透明放熱層25の膜厚は情報層を形成する各層の光学設計に依存するが、透過率を考慮すれば膜厚は50nm以下であることが好ましい。」(段落[0030])
引用例2における放熱層18は、「中間層17より高い熱伝導率を有すると共に、上述のレーザー光に対して透明なZnS-SiO_(2)等の誘電体薄膜等で形成され、中間層17の屈折率n_(17)より大きく且つ3以下の範囲内の屈折率nに設定されている。」(段落[0037])
引用例3における放熱層は「立方晶窒化ホウ素からなる」(段落[0006]等)
引用例4における熱拡散層(16)は、「レーザー照射された記録層を急冷させるために、熱伝導率が大きいことが望まれる。また、奥側の情報層を記録再生できるよう、レーザー波長での吸収率が小さいことも望まれる。
このような機能を持たせるために、窒化物、酸化物、硫化物、窒酸化物、炭化物、弗化物の少なくとも1種を含むことが好ましい。例えば、AlN、Al_(2)O_(3)、SiC、SiN、ITO、DLC(ダイアモンドライクカーボン)、BNなどが挙げられるが、ITOのような透明導電膜を形成する材料が最も好ましいと考えられている。」(段落[0024])
引用例5における熱拡散層は「ITO(酸化インジウム-酸化スズ)を主体とし、これにAlおよびGaの内の少なくとも1種を含む」(請求項1)
引用例6における熱拡散層は「酸化スズを主体とし、少なくとも酸化アンチモンが含まれている」(請求項1)
引用例7の中間放熱層は、「InOとSnOからなるITOによって形成した。」(段落[0064])
「上記実施例の他に以下の材料の中から選んでもよい。例えば、Al-N、Al-O-N、Al-C、Si、Si-N、SiO_(2)、Si-O-N、Si-C、Ti-N、TiO_(2)、Ti-C、Ta-N、Ta_(2)O_(5)、Ta-O-N、Ta-C、Zn-O、ZnS、ZnSe、Zr-N、Zr-O-N、Zr-C、W-Cなどが挙げられる。あるいは、これらの混合物を用いてもよいし、これらの材料と適量の金属、半金属との混合物、又は合金を用いてもよい。さらに他の例として、In_(2)O_(3)-SnO_(2)、ZrO_(2)-Y_(2)O_(3)、InO_(2)-ZrO_(2)、Al_(2)O_(3)-ZrO_(2)などが挙げられる。」(段落[0075])

上記各引用例のうち、引用例1?3及び6には、熱拡散層がインジウム(In)及び酸素(O)を含むことは記載されていない。
引用例4の熱拡散層はITOを使用しており、また、引用例5の熱拡散層はITOを主体としAl又はGaの少なくとも1種を含む材料を使用しており、インジウム(In)及び酸素(O)を含んでいるが、更に、チタン(Ti)及びジルコニア(Zr)の少なくともいずれかを含有していない。
引用例7の実施例においてはITO(InOとSnOからなる)が使用されており、InO_(2)-ZrO_(2)は、「例えば」として例示されているAl-N等の22種には含まれず、「更に他の例」として例示されている4種のうちの一つにすぎない。
そうすると、これらの材料の中から、InO_(2)-ZrO_(2)を選択し、かつ、Inの全金属元素に対する原子比(In/全金属元素)が0.75?0.9となるように比率を特定することが、引用例7から示唆されていると認めることはできない。
また、Tiについては、「例えば」として列挙されている22種に含まれるが、インジウムと併用することが示唆されているとは認められない。

そして、上記各引用例の記載事項について総合的に検討しても、本願発明の特定事項である「熱拡散層がインジウム(In)及び酸素(O)を少なくとも含み、更にチタン(Ti)及びジルコニア(Zr)の少なくともいずれかを含有し、かつInの全金属元素に対する原子比(In/全金属元素)が0.75?0.9である」ことが、上記各引用例の記載事項から当業者が容易に想到しうるものとすることはできず、本願発明の効果が予測されるものということもできない。
したがって、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物である引用例1?7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

請求項2乃至13に係る発明は、請求項1に係る発明について、更に特定事項を限定した発明であり、請求項14に係る発明は、請求項1乃至13に係る発明の多層相変化型情報記録媒体の記録再生方法に係る発明であるから、請求項2乃至14に係る発明も、その出願前に頒布された刊行物である引用例1?7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願については、原査定の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2008-04-16 
出願番号 特願2004-80324(P2004-80324)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G11B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 蔵野 雅昭  
特許庁審判長 小林 秀美
特許庁審判官 横尾 俊一
吉川 康男
発明の名称 多層相変化型情報記録媒体及びその記録再生方法  
代理人 廣田 浩一  

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