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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1176773
審判番号 不服2005-24886  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-26 
確定日 2008-04-25 
事件の表示 特願2002-142537「フェルール」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月19日出願公開、特開2003-329880〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、平成14年5月17日に特許出願したものであって、本願の請求項に係る発明は、平成17年6月27日の手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】鍔部材に光ファイバー挿入細孔が形成された筒状体が嵌合されたフェルールにおいて、鍔部材を、位置合せ部を設けたキー部材と、該キー部材と当接する部材を有しない筒状体嵌合部材とに分割して個別に構成したことを特徴とする鍔部を有するフェルール。」

2.刊行物記載の事項
原査定の拒絶理由に引用した、この出願前頒布された刊行物1:特開2001-201659号公報には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 偏波保存光ファイバの端部を保持するフェルール用筒状体と、該フェルール用筒状体の後端部に設けられて偏波保存光ファイバ心線を保持する保持部と、該保持部を挿入可能な貫通孔を有すると共に外周面に光コネクタ用ハウジングとの位置決め用のキー溝を有するつば部材とからなるフェルールにおいて、
前記保持部の外周面には前記偏波保存光ファイバの偏波面方向を示す標識を有し、前記つば部材は前記標識に対して前記キー溝が所定の位置になるように設けられていることを特徴とするフェルール。
【請求項2】 請求項1において、前記つば部材には前記標識に一致させて位置決めするための標識が設けられていることを特徴とするフェルール。

【0019】
フェルール用筒状体20は、円筒形状を有し、その内部には軸方向に貫通して光ファイバを挿通可能な光ファイバ挿入孔21を有している。この光ファイバ挿入孔21の後端部には、内径が開口側に向かって漸大するテーパ部22が設けられている。
【0020】
保持部30は、外周につば部材40が挿入される大径円筒部31と、この大径円筒部31の外径より若干小さい外径を有すると共にその内方に光ファイバの外周に被覆を施した光ファイバ心線を保持する小径円筒部32とを有する。
【0021】
また、保持部30には光ファイバ挿入孔21と連通して、光ファイバ心線を挿入可能な光ファイバ心線挿入孔33が軸方向に貫通して形成されており、光ファイバ心線挿入孔33の大径円筒部31側は、フェルール用筒状体20の後端部に嵌合する大径部34となっている。この大径部34には、フェルール用筒状体20の後端部が圧入されている。
【0022】
さらに、大径円筒部31の先端部側の周縁部には後述するつば部材40の軸方向先端部側への移動を規制するフランジ35が保持部30の円周方向に沿って設けられており、大径円筒部31の外周面には、軸方向に直線状に設けられた詳しくは後述する光ファイバの偏波面方向を示す標識36がマークされている。
【0023】
一方、つば部材40は、保持部30を挿入可能な保持部30の大径円筒部31の外径より若干大きな内径を有する貫通孔41を有する環形状を有し、外周面には、後述するプラグフレーム82の係合突起84と係合するキー溝42を2つ有している。
【0024】
このつば部材40は、保持部30の大径円筒部31の標識36とキー溝42の側面の一方とが一致するように固定されている。なお、保持部30とつば部材40との固定方法は、接着剤による固着又は圧入による固定等、特に限定されない。」

上記によれば、刊行物1には、
「光ファイバ挿入孔21を有するフェルール用筒状体20と、該フェルール用筒状体の後端部に嵌合する保持部30と、該保持部を挿入可能な貫通孔を有すると共に外周面に光コネクタ用ハウジングとの位置決め用のキー溝を有するつば部材40とからなるフェルールにおいて、前記保持部30の先端部側の周縁部には前記つば部材40の軸方向先端部側への移動を規制するフランジ35が設けられており、前記つば部材には位置決めするための標識43が設けられているフェルール。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

3.対比
本願発明と上記引用発明とを対比する。
引用発明の「光ファイバ挿入孔21」、「フェルール用筒状体20」、「標識43」、「キー溝を有するつば部材40」及び「保持部30」は、それぞれ、本願発明の「光ファイバ挿入細孔」、「筒状体」、「位置合わせ部」、「キー部材」及び「筒状体嵌合部材」に相当する。
また、引用発明の「キー溝を有するつば部材40」及び「保持部30」が、本願発明の「キー部材と筒状体嵌合部材とに分割して個別に構成した鍔部材」に相当することは明らかである。
そして、引用発明の「フェルール」は、「つば部材40」及び「保持部30」を有しているから、本願発明の「鍔部を有するフェルール」に相当する。

よって、両者は、
「鍔部材に光ファイバー挿入細孔が形成された筒状体が嵌合されたフェルールにおいて、鍔部材を、位置合せ部を設けたキー部材と、筒状体嵌合部材とに分割して個別に構成した鍔部を有するフェルール。」の発明で一致し、下記の点で相違する。

[相違点]
本願発明は、筒状体嵌合部材がキー部材と当接する部材を有しないとされているのに対して、引用発明は、つば部材の軸方向先端部側への移動を規制するフランジを有する点。

4.判断
上記相違点に付き検討する。
引用発明のフランジは、つば部材の軸方向先端部側への移動を規制するものであり、いわば、つば部材の位置決めとしての機能を果たすものであるから、位置決めの必要がなければ、これを省略することは当業者が適宜なし得る程度のことである。

なお、審判請求人は、審判請求書等において、本願発明ではキー部材が前方から装着されることによる作用効果などを説明している。しかし、本願発明には、キー部材が前方から装着される旨の特定がなされていないのみならず、この様な作用効果についても出願当初明細書には一切記載がない。しかも、この種のフェルール等の組立において、後の工程で嵌合する部材を前方から装着するか、後方から装着するかは、必要に応じて当業者が適宜採用し得る設計変更にすぎない。(必要であれば、特開2001-272575号公報参照。)

したがって、本願発明の上記相違点は、格別の相違とはいえない。
また、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び従来周知の事項から予想し得る程度のものであり、格別とはいえない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-25 
結審通知日 2008-02-27 
審決日 2008-03-11 
出願番号 特願2002-142537(P2002-142537)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柏崎 康司吉田 英一  
特許庁審判長 向後 晋一
特許庁審判官 三橋 健二
小牧 修
発明の名称 フェルール  
代理人 細井 勇  

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