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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B23C
管理番号 1176781
審判番号 不服2006-18391  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-24 
確定日 2008-04-25 
事件の表示 特願2003-272356「インサート」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 2月 3日出願公開、特開2005- 28536〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成15年7月9日の特許出願であって、同17年12月22日付けで拒絶の理由が通知され、同18年2月14日に手続補正がなされ、同年7月25日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同年8月24日に本件審判の請求がなされ、同年9月20日に特許請求の範囲、明細書を対象とする手続補正がなされ、当審において同19年12月20日付けで拒絶理由が通知され、同20年2月13日に手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成20年2月13日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。
請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「中央取り付け穴を有する略平行四辺形平板状をしたインサートにおいて、前記インサートの角部にノーズ部1が形成され、前記ノーズ部1を挟んで隣り合う1対の逃げ面と、前記ノーズ部1を含む上面とがなす稜線部に長辺切刃2と短辺切刃3が形成されており、前記ノーズ部1を含む上面はすくい面4であり、前記すくい面4のノーズ部1の近傍であって前記ノーズ部1から夫々長辺切刃稜線方向と短辺切刃稜線方向とに囲まれる領域に、底面6と略平行な平坦部5を有し、前記平坦部5は、前記長辺切刃稜線方向と前記短辺切刃稜線方向に、前記両切刃稜線と前記ノーズ部1との繋ぎ部より0.5mm以上、4mm以下の長さで囲まれる領域に設け、前記長辺切刃2は前記平坦部5から離れるに従って底面6方向に傾斜した切刃を有することを特徴とするインサート。」

3.刊行物記載の発明
これに対し、本願出願前に頒布された刊行物であって、当審で通知した拒絶理由に引用された特開平10-175113号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のように記載されている。

ア.請求項1
「中央取付け穴を有する略平行四辺形のポジチップを用い、そのチップの長辺が主切刃で、長辺と短辺が鋭角で交わるコーナーに底刃となる副切刃を設け、かつ、少なくとも主切刃、副切刃を含む切刃稜線に添ってランド部とこれに続くすくい面となる傾斜面を有する隅削り用のスローアウェイチップの刃直角断面における上記主切刃のランド幅a及びすくい角αと上記副切刃のランド幅b及びすくい角βとが、
b=(1.3?2.5)a、α>β
の関係にあることを特徴とする隅削り用スローアウェイチップ。」

イ.段落0001
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、直角肩削り用のスローアウェイチップに関する。」

ウ.段落0007
「【0007】主切刃が短辺と鋭角で交わる主切刃先端側から短辺と鈍角で交わる主切刃後端側に向けて、側面視で切刃高さが低くなる傾斜刃としたのは、刃先高さ一定、つまりチップ厚さが一定のチップでは、軸方向すくい角を付けるには工具本体のチップ座から軸方向すくい角分傾けて製作する必要あったが、チップが傾斜刃になっているとその角度分は本体のチップ座を傾ける必要がないので、チップを受ける工具本体のバックメタルが大きくなり同じ軸方向すくい角(Ar)でも工具本体強度を向上することができる。・・・」

エ.段落0009
「【0009】
【実施例】図1は、本発明の逃げ角を有する平行四辺形のポジチップで、長辺が主切刃、長辺と短辺が鋭角で交わるコーナーに副切刃が設けられている。図2は主切刃直角のA-A断面で、aはランド幅、αはすくい角。同様に図3は副切刃の切刃直角断面のB-B断面で、bはランド幅、βはすくい角である。・・・」

オ.図1?5
長辺と短辺が鋭角で交わるコーナーを含む上面がすくい面であり、コーナーを挟んで隣り合う1対の逃げ面があることが看取できる。

上記記載を、技術常識を踏まえ、本願発明に照らして整理すると、上記刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「中央取り付け穴を有する略平行四辺形をしたスローアウェイチップにおいて、前記スローアウェイチップの長辺と短辺が鋭角で交わる部位にコーナーが形成され、前記コーナーを挟んで隣り合う1対の逃げ面と、前記コーナーを含む上面とがなす稜線部に主切刃と副切刃が形成されており、前記コーナーを含む上面はすくい面であり、前記主切刃は主切刃が短辺と鋭角で交わる主切刃先端側から短辺と鈍角で交わる主切刃後端側に向けて、側面視で切刃高さが低くなる傾斜刃としたスローアウェイチップ。」

同じく、当審で通知した拒絶理由に引用された特開2000-71110号公報(以下「刊行物2」という。)には、次のように記載されている。

ア.段落0001
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スローアウェイチップに関し、詳しくは、自動旋盤(数値制御旋盤)などにて小型の部品(軸部品)を超精密旋削加工するのに使用されるポジタイプのスローアウェイチップ(以下、単にチップともいう)に関する。」

イ.段落0012
「【0012】本発明のチップにおいては、すくい面のうちノーズ先端寄り部位であって少くとも円弧状切刃を構成する部位を、スローアウェイチップの下面と平行な平坦面部としたものである。つまり、円弧状切刃を平坦面部の外周縁に存在させたものである。・・・したがって、ワークへの食い込みも防止されるので、芯高さ精度の向上が図られるし、チッピングも防止される。」

ウ.段落0014
「【0014】なお、本発明において平坦面部を設ける領域を「少くとも円弧状切刃を構成する部位に」としたのは、平坦面部は、円弧状切刃を構成する部位を超えて、つまり円弧状切刃に連なる直線状の切刃を構成するすくい面に及んでいてもよいことを意味するが、その範囲はなるべく小さくするのが好ましい。その範囲が小さいほど、切込みが小さいときにおいてもブレーカ溝の役割を損ねないためである。・・・」

エ.段落0016
「【0016】もっとも、前記平坦面部のノーズ先端と反対側縁は、平面視、直線状としてもよい。この場合、平坦面部におけるノーズ先端を挟む切刃(稜線)の両端が円弧状切刃の端点(円弧状切刃と直線状切刃の接続点)にあるときは平坦面部は割円形状となり、平坦面部が広くなるため、芯高さをだす時におけるワークへの食込みやノーズ先端のチッピングがし難くなる。」

オ.段落0019?0020
「【0019】
【発明の実施の形態】本発明に係る実施形態例について、図1?6を参照して詳細に説明する。図1は本実施形態例に係るポジタイプの菱形スローアウェイチップ1を示す平面図であり、超硬合金、サーメットなどから形成されている。このものは、全体が平面視略菱形の平板状をなし、左右の対向する鋭角部に2つのノーズ2を備えた対称形を成し、各ノーズ2を挟むように直線状切刃3を備えている。そして、直線状切刃3には切刃ランドを備えることなく同切刃3に沿って断面円弧状のブレーカ溝4を備えている(図3,4参照)。また、図2に示したように、逃げ面5にはにげ角θが付与されている。
【0020】そして、図5,6に示したように、すくい面6のうちノーズ先端2a寄り部位であって円弧状切刃7の平面視円弧の端点と、ノーズ2を挟む両側の直線状切刃3の端点との各接続点P1より各直線状切刃3側にL(例えば0.5mm)入った点P2相互を、ノーズ半径R1より大きい半径R2からなる円弧(線)で結び、この円弧からノーズ先端2a寄り部位が、チップ1の下面9と平行な平坦面部11とされている。しかして、本例の平坦面部11は、ノーズ先端2aと反対側縁を半径R2の円弧としたことから平面視略三日月形状を成している。そして、本例ではノーズ半径R1は例えば0.2mmとされているが、円弧状切刃(刃先)7は平坦面部11の外周縁に存在するため、半径0.2mmの正確な円弧を成している。」

上記記載を、技術常識を踏まえ、図面を参照しつつ整理すると、上記刊行物2には、次の発明(以下「刊行物2発明」という。)が記載されているものと認められる。

「超精密旋削加工用の、ブレーカ溝を備えたスローアウェイチップであって、チッピング防止のため、すくい面6のうちノーズ先端2a寄り部位であって円弧状切刃7の平面視円弧の端点と、ノーズ2を挟む両側の直線状切刃3の端点との各接続点P1より各直線状切刃3側にL(例えば0.5mm)入った点P2相互を、ノーズ半径R1(例えば0.2mm)より大きい半径R2からなる円弧で結び、この円弧からノーズ先端2a寄り部位が、チップ1の下面9と平行な平坦面部11を有するもの。」

4.対比・判断
刊行物1発明の「略平行四辺形」、「スローアウェイチップ」、「長辺と短辺が鋭角で交わる部位」、「コーナー」、「主切刃」、「副切刃」は、本願発明の「略平行四辺形平板状」、「インサート」、「角部」、「ノーズ部1」、「長辺切刃2」、「短辺切刃3」に、それぞれ相当する。
また、刊行物1発明の「主切刃は主切刃が短辺と鋭角で交わる主切刃先端側から短辺と鈍角で交わる主切刃後端側に向けて、側面視で切刃高さが低くなる傾斜刃」と、本願発明の「長辺切刃2は平坦部5から離れるに従って底面6方向に傾斜した切刃」とは、いずれも「長辺切刃はノーズ部から離れるに従って底面方向に傾斜した切刃」であって、表現の差違はあるが、実質的に一致する。

そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。
「中央取り付け穴を有する略平行四辺形平板状をしたインサートにおいて、前記インサートの角部にノーズ部が形成され、前記ノーズ部を挟んで隣り合う1対の逃げ面と、前記ノーズ部を含む上面とがなす稜線部に長辺切刃と短辺切刃が形成されており、前記ノーズ部を含む上面はすくい面であり、前記長辺切刃はノーズ部から離れるに従って底面方向に傾斜した切刃を有するインサート。」

そして、以下の点で相違する。
本願発明は、「すくい面のノーズ部の近傍であって前記ノーズ部から夫々長辺切刃稜線方向と短辺切刃稜線方向とに囲まれる領域に、底面と略平行な平坦部を有し、前記平坦部は、前記長辺切刃稜線方向と前記短辺切刃稜線方向に、前記両切刃稜線と前記ノーズ部との繋ぎ部より0.5mm以上、4mm以下の長さで囲まれる領域に設け」られるが、刊行物1発明は、かかる平坦部を有しない点。

相違点について、検討する。
刊行物2発明を、本願発明との対比のため、図面、特に図5を参照しつつ整理すると、刊行物2発明は、以下のとおり書き改めることができる。
「超精密旋削加工用の、ブレーカ溝を備えたスローアウェイチップであって、チッピング防止のため、すくい面のノーズ2の近傍であって前記ノーズ2から夫々両側の直線状切刃3方向とに囲まれる領域に、下面と平行な平坦面部11を有するもの。」
刊行物1発明においても、チッピング防止が望ましいことは当然であるところ、刊行物2発明は、チッピング防止を目的としたものである。
したがって、刊行物1発明に刊行物2発明を適用することに困難性は認められず、その際に、平坦部領域をどの程度とするかは、設計的事項にすぎない。
請求人は、平成20年2月13日の意見書において、刊行物2発明は「旋削用、特に精密旋削加工に用いるインサート」であるとして、用途の相違を主張する。
しかし、本願発明は、請求項1の記載上、用途は特定されていないから、請求人の主張は根拠がない。仮に、用途が特定されていたとしても、「チッピング防止」という課題は、切削加工用のインサートにおいては、共通の課題であるから、刊行物2発明を適用しえないとまでは認められない。
請求人は、また、同意見書において、表1によれば「0.5mm以上、4mm以下」に特定したことにより、「切刃の損傷状態」に差違が生じると主張する。
しかし、「切刃の損傷状態」は、すくい面、逃げ面の形状、工具・ワークの材質、切削速度、切削液の有無等、多種多様な要因に左右されるものであり、表1の1事例をもって、上記範囲に臨界的意義があるとは認められない。
よって、「0.5mm以上、4mm以下」に特定したことによる、格別の技術的意義は認められない。
なお、刊行物2発明も、図5のLは、例えば0.5mm、R1は、例えば0.2mmであって、平坦部領域は本願発明と同程度である。また、刊行物2発明において、「例えば0.5mm」とした理由は、摘記事項ウから「ブレーカ溝の役割を損ねないため」であり、摘記事項エに、「平坦面部が広くなるため、・・・ノーズ先端のチッピングがし難くなる」と記載されていることから、「ブレーカ溝」のないインサートにおいては、「平坦面部」を広くしうることが示唆されている。

5.むすび
本願発明は、刊行物1発明、刊行物2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-28 
結審通知日 2008-02-29 
審決日 2008-03-13 
出願番号 特願2003-272356(P2003-272356)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B23C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 健児田村 嘉章  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 豊原 邦雄
加藤 昌人
発明の名称 インサート  
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