• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1176783
審判番号 不服2006-23604  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-19 
確定日 2008-04-25 
事件の表示 特願2001-322017「化粧品容器」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月 8日出願公開、特開2003-128078〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯
本願は、平成13年10月19日の出願であって、平成18年9月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年10月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成18年11月14日に手続補正がなされたものである。

2. 平成18年11月14日にした手続補正(以下「本件手続補正」という。)についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
本件手続補正を却下する。

〔理由〕
(1)補正後の本願発明
本件手続補正により、明細書の特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】収納した化粧品の使用量に応じて収容量を可変すると共に肉厚が5mm以下であり、この上縁部が容器本体との間で液密に保持される移動中底部を設けることにより空気が入らないように構成したエアレス容器方式の化粧品容器であって、該容器がプッシュポンプ方式又はトリガーポンプ方式であり、容器本体が、化粧品残量を目視するための透視窓部を有しており、該透視窓部が目印ないし目盛を有し、該目印ないし目盛が次の化粧品容器(或いは詰替用化粧品)を用意又は購入する時期の目安を知ることができる目安表示を有しており、残量に応じて低下する液面の位置で確認するのではなく、前記移動中底部の位置を前記透視窓部から目視にて確認することで、化粧品残量を確認できる構成である化粧品容器。」と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「透視窓部」について、「残量に応じて低下する液面の位置で確認するのではなく」との限定事項を付加するものであり、この限定した事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されている。しかも、補正後の請求項1に記載された発明と補正前の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではない。
したがって、上記補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本願補正発明1」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2000-289790号公報(以下「刊行物」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(a)【特許請求の範囲】
【請求項1】内部の横断面形状が軸心方向において一定である筒状部を備え、前記筒状部の前端側部分又は前端側部分に連通した部分に、外部から流動性物質を内部に導入せずに内部の流動性物質を排出し得る流動性物質排出機構を有し、前記筒状部内に、その筒状部の内周壁との間に気密状態を維持しつつ少なくとも軸心方向前方に移動し得る可動底部が筒状部と同軸状に嵌合し、その可動底部と前記流動性物質排出機構の間を収容部として流動性物質を収容し得、前記可動底部の後側が大気に通じている流動性物質用容器であって、前記可動底部は、収容部に臨む隔壁部と、前記筒状部の内周壁と気密状に接する気密外周部と、前記筒状部の内周壁と可動底部との同軸性を維持するために筒状部の内周壁に接する同軸性維持外周部と、観賞対象部を有し、前記筒状部は、外部から内部が見える可視部分に有し、前記同軸性維持外周部の後端位置は隔壁部よりも後方であり、前記観賞対象部は、隔壁部の後方で前記同軸性維持外周部の後端位置付近より前方に位置し且つ前記可視部分において外部から見えることを特徴とする流動性物質用容器。
【請求項2】可動底部の観賞対象部が透明な外周壁部により囲繞されており、その外周壁部の少なくとも一部が同軸性維持外周部である請求項1記載の流動性物質用容器。
【請求項3】可動底部の同軸性維持外周部が、観賞対象部を挟む前後の外周部によって構成されており、両外周部の間に透明な外周壁が存在する請求項2記載の流動性物質用容器。
【請求項4】可動底部の同軸性維持外周部が、観賞対象部を挟む前後の外周部によって構成されており、両外周部の間には外周壁が存在しない請求項1記載の流動性物質用容器。
(b)【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、排出ポンプ等により収容した流動性物質を排出することにより可動底部が前進する流動性物質用容器に関する。
(c)【0004】本発明は、上記のような従来技術に鑑み行われたものであって、その目的とするところは、流動性物質排出機構による流動性物質の排出に伴う可動底部の移動を外部から見て楽しむことができると共に、可動底部の軸心方向寸法を最小限とし流動性物質用容器全体のサイズを抑えつつ流動性物質の収容量を可及的に増大させることができ、排出不可能な流動性物質の発生が最小限に抑えられて有用な流動性物質が無駄になることが可及的に防がれ、且つ観賞対象部が流動性物質に悪影響を及ぼすことが回避される流動性物質用容器を提供することにある。
(d)【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発明の流動性物質用容器は、内部の横断面形状が軸心方向において一定である筒状部を備え、前記筒状部の前端側部分又は前端側部分に連通した部分に、外部から流動性物質を内部に導入せずに内部の流動性物質を排出し得る流動性物質排出機構を有し、前記筒状部内に、その筒状部の内周壁との間に気密状態を維持しつつ少なくとも軸心方向前方に移動し得る可動底部が筒状部と同軸状に嵌合し、その可動底部と前記流動性物質排出機構の間を収容部として流動性物質を収容し得、前記可動底部の後側が大気に通じている流動性物質用容器であって、前記可動底部は、収容部に臨む隔壁部と、前記筒状部の内周壁と気密状に接する気密外周部と、前記筒状部の内周壁と可動底部との同軸性を維持するために筒状部の内周壁に接する同軸性維持外周部と、観賞対象部を有し、前記筒状部は、外部から内部が見える可視部分を少なくとも一部に有し、前記同軸性維持外周部の後端位置は隔壁部よりも後方であり、前記観賞対象部は、隔壁部の後方で前記同軸性維持外周部の後端位置付近より前方に位置し且つ前記可視部分において外部から見えることを特徴とする(請求項1)。
(e)【0007】また、筒状部は、外部から内部が見える可視部分(例えば、周壁が透明性を有する部分)を少なくとも一部に有する。例えば、筒状部の全部が可視部分であってもよく、少なくとも軸心方向に連続した一定部分が可視部分であってもよい。
(f)【0008】流動性物質排出機構(例えば、手動ポンプ)は、筒状部の前端側部分又は前端側部分に連通した部分に設けられる。前端側部分というのは、前端部又は前端部寄りの部分を言う。この流動性物質排出機構は、外部から流動性物質(例えば、外気、外部の液体等)を内部に導入せずに内部の流動性物質を排出し得るものである。
(g)【0010】収容部に収容する流動性物質の例としては、水等の粘性の低い液体、比較的粘性が高い液状体(頭髪用若しくは身体用シャンプー液、)、半流動体(歯磨き用ペースト)種々の気体状物質等を挙げることができる。必ずしも有用な物質に限らない。
(h)【0013】可動底部の同軸性維持外周部の後端位置は、隔壁部よりも後方である。可動底部の同軸性維持外周部は、例えば、筒状部の内周壁と同軸性を維持し得る長さを軸心方向に隔てた両位置において、前記内周壁に全周にわたり又は周方向に間欠的に(例えば一定周方向長さおきに間欠的に)接するものとすることができる。また例えば、軸心方向の一定長さにわたる部分が同軸性維持外周部であってもよく、その場合、例えば、軸心方向の全体が全周にわたり筒状部の内周壁と接するものとすることができるほか、軸心方向の一定部分が全周にわたり筒状部の内周壁と接し、他の部分は周方向に間欠的に筒状部の内周壁と接するものとすることができる。同軸性維持外周部の全部又は一部が気密外周部と同一であってもよい。
(i)【0014】可動底部の観賞対象部は、例えば、人形、各種キャラクター、動物おもちゃ、乗り物おもちゃ等、収容部内の流動性物質が排出されるに伴い可動底部と共に筒状部内を軸心方向前方に移動するのを見て楽しむことができるような部分である。
(j)【0016】このような構成の例としては、可動底部の観賞対象部が透明な外周壁部により囲繞されており、その外周壁部の少なくとも一部が同軸性維持外周部であるものを挙げることができる(請求項2)。
(k)【0019】本発明の流動性物質用容器を構成する材料は、合成樹脂が最適である。合成樹脂等の構成材料の種類は、各部位に必要な機能に応じた弾力性、剛性、透明性等を有するものとすることができる。
(l)【0022】流動性物質排出機構は、筒状部の前端側部分又は前端側部分に連通した部分に設けられている。また可動底部は、筒状部と同軸状に嵌合し、筒状部の内周壁との間に気密状態を維持しつつ少なくとも軸心方向前方に移動し得る。流動性物質排出機構により内部の流動性物質が排出されると、外部から流動性物質が内部に導入されないので、排出量に応じて可動底部が筒状部内を軸心方向前方に移動し、可動底部における観賞対象部も共に移動する。
(m)【0023】観賞対象部の移動を見て楽しむ上では、観賞対象部を可動底部の隔壁部の前側に位置させることもできる。しかしながら、もし種々の人形やおもちゃ等の不規則な形状の観賞対象部が可動底部の隔壁部の前側に位置すると、可動底部が前進してその隔壁部が到達し得る位置よりも前方に更に排出不可能な流動性物質が存在することとなり、有用な流動性物質が無駄になるおそれがある。また、観賞対象部が流動性物質に悪影響を及ぼすことも生じ得る。
(n)【0024】本発明の観賞対象部は、隔壁部の後方で前記同軸性維持外周部の後端位置付近より前方に位置するので、可動底部の軸心方向寸法を最小限とし流動性物質用容器全体のサイズを抑えつつ流動性物質の収容量を可及的に増大させることができる。また、観賞対象部が種々の人形やおもちゃ等の不規則な形状であっても、隔壁部が十分に前方に達することが妨げられず、排出不可能な流動性物質の発生が最小限に抑えられ、有用な流動性物質が無駄になることが可及的に防がれる。観賞対象部が流動性物質に悪影響を及ぼすことも回避される。而も、隔壁部の後方で前記同軸性維持外周部の後端位置付近より前方に位置するものでありながら外部から見えるので、流動性物質の排出に伴う鑑賞対象部の軸心方向前方への移動を見て楽しむことができる。
(o)【0027】このシャンプー容器10は、内部の横断面形状が軸心方向において一定である透明合成樹脂製の円筒体12(全体が筒状部)の上端部に、外気を内部に導入せずに内部のシャンプー液14(透明で比較的粘性の高い液状体)を排出し得る手動の排出ポンプ16が設けられ、円筒体12の下端部は上下貫通の通気孔18aを備えた着脱可能な下端キャップ18により閉塞され、その下端キャップ18の上側に、円筒体12の内周面との間に気密状態を維持しつつ軸心方向に移動し得る可動底部20が円筒体12の内周面と同軸状に嵌合している。その可動底部20と排出ポンプ16の間の収容部22には前記シャンプー液14が収容されており、可動底部20の下側は、下端キャップ18に設けられた通気孔18aを介して大気に通じている。
(p)【0028】可動底部20は、円筒状の外周壁部20aの上端部に円盤状の隔壁部20bを有する比較的軟質の透明合成樹脂製の有底円筒状体の内部に動物キャラクター20c(観賞対象部)が設けられてなる。すなわち、外周壁部20aの内方に動物キャラクター20cが位置し、その動物キャラクター20cの上端部が隔壁部20bの下側に連結している。外周壁部20aの上端外周部20d及び下端外周部20e(何れも気密外周部であり且つ同軸性維持外周部)は、径方向外方に向かって断面先細状に形成され、それぞれ円筒体12の内周面と気密状に接している。外周壁部20aのうち上端外周部20dと下端外周部20eの間の外径は、円筒体12の内径よりも小径に形成されている。
(q)【0029】排出ポンプ16の上端部を下向きに押し込むことにより排出ポンプ16の上端部から側方に内部のシャンプー液14が排出されると、排出ポンプ16においては外気が内部に導入されないので、シャンプー液14の排出量に応じて可動底部20が円筒体12内を上方に移動し、可動底部20における動物キャラクター20cも共に移動する。円筒体12並びに可動底部20の隔壁部20b及び外周壁部20aは透明であるから、外部から動物キャラクター20cが見える。
(r)【0030】この動物キャラクター20cは、可動底部20における隔壁部20bの下側で外周壁部20aの下端外周部20e付近より上方に位置するので、可動底部20の軸心方向寸法を最小限としシャンプー容器10全体のサイズを抑えつつシャンプー液14の収容量を可及的に増大させることができる。また、動物キャラクター20cが不規則な形状であるにもかかわらず、隔壁部20bが十分に上方に達することが妨げられず、排出不可能なシャンプー液14の量が最小限に抑えられ、シャンプー液14が無駄になることが可及的に防がれる。動物キャラクター20cがシャンプー液14に悪影響を及ぼすことも回避される。而も、隔壁部20bの下方で外周壁部20aの下端外周部20e付近より上方に位置するものでありながら外部から見えるので、シャンプー液14の排出に伴う動物キャラクター20cの上方への移動を見て楽しむことができる。
(s)【0036】
【発明の効果】本発明の流動性物質用容器においては、流動性物質排出機構による流動性物質の排出に伴い鑑賞対象部が軸心方向前方に移動するのを筒状部の可視部分において外部から見て楽しむことができる。従って、例えば頭髪用若しくは身体用シャンプー液や歯磨き用ペーストの容器として使用し、シャンプー液や歯磨き用ペーストの排出に伴い鑑賞対象部が移動するのを楽しませることにより、入浴、洗髪、歯磨き等を嫌う子供等をそれらに誘うことができる。また、可動底部の軸心方向寸法を最小限とし流動性物質用容器全体のサイズを抑えつつ流動性物質の収容量を可及的に増大させることができ、観賞対象部が種々の人形やおもちゃ等の不規則な形状であっても排出不可能な流動性物質の発生が最小限に抑えられて有用な流動性物質が無駄になることが可及的に防がれると共に、観賞対象部が流動性物質に悪影響を及ぼすことも回避される。

以上の記載、及び第1,2図の記載から、刊行物には次の発明が記載されているものと認められる。
「収納した流動性物質の使用量に応じて収容量を可変すると共に、上縁部が筒状部との間で液密に保持される可動底部を設けることにより空気が入らないように構成したの流動性物質用容器であって、該容器が手動ポンプ方式であり、筒状部が、可視部分を有しており、前記可動底部の位置を前記可視部分から目視にて確認する構成である流動性物質用容器。」

(3)対比
本願補正発明1と刊行物に記載の発明とを対比すると、刊行物に記載の発明の「筒状部」及び「可動底部」は、それぞれ本願補正発明1の「容器本体」及び「移動中底部」に相当する。
また、刊行物に記載の流動性物質用容器は、刊行物の摘示事項(a)に「・・・筒状部内に、その筒状部の内周壁との間に気密状態を維持しつつ少なくとも軸心方向前方に移動し得る可動底部が筒状部と同軸状に嵌合し、・・・筒状部の内周壁と気密状に接する気密外周部と、・・・」とされていることから、可動底部と筒状部によって形成された空間は空気が侵入しない密封状態であり、密封状態とはエアレス状態に相当する。したがって、刊行物に記載の流動性物質用容器の形式は、本願補正発明1のエアレス容器方式に一致するものである。
また、プッシュポンプ方式又はトリガーポンプ方式は、一般に、手動で行われることが技術常識であるから、本願補正発明1のプッシュポンプ方式又はトリガーポンプ方式とは、刊行物に記載の発明の手動ポンプ方式に相当する。
また、刊行物の摘示事項(e)には、「また、筒状部は、外部から内部が見える可視部分(例えば、周壁が透明性を有する部分)を少なくとも一部に有する。例えば、・・・少なくとも軸心方向に連続した一定部分が可視部分であってもよい。」とされているように可視部分の形状が軸心方向に連続した一定部分であることを開示しており、該軸心方向に連続した一定部分とは、その形状が部分的な窓部であることに相当することは明らかである。
さらに、刊行物に記載の発明の流動性物質は、刊行物の摘示事項(g)から、水等の粘性の低い液体、比較的粘性が高い液状体(頭髪用若しくは身体用シャンプー液、)、半流動体(歯磨き用ペースト)種々の気体状物質等を指すものであり、その流動性物質が化粧品を包含することは定かでないが、本願補正発明1の化粧品も流動性を有する点では共通するから、結局のところ、両者は上位概念の充填物質が流動性物質である限りにおいて一致している。
以上のとおりであるから、両者は、
「収納した流動性物質の使用量に応じて収容量を可変すると共に、この上縁部が容器本体との間で液密に保持される移動中底部を設けることにより空気が入らないように構成したエアレス容器方式の流動性物質容器であって、該容器がプッシュポンプ方式又はトリガーポンプ方式であり、容器本体が透視窓部を有している流動性物質容器。」
である点で一致し、以下の3点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明1の容器本体の肉厚が5mm以下であるのに対し、刊行物に記載の発明の容器本体の肉厚は特定されていない点。

[相違点2]
本願補正発明1は、透視窓部が目印ないし目盛を有し、該目印ないし目盛が次の化粧品容器(或いは詰替用化粧品)を用意又は購入する時期の目安を知ることができる目安表示を有しており、残量に応じて低下する液面の位置で確認するのではなく、移動中底部の位置を該透視窓部から目視にて確認することで、化粧品残量を確認できる構成であるのに対し、刊行物に記載の発明の可視部分は、目印ないし目盛を有しておらず、残量を確認できる構成を有しているか否か明確ではない点。

[相違点3]
本願補正発明1の流動性物質は化粧品であるのに対し、刊行物に記載の発明は流動性物質であるが、該流動性物質は、水等の粘性の低い液体、比較的粘性が高い液状体(頭髪用若しくは身体用シャンプー液、)、半流動体(歯磨き用ペースト)種々の気体状物質等を指すものであり、化粧品を包含することは定かでない点。

(4)当審の判断
上記相違点1?3について検討する。
[相違点1について]
流動性物質を充填する容器において、容器本体の肉厚を、所望の強度、耐久性を確保した上で可能な限り薄肉に設定することは通常から設計的に行われていることであり、刊行物1に記載の容器本体においても、容器本体の肉厚は相応の厚さとされていることは技術的に明らかである。また、当該肉厚の設定値を5mm以下とする点は、格別特異な厚さとも解されず、しかもそれにより臨界的意義が奏されるものとも認められない。
したがって、上記相違点1に係る本願補正発明1の構成は当業者の設計事項と解するのが相当であり、当業者であれば容易に想到し得ることである。

[相違点2について]
刊行物の摘示事項(n)には、「流動性物質の排出に伴う・・・への移動を見て楽しむ」と記載されていることから、刊行物に記載の発明においても可動底部の移動が流動性物質の排出に伴う残量に応じたものであることが示唆されているといえる。
一方、流動性物質用容器の分野において、容器本体に部分的に設ける可視部分、すなわち、本願補正発明1のような透視窓部を設けることの一般的技術課題ないし機能とは、例えば、実願平2-130485号(実開平4-86739号)のマイクロフィルム、実願昭60-114348号(実開昭62-22930号)のマイクロフィルムの周知技術にみられるように、内容物の残量を目視するためであり、該透視窓部から目視にて確認することで、内容物の残量を確認することである。
したがって、当該技術分野における透視窓部の一般的技術課題ないし機能に照らせば、刊行物1に記載の発明の部分的に設けられた可視部分に、内容物の残量を確認させる機能を見いだすことは当業者であれば容易に想到し得ることである。
さらに、上記実願平2-130485号(実開平4-86739号)のマイクロフィルムには、第8頁3行?4行に「窓部8に目盛を印刷しても良い」と記載されており、同じく、上記実願昭60-114348号(実開昭62-22930号)のマイクロフィルムには、目盛りが記載されており、透視窓部に目印ないし目盛を設けることも周知の技術事項にすぎない。
そうすると、刊行物1に記載の発明において、容器本体に部分的に設けた可視部分に、目印ないし目盛を付加して、該可視部分から目視にて確認することで、内容物の残量を確認できるように構成することは、当該技術分野における周知の技術事項から当業者であれば容易に想到し得ることである。
また、本願補正発明1の目印ないし目盛が次の化粧品容器を用意又は購入する時期の目安を知ることができる目安表示である点について、本願補正発明1では、次の化粧品容器を用意又は購入する時期の目安を知るために、当該目印ないし目盛について、格別の工夫が施されているものではなく、単に、目印ないし目盛から、ユーザーが購入時期を自身で判断しているだけである。
したがって、請求項1の記載では、目印ないし目盛が次の化粧品容器を用意又は購入する時期の目安を知ることができる目安表示であるとしても、当該目安表示の特定事項に関して、特別の技術的創作があるものでもなく、周知の目印ないし目盛の技術手段と、なんら相違するものではない。
以上のとおりであるから、上記相違点2に係る本願補正発明1の構成は、刊行物に記載の発明に周知の技術事項を単に適用したものであって、その機能等は周知技術の域を出るものではない。

[相違点3について]
容器に充填する流動性物質について、当該流動性物質に化粧品を選択することに格別の技術的意義は認められない。したがって、上記相違点3は当業者が設計上適宜採用し得る単なる選択事項と解するのが相当であり、通常の創作能力から容易になし得る程度の事項である。

そして、本願補正発明1の効果も刊行物に記載の発明及び周知の技術事項から当業者が容易に予測し得たものであり、格別顕著なものとはいえない。

以上のとおりであるから、本願補正発明1は、上記刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
したがって、本件手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3. 本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、本件手続補正は却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1は、次のとおり記載されている。
「【請求項1】収納した化粧品の使用量に応じて収容量を可変すると共に肉厚が5mm以下であり、この上縁部が容器本体との間で液密に保持される移動中底部を設けることにより空気が入らないように構成したエアレス容器方式の化粧品容器であって、該容器がプッシュポンプ方式又はトリガーポンプ方式であり、容器本体が、化粧品残量を目視するための透視窓部を有しており、該透視窓部が目印ないし目盛を有し、該目印ないし目盛が次の化粧品容器(或いは詰替用化粧品)を用意又は購入する時期の目安を知ることができる目安表示を有しており、前記移動中底部の位置を前記透視窓部から目視にて確認することで、化粧品残量を確認できる構成である化粧品容器。」(以下請求項1に係る発明を、「本願発明」という。)

(2)刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、刊行物及び記載事項は、上記2(2)に記載したとおりである。

(3)対比 ・判断
本願発明は、本願補正発明1から、透視窓部についての「残量に応じて低下する液面の位置で確認するのではなく」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含むものに相当する本願補正発明1が、上記2(4)に記載したとおり、刊行物及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-04 
結審通知日 2008-02-12 
審決日 2008-03-04 
出願番号 特願2001-322017(P2001-322017)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
P 1 8・ 575- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳田 利夫  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 田中 玲子
関口 勇
発明の名称 化粧品容器  
代理人 坂口 信昭  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ