ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G04G 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G04G |
---|---|
管理番号 | 1176814 |
審判番号 | 不服2006-20047 |
総通号数 | 102 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-08-14 |
確定日 | 2008-04-24 |
事件の表示 | 平成11年特許願第503619号「投影時計」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月23日国際公開、WO98/58298、平成14年 2月19日国内公表、特表2002-505746〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、1997年6月18日を国際出願日とする出願であって、平成18年5月10日付け(発送日:同年5月16日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月14日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年9月12日付けで明細書又は図面についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 2.補正の適否についての検討 本件補正は、特許請求の範囲について、補正前の 「1.時計(1)が表示(11)を有する外箱(9)と投影装置(2)を含み、前記投影装置(2)は時計(1)の外箱(9)へ動けるように結合されており、かつ光源(4)、液晶表示(5)とレンズ(3)を含み、該投影装置(2)は透過光原理に基づいており、この装置では光源(4)、投影される液晶表示(5)およびレンズ(3)が現実の映像の投影を可能にする光線に沿って順次配列され、液晶表示(5)を滑らかな表面へ投影する装置を備える時計(1)において、 A)前記時計(1)の表示(11)が、選択的に24時間表示または12時間表示を示し、 B)超高輝度発光ダイオードを光源(4)として用いることを特徴とする時計。 2.前記レンズ(3)が、ぎざぎざのついた回転ノブ(8)により軸方向に移動可能であり、そしてそれにより焦点合わせができることを特徴とする請求項1に記載の時計。 3.前記時計(1)が、電波時計として構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の時計。 4.前記時計(1)が、DCF-77信号に基づいて時が合わされることを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の時計。 5.前記時計(1)が、UM3または「AA」の大きさの2つの電池(12)を備えていることを特徴とする請求項1?4のいずれか一項に記載の時計。 6.前記時計(1)が、音響信号である警報信号(10)を提供することを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載の時計。 7.前記レンズ(3)が、焦点合わせができることを特徴とする請求項1?6のいずれか一項に記載の時計。 8.前記レンズ(3)が、球状であることを特徴とする請求項1?7のいずれか一項に記載の時計。 9.交流電源装置(13)が時計(1)および投影装置(2)へ接続可能であることを特徴とする請求項1?8のいずれか一項に記載の時計。 10.前記交流電源装置(13)が直流3ボルト低電圧側を備えたものであることを特徴とする請求項9に記載の時計。 11.前記投影装置(2)が時計(1)の外箱(9)に関し、時計(1)と投影装置(2)を結合する回転軸(17)の回りに回転することにより、回転できることを特徴とする請求項1?10のいずれか一項に記載の時計。」を、補正後の 「【請求項1】 時計(1)が表示(11)を有する外箱(9)と投影装置(2)を含み、前記投影装置(2)は時計(1)の外箱(9)へ動けるように結合されており、かつ光源(4)、液晶表示(5)とレンズ(3)を含み、該投影装置(2)は透過光原理に基づいており、この装置では光源(4)、投影される液晶表示(5)およびレンズ(3)が現実の映像の投影を可能にする光線に沿って順次配列され、液晶表示(5)を滑らかな表面へ投影する装置を備える時計(1)において、 A)前記時計(1)の表示(11)が、選択的に24時間表示または12時間表示を示し、 B)前記投影装置(2)が時計(1)の外箱(9)に関し、時計(1)と投影装置(2)を結合する回転軸(17)の回りに回転することにより回転でき、C)超高輝度発光ダイオードを光源(4)として用いることを特徴とする時計。 【請求項2】前記レンズ(3)が、ぎざぎざのついた回転ノブ(8)により軸方向に移動可能であり、そしてそれにより焦点合わせができることを特徴とする請求項1に記載の時計。 【請求項3】前記時計(1)が、電波時計として構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の時計。 【請求項4】前記時計(1)が、DCF-77信号に基づいて時が合わされることを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の時計。 【請求項5】前記時計(1)が、UM3または「AA」の大きさの2つの電池(12)を備えていることを特徴とする請求項1?4のいずれか一項に記載の時計。 【請求項6】前記時計(1)が、音響信号である警報信号(10)を提供することを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載の時計。 【請求項7】前記レンズ(3)が、焦点合わせができることを特徴とする請求項1?6のいずれか一項に記載の時計。 【請求項8】前記レンズ(3)が、球状であることを特徴とする請求項1?7のいずれか一項に記載の時計。 【請求項9】交流電源装置(13)が時計(1)および投影装置(2)へ接続可能であることを特徴とする請求項1?8のいずれか一項に記載の時計。 【請求項10】前記交流電源装置(13)が直流3ボルト低電圧側を備えたものであることを特徴とする請求項9に記載の時計。」 に補正するものである。 そこで、補正後の請求項1をみるとその記載内容は補正前の請求項1の記載内容に、補正前の請求項11の記載内容を加えたものとなっている。 そして、補正前の請求項11は補正前の請求項1を引用しているから、結局、補正後の請求項1は補正前の請求項1を引用した請求項11に外ならない。 してみると、特許請求の範囲についてした本件補正は請求項の削除を目的としたものといえる。 また、新規事項を追加するものでもないことも明らかである。 したがって、本件補正は平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号の規定に該当するものである。 3.本願発明 本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成18年9月12日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのいわゆる「投影時計」と認められるところ、その請求項1に係る発明は、以下の通りである。 「時計(1)が表示(11)を有する外箱(9)と投影装置(2)を含み、前記投影装置(2)は時計(1)の外箱(9)へ動けるように結合されており、かつ光源(4)、液晶表示(5)とレンズ(3)を含み、該投影装置(2)は透過光原理に基づいており、この装置では光源(4)、投影される液晶表示(5)およびレンズ(3)が現実の映像の投影を可能にする光線に沿って順次配列され、液晶表示(5)を滑らかな表面へ投影する装置を備える時計(1)において、 A)前記時計(1)の表示(11)が、選択的に24時間表示または12時間表示を示し、 B)前記投影装置(2)が時計(1)の外箱(9)に関し、時計(1)と投影装置(2)を結合する回転軸(17)の回りに回転することにより回転でき、C)超高輝度発光ダイオードを光源(4)として用いることを特徴とする時計。」(以下、「本願発明」という。) 4.引用例記載の発明・事項 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願平2-27795号(実開平3-117795号公報)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 (a)「本考案は、デジタル式置時計、特に透過形の液晶表示器を用いて、室内の天井等の投影面に時刻情報を投影して利用者に時刻を知らせる置時計の改良に関する。」(1頁下から4行?末行) (b)「ところで、この種の置時計においては、その光源で消費される電力が、非常に多いことが難点である。また、光源の耐用時間が比較的短く、使用中に光源部分が他の部分に先駆けて故障することが多く、保守が必要となることも問題となっていた。」(3頁11行?16行) (c)「置時計(1)は、その本体(2)内部に、電気的に計時やアラーム動作等を行う計時回路(11)、計時結果を表示する液晶表示器を駆動するための液晶駆動回路(12)、これらの回路に電力を供給する電源回路(13)等の電気回路及び液晶表示器(5)とこれを照射する光源(6)及び平行光線を作り出すためのレンズ(7)等を収納している。 また、電源回路(13)と前記光源(6)の間には、後で詳述する手動スイッチSW(14)及び光スイッチ(15)が介在接続されている。 なお、前記光源には、小形の白熱電球等が使用される。また、電源回路には、電池を利用することも可能であるが、消費電力が多い装置であるので商用電源が多く用いられる。 本体表面上には、液晶表示器(3)、時刻合わせ等の計時回路(11)の設定を行うための操作部(4)、液晶表示器(5)の表示内容を外部に投射する光線(10)を透過させるための開孔(8)が設けられている。前記開孔(8)には平行な光線(10)に焦点を結ばせ光路を調整するためのレンズ(9)がはめ込まれている。」(6頁2行?7頁2行) (d)「第3図は、このような置時計(1)の表示投影部(20)(投影関連部分)を説明する図である。本体(2)の上面に、設けられた開孔(8)には筒状体(15)が嵌合固定されており、この筒状体(15)の底部に光源(1)が配設されている。筒状体(15)の上方には、順にレンズ(7)、液晶表示器(5)レンズ(8)が配設されている。前記光源(1)より発せられた光は、レンズ(7)により平行光線となり、液晶表示器(5)を透過する。このとき液晶表示器(5)に表示されているパターンが平行光線を部分的に遮る。液晶表示器(5)を透過した平行光線は、レンズ(9)で収束され焦点(F)を通過した後拡散してゆき置時計(1)上面に対向する天井(16)に照射される。このとき液晶表示器(5)で遮られた部分に対応する天井(16)の部位には光線が達しないので暗部となり、時刻を表示するパターンが天井(16)に投影されることになる。」(7頁3行?19行) ここで、表示投影部(20)についてみると、筒状体(15)内において下から順に光源(6)、液晶表示器(5)、レンズ(9)が光源(6)からの光線を透過するように配設されており、これにより天井に時刻を表示するものであるから、該表示投影部(20)は透過光原理に基づいているものである。 この点を踏まえ、上記記載(a)、(c)、(d)及び第2図、第3図を総合勘案すると、引用例は投影時計に関し、次の発明が記載されていると認められる。 「デジタル式置時計(1)が液晶表示器(3)を有する本体(2)と本体(2)内に設けられた表示投影部(20)を含み、該表示投影部(20)は小形の白熱電球からなる光源(6)、液晶表示器(5)とレンズ(9)を含み、該表示投影部(20)は透過光原理に基づいており、光源(6)、投影される液晶表示器(5)およびレンズ(9)が筒状体(15)内に、現実の映像の投影を可能にする光線に沿って順次配列され、液晶表示を天井に投影する表示投影部(20)を備えるデジタル式置時計(1)。」(以下、「引用例記載の発明」という。) 5.対比 本願発明と引用例記載の発明とを対比する。 引用例記載の発明における、 「デジタル式置時計(1)」、「液晶表示器(3)」、「本体(2)」、「表示投影部(20)」、「液晶表示器(5)」は、 本願発明における、 「時計(1)」、「表示(11)」、「外箱(9)」、「投影装置(2)」、「液晶表示(5)」にそれぞれ相当する。 また、引用例記載の発明における液晶表示が投影される「天井」は、投影された時刻などの液晶表示が読み取れる程度に滑らかな表面となっているといえる。 してみると、両者は (一致点) 「時計が表示を有する外箱と投影装置を含み、前記投影装置は光源、液晶表示とレンズを含み、該投影装置は透過光原理に基づいており、この装置では光源、投影される液晶表示およびレンズが現実の映像の投影を可能にする光線に沿って順次配列され、液晶表示を滑らかな表面へ投影する装置を備える時計。」 で一致し、以下の点で相違している。 (相違点) 相違点1:表示に関して、 本願発明では、使用者の便宜のために24時間表示と12時間表示とを選択的に表示するとしているのに対し、引用例記載の発明では、その点が明らかでない点。 相違点2:投影装置に関して 本願発明では、投影装置が時計の外箱に関し、時計と投影装置を結合する回転軸の回りに回転できるように外箱に結合されているのに対し、引用例記載の発明では、本体(外箱)内に固定配置されている点。 相違点3:光源に関して、 本願発明では、光源として超高輝度発光ダイオードを用いるとしているのに対し、引用例記載の発明では、光源として小形の白熱電球を用いている点。 6.当審の判断 上記相違点について検討する。 相違点1について、 デジタル式時計において、24時間表示と12時間表示とを選択的に表示することは周知な技術である(例えば原審で引用された実願昭56-8528号(実開昭57-122594号公報)のマイクロフィルム(特に第2図及びこれに関する考案の詳細な説明の箇所参照のこと)、または原審で引用された特開昭55-26482号公報(特に第2図及びこれに関する発明の詳細な説明の箇所参照のこと))。 したがって、時刻等の表示に関し、デジタル式時計である引用例記載の発明に当該周知技術を適用し、本願発明のように24時間表示と12時間表示とを選択的に表示することは、当業者ならば容易に想到し得たことである。 相違点2について、 一般に、投影範囲を拡大するために、光源、液晶表示及びレンズを備えた投影装置が該投影装置と本体とを結合する回転軸回りに回転できるように本体に結合することは周知な技術である(例えば原審で引用された特開平7-294788号公報(特に、本体フレーム1及び本体キャビネット2に対し、光源12、液晶表示装置15及び投影レンズ16を備えた回転側フレーム4及び回転側キャビネット5が回転軸7回りに回転可能とされている点を参照のこと、または原審で引用された、投影時計に関する欧州特許出願公開第0036946号明細書(1981年10月7日発行)(特に、Fig.3及びこれに関する説明の箇所に示された、Uhrengehaeuse(筐体)1に対し Lichtquelle(光源)3、Fluessigkeits-Kristall-Display(小型液晶デイスプレイ)5及び Projectionslinse(投影レンズ)8を備えた schwenkbaren Projektionsrohres(回転式投影管)6が Ansatz(連結部)9によりGehaeuseoeffnung(筐体開口部)10で回転可能とされている点を参照のこと)。 したがって、投影装置に関し、引用例記載の発明において投影範囲を拡大するために、当該周知技術を適用し、本願発明のように、投影装置(2)が時計(1)の外箱(9)に関し、時計(1)と投影装置(2)を結合する回転軸(17)の回りに回転できるように外箱(9)に結合する構成とすることは、当業者ならば容易に想到し得たことである。 相違点3について、 この種の投影時計において、消費電力の低減のために光源として高輝度発光ダイオードを用いることは周知な技術事項である(例えば、原審で引用された特開昭63-266311号公報(高輝度発光ダイオードを使用した光源2を参照のこと)、または原審で引用された実願昭62-174660号(実開平1-79086号公報)のマイクロフィルム(発光ダイオードを使用した発光素子5を参照のこと))。 引用例の投影時計も、光源の消費電力を低減することを意図しているものである(上記記載(b)を参照のこと)から、引用例記載の発明における光源である小形の白熱電球に代えて、投影時計の光源として周知な高輝度発光ダイオードを用いることは当業者ならば容易に想到し得たことである。 そして、本願発明の作用効果は、引用例記載の発明から当業者が予測可能なものであって、格別なものではない。 7.むすび したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 以上のとおりであるから、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-11-07 |
結審通知日 | 2007-11-20 |
審決日 | 2007-12-05 |
出願番号 | 特願平11-503619 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G04G)
P 1 8・ 571- Z (G04G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤田 憲二 |
特許庁審判長 |
飯野 茂 |
特許庁審判官 |
中村 直行 山下 雅人 |
発明の名称 | 投影時計 |
代理人 | 伊東 哲也 |