ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08L 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C08L 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08L |
---|---|
管理番号 | 1176896 |
審判番号 | 不服2005-22428 |
総通号数 | 102 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-11-21 |
確定日 | 2008-04-14 |
事件の表示 | 平成10年特許願第513614号「ポリアミド樹脂組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 3月19日国際公開、WO98/11164、平成13年 1月 9日国内公表、特表2001-500186〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成9年3月6日(優先権主張、平成8年9月10日、平成8年9月11日、米国)を国際出願日とする特許出願であって、平成11年3月10日に特許法第184条の8第1項の規定に基づく補正書の翻訳文が提出され、平成16年11月8日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内の平成17年5月12日に意見書とともに手続補正書が提出され、平成17年8月12日付けで拒絶査定がなされ、平成17年11月21日に拒絶査定不服の審判が請求され、審判請求の日から30日以内である平成17年12月21日に手続補正書が提出され、平成18年1月31日に審判請求書の手続補正書が提出され、平成18年3月28日付けで前置報告がなされ、平成19年5月2日付けで審尋がなされ、それに対して平成19年8月10日に回答書が提出されたものである。 第2.平成17年12月21日付け手続補正について 平成17年12月21日付け手続補正(以下、「本件手続補正」という。)について、以下のとおり決定する。 1.補正却下の決定の結論 平成17年12月21日付け手続補正を却下する。 2.理由 2-1.補正の内容 本件手続補正は、その直前の補正である平成17年5月12日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?4における「式(II)の長鎖のアルキルポリエステル」を、それぞれ、「式(II)の長鎖のアルキルポリエステル(但し、炭素数36のジカルボン酸と炭素数6のジオールとのポリエステルを除く)」と補正するものである。 2-2.補正の目的について 本件手続補正は、審判の請求の日から30日以内にされた補正であるから、特許法第17条の2の第4項の第1号?第4号のいずれかに掲げる事項を目的にするものに限られる。そのうち、第2号は、「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項(以下、「特定必要事項」という。)を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る)」(以下「限定的減縮」という。)である。 そこで、本件手続補正の補正の目的について以下検討する。 この補正は、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内において、式(II)の長鎖のアルキルポリエステルを限定するものであり、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものと認められる。 2-3.独立特許要件について 上記のとおり、本件手続補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるから、本件手続補正により補正された明細書(以下、「補正明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明(以下、「補正発明1」?「補正発明3」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。 2-3-1.補正発明について 補正発明1は、補正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「【請求項1】(a)ポリアミド含有化合物を99.9ないし30重量%と、 (b)式(I)を有する低分子量のポリ(エチレングリコール)のエステル、または式(II)の長鎖のアルキルポリエステル(但し、炭素数36のジカルボン酸と炭素数6のジオールとのポリエステルを除く)からなる群から選ばれた可塑化化合物を0.1ないし20重量%と、 (I) R-COO-(CH_(2)CH_(2)O)_(n)-OC-R 上式で、Rは1から40の炭素原子(但し、炭素数12以上の炭素原子を除く)を有する分岐または直鎖のアルキル基、nは2から20、 (II) HOOC-R-CO-(O-R’-O-CO-R-CO)_(n)-O-R’-OH 上式で、Rは炭素原子が16から45のアルキル基でR’は炭素原子が2から6のアルキル基、またはRは炭素原子が2から6のアルキル基でR’は炭素原子が16から45のアルキル基、nは2から50、 (c)1つ以上の添加剤化合物から選ばれる組成物の100%までの残りとを含むことを特徴とする改良されたポリアミド樹脂組成物。」 2-3-2.特許法第29条第1項第3号違反について (1)引用文献およびその記載事項 原査定の拒絶理由に引用された引用文献2(特公昭44-26555号公報)には以下の事項が記載されている。 ア.「このアルキレングリコールはエチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはエチレンオキシド-プロピレンオキシド混合重合生成物が適当であり、その分子量は650以上のものである。」(第1頁第2欄23?26行) イ.「本発明のポリアミド組成物はこの化合物のみを含有する必要はなく、若干の不純物の存在、紫外線吸収剤、つや消し剤、顔料およびそれらの類似物質と併用してもなんら本発明の帯電防止剤の性能に実質的に影響を与えるものではない。」(第2頁第3欄5?9行) ウ.「本発明に使用されるポリアミドはナイロン6、66、8、10、および6、10等の通常のポリアミド、・・・等の分子中にアミド結合を有するすべてのポリアミドである。」(第2頁第3欄10?15行) エ.「実施例2 1モルのポリエチレングリコール(分子量600)に2モルのステアリン酸を反応させて、主としてポリエチレングリコールジステアレートの構造を有する帯電防止化合物を得た。 次に重量比で固有粘度2.45のポリアミド重合体チップ100部に対してこの帯電防止化合物1.5部を加え、ブレンダーを用いて均一に混合した後、この混合物を押出機を用いて常法にしたがつて紡糸した(ダイ温度は290℃)。ついで、これを・・・タフタ(A)にする。」(第3頁第5欄24?36行) オ.「実施例4 実施例2と同様な方法で表4の各種の化合物を添加して得たタフタを不飽和長鎖アルコール硫酸エステルナトリウム0.5%水溶液中で60℃、2時間、連続電気洗濯機で洗濯した結果、表4に示す結果が得られた。 」(第3頁第6欄39行?第4頁表4) カ.「1 ポリアミドとポリアルキレングリコールの両末端基が共に炭素数12以上のアシル基で封鎖されると共にその分子量が少なくとも650である化合物の少なくとも0.5(重量)%とよりなるポリアミド組成物。」(特許請求の範囲) (2)対比・判断 引用文献2には、「ポリアミドとポリアルキレングリコールの両末端基が共に炭素数12以上のアシル基で封鎖されると共にその分子量が少なくとも650である化合物の少なくとも0.5(重量)%とよりなるポリアミド組成物。」(摘示事項カ)が記載されており、そのポリアミドは「アミド結合を有するすべてのポリアミドである」(摘示事項ウ)こと、及びアルキレングリコールはエチレンオキシドであること(摘示事項ア、エ、オ)が記載されている。 そして実施例4には、「ポリアミドとポリアルキレングリコールの両末端基が共に炭素数12以上のアシル基で封鎖されると共にその分子量が少なくとも650である化合物」としてポリオキシエチレンラウリン酸ジエステル(エチレンオキサイド10モル付加物)が記載されている(摘示事項オ)。 また、その添加量はポリアミド重合体チップ100部に対して1.5部である(摘示事項エ、オ)。なお、ここで部は、特許請求の範囲において重量%が用いられている(摘示事項カ)ことからみて重量部と解するのが相当である。 したがって、引用文献2には「ポリアミド化合物100重量部とポリオキシエチレンラウリン酸ジエステル(エチレンオキサイド10モル付加物)1.5重量部とよりなるポリアミド組成物」(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。 そこで、補正発明1と引用発明2とを対比する。 引用発明2のポリオキシエチレンラウリン酸ジエステル(エチレンオキサイド10モル付加物)は CH_(3)(CH_(2))_(10)-COO-(CH_(2)CH_(2)O)_(10)-OC-(CH_(2))_(10)CH_(3)で表される化合物であり、これは補正発明1の式(I)において、Rが11のアルキル基、nが10の化合物に相当する。 そうであるから、両者は、 「(a)ポリアミド含有化合物を99.9ないし30重量%と、 (b)式(I)を有する低分子量のポリ(エチレングリコール)のエステル0.1ないし20重量%と、 (I) R-COO-(CH_(2)CH_(2)O)_(n)-OC-R 上式で、Rは1から40の炭素原子(但し、炭素数12以上の炭素原子を除く)を有する分岐または直鎖のアルキル基、nは2から20、 とを含むことを特徴とする改良されたポリアミド樹脂組成物。」の点で一致し、次の相違点で一応相違する。 【相違点1】 補正発明1は、「(c)1つ以上の添加剤化合物」を含有するのに対し、引用発明2では、かかる限定がない点。 【相違点2】 補正発明1は、(a)、(b)、(c)配合量がそれぞれ、99.9ないし30重量%、0.1ないし20重量%、組成物の100%までの残りであるのに対し、引用発明2では、(a)100重量部、(b)1.5重量部である点。 そこで、相違点1及び2について検討する。 【相違点1について】 引用文献2には、「本発明のポリアミド組成物はこの化合物のみを含有する必要はなく、若干の不純物の存在、紫外線吸収剤、つや消し剤、顔料およびそれらの類似物質と併用してもなんら本発明の帯電防止剤の性能に実質的に影響を与えるものではない。」(摘示事項イ)と記載されており、この紫外線吸収剤、つや消し剤、顔料は、添加剤化合物であって、補正発明1の(c)1つ以上の添加剤化合物に相当することは明らかである。 したがって、相違点1は実質的な相違点とはいえない。 【相違点2について】 補正発明1において、(c)の配合量は、最小は(a)99.9重量%、(b)0.1重量%の場合で0、最大は(a)30重量%、(b)0.1重量%の場合で69.9重量%である。そうすると、(c)の配合量は0?69.9重量%と解される。 一方、引用発明2では(a)100重量部、(b)1.5重量部であるから、これを重量%に換算すると、(a)98.5重量%、1.5重量%となり、これに少量の添加剤が配合されたとしてもその重量%はわずかに減少するのみであるから、(a)、(b)、(c)の配合量は補正発明1と重複一致することは明らかである。 したがって、相違点2も実質的な相違点とはいえない。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、補正発明1は、引用文献2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 2-3-3.特許法第36条第6項第2号違反について 補正明細書の請求項2及び3には、可塑化化合物について「有効量組み込む」あるいは「有効量含む」と記載されているが、「有効量」というのがどの程度の量であるのかは明確に把握できないものであり、当該請求項2及び3の記載は、特許を受けようとする発明が明確でない。 よって、本件手続補正後の本願出願は特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものである。 2-3-4.まとめ したがって、補正発明1?3は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 2-4.むすび 以上のとおりであるから、本件手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本件審判請求について 1.本願発明 上記のとおり、平成17年12月21日付けの手続補正は却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成17年5月12日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「【請求項1】(a)ポリアミド含有化合物を99.9ないし30重量%と、 (b)式(I)を有する低分子量のポリ(エチレングリコール)のエステル、または式(II)の長鎖のアルキルポリエステルからなる群から選ばれた可塑化化合物を0.1ないし20重量%と、 (I) R-COO-(CH_(2)CH_(2)O)_(n)-OC-R 上式で、Rは1から40の炭素原子(但し、炭素数12以上の炭素原子を除く)を有する分岐または直鎖のアルキル基、nは2から20、 (II) HOOC-R-CO-(O-R’-O-CO-R-CO)_(n)-O-R’-OH 上式で、Rは炭素原子が16から45のアルキル基でR’は炭素原子が2から6のアルキル基、またはRは炭素原子が2から6のアルキル基でR’は炭素原子が16から45のアルキル基、nは2から50、 (c)1つ以上の添加剤化合物から選ばれる組成物の100%までの残りとを含むことを特徴とする改良されたポリアミド樹脂組成物。」 2.原査定の拒絶理由の概要 原査定の拒絶の理由とされた、平成16年11月8日付けの拒絶理由通知は次のとおりである。 「1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) 理由1 ・請求項1、2、4、7、8 ・引用文献1、2 備考 引用文献1の特許請求の範囲、第5頁左上欄第5行から第14行、実施例1を参照。 引用文献2の特許請求の範囲、第3欄第10行から第15行、実施例を参照。 引用文献1の実施例1で使用されるポリエステルAのジカルボン酸成分 「Empol 1010」は、炭素数36のジカルボン酸であるので(文献3?5参照。)、引用文献1に記載の「ポリエステル」は、本願発明の「長鎖のアルキルポリエステル」に相当する。 引用文献等一覧 1.特開昭59-091149号公報 2.特公昭44-026555号公報 3.特開平04-236225号公報 4.特開平08-134206号公報 5.特開平08-060096号公報 」 3.引用文献の記載事項 原査定の拒絶理由に引用された引用文献2の記載事項は、上記第2の2の2-3の2-3-2の(2)に示したとおりであり、また、引用文献1及び3?5には、以下の事項が記載されている。 (引用文献1) キ.「1 下記の成分 (a) 70?98.95重量%の熱可塑性ポリアミド、 (b) 1?30重量%の、100℃以下の軟化点および1?4の官能性を有する、長鎖のポリエステル-、ポリエーテル-もしくは炭化水素-ポリオールおよび (c) 0.05?5重量%の、少なくとも1種のポリ無水物および/またはポリエポキシド から製造され、ここで成分a?cの総量が100重量%である、熱可塑性ポリアミド成型組成物。」(特許請求の範囲第1項) ク.「本発明は、その中へ長鎖ポリオールおよび少なくとも1種のポリ無水物および/またはポリエポキシドが混合された、高衝撃で容易に流動するポリアミド成型組成物に関する。」(第2頁右上欄7?10行) ケ.「A:二量性脂肪酸(Empol 1010○R(原文では○の中にR)、Unilever Emeryの製品)とヘキサンジオールのポリエステル、OH価56、酸価1;」(第5頁右下欄3?6行) コ.「実施例 1 m-クレゾール中1%の溶液で25℃で測定して2.9の相対粘度を有し、DIN 53 453に従つて測定して2.3kJ/m^(2)の切欠衝撃強度および55cmの流動長さ*^())を有する6-ポリアミド96.7重量部、ポリエステルA3重量部およびエポキシ樹脂E0.3重量部を、計量秤または計量ポンプを用いてZSK33型ツインスクリユー押出成型器へ別々に送り、260℃で押出成型する(スクリユー速度90rpm)。」(第6頁左上欄10?同右上欄1行) (引用文献3) サ.「かかる二量重合した脂肪酸は約36個の炭素原子のジカルボン酸の混合物より本質的になりしかも通常少量の三量体及び高級重合体と一緒に幾つかの異性体型二量体も含有し且つ米国特許第4,018,733号明細書及びEmpol Dimer and PolybasicAcids、A-2026 Emery Chemicals社に十分に記載されており、その開示を参照して示す。」(段落【0040】) (引用文献4) シ.「実施例1 撹拌器を備える内容積が200リットルのオートクレーブ内に、二量体化脂肪酸(b)としてヘンケル(Henkel)社製Empol 1010〔商品名;単量体を0.05重量%、二量体95.55重量%、重合度2を越えるポリマーを約4.4重量%含有し、二量体の主成分は、 【化6】(式省略) 〔式中、R_(1) とR_(2) とR_(3) とR_(4) の和は炭素数が31である。〕を41.55重量部および・・・を調製した。」(段落【0025】?【0027】) (引用文献5) ス.「上記のごとく、ポリエステル中間物生成に用いる酸混合物は、ダイマー酸としてC36ジカルボン酸生成物を含むのがのぞましい。この酸の生成機構はすでに公知であり、多くの米国特許、第2,482,761号、第2,793,220号、第2,793,221号および第2,995,121号の主題をなす他、別途、ダイマー脂肪酸を化学品提供メーカー(たとえば、エメリー.ケミカル社のEmpot 1010)から購入することができる。」(段落【0016】) 3.対比・判断 (1)引用文献2に記載された発明との対比、判断 本願発明1と補正発明1とは、(b)成分として式(I)のポリ(エチレングリコール)のエステルを用いる場合には、その構成に差異はない。 したがって、本願発明1は、上記した補正発明1と同様の理由により、引用文献2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 (2)引用文献1に記載された発明との対比、判断 引用文献1には、「(a) 70?98.95重量%の熱可塑性ポリアミド、 (b) 1?30重量%の、100℃以下の軟化点および1?4の官能性を有する、長鎖のポリエステル-、ポリエーテル-もしくは炭化水素-ポリオールおよび (c) 0.05?5重量%の、少なくとも1種のポリ無水物および/またはポリエポキシド から製造され、ここで成分a?cの総量が100重量%である、熱可塑性ポリアミド成型組成物。」(摘示事項キ、以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 引用発明1の(a)の熱可塑性ポリアミドは、本願発明1の(a)のポリアミド含有化合物に相当し、(c)の少なくとも1種のポリ無水物および/またはポリエポキシドは、本願発明1の(c)の添加剤化合物に相当するものである。 また、(b)の長鎖のポリエステル-ポリオールは、本願発明1の(b)の長鎖のアルキルポリエステルに相当する。 したがって、本願発明1と引用発明1を対比すると、両者は、 「(a)ポリアミド含有化合物と、 (b)式(II)の長鎖のアルキルポリエステルからなる群から選ばれた化合物と、 (c)1つ以上の添加剤化合物 とを含むことを特徴とする改良されたポリアミド樹脂組成物。」の点で一致し、次の相違点で一応相違する。 【相違点3】 本願発明1の長鎖のアルキルポリエステルは、「(b)式(II)の長鎖のアルキルポリエステルからなる群から選ばれた可塑化化合物、 (II) HOOC-R-CO-(O-R’-O-CO-R-CO)_(n)-O-R’-OH 上式で、Rは炭素原子が16から45のアルキル基でR’は炭素原子が2から6のアルキル基、またはRは炭素原子が2から6のアルキル基でR’は炭素原子が16から45のアルキル基、nは2から50」であるのに対し、引用発明1では「100℃以下の軟化点および1?4の官能性を有する、長鎖のポリエステル-ポリオール」である点。 【相違点4】 本願発明1は、(a)、(b)、(c)配合量がそれぞれ、99.9ないし30重量%、0.1ないし20重量%、組成物の100%までの残りであるのに対し、引用発明1では、それぞれ70?98.95重量%、1?30重量%、0.05?5重量%であり、その総量が100重量%である点。 そこで、上記相違点3及び4について以下に検討する。 【相違点3について】 引用文献1の摘示事項ケのポリエステルにおける、二量性脂肪酸(Empol 1010)は、引用文献3?5の摘示事項サ及びスによれば、炭素数36のジカルボン酸である蓋然性が高い。 そして、引用文献1のポリエステルは、ヘキサンジオールとのポリエステルであり、その繰返し単位の数は不明ではあるが、本願発明1の式(II)の長鎖アルキルポリエステルは、その繰返し単位の数がnは2から50という広範なものであることに鑑みると、本願発明1の式(II)の長鎖アルキルポリエステルである蓋然性が高いものである。 したがって、相違点3は実質的な相違点とはいえない。 【相違点4について】 本願発明1の(c)の配合量は、上記したように0?69.9重量%と解されるから、引用発明1の(a)?(c)の各成分の配合量は、それぞれ本願発明1の(a)?(c)の配合量と重複一致するものである。 これは、引用文献1の実施例1において、(a)?(c)が、それぞれ96.7重量部、3重量部、0.3重量部の組成物が用いられている(摘示事項コ)ことからも、裏付けられるものである。 したがって、相違点4も実質的な相違点とはいえない。 以上のとおりであるから、本願発明1は引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明1は、引用文献1又は2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-11-09 |
結審通知日 | 2007-11-16 |
審決日 | 2007-12-03 |
出願番号 | 特願平10-513614 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(C08L)
P 1 8・ 537- Z (C08L) P 1 8・ 113- Z (C08L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松岡 徹、宮本 純、武貞 亜弓 |
特許庁審判長 |
一色 由美子 |
特許庁審判官 |
井出 隆一 渡辺 陽子 |
発明の名称 | ポリアミド樹脂組成物 |
復代理人 | 岩崎 利昭 |
代理人 | 谷 義一 |
代理人 | 阿部 和夫 |