• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G01M
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01M
管理番号 1176913
審判番号 無効2007-800180  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-08-27 
確定日 2008-04-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第3380809号発明「振動試験装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯・本件特許発明
本件特許第3380809号は、平成11年6月28日に特許出願された特願平11-182098号の一部を新たな特許出願とした、いわゆる分割出願として適法に出願され、平成14年12月13日に特許権の設定登録が行われた。その後、無効審判請求人IMV株式会社により請求項1に係る特許について本件無効審判の請求がなされたものである。
以下において、本件特許の請求項1に係る、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりの発明を、「本件特許発明」という。
「【請求項1】試料に振動を加える加振手段と、該加振手段を冷却する冷却手段とを有する振動試験装置において、
前記加振手段から前記試料に加える加振力を検出する加振力検出手段と、
前記加振力検出手段で検出された加振力に応じて前記冷却手段の駆動電力を制御する制御手段とを有することを特徴とする振動試験装置。」

II.請求人の主張
無効審判請求人(以下、「請求人」という。)は、審判請求書で、以下の無効理由を主張している。
(無効理由1)
本件特許発明は、甲第1号証ないし甲第5号証、ならびに、検甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反しており、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(無効理由2)
本件特許発明は明確でないから、本件特許の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本件特許は同法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきものである。

III.被請求人の対応
請求人の提出した審判請求書副本を送達して答弁或いは訂正請求の機会を与えたが、被請求人は、答弁書も、また訂正請求書も提出していない。

IV.無効理由2についての検討
無効理由1についての検討に先立ち、最初に、無効審判請求人が主張する無効理由2について検討する。
(IV-1)無効理由2の具体的主張内容
請求人は、本件特許発明の発明特定事項である「加振力」の具体的内容が不明であるとともに、「加振力に応じて冷却手段の駆動電力を制御する」との事項のみによっては所望の効果が得られないので、本件特許発明は明確でない旨、主張する。

(IV-2)検討・判断
「加振力」は、請求項1において、「前記加振手段から前記試料に加える」とされ、さらに「前記加振手段」について「試料に振動を加える加振手段」としていることから、「試料に振動を加える加振手段から前記試料に加える」振動であることは明らかであり、「加振力」が「振動制御器3から供給される加振信号の振幅を検出する」ことによって検出されることは、発明の詳細な説明にも明記(例えば、段落【0042】)されており、「加振力」の用語が不明であるとはいえない。
そして、本件特許発明の技術的課題である「冷却装置の冷却能力を加振手段の駆動能力によらず最大駆動能力に応じた冷却能力に設定していたため、最大能力より小さい加振力で駆動する場合に必要以上に大きな冷却能力で冷却手段が駆動され、不要な消費電力が消費されてしまう等の問題点があった。」(段落【0034】参照)を勘案すれば、請求項1の「加振力に応じて冷却手段の駆動電力を制御する」との発明特定事項は、冷却手段の駆動電力を、少なくとも、「加振手段の最大駆動能力に応じた冷却能力に設定するという、必要以上に大きな冷却能力で冷却手段が駆動することなく」制御することを意味することは明らかであり、様々な態様の制御手法を採用し得ることは、段落【0063】の記載からも明らかである。
してみると、本件特許発明は明確であって、本件特許が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないと言うことはできない。

V.無効理由1についての検討
(V-1)本件特許発明
上記のとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載は明確であるので、本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記「I.」で「本件特許発明」として記載したとおりのものである。

(V-2)甲第1号証ないし甲第3号証に記載された事項
本件出願前に頒布された刊行物である次の各甲号証には以下の記載がある。
(ア)甲第1号証(特開平10-271761号公報)
(a)「【請求項1】 複数基の直流電動機を有し、各直流電動機は、
周方向に間隔をあけて複数個配置され、界磁鉄心と界磁鉄心に巻回される界磁巻線とを有し、界磁を形成する主極と、
前記主極によって形成される磁界内に回転自在に設けられ、電機子鉄心と電機子鉄心に設けられる電機子巻線とを有する電機子と、
複数の主極の周方向中間に配置され、補極鉄心と補極鉄心に巻回される補極巻線とを有する補極と、
主極に設けられ、電機子巻線および補極巻線とともに直列回路を形成する補償巻線と、
電機子を外囲し、主極および補極が固定されるハウジングであって、ハウジングに形成され、主極、電機子および補極を冷却する冷却用空気を吸込む空気吸込口と、ハウジングに形成され、冷却用空気を排出する空気排出口とが形成されるハウジングと、
電機子の回転速度を表す指令信号に応答し、指令信号の表す回転速度が大きくなるにつれて界磁巻線に与える電流が小さくなるように制御する第1電気回路と、
前記指令信号に応答し、指令信号の表す回転速度が大きくなるにつれて前記直列回路に与える電流が大きくなるように制御する第2電気回路とを含み、さらに、
前記複数の直流電動機に共通に冷却用空気を供給して各直流電動機を冷却する送風手段を備える直流電動機の冷却装置において、
前記送風手段は、
冷却用空気を供給する送風機と、
送風機からの冷却用空気を各直流電動機に導く第1空気通路手段と、
第1空気通路手段の冷却用空気流れ方向に間隔をあけて順次的に各直流電動機ごとに設けられ、一端部が第1空気通路手段に接続され、他端部が各直流電動機の空気吸込口に接続される第2空気通路手段と、
送風機を回転駆動する電動機と、
送風機に吸込まれる冷却用空気の吸気温度を検出する第1温度検出器と、
複数の直流電動機の空気排出口付近に設けられ、直流電動機から排出される冷却用空気の排気温度を検出する第2温度検出器と、
複数の直流電動機の界磁巻線に設けられ、界磁巻線の温度を検出する第3温度検出器と、
複数の直流電動機の補極巻線に設けられ、補極巻線の温度を検出する第4温度検出器と、
前記送風機の回転速度を制御する制御手段であって、前記第1?第4温度検出器の出力に応答し、
前記各排気温度から吸気温度を減算して吸排気温度差を求め、
複数の直流電動機に個別的に対応する前記吸排気温度差のうちの最大値、複数の直流電動機の界磁巻線温度および補極巻線温度のうちの最大である巻線温度最大値を求め、
前記求めた巻線温度の最大値の時間変化率を求め、
吸排気温度差、巻線温度および巻線温度変化率の3者と送風機の回転速度との対応関係を予め設定し、前記求めた吸排気温度差の最大値、前記求めた巻線温度の最大値および前記求めた巻線温度変化率に対応する送風機の回転速度を前記予め定めた対応関係に基づいて求め、前記求めた回転速度になるように送風機を制御する制御手段とを含んで構成されることを特徴とする直流電動機の冷却装置。」(特許請求の範囲)
(b)「【発明の属する技術分野】本発明は、直流電動機の冷却装置、特にファジィ制御によって冷却用空気の風量を制御することに特徴のある大型直流電動機の冷却装置に関する。」(段落【0001】)
(c)「【従来の技術】従来から大型直流電動機には、送風機が併設されている。前記送風機は、大型直流電動機に冷却用空気を送風して直流電動機の絶縁材料を保護している。前記送風機の供給風量は、直流電動機の最大負荷の連続運転時に必要な風量に設定されており、負荷変動にかかわらず運転中一定に保たれて供給されている。また前記供給風量は、外気温度すなわち季節に応じて設定変更されており、夏季には冬季よりも大きい供給風量に設定されている。」(段落【0002】)
(d)「【発明が解決しようとする課題】前述のように送風機の供給風量は、季節ごとの最大必要風量を確保できるように設定されている。したがって直流電動機が最大負荷の連続運転を行っていないときには、前記供給風量は直流電動機の発生熱量に対して過大となり、直流電動機は過剰に冷却される。この結果、次のような問題が生ずる。
(1)無駄な電力が消費され、送風機の電力使用量が増大する。
(2)……」(段落【0004】)
(e)「【発明の効果】以上のように本発明によれば、送風機の冷却用空気の供給風量を適正な風量に制御することができるので、直流電動機の過熱および過冷をともに防止することができ、絶縁材料の保護と電力使用量の低減すなわち省エネルギとをともに実現することができる。」(段落【0057】)

(イ)甲第2号証(特許第2691732号公報)
(f)「【請求項2】車両を加振台に載置して、それぞれの車輪に送風を行いつつ車両を加振する車両用加振試験装置において、
各車輪のサスペンションロアアーム部分に加速度センサをそれぞれ取付け、また各車輪のショックアブソーバ部分に温度センサをそれぞれ取付けると共に、
前記各加速度センサのいずれかの加速度検出値が予め定めた範囲を上廻るか或いは下廻るかを判断する加速度判断手段と、
前記温度センサのいずれかの温度検出値が予め定めた上限値を上廻るか否か及びこの上廻った後に所定の温度値に低下したか否かを判断する温度判断手段と、
いずれかの前記温度検出値の上昇速度が予め定めた上限値を上廻るか否かを判断する温度上昇速度判断手段と、
前記加速度検出値が前記範囲を上廻るか或いは下廻ったと判断されると加振を非常停止させ、また前記温度検出値が前記上限値を上廻ったと判断されると前記所定の温度値に低下したと判断されるまで、送風状態で前記加振を中断させ、さらに前記温度検出値の上昇速度が前記上限値を上廻ったと判断されると前記加振を非常停止させる加振オン・オフ制御手段と、
前記両非常停止時に報知を行う異常報知手段と、を備えたことを特徴とする車両用加振試験装置。」(特許請求の範囲)
(g)「〔発明が解決しようとする課題〕
これにより、足回りやボデーの破損に起因してリミットスイッチが作動すると試験を非常停止していたが、これらの異常を未然に発見して防ぐことはできなかった。また、試験効率上も問題があった。
よって、本発明は、振動付加による車両の異常部分の破損を未然に検出し、かつ温度上昇に即応した冷却時間を置いて自動的に繰り返し加振試験を行える車両用加振試験方法及び装置を提供することを目的とする。」(第2頁左欄第21行?第29行)

(ウ)甲第3号証(特開平6-189596号公報)
(h)「【請求項1】 発電電動機が運転中に発電電動機コイルの冷却を行う複数台の電動冷却ファンモータが備えられた水力発電所の発電電動機の電動冷却ファン制御方法において、発電電動機の出力電流と空気冷却器出口温度によって電動冷却ファンモータ周波数を演算する関数表が設けられているプラント制御装置と、インバータ装置を備え、発電電動機の出力電流と空気冷却器出口温度の状態によって、前記関数表から電動冷却ファンモータの周波数を演算して指令値周波数を算出して前記プラント制御装置から前記インバータ装置に送り、インバータ装置にて商用交流電源を変換した可変周波数交流電源を電動冷却ファンモータに供給し、電動冷却ファンモータが指令値周波数で運転し、発電電動機を冷却することを特徴とする発電電動機の電動冷却ファン制御方法。」(特許請求の範囲)
(V-3)甲第4、5号証および検甲第1号証から推認できる事項
(エ)検甲第1号証(振動標準機器設備 加振装置 型名VSL-3203S 仕様書)の記載事項
検甲第1号証は、IMV株式会社が財団法人日本品質保証機構に宛てた、「振動標準機器設備 加振装置 型名VSL-3203S 仕様書」であって、工事No.100587、93年10月27日、一部改訂’93-11-10なる日付とともに、以下の事項が記載ないし図示されている。
(i)「振動試験装置附帯工事」について記載され、「振動発生機」と、「ブロワ(間欠運転)」ならびに「油圧源」とが接続されていることが図示され、「振動発生機」から「ブロワ(間欠運転)」に向かう矢印と、「振動発生機」と「油圧源」の間で双方に向かう矢印が付与されている。(1-3頁)
(j)装置の「ブロック図」が記載され、前記(i)と同様に、「振動発生機」と、「ブロワ(間結運転)」ならびに「油圧源」とが接続されていることが図示され、「振動発生機」から「ブロワ(間結運転)」に向かう矢印と、「振動発生機」と「油圧源」の間で双方に向かう矢印が付与されている。(1-6頁)

(オ)甲第5号証(社内見積書(控) 御見積書(控))の記載事項
甲第5号証は、IMV株式会社が日本品質保証機構に宛てた「見積書」であって、見積提出2000年3月21日の日付、機種型名 VSL-3203L、製造番号100587とともに、以下の事項が記載されている。
(k)依頼内容が「ブロワーシーケンス回路の改造」であって、その内容が「従来のブロワー自動(温度による間欠)運転に加え、手動(通常運転で、押ボタンにより手動停止する)が可能となるようシーケンス回路を改造」であること。

ここで、検甲第1号証に記載されている型名、工事No.と、甲第5号証に記載されている機種型名、製造番号からして、甲第5号証が、検甲第1号証に記載されている加振装置の改造見積書であることが推認できる。
してみると、甲第5号証および検甲第1号証によって、次の装置が本件出願前に、IMV株式会社から財団法人日本品質保証機構に譲渡されたこと、そのことによって、その装置が公然知られ又は公然知られるおそれのある状況におかれたことが推認できる。
「振動発生機と接続された、温度による間欠運転を行うブロワを具備する振動試験装置。」(以下「公然実施発明」という。)
なお、甲第4号証を勘案しても、上記推認できる事項に変わりはない。

(V-4)本件特許発明と公然実施発明との対比
公然実施発明は「振動試験装置」であり、それが具備すべき機能からして、公然実施発明の「振動発生機」が本件特許発明の「試料に振動を加える加振手段」に相当すること、また、本件出願人が自認する従来技術(例えば、本件特許明細書の段落【0024】)を勘案すると、検甲第1号証に図示された矢印(前記摘記(j)参照)は流体の流れを示すと推定されることからして、公然実施発明の「ブロワ」は、本件特許発明の「加振手段を冷却する冷却手段」と同じ機能を果たすものであることは、当業者に明らかである。
そして、公然実施発明の「温度による間欠運転」が、本件特発明の「駆動電力の制御」の一態様であることも明らかである。
してみると、両者は、「試料に振動を加える加振手段と、該加振手段を冷却する冷却手段とを有する振動試験装置において、前記冷却手段の駆動電力を制御する制御手段とを有する振動試験装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点)
加振手段を冷却する冷却手段の駆動電力の制御が、本件特許発明は「加振手段から試料に加える加振力を検出する加振力検出手段で検出された加振力に応じて」行われているのに対し、公然実施発明は、前記構成を具備せず、「温度による間欠運転」がなされている点。

(V-5)相違点についての検討・判断
冷却手段の制御について、甲第1号証ないし甲第3号証には、それぞれ、「直流電動機に設けた温度検出器で得られた各種温度を用いて直流電動機を冷却する送風手段の制御を行うこと。」(甲第1号証)、「試験対象である足回り部分の温度や加速度を検知して試験対象に送風を行って冷却すること。」(甲第2号証)、「発電電動機の出力電流と空気冷却器出口温度によって発電電動機の電動冷却ファンを制御すること。」(甲第3号証)、が記載されている。
しかしながら、それらのいずれにも、加振手段を冷却する冷却手段を「加振手段から試料に加える加振力を検出する加振力検出手段で検出された加振力に応じて」制御を行う構成については何ら記載がなく、また、それを示唆する記載もない。
してみると、公然実施発明、ならびに、甲第1号証ないし甲第3号証をどのように組み合わせても、前記構成を当業者が容易に導き出すことはできない。
そして、本件特許発明は、前記構成により、本件特許明細書記載の「冷却に必要な電力を必要最小限にでき、省電力化が可能となる」という、前記公然実施発明、ならびに、甲第1号証ないし甲第3号証には無い作用効果を奏するものである。
したがって、甲第1号証ないし甲第5号証ならびに検甲第1号証に記載された事項をもって、本件特許発明が、本件出願前に当業者が容易に発明することができたものであるとすることはできず、本件特許が特許法第29条第2項の規定に違反しているとすることはできない。

VI.むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1に係る発明が無効であるとする請求人の主張はいずれも採用できず、本件特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-03 
結審通知日 2008-03-05 
審決日 2008-03-18 
出願番号 特願2001-356625(P2001-356625)
審決分類 P 1 113・ 537- Y (G01M)
P 1 113・ 121- Y (G01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 本郷 徹  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 秋田 将行
高橋 泰史
登録日 2002-12-13 
登録番号 特許第3380809号(P3380809)
発明の名称 振動試験装置  
代理人 古谷 栄男  
代理人 佐々木 康  
代理人 松下 正  
代理人 鶴本 祥文  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ