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審判番号(事件番号) データベース 権利
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不服20058936 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1176957
審判番号 不服2004-20226  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-30 
確定日 2008-05-02 
事件の表示 平成 5年特許願第355132号「mC26遺伝子発現制御領域を用いてトランスジェニック動物乳腺において物質を生産する新規製造法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 8月 1日出願公開、特開平 7-194380〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年12月28日の出願であって、その請求項1?15に係る発明は、平成15年10月28日付けの手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されたとおりのものであるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】配列番号1のヌクレオチド配列からなるDNA。」

2.引用文献の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である、J.Biol.Chem.,Vol.268,No.6(1993.Feb.25)p.4525-4529(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「GLYCAM 1をコードするマウス遺伝子の構造と染色体局在性」(第4525頁表題)
(イ)「さらなる分析の結果、GLYCAM 1が泌乳期のマウス乳腺においてホルモン依存的に多量に発現することがわかった。」(第4525頁右欄第30行?第32行)
(ウ)「GLYCAM 1をコードするゲノムクローンの単離及び配列決定
OLA/129系マウスの肝臓DNAから作製されたλGEM-12ベクター中のゲノムライブラリーをAnton Bernsから得た。・・・・・・・・・・GLYCAM 1の完全なコード配列をコードする約6.5kbのEcoRI断片を、λクローンから単離し、EcoRI消化pKSII(Stratagene)にサブクローンした。GLYCAM 1をコードするゲノム断片の完全な配列を、Sequenase Ver.2.0配列決定キットを用いてプライマー特異的超螺旋配列決定により決定した。」(第4526頁左欄第31行?第44行)
(エ)「図2.GLYCAM遺伝子を含むゲノム領域のDNA配列
GLYCAM 1遺伝子を含む約6.5kbのEcoRI断片を、二重鎖鋳型のカスタム・プライマー配列決定により完全に決定した。GLYCAMをコードするエクソンを含む領域のDNA配列を示す。(配列は省略)」(第4527頁図2および脚注)
(オ)「GLYCAM 1をコードするエクソンを囲む完全な領域のヌクレオチド配列を決定し、図2に示す。」(第4528頁右欄第19行?第21行)
(カ)「本論文において報告されたヌクレオチド配列は、GeneBank/EMBLのデータバンクに受け入れ番号L08101として提示されている。」(第4525頁左欄脚注下から第6行?第4行)

3.対比
記載事項(ア)?(オ)から、引用文献1には、OLA/129系マウスのゲノムDNAライブラリーから、GLYCAM 1をコードする約6.5kbのEcoRI断片からなるゲノムクローンを単離し、そのヌクレオチド配列を決定をしたことが記載されており、そのヌクレオチド配列は、図2に示されたものであることが記載されている。また、引用文献1には、GLYCAM 1は、マウス乳腺で泌乳期に発現していることも記載されている(記載事項(イ))。
一方、本願明細書の【従来の技術】には、以下の事項が記載されている。
「【0007】mC26遺伝子産物は、乳腺で泌乳期特異的かつ組織特異的に多量に発現する遺伝子として同定され[サトウ(Satow)ら、J.Biochem.99,1639-1643(1986)]、また、その後ドーベンコ(Dowbenko)ら[Journal of Biological Chemistry,Vol 268,No.6:4525-4529(1993)]により白血球接着分子として同定され、GLYCAM-1と呼ばれている分子である。該遺伝子座はマウスにおいてマップされており、該遺伝子の構造遺伝子部分および周辺の一部のヌクレオチド配列は既に決定されている[ドーベンコ(Dowbenko)ら、上記]。」(【0007】)
本願明細書の上記【0007】の記載、実施例1及び2の記載(【0061】?【0069】)によると、本願発明の「配列番号1のヌクレオチド配列からなるDNA」は、マウス乳腺で泌乳期に発現している遺伝子であるmC26遺伝子のゲノムDNAであり、Balb/cマウスのゲノムDNAライブラリーからクローニングされたものである(【0062】)。

そこで、本願発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、両者は、マウス乳腺で泌乳期に発現している遺伝子である点で一致し、本願発明のDNAは、Balb/cマウス由来のゲノムDNAであって、配列番号1のヌクレオチド配列からなるものであるのに対し、引用文献1に記載されたDNAは、OLA/129系マウス由来のゲノムDNAであって、図2のヌクレオチド配列で示されるものである点で相違する。
ここで、本願発明の配列番号1の5394塩基のヌクレオチド配列と、引用文献1の図2に示される3000塩基のヌクレオチド配列とを比較すると、両者の同一性は97%になり、すなわち、図2に記載されている領域においては、97%が一致し、3%が異なり、かつ、本願発明のヌクレオチド配列には、図2に記載されていない5’側及び3’側のヌクレオチド配列が存在する点で相違するといえる。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
ある遺伝子が特定の生物種由来のDNAライブラリーからクローニングされたことが知られていた場合に、前記DNAライブラリーとは異なるが同じ生物種由来の容易に入手可能なDNAライブラリーから、前記遺伝子をクローニングすることは、本願出願日前周知技術である。
そして、Balb/cマウスのゲノムDNAライブラリーは、容易に入手可能なDNAライブラリーとして本願出願日前周知のものである(必要ならば、J.Biochem.,Vol.99,No.6(1986)p.1639-1643、J.Biochem.,Vol.101,No.1(1987)p.103-110、蛋白質 核酸 酵素,Vol.30,No.14 Suppl.(1985)p.1720-1731参照。以下、「周知例1」?「周知例3」という。)。
また、ある遺伝子がクローニングされた場合に、その5’側及び3’側の領域を含むDNAをクローニングすることも、本願出願日前周知技術である。
よって、OLA/129系マウスのゲノムDNAライブラリーの代わりに、Balb/cマウスのゲノムDNAライブラリーから、引用文献1に記載されたヌクレオチド配列に基づいて作成したプローブ、プライマーを用いて、図2に記載されていない5’側及び3’側の領域を含むゲノムDNAである、配列番号1のヌクレオチド配列からなるDNAをクローニングすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本願発明のDNAが、本願明細書の記載をみても、引用文献1に記載されているDNAに比べて格別顕著な効果を奏するとは認められない。

5.審判請求人の主張
審判請求人は、審判請求書(平成17年1月5日付け手続補正書(方式)提出)において、「引用文献1のDNAは、請求項1のDNAの(i)における第1?第1804ヌクレオチド配列、及び(iii)における第4953?第5394ヌクレオチド配列を含んでいない。・・・・・・引用文献1は、欠けている制御領域(i)及び(iii)部分の記載はなく、かつ示唆さえしていない。」、「引用文献1記載のDNAは、本願請求項1のDNAと塩基配列において明かな相違があり、また、引用文献1には、本願発明のDNAにおける重要な発現制御領域の配列が記載されていない。」と主張している。
しかし、上記4.で述べたように、引用文献1の図2に記載されていない5’側及び3’側の領域を含むゲノムDNAをクローニングすることは、当業者が容易になし得ることであり、そのことに技術的困難性があったとはいえない。また、図2には、コード領域の5’側及び3’側にある程度の長さのヌクレオチド配列が記載され、その5’側の配列にはTATAボックスの配列も含まれており(その位置は図3参照。)、さらに5’側、3’側のヌクレオチド配列が重要であり、それがなければ機能が発揮できないことを裏付ける証拠は何ら示されていないので、審判請求人の上記主張は採用できない。
また、引用文献1には、「本論文において報告されたヌクレオチド配列は、GeneBank/EMBLのデータバンクに受け入れ番号L08101として提示されている。」との記載(記載事項(カ))があり、その受け入れ番号L08101のデータ(1993年4月27日初出時)には、クローニングされたゲノムクローン約6.5kbのEcoRI断片に相当する6482塩基のヌクレオチド配列が記載されている。この配列は、本願発明の配列番号1の配列よりも長く、引用文献1の図2に記載されていない、5’側及び3’側のヌクレオチド配列も記載されている。よって、このことからも、「引用文献1は、欠けている制御領域(i)及び(iii)部分の記載はなく、かつ示唆さえしていない」という審判請求人の主張は採用できない。

6.付記
周知例1?3には、Balb/cマウスのゲノムDNAライブラリーから、mC26遺伝子のゲノムDNAをクローニングしたことが記載されており(周知例1?3)、また、そのヌクレオチド配列の一部についても決定されている(周知例2)。そして、周知例1?3に記載されているクローニングされたDNAのヌクレオチド配列を決定することは、当業者が容易になし得ることである。
したがって、本願発明は、周知例1?3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものでもあり、また、周知例1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもある。

7.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び本願出願日前の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-07 
結審通知日 2008-02-12 
審決日 2008-02-25 
出願番号 特願平5-355132
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 晴絵  
特許庁審判長 平田 和男
特許庁審判官 高堀 栄二
松波 由美子
発明の名称 mC26遺伝子発現制御領域を用いてトランスジェニック動物乳腺において物質を生産する新規製造法  
代理人 石川 徹  

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