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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41F
管理番号 1177000
審判番号 不服2005-8112  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-02 
確定日 2008-05-01 
事件の表示 平成11年特許願第 48618号「剛性板表面上に凹凸パターンを形成する輪転方式の凹凸パターン形成装置、凹凸パターン形成方法、プラズマディスプレイの背面基板」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月 5日出願公開、特開2000-238237〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年2月25日に出願したものであって、平成17年3月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月2日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願請求項11に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年1月21日付け手続補正で補正された特許請求の範囲(全請求項数21)の請求項11に記載された事項により特定される次のものと認める。
「剛性板の表面に電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化凹凸パターンを形成するための輪転方式の凹凸パターン形成方法において、少なくとも次の1.?5.の工程を有することを特徴とする凹凸パターン形成方法。
1.目的とする凹凸パターンを、離型性の表面よりなる前記凹凸パターンの逆形の凸凹パターンとして有する、凹版輪転ロールと離型性を有する電離放射線透過フィルムの間に電離放射線硬化型樹脂組成物を所定の厚さを維持しながら連続的に挟み込む工程
2.挟み込んだ状態で電離放射線を照射する工程
3.電離放射線硬化型樹脂組成物を硬化した後、電離放射線透過フィルムを該凹版輪転ロール表面から剥離する工程
4.-1剛性板を該凹版輪転ロール上に供給し、電離放射線照射によって硬化した電離放射線硬化型樹脂組成物と、所定のアライメント精度を保持しながら重ね合わせて加圧状態にする工程
4.-2該凹版輪転ロールと剛性板が接触を開始する部分に液体を供給する工程
5.加圧状態にした後、剛性板を該凹版輪転ロ-ル表面から剥離する工程」

3.引用刊行物
(a)原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平5-241175号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載が図示とともにある。(審決書は、丸付き文字を表記できないので、『』付き文字で表記したところがある。)
ア.【請求項1】 所望のパターンに相応するパターン状の凹部を設けるとともにその表面に離型層を形成した凹版と、表面に剥離層を形成した可撓性フィルムとを、両者間に硬化性インキを介在させた状態で対峙させ、凹版と可撓性フィルムをその両側から加圧して硬化性インキを挟持した状態で硬化させた後、可撓性フィルムを剥離して凹版の凹部に硬化したインキパターンを得、次にこの硬化したインキパターンを表面に粘着層を有する被転写体に転写することを特徴とする微細パターンの形成方法。
イ.【0006】
【発明が解決しようとする課題】大型ディスプレイデバイスのパネル上の半導体素子回路形成用のレジストパターンは、線巾については通常100μm以下、位置精度については±1?10μmのレベルが要求される。そのためには凹部の形状を忠実に再現するインキパターンを形成し、これを高位置精度で完全に転写しなければならない。ところが、電着法でパターンを形成する方法では、原理的に電流分布密度が不均一となることが避けられず、これに起因して電着層の厚さが不均一となる。
ウ.【0014】凹版1の凹部形成面全面に離型層2が形成されている。離型層2の材質としては、インキと親和性を有しないものであればよいが、特にテフロン等のフッ素系の樹脂やシリコーン系の樹脂などが好ましく用いられる。
エ.【0017】ついで上記凹版1の凹部形成面に硬化性インキ3を置く(図1(a))。硬化性インキ3としては、通常のインキの概念に含まれるものでなくてもよく、凹版1の凹部に入りやすいものであればよい。またUV硬化性、2液硬化性など硬化性のものであることが必要である。
オ.【0020】次に上記硬化性インキ3を凹版1上の凹部に充填し、凹部内で硬化させる。まず、凹版1の上に置いた硬化性インキ3に、剥離層4が形成してある可撓性フィルム5を0.01?1.0kg/m^(2)程度の圧力をかけて押し当て(図1(b))、硬化性インキ3が凹版1の凹部だけに存在するようする。
カ.【0021】次いで、硬化性インキ3を、少なくとも硬化性インキ3と凹版1の凹部の離型層2の接着力よりインキの凝集力の方が強い範囲の所定の程度まで、硬化させる(図1(c))。次に可撓性フィルム5を引き剥す(図1(d))。また硬化性インキ3として、硬化時に体積が収縮する度合の大きなものを用いた場合は、硬化性インキ3の硬化後、再度硬化性インキ3を供給して同じ操作を繰り返すことにより、凹部のほぼ上端までインキは充填され、凹部の形状をほぼ忠実に再現できる。
キ.【0022】上記可撓性フィルム5としては、硬化性インキ3としてUV硬化インキを使用する場合はUV透過性を有するものであればよく、ほとんどのプラスチックフィルムが使用可能である。特にポリエステルフィルムは入手が容易で、適度の剛性を有し、凹版の凹部に入り込むことが少ないので、好ましく用いられる。
ク.【0025】硬化性インキ3が硬化するまでに、可撓性フィルム5が浮いてしまうことを防止することが好ましい。そのための方法として、『1』平プレス機を用いて10?100g/cm^(2)程度の圧力をかけたり、『2』写真フィルム用の焼付けプリンターと呼ばれるポリエステルフィルムとガラス板との間に挟んで減圧する装置を使用し、1/5?1/10気圧程度まで減圧したり、『3』凹版を凹部を外側にして若干湾曲させ剥離層を有するフィルムを10?100g/cm程度の張力をかけて張ったりする事が有効である。このうち『3』の方法は簡便であり優れた方法である。また硬化性インキ3としてUV硬化性のものを使用した場合は、加圧ロールの後にUV灯をセットした装置を用いれば、加圧後すみやかにUV照射を行なうことができる。
ケ.【0026】一方、被転写体7は、被印刷体基板8上に被エッチング層9、フォトレジスト層10、粘着層11の順に形成されて、構成される(図1(e))。被転写体7の大きさは、特に限定されない。これは本発明の大きな利点となっている。被転写体基板8の材質は特に限定されないが、大面積アクティブマトリックス型液晶ディスプレイのパネル基板には低膨張ガラスが用いられることがほとんどである。その他被転写体基板8として使用できるものとしては、各種半導体素子のウェーハやプリント配線用基板あるいは通常のガラスなどが挙げられる。被エッチング層9としては、半導体素子回路を構成する材料および金属材などが好ましく用いられ、被エッチング層9の厚さは、0.1?10μm程度が好ましい。
コ.【0028】ついで凹部内に硬化した硬化性インキ3を有する凹版1と、表面に粘着層11を有する被転写体7を圧着する(図1(f))。これらを圧着した際、気泡が混入する事を避け、粘着層11と硬化したインキ面の接触ができるだけ完全になるようにするためには、『1』平プレス機で圧着する、『2』可撓性を有する凹版1を用い、この端部から徐々に圧着していく、『3』粘着層11と凹版1の間に硬化性液体を入れ、端部から徐々に圧着していく等の手段を講じることが好ましい。
サ.【0031】次いで上記の方法で凹版1と被転写体7を圧着した後、凹版1を引き剥して、硬化したインキパターンを被転写体7の粘着層11の表面に転写する。すなわち硬化したインキ面と粘着層11を圧着させると、粘着層11が変形し、両者の間に粘着力が発生するので、凹版1を引き剥したときに、硬化したインキは完全に粘着層11の方に転写する。

上記刊行物の上記ケ.の記載から、被転写体7として被印刷体基板8上に被エッチング層9、フォトレジスト層10、粘着層11の順に形成されたものを想定でき、上記ク.の記載から、硬化性インキとしてUV硬化性インキ3を想定でき、上記イ.の記載から、半導体素子回路形成用のレジストパターンを形成するためのパターン形成方法を想定でき、上記イ.、コ.の記載から、被転写体7とUV硬化性インキ3を有する凹版1とを、所定の位置精度を保持して重ね合わせて加圧状態にすることが想定でき、その際、粘着層11と凹版1の間に硬化性液体を入れる工程を想定できる。
よって、上記記載及び図面を含む刊行物全体の記載から、刊行物には、以下の発明が開示されていると認められる。
「被印刷体基板8上に被エッチング層9、フォトレジスト層10、粘着層11の順に形成された被転写体7の表面にUV硬化性インキ3の半導体素子回路形成用のレジストパターンを形成するためのパターン形成方法において、少なくとも次の1.?5.の工程を有するパターン形成方法。
1.所望のパターンに相応するパターン状の凹部を設けるとともにその表面に離型層を形成した凹版1と表面に剥離層を形成したUV透過性を有する可撓性フィルムの間にUV硬化性インキ3を凹版1の凹部だけに存在するよう加圧する工程
2.加圧後すみやかにUV照射する工程
3.UV硬化性インキ3を硬化した後、可撓性フィルムを剥離して凹版の凹部に硬化したインキパターンを得る工程
4.-1表面に粘着層11を有する被転写体7と、UV照射によって硬化したUV硬化性インキ3を有する凹版1とを、所定の位置精度を保持して重ね合わせて加圧状態にする工程
4.-2その際、粘着層11と凹版1の間に硬化性液体を入れる工程
5.硬化したインキ面と粘着層11を圧着させた後、凹版1を引き剥す工程」

(b)原査定の拒絶の理由に周知例として示された、特開平3-19888号公報(以下、「周知文献」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
シ.「印刷画線部となる微細なパターン凹部を形成してなる印刷用凹版に硬化型インキを塗布してドクターにて凹部以外のインキを除去して凹部のみにインキを充填させるか、若しくは印刷画線部となる微細なパターン版部を製版してなる印刷用平版に硬化インキを塗布して該インキをパターン版部のみに着肉させてパターンニングし、次いで、凹版又は平版上のインキを熱又は放射線で硬化させた後に被印刷体に転写することを特徴とする微細パターンの印刷方法。」(特許請求の範囲請求項1)
ス.「版1は図示の如き平板状のものに限定されず、例えばゴムローラ等に巻き付けて円筒状に構威したものであっても良い。」(第3頁左下欄第7?9行)

4.対比
本願発明と刊行物記載の発明とを比較すると、刊行物記載の発明の「被印刷体基板8上に被エッチング層9、フォトレジスト層10、粘着層11の順に形成された被転写体7」、「UV硬化性インキ3」、「半導体素子回路形成用のレジストパターン」、「所望のパターン」、「所望のパターンに相応するパターン」、「剥離層を形成したUV透過性を有する可撓性フィルム」、「UV照射」、「所定の位置精度を保持」、「硬化性液体」、「硬化したインキ面と粘着層11を圧着させた後」は、それぞれ本願発明の「剛性板」、「電離放射線硬化型樹脂組成物」、「硬化凹凸パターン」、「目的とする凹凸パターン」、「凹凸パターンの逆形の凸凹パターン」、「離型性を有する電離放射線透過フィルム」、「電離放射線を照射」、「所定のアライメント精度を保持」、「液体」、「加圧状態にした後」に相当する。
刊行物記載の発明の「パターン形成方法」と、本願発明の「輪転方式の凹凸パターン形成方法」は、いずれも「凹凸パターン形成方法」の点で共通し、刊行物記載の発明の「凹版1」と、本願発明の「凹版輪転ロール」は、「凹版」を限度として一致する。
本願明細書の段落【0081】に実施例2として「プリント回路板製造で、銅貼り積層板へのエッチングレジストパターンの形成に使用する場合を述べる。」と記載されており、レジストパターンである以上、凹版輪転ロールの凹部間に電離放射線硬化型樹脂組成物が存在しないことが要求されることは明らかであって、したがって、本願発明の「所定の厚さを維持しながら連続的に挟み込む」は、凹版輪転ロールの凹部だけに電離放射線硬化型樹脂組成物が存在するように連続的に加圧することを含んでいるものと認められるから、刊行物記載の発明の「凹版1の凹部だけに存在するよう加圧する」と、本願発明の「所定の厚さを維持しながら連続的に挟み込む」は、いずれも「所定の厚さを維持しながら挟み込む」点で共通する。
刊行物記載の発明の「加圧後すみやかにUV照射する工程」が、凹版1と可撓性フィルムでUV硬化性インキ3を加圧後であって、可撓性フィルム剥離前であることは明らかであるから、本願発明の「挟み込んだ状態で電離放射線を照射する工程」に相当する。
刊行物記載の発明の「可撓性フィルムを剥離して凹版の凹部に硬化したインキパターンを得る工程」と、本願発明の「電離放射線透過フィルムを該凹版輪転ロール表面から剥離する工程」は、いずれも「電離放射線透過フィルムを該凹版表面から剥離する工程」で共通する。
刊行物記載の発明の「表面に粘着層11を有する被転写体7と、UV照射によって硬化したUV硬化性インキ3を有する凹版1とを、所定の位置精度を保持して重ね合わせて加圧状態にする工程」と、本願発明の「剛性板を該凹版輪転ロール上に供給し、電離放射線照射によって硬化した電離放射線硬化型樹脂組成物と、所定のアライメント精度を保持しながら重ね合わせて加圧状態にする工程」は、いずれも「剛性板を電離放射線照射によって硬化した電離放射線硬化型樹脂組成物と、所定のアライメント精度を保持しながら重ね合わせて加圧状態にする工程」の点で共通する。
刊行物記載の発明の「その際、粘着層11と凹版1の間に硬化性液体を入れる工程」と、本願発明の「該凹版輪転ロールと剛性板が接触を開始する部分に液体を供給する工程」は、いずれも「該凹版と剛性板が接触する部分に液体を供給する工程」の点で共通する。
刊行物記載の発明の「硬化したインキ面と粘着層11を圧着させた後、凹版1を引き剥す工程」と、本願発明の「加圧状態にした後、剛性板を該凹版輪転ロ-ル表面から剥離する工程」は、いずれも「加圧状態にした後、剛性板を該凹版表面から剥離する工程」の点で共通する。
よって、両者は、
「剛性板の表面に電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化凹凸パターンを形成するための凹凸パターン形成方法において、少なくとも次の1.?5.の工程を有する凹凸パターン形成方法。
1.目的とする凹凸パターンを、離型性の表面よりなる前記凹凸パターンの逆形の凸凹パターンとして有する、凹版と離型性を有する電離放射線透過フィルムの間に電離放射線硬化型樹脂組成物を所定の厚さを維持しながら挟み込む工程
2.挟み込んだ状態で電離放射線を照射する工程
3.電離放射線硬化型樹脂組成物を硬化した後、電離放射線透過フィルムを該凹版表面から剥離する工程
4.-1剛性板を電離放射線照射によって硬化した電離放射線硬化型樹脂組成物と、所定のアライメント精度を保持しながら重ね合わせて加圧状態にする工程
4.-2該凹版と剛性板が接触する部分に液体を供給する工程
5.加圧状態にした後、剛性板を該凹版表面から剥離する工程」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]本願発明は、輪転方式の凹凸パターン形成方法であって、したがって、凹版輪転ロールが用いられ、挟み込む工程では、電離放射線硬化型樹脂組成物が連続的に挟み込まれ、加圧状態にする工程では、剛性板を該凹版輪転ロール上に供給し、液体を供給する工程では、凹版輪転ロールと剛性板が接触を開始する部分に液体を供給するのに対し、刊行物記載の発明は、輪転方式ではなく、したがって、本願発明のような特定がない点。

5.判断
上記相違点について検討する。
刊行物記載の発明は、輪転方式ではないが、印刷の方式をどのようなものにするかは必要に応じ適宜採用し得るものであって、周知文献に示すように、放射線硬化性インキのパターンを作成する凹版をゴムローラ等に巻き付けて円筒状に構成、即ち、放射線硬化性インキのパターンを作成する際に輪転方式を採用することは周知技術(本願明細書の従来技術として記載された特開平8-321258号公報、特開平10-101373号公報も参照されたい。)であり、刊行物記載の発明の印刷方式に輪転方式を採用することは当業者が容易になし得る程度のことである。
そして、刊行物記載の発明に輪転方式を採用すれば、上記相違点に係る本願発明のような構成となる。

そして、本願発明の作用効果も、刊行物記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-27 
結審通知日 2008-03-04 
審決日 2008-03-18 
出願番号 特願平11-48618
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 國田 正久  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 藤井 靖子
尾崎 俊彦
発明の名称 剛性板表面上に凹凸パターンを形成する輪転方式の凹凸パターン形成装置、凹凸パターン形成方法、プラズマディスプレイの背面基板  

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