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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1177089 |
審判番号 | 不服2005-7255 |
総通号数 | 102 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-04-22 |
確定日 | 2008-05-14 |
事件の表示 | 特願2000-510449「家畜抗菌剤としての9a-アザライド」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月18日国際公開、WO99/12552、平成13年 9月25日国内公表、特表2001-515865〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年9月4日(優先権主張 1997年9月10日 米国,1998年3月25日 英国)を国際出願日とする出願であって、平成17年1月20日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年4月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月19日付で手続補正がなされたものである。 2.平成17年5月19日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年5月19日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 パスツレラ種、アクチノバシラス種、ヘモフィルス・ソムナス(Haemophilus somnus)又はマイコプラズマ種に起因するウシ又はブタの呼吸器感染、又は大腸菌、トレポネーマ・ハイオディセンテリー(Treponema hyodysenteriae)又はサルモネラ種に起因するウシ又はブタの腸内感染の治療又は予防方法であって、前記治療又は予防を必要とするウシ又はブタに治療又は予防的に有効な量の式Iの化合物を投与することを特徴とし、 式Iは下記: 【化1】(構造式は省略する) である化合物又は医薬的に許容されるその塩、又は医薬的に許容されるその金属錯体であり、前記金属錯体が銅、亜鉛、コバルト、ニッケル及びカドミウムから構成される群から選択され、前記式中、 R1は水素; 場合によりヒドロキシ、C1-3アルコキシ、シアノ、C1-3アルコキシカルボニル、ハロゲン、アミノ、C1-3アルキルアミノ又はジ(C1-3アルキル)アミノで置換されたC1-3アルキル; アリル; 又はプロパルギルであり、 R2とR3の一方は水素であり、他方はヒドロキシ又は-NH2である前記方法。」 と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である家畜の呼吸器又は腸内の細菌感染をウシ又はブタの呼吸器感染、腸内感染とし、さらにその原因菌を限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物(以下引用例という。)には、次の事項が記載されている。 1.特開昭59-104398号公報 4”-エピ-9-デオキソ-9a-メチル-9a-アザ-9a-ホモエリスロマイシンA(化合物IV)がE.coliや動物パスツレラ菌などに抗菌活性を有すること、経口投与後非常に良く吸収され、また非常に高いかつ長く持続する血清レベルを提供すること、ヒトを含む動物の全身の感染症を治療するために使用しうる旨の記載がなされている。(p3、6?7) 2.特開昭59-31794号公報 9-デオキソ-9a-メチル-9a-アザ-9a-ホモエリスロマイシンA(化合物IでR2R3が水素であるもの、11-アザ-10-デオキソ-10-ジヒドロエリスロマイシンAと同義)がパストウーレラ ムルトッタ(Pasturella multocita)、ヘモフィルス(Haemophilus)などに対し効果的な抗菌剤であること、インビボで経口活性を示すこと(p4?5) 3.特開昭60-231691号公報 9-デオキソ-9a-メチル-9a-アザ-9a-ホモエリスロマイシンA(式III)は例えば黄色ブドウ球菌、化膿連鎖球菌のような種々のグラム陽性菌と球状または楕円形の菌のようなある種のグラム陰性菌に対してインビトロ活性を示すこと、人を含めた動物における経口的非経口的投与ルートによって、例えば黄色ブドウ球菌及び化膿連鎖球菌のような種々のグラム陽性菌とある種のグラム陰性菌に対してインビボ活性であること。(p9) 4.特開昭60-25998号公報 9-デオキソ-9a-アザ-9a-エチル(又はn-プロピル)-9a-ホモエリスロマイシンA(式Iの化合物)がE.coli、パスツレラ マルトシダ(Pasturella multocida)、ヘモフィラス(Haemophilus)属、並びに生体内において多くのグラム陽性及びグラム陰性微生物に対して顕著な活性を示すこと、哺乳動物におけるその有用な経口的活性及び予想外の長時間の血清半減期において式(I)の化合物は9-デオキソ-9a-メチル-9a-アザ-9a-ホモエリスロマイシンA様であること(p3?5)。式1の化合物の抗バクテリア的有効量を哺乳動物におけるバクテリア感染症に使用すること(p4右下欄) 5.特開平1-153632号公報 9-デオキソ-9a-アリル(又はプロパルギル)-9a-アザ-9a-ホモエリスロマイシンAが試験管の中でヘモフィラス(Haemophilus)などに対してそして生体内で、グラム陽性及びグラム陰性微生物に対して著しい活性を示すこと、有用な経口活性を有し、哺乳動物における血清中半減期が予想外に長いこと。(p2) 6.特開昭63-77895号公報 11-アザ-10-デオキソ-10-ジヒドロエリスロマイシンAの金属錯体を人間及び動物の病気の感染の処置に使用すること(p3) (3)対比 引用例1には本願補正発明の式Iに包含される化合物である「4”-エピ-9-デオキソ-9a-メチル-9a-アザ-9a-ホモエリスロマイシンA」が、引用例4には同式に包含される化合物である「9-デオキソ-9a-アザ-9a-エチル(又はn-プロピル)-9a-ホモエリスロマイシンA」が、E.coli(大腸菌)や動物パスツレラ菌などに抗菌活性を有すること、経口投与後非常に良く吸収され、また非常に高いかつ長く持続する血清レベルを提供すること、ヒトを含む動物の全身の感染症を治療するために使用しうることが記載されており、この物質により動物の感染症を治療する方法が開示されている。 そこで、本願補正発明と引用例1、4に記載の治療方法とを比較すると、両者は、「パスツレラ種に起因する哺乳動物の感染、又は大腸菌に起因する哺乳動物の感染の治療方法であって、前記治療を必要とする動物に治療に有効な量の式Iの化合物を投与する治療方法。」である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点]本願補正発明は、パスツレラ種に起因するウシ又はブタの呼吸器感染、又は大腸菌に起因するウシ又はブタの腸内感染をその治療の対象とするのに対し、引用例1,4ではこの点の記載がされていない点 (4)判断 しかしながら、パスツレラ種菌感染に起因した哺乳動物の呼吸器疾患、大腸菌感染に起因する哺乳動物の腸疾患は当業界において周知であり、引用例1,4の化合物がこれらの細菌に対し有効に作用することが知られている以上、哺乳動物に属するウシやブタに対してこれを適用し感染症の治療を行うことに格別の困難性は見いだせない。 そして、本願明細書の記載から見て、本願補正発明の作用効果も、引用例1、4から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用例1、4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成17年5月19日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年10月7日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「家畜の呼吸器又は腸内の細菌感染の治療又は予防方法であって、前記治療又は予防を必要とする家畜に治療又は予防的に有効な量の9a-アザライドを投与することを特徴とし、9a-アザライドが 式I:【化1】(構造式は省略) をもつ化合物又は医薬的に許容されるその塩、又は医薬的に許容されるその金属錯体であり、前記金属錯体が銅、亜鉛、コバルト、ニッケル及びカドミウムから構成される群から選択され、前記式中、 R1は水素;場合によりヒドロキシ、C1-3アルコキシ、シアノ、C1-3アルコキシカルボニル、ハロゲン、アミノ、C1-3アルキルアミノ又はジ(C1-3アルキル)アミノで置換されたC1-3アルキル;アリル;又はプロパルギルであり、 R2とR3の一方は水素であり、他方はヒドロキシ又は-NH2である前記方法。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1?6、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「家畜の呼吸器又は腸内の細菌感染」について家畜の種類とその原因菌の特定を省いたものである。 原査定において引用された引用例1?6には式Iに包含される化合物が各種の病原微生物に対して抗菌活性を示すことが記載されている。 そうすると、このように各種動物の感染症の原因菌に対し抗菌作用のある式Iの化合物を家畜の感染症の治療乃至予防に使用することは当業者が容易に想到しうることである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1?6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-12-08 |
結審通知日 | 2005-12-13 |
審決日 | 2005-12-28 |
出願番号 | 特願2000-510449(P2000-510449) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中木 亜希 |
特許庁審判長 |
森田 ひとみ |
特許庁審判官 |
谷口 博 中野 孝一 |
発明の名称 | 家畜抗菌剤としての9a-アザライド |
代理人 | 大崎 勝真 |
代理人 | 小野 誠 |
代理人 | 川口 義雄 |