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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09D
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09D
管理番号 1177134
審判番号 不服2005-11046  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-13 
確定日 2008-04-28 
事件の表示 特願2002- 95402「無機塗料組成物とそれを利用した調湿機能材料及び建材と無機塗料組成物の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月15日出願公開、特開2003-292898〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年3月29日の出願であって、平成16年6月28日付けで手続補正がされたが、平成17年5月11日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成17年6月13日に拒絶査定に対する審判請求がされると共に手続補正がされ、平成18年10月12日付けで審尋が通知され、平成18年12月11日付けで回答書が提出され、平成19年6月21付けで、平成17年6月13日付けの手続補正が却下されると共に拒絶理由通知がされ、平成19年8月21日付けで、意見書が提出されたものである。
(以下、最初の拒絶理由通知後に提出された「平成16年6月28日付け手続補正」を「一次補正」、審判請求時に提出された「平成17年6月13日付け手続補正」を「二次補正」ともいう。)

第2 本願発明
上記のとおり、二次補正は却下されたので、本願請求項1?9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明9」といい、まとめて、「本願発明」ともいう。)は、一次補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
「配合割合30?70重量部(CaO換算)の塩焼き消石灰と、配合割合2?50重量部の有機樹脂バインダーと、配合割合2?40重量部の消泡剤と、配合割合2?30重量部のケイ酸カルシウム水和物粒子と、配合割合40?90重量部の水とを有することを特徴とする無機塗料組成物。」
【請求項2】
「無機塗料組成物全体を重量100%として、配合割合2?30重量%のセラミックス粒子を添加したことを特徴とする請求項1記載の無機塗料組成物。」
【請求項3】
「無機塗料組成物全体を重量100%として、配合割合1?50重量%のアパタイト又は配合割合1?50重量%のゼオライトを添加したことを特徴とする請求項1記載の無機塗料組成物。」
【請求項4】
「無機塗料組成物全体を重量100%として、配合割合1?50重量%の珪藻土焼成物又は配合割合1?50重量%のセピオライトとを添加したことを特徴とする請求項1記載の無機塗料組成物。」
【請求項5】
「無機塗料組成物全体を重量100%として、配合割合1?50重量%の酸化チタンを添加したことを特徴とする請求項1記載の無機塗料組成物。」
【請求項6】
「無機塗料組成物全体を重量100%として、有機樹脂バインダーで処理した配合割合1?20重量%の有機繊維又は無機繊維を添加したことを特徴とする請求項1記載の無機塗料組成物。」
【請求項7】
「前記ケイ酸カルシウム水和物粒子に重金属イオンあるいは重金属イオンを含む錯体を担持させたことを特徴とする請求項1記載の無機塗料組成物。」
【請求項8】
「請求項1乃至請求項7のいずれかに記載された無機塗料組成物を表面に塗布したことを特徴とする調湿機能材料。」
【請求項9】
「請求項1乃至請求項7のいずれかに記載された無機塗料組成物を表面に塗布したことを特徴とする建材。」

第3 当審で通知した拒絶理由
平成19年6月21日付けで通知した拒絶理由は、次のとおりである。
理由1:一次補正は、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、本願は、平成18年改正前特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
理由2:本願発明1?9は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1?3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開2002-012832号公報
刊行物2:国際公開第02/004569号パンフレット
刊行物3:特開2001-187861号公報

第4 当審の判断
1.理由1(特許法第17条の2第3項)について
(1)補正の内容
一次補正により、補正前の請求項1、
「配合割合30?70重量%(CaO換算)の消石灰と、配合割合2?50重量%の有機樹脂バインダーと、配合割合2?40重量%の消泡剤と、配合割合2?30重量%のケイ酸カルシウム水和物粒子と、配合割合40?90重量%の水とを有することを特徴とする無機塗料組成物。」
は、
「配合割合30?70重量部(CaO換算)の塩焼き消石灰と、配合割合2?50重量部の有機樹脂バインダーと、配合割合2?40重量部の消泡剤と、配合割合2?30重量部のケイ酸カルシウム水和物粒子と、配合割合40?90重量部の水とを有することを特徴とする無機塗料組成物。」
と補正され、これは、請求項1において、各配合成分の割合が、補正前に「重量%」だったものを、「重量部」とする補正を含むものである。

(2)当初明細書の記載
そこで、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書」という。)の記載を検討する。当初明細書には次の記載がある。
(ア)「配合割合30?70重量%(CaO換算)の消石灰と、配合割合2?50重量%の有機樹脂バインダーと、配合割合2?40重量%の消泡剤と、配合割合2?30重量%のケイ酸カルシウム水和物粒子と、配合割合40?90重量%の水とを有することを特徴とする無機塗料組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)
(イ)「例えば、特開2001-187867号公報(以下、イ号公報という。)には、「消石灰、ポリマー成分、酸化チタン及び水を含有する塗料組成物であって、(a)消石灰の配合割合が30?80重量%(固形換算)、(b)ポリマー成分がアクリル-スチレン共重合体,酢酸ビニルポリマー及びスチレン/ブタジエンゴムに属する群から選択される少なくとも1種の合成ポリマーであって、消石灰100重量部に対する配合割合が10?70重量部(固形換算)、並びに(c)酸化チタンの消石灰100重量部に対する配合割合が2?30重量部(固形換算)であり、」(段落0003)
(ウ)「上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である無機塗料組成物は、配合割合30?70重量%(CaO換算)の消石灰と、配合割合2?50重量%の有機樹脂バインダーと、配合割合2?40重量%の消泡剤と、配合割合2?30重量%のケイ酸カルシウム水和物粒子と、配合割合40?90重量%の水とを有するものである。」(段落0006)
(エ)「また、請求項2に記載の発明である無機塗料組成物は、請求項1に記載の無機塗料組成物に配合割合2?30重量%のセラミックス粒子を添加したものである。・・・請求項3に記載の発明である無機塗料組成物は、請求項1に記載の無機塗料組成物において、配合割合1?50重量%のアパタイト又は配合割合1?50重量%のゼオライトを添加したものである。・・・。
さらに、請求項4に記載の発明である無機塗料組成物は、請求項1に記載の無機塗料組成物において、配合割合1?50重量%の珪藻土焼成物又は配合割合1?50重量%のセピオライトを添加したものである。・・・請求項5に記載の発明である無機塗料組成物は、請求項1に記載の無機塗料組成物において、配合割合1?50重量%の酸化チタンを添加したものである。・・・。
請求項6に記載の発明である無機塗料組成物は、請求項1に記載の無機塗料組成物において、有機樹脂バインダーで処理した配合割合1?20重量%の有機繊維又は無機繊維を添加したものである。・・・。」(段落0007?0012)
(オ)「なお、消石灰、有機樹脂バインダー、消泡剤、ケイ酸カルシウム水和物粒子の配合割合は、消石灰30?70重量%(CaO換算)、有機樹脂バインダー2?50重量%、消泡剤2?40重量%、ケイ酸カルシウム水和物粒子2?30重量%、水40?90重量%であることが必要である。」(段落0016)
(カ)「なお、セラミックス粒子の配合割合は、無機塗料組成物全体を重量100%とした場合に、2?30重量%であることが必要である。・・・。
なお、アパタイト及びゼオライトの配合割合は、無機塗料組成物全体を重量100%とした場合に、アパタイト1?50重量%、ゼオライト1?50重量%であることが必要である。・・・。
なお、珪藻土及びセピオライトの配合割合は、無機塗料組成物全体を重量100%とした場合に、それぞれ1?50重量%であることが必要である。・・・。
配合割合は無機塗料組成物全体を重量100%とした場合に、それぞれ1?50重量%であることが必要である。・・・配合割合は、無機塗料組成物全体を重量100%とした場合に、無機繊維、有機繊維はそれぞれ1?20重量%である。」(段落0018?0022)
(キ)「配合割合は50重量%であり、これに対して水を配合割合40?90重量%で調整し、らいかい機に投入して1時間攪拌混合して、無機塗料組成物ペーストを作成した。」(段落0026)
(ク)「ケース1における無機塗料組成物は、比表面積10,000ブレーンの消石灰に水を添加し、消石灰スラリーを作成する。配合割合は50重量%であり、この消石灰スラリーに消泡剤を配合割合として5重量%で添加し、水溶性有機バインダーとして酢酸ビニルを配合割合10重量%で添加した。さらに、10重量%のケイ酸カルシウム水和物粒子(ケイ石、石灰及び水酸化アルミニウムを加え、水を加えてスラリーとして攪拌しながらオートクレーブで180℃10気圧で24時間水熱処理を行いトバモライトを合成した。)、さらに板状セラミックス粒子を5重量%添加し、固形分に対して水分を調整し、らいかい機に投入して1時間攪拌混合して無機塗料組成物ペーストを作成した。」(段落0027)
(ケ)「また、ケース2における無機塗料組成物は、比表面積10,000ブレーンの消石灰に水を添加し、消石灰スラリーを作成する。配合割合は50重量%であり、この消石灰スラリーに消泡剤を配合割合として5重量%で添加し、水溶性有機バインダーとして酢酸ビニルを配合割合10重量%で添加した。さらに、10重量%のケイ酸カルシウム水和物粒子(ケイ石、石灰及び水酸化アルミニウムを加え、水を加えてスラリーとして攪拌しながらオートクレーブで180℃10気圧で24時間水熱処理を行いトバモライトを合成した。)、さらに板状セラミックス粒子を10重量%、アパタイトを5重量%、ゼオライトを5重量%添加し、固形分に対して水分を調整し、らいかい機に投入して1時間攪拌混合して無機塗料組成物ペーストを作成した。」(段落0028)
(コ)「ケース3における無機塗料組成物は、比表面積10,000ブレーンの消石灰に水を添加し、消石灰スラリーを作成する。配合割合は50重量%であり、この消石灰スラリーに消泡剤を配合割合として5重量%で添加し、水溶性有機バインダーとして酢酸ビニルを配合割合10重量%で添加した。さらに、10重量%のケイ酸カルシウム水和物粒子(ケイ石、石灰及び水酸化アルミニウムを加え、水を加えてスラリーとして攪拌しながらオートクレーブで180℃10気圧で24時間水熱処理を行いトバモライトを合成した。)、さらに板状セラミックス粒子を10重量%、珪藻土を5重量%、セピオライトを5重量%添加し、固形分に対して水分を調整し、らいかい機に投入して1時間攪拌混合して無機塗料組成物ペーストを作成した。」(段落0029)
(サ)「最後にケース4における無機塗料組成物は、比表面積10,000ブレーンの消石灰に水を添加し、消石灰スラリーを作成する。配合割合は50重量%であり、この消石灰スラリーに消泡剤を配合割合として5重量%で添加し、水溶性有機バインダーとして酢酸ビニルを配合割合10重量%で添加した。さらに、10重量%のケイ酸カルシウム水和物粒子(ケイ石、石灰及び水酸化アルミニウムを加え、水を加えてスラリーとして攪拌しながらオートクレーブで180℃10気圧で24時間水熱処理を行いトバモライトを合成した。)、さらに板状セラミックス粒子を10重量%、酸化チタンを5重量%、ゼオライトを5重量%添加し、固形分に対して水分を調整し、らいかい機に投入して1時間攪拌混合して無機塗料組成物ペーストを作成した。」(段落0030)

(3)判断
当初明細書の請求項1は、「配合割合30?70重量%(CaO換算)の消石灰と、配合割合2?50重量%の有機樹脂バインダーと、配合割合2?40重量%の消泡剤と、配合割合2?30重量%のケイ酸カルシウム水和物粒子と、配合割合40?90重量%の水とを有することを特徴とする無機塗料組成物。」(摘記(ア))というものであって、配合割合は、すべて「重量%」で記載され、また、発明の詳細な説明においても、【発明が解決しようとする課題】として各請求項について記載された具体的説明である段落0006?0012(摘記(ウ)、(エ)参照)においても、各成分の配合割合は「重量%」で示され、【発明の実施の形態】として記載された明細書の段落0013?0025(摘記(オ)、(カ)参照)においても同様に、各成分の配合割合は「重量%」で示され、明細書の段落0026からは実施例が記載されている(摘記(キ)?(サ)参照)が、ここにおいても、各成分の配合割合は「重量%」で示されている。
唯一、「重量部」で表されているのは、明細書の段落0003の、従来技術に関する記載のみ(摘記(イ))である。
そうしてみると、明細書の如何なる箇所にも、本願発明について「重量部」で記載されているところがないのであるから、「重量%は重量部の誤記である」といえる根拠がない。
一方、前審において平成16年4月23日付けの拒絶理由通知で指摘したように、「請求項1には『配合割合40?90重量%の水』と記載されているが、他の成分の含有量からみて、水が90重量%であることはあり得ない」ことも事実であるが、であるからといって、これが、「90という数字の誤記」ではなく、「重量%が間違っており、これは重量部の誤記」であったとすることもできない。
以上のことから、「重量部」で規定される配合割合については、当初明細書に記載されておらず、また、当初明細書の記載から自明な事項であるとすることもできず、したがって、この補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

(4)まとめ
以上のとおり、本願は、願書に添付した明細書についてした補正が、平成14年改正前特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

2.理由2(特許法第29条第2項)について
(1)刊行物に記載された事項
刊行物1?3には、次の事項が記載されている。
刊行物1 :特開2002-12832号公報
(1-1)「【請求項1】 通気性バインダー固形分10重量部に対して、珪酸カルシウムの粉粒体1?100重量部を含有する水系塗装材。」(特許請求の範囲の請求項1)
(1-2)「本発明は、建物の室内の湿度を調整する機能、すなわち、調湿性に優れた塗り壁材を得るために用いられる水系塗装材に関する。」(段落0001)
(1-3)「これらの珪酸カルシウムの粉粒体の中で、トバモライトを主成分とするオートクレーブ養生軽量気泡コンクリート微粉末が特に好ましく使用される」(段落0004)
(1-4)「通気性バインダーには、例えば、気硬性物質、水硬性物質、水分散性塗料用樹脂等の中の1種またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。ここで、気硬性物質とは、二酸化炭素や水蒸気と反応して硬化する物質である。例えば、・・・消石灰、・・・などが挙げられるが、・・・が好ましい。」(段落0007)
(1-5)「水分散性塗料用樹脂は、公知の重合性単量体を重合して得られる重合体のラテックスである。」(段落0008)
(1-6)「これらの通気性バインダーの中では、気硬性物質、水分散性塗料用樹脂が好ましく、特に得られる水系塗装材の塗膜の表面硬度が高くなるという観点から気硬性物質が好ましい。」(段落0011)
(1-7)「また、本発明の水系塗装材には、必要に応じて、・・・消泡剤、・・・などを加えることができる。」(段落0016)
(1-8)「得られた混合物の水分量を調整し、本発明の水系塗装材とし、所定の壁材、石膏ボード、合板等に塗布して用いる。」(段落0019)
(1-9)「【実施例2】消石灰(村樫石灰工業(株)製 左官用消石灰)10重量部、オートクレーブ養生軽量気泡コンクリート(旭化成(株)製 ヘーベル 登録商標)の粉粒体(平均粒径 280μm)5重量部、5号珪砂5重量部、水15重量部を混合した後、上述の石膏ボードの150×150mmの面に塗布し、これを乾燥して水系塗装材の塗膜を形成した。」(段落0022)
(1-10)「【実施例4】アクリル-スチレン共重合体エマルジョン(エスケー化研(株)製レナコートを固形分濃度50%にしたもの)20重量部、オートクレーブ養生軽量気泡コンクリート(旭化成(株)製 ヘーベル 登録商標)の粉粒体(平均粒径 88μm)10重量部、その他添加剤(増粘剤、分散剤、造膜助剤、消泡剤)1重量部を混合した後、上述の石膏ボードの150×150mmの面にこれを塗布し、乾燥して水系塗装材の塗膜を形成した。」(段落0024)

刊行物2 :国際公開第02/004569号パンフレット
(2-1)「石灰、セッコウ、リン酸カルシウム及びケイ酸カルシウムよりなる群から選択される少なくとも1種のカルシウム化合物、水溶性若しくは水分散性樹脂、光触媒活性を有する無機酸化物、及び水を含有する被覆用組成物。」(請求の範囲 1.)
(2-2)「なお、本発明の被覆用組成物にはカルシウム化合物を5?90重量%の割合で含み、・・・で含有するものが包含される。カルシウム化合物100重量部に対する樹脂及び無機酸化物の配合割合はかかる範囲で適宜調製でき、一例を挙げると次の範囲を例示することができる。」(24頁4?9行)
(2-3)「前述する各種の成分は、水とともに混合されて、被覆用組成物の総固形分含有量が組成物100重量%あたり40?90重量%、好ましくは40?80重量%、より好ましくは50?70重量%となるように配合調整することができる。」(25頁4?6行)
(2-4)「実施例3
石灰 ・・・
・・・
シリコン系消泡剤 ・・・
・・・
全量(固形分) 100.0重量部
・・・を調整した。」(35頁12?24行)

刊行物3 :特開2001-187861号公報
(3-1)「消石灰、ビニル樹脂、酸化チタン及び水を含有する塗料組成物であって、(a)消石灰の配合割合が30?80重量%(固形換算)、(b)ビニル樹脂が・・・ポリマーであって、該樹脂の消石灰100重量部に対する配合割合が10?70重量部(固形換算)、並びに(c)酸化チタンの消石灰100重量部に対する配合割合が2?30重量部(固形換算)である建築用塗料組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)
(3-2)「無機質充填剤としては・・・などの粉末状、繊維状もしくは粒状の無機質材料を挙げることができる。」(段落0034)
(3-3)「また無機細骨材等、無機質充填剤を本発明の塗料組成物に配合する場合のその割合は、適宜設定することができるが、・・・適宜選択でき制限はされないが、通常消石灰100重量部に対して0.05?5重量部の範囲、特に0.1?4重量部の範囲を例示することができる。」(段落0035)
(3-4)「消泡剤としては、・・・これらの配合割合も、適宜選択でき制限はされないが、通常消石灰100重量部に対して0.01?5重量部の範囲、特に0.1?2重量部の範囲を例示することができる。」(段落0036)

(2)対比・判断
本願発明1について
刊行物1には、「通気性バインダー固形分10重量部に対して、珪酸カルシウムの粉粒体1?100重量部を含有する水系塗装材。」(摘記1-1)が記載され、通気性バインダーとして気硬性物質、水硬性物質、水分散性塗料用樹脂の中の2種以上の混合物が使用でき(摘記1-4)、これらの通気性バインダーの中では、気硬性物質、水分散性塗料用樹脂が好ましいこと(摘記1-6)が記載されているから、通気性バインダーとして気硬性物質と水分散性塗料用樹脂を併用することは刊行物1に記載されているといえるところ、この気硬性物質の具体例として消石灰があり(摘記1-4、1-9)、水分散性塗料用樹脂とは有機樹脂バインダーである(摘記1-5、1-6)。
さらに、刊行物1には、消泡剤の使用も記載され(摘記1-7)、「トバモライト」とは珪酸カルシウム水和物であって、トバモライトを主成分とするオートクレーブ養生軽量気泡コンクリート微粉末は珪酸カルシウム水和物の粉粒体であるから、珪酸カルシウムの粉粒体として珪酸カルシウム水和物からなる粉粒体を採用することも記載され(摘記1-3)、かつ、実施例2(摘記1-9)で使用されている「消石灰(村樫石灰工業(株)製 左官用消石灰)」は、塩焼き消石灰であって、水も併用されているから、刊行物1には、
「通気性バインダーとして、塩焼き消石灰、有機樹脂バインダーを10重量部、ケイ酸カルシウム水和物粒子1?100重量部、消泡剤、水、を有する水系塗装材」
の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。
そこで、本願発明1と刊行物1発明とを対比すると、「無機塗料組成物」と「水系塗装材」とは同じものといえるから、両者は、
「塩焼き消石灰と、有機樹脂バインダーと、消泡剤と、ケイ酸カルシウム水和物粒子と、水とを有することを特徴とする無機塗料組成物。」
である点で一致し、
(あ)各成分の配合割合が本願発明1においては特定の配合量であるのに対し、刊行物1発明においては、本願発明1の配合量のようには特定されていない点、
でのみ、相違する。
しかしながら、その配合割合は刊行物1?3の各成分の配合割合(摘記1-1、1-9、1-10、2-2?2-4、3-1、3-3、3-4等)からみても格別のものではなく、当業者が適宜に決め得る程度のものであるから、各成分の配合量を本願発明1のようにすることは、刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が適宜なし得る程度のものであるといえる。

本願発明8、9について
刊行物1発明は、調湿性に優れた塗り壁材に用いるものであり(摘記1-2)、刊行物1には壁材、石膏ボード、合板等(摘記1-8)、すなわち、建材とすることも記載されているから、本願発明8、9も、刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

本願発明2?7について
本願発明2?7は、本願発明1に第三成分を添加し、その成分が有する特性をさらに付与するものであるが、このような第三成分を添加し、その成分が有する特性をさらに付与することは当業界において周知のことであるから(刊行物2、刊行物3、必要ならば、特開2000-177065号公報、特開2000-110300号公報、特開平11-189481号公報、参照。)、本願発明2?7は、刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

本願発明の効果について
本願発明は、「調湿機能を有する漆喰などに代表される無機塗料組成物に係わり、特には強度と安定性さらに隠ぺい力の改善を図った無機塗料組成物とそれを利用した調湿機能材料及び建材と無機塗料組成物の製造方法に関する。」(明細書段落0001)ものであって、「無機塗料組成物のペーストを安定化させ、かつ硬化後の硬さや界面との接着を強化することができる。」(同段落0035)という効果を奏するものであるところ、刊行物1発明においても、「建物の室内の湿度を調整する機能、すなわち、調湿性に優れた塗り壁材を得るために用いられる水系塗装材に関する」ものであって(摘記1-2)、気硬性物質として代表的な消石灰を用いた場合、「特に得られる水系塗装材の塗膜の表面硬度が高くなるという観点から気硬性物質が好ましい。」(摘記1-6)ということも知られているのであり、また、第三成分を添加したことによる効果も、例えば刊行物2、3に記載されるように当業者に周知といえるから、本願発明の効果は、刊行物1?3に記載された事項から、当業者の予測の範囲内のものであるといえる。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明1?9は、本願出願前に頒布された刊行物1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 請求人の主張
1.主張の内容
平成19年6月21日付けの拒絶理由通知に対して提出された、平成19年8月21日付けの意見書において、請求人は次の主張をしている。
(1)上記拒絶理由通知と同日付けでなされた、二次補正の却下処分は、以下の(i)?(iv)のとおり、失当である。
(i)平成16年4月23日付け拒絶理由通知において、審査官も指摘するとおり、当初明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載される「水」の配合割合が少なくとも90重量%であることはあり得ず、「水」の他にも「消石灰」の70重量%、「有機樹脂バインダー」の50重量%及び「消泡剤」の40重量%もあり得ない。
今回のような配合においては、まず水分を除いて固形分換算で計算する方が容易であり、特に実験などでは途中に成分を追加するような場合にも便利であるため、重量部の表記により固形分の比率の把握を行なっている。また、原料によって最後に加えられる水の量も大きく変化するため、添加水分の把握のためにも最初の基本配合の場合には、特に重量部で成分が表現されることが重要である。そして、このような配合においては、水分を外割(重量部)で記載しておき、最後に水分を加えた全重量部で各原料の部数を除して重量%とするのが通常である。
ところが、今回の出願時の明細書においては、基本配合である請求項1においても重量%と誤記してしまったために、矛盾を生じてしまい、そこで、誤記として訂正を行ったものであって、新規事項の加入には該当しない。
(ii)二次補正については、審判請求時に行った補正であるが、前置審査及び審判中の平成18年10月12日付け審尋の手続前においても二次補正の特許法に対する違反については何ら指摘がなかったものである。審尋の回答書も提出した後になって、審判請求時に行った二次補正が却下されるのは著しく審判請求人(出願人)の利益を損ねるものである。
(iii)そもそも、二次補正は、最初の拒絶理由通知書に対する応答時になされた平成16年6月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至請求項9に記載された発明のうち、請求項4、8、9を残して、その他の請求項を削除する補正である。
すなわち、審判請求時に行った二次補正によって新規事項が加入したわけではなく、たとえ新規事項が加入していたとしても、既に審査段階において加入していたものであると考えるのが妥当である。
審判長殿は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであると認定するが、同項の規定では審判の請求前にした補正を除くというかっこ書きで示す除外規定がある。二次補正後の請求項1は一次補正における請求項4の記載を減縮するもので実質同一であり、元々の記載内容は審査時に実施された補正であり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項における前述の除外規定が適用されるべきであると思料するものである。
(iv)以上述べたことにより、審判長殿の認定した二次補正の却下処分は失当な処分であり到底承服できないものである。従って、却下処分の撤回を強く求めるものである。

(2)拒絶理由1(特許法第17条の2第3項)について
上記(1)(i)に述べた内容と同じである。

(3)拒絶理由2(特許法第29条第2項)について
これまでの補正が妥当であり、特許法第159条第1項で準用される同法第53条第1項の規定による却下や特許法第17条の2第3項の規定により拒絶されるべきではないと思料するため、二次補正後の請求項1乃至3に記載された発明に対する理由2の適用について反論するものである。

2.請求人の主張の検討
上記の主張について検討する。
(1)二次補正の却下処分について
上記(i)にあるように、請求人は、「当初明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載される「水」の配合割合が少なくとも90重量%であることはあり得ず」、「今回のような配合においては、容易であり、便利であるため、重量部の表記により固形分の比率の把握を行ない、水分を外割(重量部)で記載しておき、最後に水分を加えた全重量部で各原料の部数を除して重量%とするのが通常であるところ、出願時の明細書においては、基本配合である請求項1においても重量%と誤記してしまったために、矛盾を生じてしまい、そこで、誤記として訂正を行ったものであって、新規事項の加入には該当しない」旨、主張する。
しかしながら、上記「90重量%」の、「90」という数字は正しく、「重量%」が誤っており、これは「重量部」の誤記である、とする根拠が当初明細書から読み取れないことは、上記「第4 1.(3)」に示したところである。
また、請求人主張の如く、固形分を配合するところまでを重量部で表し、最後に水分を加えた全重量部で各原料の部数を除して重量%とするなら、「ここまでは重量部の表記であって、ここからは重量%の表記である」、ということを、当業者なら強く意識して明細書に記載するものと思われ、これを取り違えるなどということは想定し難い。
このことは、本願と同様に塗料組成物についての発明を記載した刊行物2、3において、重量部と重量%とを使い分け、書き分けていることからも窺える(摘記2-2、3-1、等参照)。
したがって、特許請求の範囲に「重量部」なる語を含む二次補正は、当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえず、請求人の主張は失当である。
上記(ii)の主張は、二次補正の却下処分の手続についての主張であるところ、審判請求時の補正については、却下をする理由を予め請求人に伝えることはしない。
(必要なら、東京高裁平成15年(行ケ)第177号判決の、
「特許法159条1項及び2項において,同法53条1項及び50条ただし書の規定を,同法17条の2第1項4号の場合も含めるように読み替えて準用しており,同法53条1項に基づき,拒絶査定不服審判において,同審判の請求の日から30日以内になされた補正の却下の決定をするときは,同法50条ただし書により,特許出願人に対し,拒絶の理由を通知する必要はないのである。」なる判示を参考にされたい。)
また、(iii)において、請求人は、「本件補正のうち、重量%を重量部とするものは、最初の拒絶理由通知に対する応答中になされたものであって、審判請求時になされたものではないから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項における前述の除外規定が適用されるべきである」と主張しているが、審判請求時の補正に当初明細書に記載した事項の範囲内でない事項が加入されている場合は、その補正を却下せねばならないのであるから、請求人の主張は採用できない。
(必要なら、知財高裁平成18年(行ケ)第10118号判決の、
「本願について適用される特許法(平成14年法律24号による改正前のもの)17条の2第3項によれば,『第1項の規定により明細書又は図面について補正をするときは,…願書に最初に添付した明細書又は図面…に記載した事項の範囲内においてしなければならない。』とされている。この規定は,・・・,補正発明が当初発明の範囲を超える部分があるときは,補正は許されないことを明らかにしたものである。これは,先願主義の立場をとる我が国の特許法の下では,補正の効果は出願時に遡ることから,補正は出願時の当初発明の範囲内であるときに限って許されると解されるからである。」なる判示、また、
知財高裁平成19年(行ケ)第10056号判決の、
「さらに,原告は,発明に該当しないという拒絶理由は,本件補正により生じた拒絶理由ではなく,本件補正の前から既に存在していたが見落とされていた拒絶理由であるから,本件補正について,特許法17条の2第5項が適用されるべきではない旨主張する。しかし,補正の却下を定めた上記規定において,原告主張を裏付けるといえる規定はなく,原告の見解は独自のものである。」なる判示、を参考にされたい。)
したがって、二次補正の却下処分は、正当であって、請求人の(iv)の主張も失当である。

(2)拒絶理由1(特許法第17条の2第3項)に対する請求人の主張について
上記「(1)」の(i)の主張に関する箇所に示したとおりである。

(3)拒絶理由2(特許法第29条第2項)に対する請求人の主張について
該主張は二次補正後の発明についての特許性を主張するものであって、本願発明1?9についてのものではないので、採用できない。

(4)まとめ
平成19年6月21日付け拒絶理由通知に対して、請求人は上記の意見を述べるのみで、補正書による対応は何らなされなかったところ、以上のとおり、請求人の主張はいずれも採用することができない。

第6 付記
請求人は、二次補正は平成14年改正前特許法第17条の2第3項の規定に違反するものではなく、採用されるべきである、と主張をしている。
そこで、念のため、二次補正後の本願発明でも、その発明は、独立して特許を受けることができるものではないことを、ここに申し添える。

二次補正後の請求項1に係る発明は、その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「配合割合30?70重量部(CaO換算)の塩焼き消石灰と、配合割合2?50重量部の有機樹脂バインダーと、配合割合2?40重量部の消泡剤と、配合割合2?30重量部のケイ酸カルシウム水和物粒子と、配合割合40?90重量部の水とを有する無機塗料組成物全体を重量100%として、配合割合1?50重量%のセピオライトとを添加したことを特徴とする無機塗料組成物。」(以下、「二次補正発明」という。)

二次補正発明は、下記の刊行物1?3、A,Bに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1?3:「第3 記」に示した刊行物1?3
刊行物A:特開2000-177065号公報
刊行物B:特開2000-110300号公報

刊行物1?3に記載された事項
上記「第4 2.(1)」に「(1-1)?(3-4)」に摘記したとおりである。
刊行物Aに記載された事項
(A-1)「【請求項1】基材上に、活性白土又はセピオライトからなる吸放湿性材料の粒子を含有してなるポリオレフィン系樹脂を、熔融押出して積層した吸放湿性層を有することを特徴とする、内装用吸放湿性粧材。」(特許請求の範囲の請求項1)
(A-2)「本発明は、家屋等の建築物の内装用として用いられる吸放湿性層を有する内装用吸放湿性化粧材に関する。」(段落0001)
(A-3)「セピオライトも強力な吸放湿材であり、繊維状、塊状のものがあるが、その吸放湿特性の観点から、本発明では繊維状、特に短繊維状のものの使用が好ましい。」(段落0037)
刊行物Bに記載された事項
(B-1)「【請求項1】天然多孔質材、セピオライト、消石灰、天然強化繊維及び水とからなる調合素地を成形、常温で養生してなる天然多孔質壁材。」(特許請求の範囲の請求項1)
(B-2)「セピオライトは、珪酸マグネシウムからなる粘土鉱物で通気性、吸着性、揺変性及び固結性を有し、繊維性のものと粉末状のものがあるが、本発明の土壁材では繊維性のセピオライトを好適に使用できる。繊維性のセピオライトは粉末性のセピオライトに比べ、成形性に優れるからである。また、セピオライトの有する通気性により前記天然多孔質材と相まって、本発明の土壁材に調湿性を付与することもできる。さらに、セピオライトは、粘着性に優れるので、結合材としても作用するものである。セピオライトは、前記天然多孔質材が100重量部に対して、30?50重量部の割合で加えるのが好ましい。」(段落0008)

刊行物1には、前記したとおり、刊行物1発明、すなわち、
「通気性バインダーとして、塩焼き消石灰、有機樹脂バインダーを10重量部、ケイ酸カルシウム水和物粒子1?100重量部、消泡剤、水、を有する水系塗装材」
の発明が記載されている。
そこで、二次補正発明と刊行物1発明とを対比すると、両者は、
「塩焼き消石灰と、有機樹脂バインダーと、消泡剤と、ケイ酸カルシウム水和物粒子と、水とを有することを特徴とする無機塗料組成物。」
である点で一致し、
(か)無機塗料組成物の成分として、二次補正発明においては、セピオライトが含まれているのに対し、刊行物1発明においては、セピオライトが含まれていない点、
(き)各成分の配合割合が二次補正発明においては特定の配合量であるのに対し、刊行物1発明においては、二次補正発明の配合量のようには特定されていない点、
で、相違する。

相違点(か)について
セピオライトが吸放湿性能を有し、建築材料の調湿剤として用いられることは、刊行物A、Bに記載されているように公知の技術であり(摘記A-1?A-3、B-2)、刊行物1発明も必要に応じて第三成分を含むものである(摘記1-7)から、刊行物1発明の無機塗料組成物に、更なる調湿機能の向上を目指してセピオライトを添加する程度のことは当業者にとって容易なことである。
相違点(き)について
上記「第4 2.(2)」の相違点(あ)について示したのと同じである。

二次補正発明の効果について
二次補正後の本願明細書に記載された、セピオライトを含有させた無機塗料組成物についての効果は、「請求項4に記載の発明である無機塗料組成物は、請求項1に記載の無機塗料組成物において、配合割合1?50重量%の珪藻土焼成物又は配合割合1?50重量%のセピオライトを添加したものである。上記構成の無機塗料組成物においては請求項1と同様の作用の他、珪藻土焼成物あるいはセピオライトの添加による調湿機能の増強作用を有する。」(段落0008)、「機能性材料として珪藻土焼成物又はセピオライトを添加した実施例3について説明する。(特に請求項4に対応)セピオライトとは含水マグネシウムシリケートであり、吸着機能や調湿機能を有するものである。また、珪藻土焼成物も調湿機能を有するものである。これらの機能性材料を添加することによって建築物内に存在する有害な粒子やイオンを吸着させたり、無機塗料組成物が本来持っている調湿機能を更に強化させることができる。なお、珪藻土及びセピオライトの配合割合は、無機塗料組成物全体を重量100%とした場合に、それぞれ1?50重量%であることが必要である。」(段落0021)、【表1】中の「ケース3(常温)」のもの(表は省略)(段落0032)、「請求項4記載の無機塗料組成物では、調湿機能の改善を図ることができ、」(段落0036)、であり、いずれも、セピオライトを配合したから吸着機能や調湿機能が改善される、というものであって、特定の成分と特定比で配合したから特別の効果を奏した、というものではない。
一方、セピオライトが吸着性、調湿性を有することは知られていることであり(摘記A-1?A-3、B-2)、セピオライトを配合すれば、当然に吸着性や調湿性の効果を発揮するであろう、と予測されるところであるから、二次補正発明の奏する効果は、これらの刊行物に記載されたものから当業者が予測しうるところである。
なお、請求人が、平成17年7月13日付けの手続補正書(審判請求書の補正書)、平成18年12月11日付け回答書、平成19年8月21日付け意見書で示した、相乗効果を伴うようなセピオライトの効果については明細書の記載に基づく主張ではなく、採用できない。

第7 むすび
以上のとおり、本願は、願書に添付した明細書についてした補正が、平成14年改正前特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、かつ、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その余のことを検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-26 
結審通知日 2008-02-29 
審決日 2008-03-17 
出願番号 特願2002-95402(P2002-95402)
審決分類 P 1 8・ 561- WZ (C09D)
P 1 8・ 121- WZ (C09D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小柳 正之桜田 政美滝口 尚良藤原 浩子  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 岩瀬 眞紀子
鈴木 紀子
発明の名称 無機塗料組成物とそれを利用した調湿機能材料及び建材と無機塗料組成物の製造方法  
代理人 井上 浩  
代理人 井上 浩  

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