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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C25D
管理番号 1177141
審判番号 不服2005-25279  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-28 
確定日 2008-04-28 
事件の表示 特願2002-150118「スズめっき浴、及び電子部品のめっき方法、並びに電子部品」拒絶査定不服審判事件〔平成15年12月 3日出願公開、特開2003-342778〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年5月24日の出願であって、請求項1?5に係る発明は、平成18年1月25日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】水素イオン指数pHが2.0?5.0となるように調製されると共に、
グルコン酸、グルコヘプトン酸、グルコノラクトン、グルコヘプトノラクトン、グルコン酸アルカリ金属塩、及びグルコヘプトン酸アルカリ金属塩の中から選択された少なくとも1種以上の錯化剤が含有され、
最大200A/m^(2)までの電流密度範囲全域で、スズの析出電位が、標準水素電極電位を基準に-0.9V又は-0.9Vよりも電気化学的に貴な電位とされ、
かつ、一般式
【化1】 (CH_(2)CH_(2)O)_(p)H
/
R-N
\
(CH_(2)CH_(2)O)_(q)H
(但し、Rは炭素数nが6?18のアルキル基、p+qは12?80の整数)で表されるポリオキシエチレンアルキルアミン、
及び一般式
【化2】 (CH_(2)CH_(2)O)_(p)H
/
R-CON
\
(CH_(2)CH_(2)O)_(q)H
(但し、Rは炭素数nが6?18のアルキル基、p+qは12?80の整数)で表されるポリオキシエチレンアルキルアミドのうちの少なくとも1種以上が添加されていることを特徴とするスズめっき浴。」

2.引用例とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に国内において頒布された特開平10-306396号公報(以下、「引用例1」という。)、特開2001-254194号公報(以下、「引用例2」という。)、及び、特開2000-26991号公報(以下、「引用例3」という。)、特開2001-240993号公報(以下、「引用例4」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)引用例1:特開平10-306396号公報
(1a)「【請求項1】 以下の構成を具備する錫・・・電気メッキ浴。
(1)第1錫塩・・・
(2)錯化剤
(3)光沢剤として、下記一般式[A]、[B]のいずれかで示されるポリオキシエチレンアルキルアミンもしくはポリオキシエチレンアルキルアミド
一般式[A] (CH_(2)CH_(2)O)_(m)H
/
R-N
\
(CH_(2)CH_(2)O)_(n)H
(ただし、Rは炭素数6?18のアルキル基、m+nは2?11の整数)
一般式[B] (CH_(2)CH_(2)O)_(m)H
/
R-CON
\
(CH_(2)CH_(2)O)_(n)H
(ただし、Rは炭素数6?18のアルキル基、m+nは2?11の整数)
(4)pH3?pH10 」(特許請求の範囲の請求項1)
(1b)「【請求項2】 前記(2)の錯化剤は・・・グルコン酸・・・またはグルコノラクトンのうち少なくとも1種類を用いることを特徴とする請求項1に記載の錫・・・電気メッキ浴。」(特許請求の範囲の請求項2)
(1c)「電子部品の構成材料であるセラミックやガラスの溶出は、pHに大きく依存し、特にpH2以下またはpH10以上の領域で顕著となる。・・・絶縁体部への金属析出は、絶縁体部の浸食度合いと、メッキ浴の光沢剤の種類に大きく影響される。」(【0010】)
(1d)「光沢剤が界面活性剤として・・・有効に作用する・・・」(【0016】)
(1e)「光沢剤において、m、nで示されるエチレンオキサイド基の付加数は重要で、多過ぎる場合には、溶解性は高まるものの抑制効果が失われる。具体的な範囲としては、通常、m+nは11以下・・・である。」(【0018】)
(1f)「【実施例】 表1に試料No.1?試料No.11の組成とpHと浴温(℃)を示す。・・・また、表1の試料からなるメッキ浴を使用し、鉛ガラスを焼き付けた・・・ニッケル単板に電流密度(A/dm^(2))とメッキ時間(min)を変えてメッキ処理した。そのときの鉛ガラスの浸食状態と鉛ガラス上へのメッキの付き方を表2に示す。なお、表2のガラス部の浸食の中で、○と示したものは浸食が観察されない状態を表し・・・また、表2のガラス部のメッキの中で、○と示したものはガラス上に金属析出がほとんど認められない状態を表している。」(【0025】?【0028】)
(1g)表1には、試料No.4として、pH5.0で、ステアリルアミンエチレンオキサイド10モル付加体を用いたメッキ浴が記載され、表2には、試料No.4は、電流密度(A/dm^(2))0.1、1.0、2.0で処理したいずれの場合もガラスの浸食○、ガラス部のメッキ○であることが記載されている。

(2)引用例2:特開2001-254194号公報
(2a)「【請求項1】 ・・・第一錫塩・・・よりなる可溶性金属塩・・・を含有することを特徴とする錫・・・メッキ浴。
・・・
【請求項4】 錯化剤を含有するとともに、メッキ浴のpHが1.5?9.0である事を特徴とする請求項1・・・に記載の錫・・・メッキ浴。
・・・
【請求項6】 さらに、界面活性剤・・・を含有することを特徴とする請求項1・・・に記載の錫・・・メッキ浴。」(特許請求の範囲の請求項1、4、6)
(2b)「錯化剤としては・・・グルコン酸、グルコヘプトン酸、グルコノラクトン、グルコヘプトノラクトン・・・これらの塩・・・などを単用又は併用できる。」(【0025】)
(2c)「界面活性剤は・・・C_(1)?C_(22)脂肪族アミン、C_(1)?C_(22)脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)・・・を2?300モル付加縮合したものである。」(【0030】)
(2d)「《実施例7》下記の組成で錫-鉛合金メッキ浴を建浴した。
ホウフッ化第一錫(Sn^(2+)として) 80g/L
ホウフッ化鉛(Pb^(2+)として) 5g/L
ホウフッ酸(遊離酸として) 160g/L
ビス(ヘキサエチレングリコール)チオエーテル 12g/L
ラウリルアミンポリエトキシレート(EO15モル) 7g/L
2-メルカプトベンズイミダゾール 0.2g/L
〔メッキ条件〕
温 度:30℃
陰極電流密度:12A/dm^(2) 上述の条件で銅板上に電気メッキを行った結果、均一で緻密な半田濡れ性の良好な錫-鉛合金メッキ皮膜が得られた。」(【0057】)

(3)引用例3:特開2000-26991号公報
(3a)「【請求項1】 (A)錫塩・・・よりなる可溶性塩、(B)・・・特定のモノアミン型化合物・・・、及び(C)非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤の内の少なくとも一種を含有することを特徴とする錫・・・メッキ浴。」(特許請求の範囲の請求項1)
(3b)「環境汚染防止の観点からは、これら生分解性の良いモノアミン型化合物を主用錯化剤として用いるのが好ましいが、上記モノアミン型化合物一種類と錫・・・メッキ浴に使用されている公知の錯化剤が併用できる。例えば、グルコン酸・・・を併用することができる。」(【0019】)
(3c)「(9)一般式
(A)_(m1)-(B)_(n1)-H
/
R-N ・・・
\
(A)_(m2)-(B)_(n2)-H
[ここで、Rは、アルキル基(C_(1)?C_(30))・・・又はアシル基(C_(1)?C_(30))を表し、A及びBは-CH_(2)-CH_(2)-O-・・・を表し、それらの存在位置は限定されない。m1、m2、n1、n2はそれぞれ独立に0?6の整数を表す。ただし、m1及びn1、さらにm2及びn2の和は1から6の範囲内にある。・・・]で表されるポリオキシアルキル・・・アミン(又はアミド)系界面活性剤、」(【0031】)
(3d)「前記式(9)で表されるものとして、例えば、アルキル・・・アミン(又はアミド)のエチレンオキサイド・・・付加物等、例えば・・・ポリオキシエチレンラウリルアミン・・・等が含まれる。」(【0045】)

(4)引用例4:特開2001-240993号公報
(4a)「【請求項1】 1.5?6.0のpHを有し、かつ以下の成分を含有することを特徴とする錫電気めっき液。
(1)・・・第一錫イオン、(2)錯化剤、(3)界面活性剤、及び(4)・・・ビスマスイオン(3価)」(特許請求の範囲の請求項1)
(4b)「錯化剤は、第一錫イオンを安定に錫電気めっき液中に保持するために使用する。・・・有機酸としては、例えば、グルコン酸・・・を挙げることができる。・・・錯化剤は、塩として配合することができる。塩としては、例えば、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩等を使用することができる。」(【0008】)
(4c)「界面活性剤としては、各種の界面活性剤を使用することができる。このような界面活性剤の例としては、例えば、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤等を使用することができる。」(【0009】)
(4d)「本発明の錫電気めっき液は、以下のめっき条件によって、電子部品等に錫電気めっきを形成することができる。
電流密度 0.05?0.5A/dm^(2) 温度 20?30℃
時間 240?24分 (5μm)」(【0013】)

3.当審の判断
3-1.引用例1を主引例として
3-1-1.引用例記載の発明
引用例1の摘記事項(1a)によれば、pH3?10であり、錯化剤を含有し、かつ、
一般式[A] (CH_(2)CH_(2)O)_(m)H
/
R-N
\
(CH_(2)CH_(2)O)_(n)H
(ただし、Rは炭素数6?18のアルキル基、m+nは2?11の整数)で示されるポリオキシエチレンアルキルアミン、及び、
一般式[B] (CH_(2)CH_(2)O)_(m)H
/
R-CON
\
(CH_(2)CH_(2)O)_(n)H
(ただし、Rは炭素数6?18のアルキル基、m+nは2?11の整数)で示されるポリオキシエチレンアルキルアミドのうちの1種が添加された錫電気メッキ浴が記載されている。また、摘記事項(1b)によれば、錯化剤として、グルコン酸、グルコノラクトンのうち少なくとも1種類を用いることが記載されている。
そこで、引用例1の摘記事項(1a)、(1b)の記載を総合すれば、引用例1には、「pHが3?10となるように調製されると共に、グルコン酸、グルコノラクトンのうち少なくとも1種類以上の錯化剤が含有され、かつ、
一般式[A]
(CH_(2)CH_(2)O)_(m)H
/
R-N
\
(CH_(2)CH_(2)O)_(n)H
(ただし、Rは炭素数6?18のアルキル基、m+nは2?11の整数)で示されるポリオキシエチレンアルキルアミン、及び、
一般式[B] (CH_(2)CH_(2)O)_(m)H
/
R-CON
\
(CH_(2)CH_(2)O)_(n)H
(ただし、Rは炭素数6?18のアルキル基、m+nは2?11の整数)で示されるポリオキシエチレンアルキルアミドのうちの1種が添加された錫電気メッキ浴。」(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていることになる。

3-1-2.対比・判断
本願発明1と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「一般式[A]・・・(省略)・・・」、「一般式[B]・・・(省略)・・・」、「m」、「n」、「炭素数」、「錫電気めっき浴」は、本願発明1の「一般式【化1】・・・(省略)・・・」、「一般式【化2】・・・(省略)・・・」、「p」、「q」、「炭素数n」、「スズめっき浴」にそれぞれ相当するから、両者は、
「水素イオン指数pHが3?5.0となるように調製されると共に、グルコン酸、グルコノラクトンの中から選択された少なくとも1種以上の錯化剤が含有され、かつ、一般式
【化1】 (CH_(2)CH_(2)O)_(p)H
/
R-N
\
(CH_(2)CH_(2)O)_(q)H
(但し、Rは炭素数nが6?18のアルキル基)で表されるポリオキシエチレンアルキルアミン、
及び一般式
【化2】 (CH_(2)CH_(2)O)_(p)H
/
R-CON
\
(CH_(2)CH_(2)O)_(q)H
(但し、Rは炭素数nが6?18のアルキル基)で表されるポリオキシエチレンアルキルアミドのうちの1種が添加されているスズめっき浴。」で一致し、以下の点で相違する。

相違点:
(イ)本願発明1は、「最大200A/m^(2)までの電流密度範囲全域で、スズの析出電位が、標準水素電極電位を基準に-0.9V又は-0.9Vよりも電気化学的に貴な電位とされ」るのに対し、引用例1発明は、この点が記載されていない点
(ロ)本願発明1は、一般式【化1】及び一般式【化2】においてp+qが「12?80の整数」であるのに対し、引用例1発明は、2?11の整数である点

上記相違点について検討する。
相違点(イ)について
スズの析出電位について、本願明細書には、「水素イオン指数pH及び錯化剤でスズめっき浴を調製することにより、スズの析出電位を-0.9V(vs.SHE(Standard Hydrogen Electrode);標準水素電極、以下同じ)又は-0.9Vよりも電気化学的に貴な電位と」(【0013】)することが記載され、さらに、水素イオン指数pHについて、「水素イオン指数pHが5.0を超えると析出電位が-0.9Vよりも電気化学的に卑となり、セラミック素体を構成する金属酸化物の溶け出し、電極剥離が生じて電気特性を損なう。一方、水素イオン指数pHが2.0未満の場合は・・・被めっき物を構成するセラミック素体の化学的溶解が極端に進行する。そこで、本スズめっき浴では水素イオン指数を2.0?5.0とした。」(【0039】、【0040】)、錯化剤について、「錯化剤も析出電位の決定要因をなすものであり、上記析出電位を確保するためには、錯化剤種として、グルコン酸・・・グルコノラクトン・・・グルコン酸アルカリ金属塩・・・を使用することができる。」(【0044】)と記載されている。
これらの記載によれば、本願発明1は、pHが2.0?5.0となるように調整されると共に、グルコン酸、グルコノラクトン、グルコン酸アルカリ金属塩等の中から選択された少なくとも1種以上の錯化剤が含有されることにより、スズの析出電位が、標準水素電極電位を基準に-0.9V又は-0.9Vよりも電気化学的に貴な電位に調整されることが理解できる。
さらに、電流密度範囲について、本願明細書には、「最大200A/m^(2)までの広い電流密度範囲で良好な電気特性・・・を有するスズめっき浴を得ることができる」(【0013】)、「電流密度が200A/m^(2)を超えると水素イオン指数pHや錯化剤で析出電位を調整しても、該析出電位が電気化学的に卑に大きくシフトし、その結果電気特性の不良品率が増加して製品歩留まりの低下を招来する。」(【0038】)と記載されている。
これらの記載によれば、本願発明1は、水素イオン指数pHや錯化剤でスズの析出電位を調整しためっき浴に対して、最大200A/m^(2)までの電流密度範囲においてめっき処理すると、該電流密度範囲全域で調整したとおりのスズの析出電位が実現されることが理解できる。
これに対し、引用例1発明は、pHが3.0?5.0となるように調整されると共に、グルコン酸、グルコノラクトンの中から選択された少なくとも1種以上の錯化剤が含有される場合を含むのものであるから、本願発明1と同様に、スズの析出電位が、標準水素電極電位を基準に-0.9V又は-0.9Vよりも電気化学的に貴な電位に調整される場合を包含するといえる。また、引用例1の摘記事項(1g)によれば、電流密度0.1A/dm^(2)、1.0A/dm^(2)、2.0A/dm^(2)でめっき処理したことが記載されているから、引用例1発明のスズめっき浴は、最大200A/m^(2)(2.0A/dm^(2))までの電流密度範囲でめっき処理されることが理解できる。そうすると、引用例1発明は、本願発明1と同様に、最大200A/m^(2)までの電流密度範囲全域で、上記調整したとおりのスズの析出電位(すなわち、標準水素電極電位を基準に-0.9V又は-0.9Vよりも電気化学的に貴な電位)を実現する場合を包含するといえる。
してみると、引用例1発明は、本願発明1の相違点(イ)の特定事項を備えるから、相違点(イ)は、実質的な相違点ではない。

相違点(ロ)について
引用例1の摘記事項(1e)によれば、p、q(m、n)で示されるエチレンオキサイド基の付加数が多過ぎる場合には、溶解性は高まるものの抑制効果が失われるため、通常、p+q(m+n)は11以下であることが記載されている。
この記載によれば、溶解性と抑制効果の観点で、p+qを最適化することが理解できるところ、引用例2の摘記事項(2d)によれば、「ラウリルアミンポリエトキシレート(EO15モル)」を添加したスズめっき浴が記載されている。そして、「ラウリルアミンポリエトキシレート(EO15モル)」は、引用例1発明の一般式【化1】(一般式[A])において、Rは炭素数nが12のアルキル基、p+qは15の場合のポリオキシエチレンアルキルアミンに相当する。
さらに、引用例3の摘記事項(3a)、(3c)によれば、界面活性剤として、
一般式(9) (A)_(m1)-(B)_(n1)-H
/
R-N
\
(A)_(m2)-(B)_(n2)-H
[ここで、Rは炭素数が1?30のアルキル基又はアシル基(R-CO-)を表し、A及びBは-CH_(2)-CH_(2)-O-を表し、それらの存在位置は限定されない。m1、m2、n1、n2はそれぞれ独立に0?6の整数を表す。ただし、m1及びn1、さらにm2及びn2の和は1から6の範囲内にある(すなわち、1≦m1+n1≦6、1≦m2+n2≦6、2≦m1+n1+m2+n2≦12)。]で表されるポリオキシアルキルアミン又はポリオキシアルキルアミドを添加したスズめっき浴が記載されている。そうすると、スズめっき浴に添加される界面活性剤は、
一般式(9) (CH_(2)CH_(2)O)_(m1+n1)H
/
R-N
\
(CH_(2)CH_(2)O)_(m2+n2)H
(但し、Rは炭素数が1?30のアルキル基、m1+n1+m2+n2は2?12の整数)で表されるポリオキシエチレンアルキルアミン(以下、「一般式(9-a)」という。)、又は、
一般式(9) (CH_(2)CH_(2)O)_(m1+n1)H
/
R-CON
\
(CH_(2)CH_(2)O)_(m2+n2)H
(但し、Rは炭素数が1?29のアルキル基、m1+n1+m2+n2は2?12の整数)で表されるポリオキシエチレンアルキルアミド(以下、「一般式(9-b)」という。)であるといえる。
そして、摘記事項(3d)によれば、「ポリオキシエチレンラウリルアミン」が例示されており、この化合物は、一般式(9-a)において、Rは炭素数が12のアルキル基である化合物であって、エチレンオキサイドの付加数(m1+n1+m2+n2)が12の場合には、引用例1発明の一般式【化1】において、Rは炭素数nが12のアルキル基、p+qが12の場合のポリオキシエチレンアルキルアミンに相当する。
以上検討したように、引用例2、3には、すずめっき浴に、引用例1発明の一般式【化1】において、Rは炭素数が12のアルキル基、p+qが15、12の場合のポリオキシエチレンアルキルアミン化合物を添加することが記載されているから、引用例1発明の一般式【化1】、及び【化2】のp+qを2?11に代えて、11の近傍の12?15程度とすること、及び、p+qが12?15の場合においても、溶解性と抑制効果を備えたスズめっき浴が得られることを確認することは、当業者にとって格別な創意を要することではない。
してみると、相違点(ロ)は、引用例2、3の記載から当業者が適宜なし得たことである。

そして、本願発明1の奏する効果も引用例1?3の記載から予測される範囲のものであって、格別顕著なものとは認められない。

したがって、本願発明1は、引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-2.引用例4を主引例として
3-2-1.引用例記載の発明
引用例4の摘記事項(4a)によれば、1.5?6.0のpHを有し、かつ錯化剤、及び界面活性剤を含有する錫電気めっき液が記載され、摘記事項(4b)によれば、錯化剤としてグルコン酸、グルコン酸アルカリ金属塩を使用できることが記載されている。
そこで、引用例4の摘記事項(4a)、(4b)の記載を総合すれば、引用例4には、「pHが1.5?6.0となるように調製されると共に、グルコン酸、グルコン酸アルカリ金属塩の中から選択された錯化剤が含有され、かつ、界面活性剤が添加された錫電気めっき液。」(以下「引用例4発明」という。)が記載されていることになる。

3-2-2.対比・判断
本願発明1と引用例4発明とを対比すると、引用例4発明の「錫電気めっき液」は、本願発明1の「スズめっき浴」に相当するから、両者は、
「水素イオン指数pHが2.0?5.0となるように調製されると共に、グルコン酸、及びグルコン酸アルカリ金属塩の中から選択された錯化剤が含有されたスズめっき浴。」で一致し、以下の点で相違する。

相違点:
(ハ)本願発明1は、「最大200A/m^(2)までの電流密度範囲全域で、スズの析出電位が、標準水素電極電位を基準に-0.9V又は-0.9Vよりも電気化学的に貴な電位とされ」るのに対し、引用例1発明は、この点が記載されていない点
(ニ)本願発明1は、「一般式【化1】・・・(省略)・・・(但し、Rは炭素数nが6?18のアルキル基、p+qは12?80の整数)で表されるポリオキシエチレンアルキルアミン、及び一般式【化2】・・・(省略)・・・(但し、Rは炭素数nが6?18のアルキル基、p+qは12?80の整数)で表されるポリオキシエチレンアルキルアミドのうちの少なくとも1種以上」が添加されているのに対し、引用例4発明は、界面活性剤が添加されている点

上記相違点について検討する。
相違点(ハ)について
上記「3-1-2.相違点(イ)について」に記載したように、本願発明1は、pHが2.0?5.0となるように調整されると共に、グルコン酸、グルコノラクトン、グルコン酸アルカリ金属塩等の中から選択された少なくとも1種以上の錯化剤が含有されることにより、スズの析出電位が、標準水素電極電位を基準に-0.9V又は-0.9Vよりも電気化学的に貴な電位に調整されるものであるし、また、本願発明1は、水素イオン指数pHや錯化剤でスズの析出電位を調整しためっき浴に対して、最大200A/m^(2)までの電流密度範囲においてめっき処理すると、該電流密度範囲全域で調整したとおりのスズの析出電位が実現されるものである。
これに対し、引用例4発明は、水素イオン指数pHが2.0?5.0となるように調製されると共に、グルコン酸、及びグルコン酸アルカリ金属塩の中から選択された錯化剤が含有される場合を含むのであるから、本願発明1と同様に、スズの析出電位が、標準水素電極電位を基準に-0.9V又は-0.9Vよりも電気化学的に貴な電位に調整される場合を包含しているといえる。
さらに、引用例4の摘記事項(4d)によれば、電流密度5?50A/m^(2)(0.05?0.5A/dm^(2))の条件でスズめっきを形成することが記載されているから、引用例4発明は、最大50A/m^(2)までの電流密度範囲全域で、本願発明1と同様に、調整したとおりのスズの析出電位(すなわち、標準水素電極電位を基準に-0.9V又は-0.9Vよりも電気化学的に貴な電位)が実現される場合を包含するといえる。
してみると、引用例4発明は、本願発明1の相違点(ハ)の特定事項を備えるから、相違点(ハ)は、実質的な相違点ではない。

相違点(ニ)について
引用例1の摘記事項(1a)、(1b)によれば、pHが3?10となるように調整されると共に、グルコン酸の錯化剤が含有されたスズめっき浴に添加される光沢剤として、
一般式【化1】 (CH_(2)CH_(2)O)_(p)H
/
R-N
\
(CH_(2)CH_(2)O)_(q)H
(ただし、Rは炭素数nが6?18のアルキル基、p+qは2?11の整数)で表されるポリオキシエチレンアルキルアミン、又は、
一般式【化2】 (CH_(2)CH_(2)O)_(p)H
/
R-CON
\
(CH_(2)CH_(2)O)_(q)H
(ただし、Rは炭素数nが6?18のアルキル基、p+qは2?11の整数)で表されるポリオキシエチレンアルキルアミドが記載され、摘記事項(1d)によれば、光沢剤は界面活性剤として有効に作用することが記載されているから、一般式【化1】で表されるポリオキシエチレンアルキルアミン、及び、一般式【化2】で表されるポリオキシエチレンアルキルアミドは、界面活性剤ともいえるものである。
そうであれば、引用例4発明の界面活性剤として、pH及び錯化剤が重複しているスズめっき浴に添加される引用例1と同様の界面活性剤を用いようとすることは、当業者が容易に想到することである。
そして、スズめっき浴に添加される界面活性剤として、一般式【化1】で表されるポリオキシエチレンアルキルアミン、及び、一般式【化2】で表されるポリオキシエチレンアルキルアミドは、引用例2、3にも開示されている。
すなわち、引用例2の摘記事項(2a)、(2c)によれば、C_(1)?C_(22)脂肪族アミン、C_(1)?C_(22)脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)を2?300モル付加縮合したもの、すなわち、
一般式【化1】 (CH_(2)CH_(2)O)_(p)H
/
R-N
\
(CH_(2)CH_(2)O)_(q)H
(但し、Rは炭素数nが1?22のアルキル基、p+qは2?300の整数)で表されるポリオキシエチレンアルキルアミン、
一般式【化2】 (CH_(2)CH_(2)O)_(p)H
/
R-CON
\
(CH_(2)CH_(2)O)_(q)H
(但し、Rは炭素数nが1?21のアルキル基、p+qは2?300の整数)で表されるポリオキシエチレンアルキルアミドが記載されている。
さらに、上記「3-1-2.相違点(ロ)について」に記載したように、引用例3の摘記事項(3a)、(3c)によれば、一般式(9-a)で表されるポリオキシエチレンアルキルアミン、及び、一般式(9-b)で表されるポリオキシエチレンアルキルアミドが記載され、これらはそれぞれ、
一般式【化1】 (CH_(2)CH_(2)O)_(p)H
/
R-N
\
(CH_(2)CH_(2)O)_(q)H
(但し、Rは炭素数nが1?30のアルキル基、p+qは2?12の整数)で表されるポリオキシエチレンアルキルアミン、
一般式【化2】 (CH_(2)CH_(2)O)_(p)H
/
R-CON
\
(CH_(2)CH_(2)O)_(q)H
(但し、Rは炭素数nが1?29のアルキル基、p+qは2?12の整数)で表されるポリオキシエチレンアルキルアミド、に相当する。
そうすると、引用例1?3には、一般式【化1】において、Rの炭素数nが1?30のアルキル基、p+qが2?300の整数であるポリオキシエチレンアルキルアミン、及び、一般式【化2】において、Rの炭素数nが1?29のアルキル基、p+qが2?300の整数であるポリオキシエチレンアルキルアミドが記載されているといえるから、このようなポリオキシエチレンアルキルアミン、又はポリオキシエチレンアルキルアミドにおいて、炭素数n、p+qを最適化して、引用例4発明の界面活性剤として用いることは、当業者が適宜想到することである。
そして、炭素数nについて、引用例1の摘記事項(1a)によれば、6?18のものが記載され、引用例2の摘記事項(2d)、及び引用例3の摘記事項(3d)によれば、12のもの(ポリオキシエチレンラウリルアミン、ラウリルアミンポリエトシキレート)が記載されているから、一般式【化1】、【化2】において、炭素数nを6?18とすることは、当業者にとって格別困難なことではない。
さらに、引用例1の摘記事項(1e)によれば、エチレンオキサイド基の付加数(p+q)が多過ぎる場合には、溶解性は高まるものの抑制効果が失われることが記載されているから、溶解性及び抑制効果の観点で、一般式【化1】、【化2】において、p+qを2?300の整数の範囲内で、12?80の整数のように最適化することも、当業者にとって格別な創意を要することではない。
してみると、相違点(ニ)は、引用例1?3の記載から当業者が適宜なし得たことである。

そして、本願発明1の奏する効果も引用例1?4の記載から予測される範囲のものであって、格別顕著なものとは認められない。

したがって、本願発明1は、引用例1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、上記のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-05 
結審通知日 2008-03-06 
審決日 2008-03-18 
出願番号 特願2002-150118(P2002-150118)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 市枝 信之酒井 英夫  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官 市川 裕司
前田 仁志
発明の名称 スズめっき浴、及び電子部品のめっき方法、並びに電子部品  
代理人 國弘 安俊  

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